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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
January 05, 2012
KPI(重要業績評価指標)の取得方法を工夫しよう―『日経情報ストラテジー(2012年2月号)』
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日経情報ストラテジー 2012年 02月号 [雑誌] 日経情報ストラテジー 日経BP社 2011-12-28 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
【997本目】1,000エントリーまであと3。
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。新年一発目の記事は軽めで。『日経情報ストラテジー』の定期購読を始めて4か月になるけれど、やっぱDHBRに比べるとコストパフォーマンスが低いな・・・日経情報ストラテジー1冊あたりの料金は、DHBRの約半分。しかしながら、日経情報ストラテジーを2冊読めばDHBR1冊と同じくらい濃い情報が得られるかというと、今のところかなり疑問。まぁ、もうちょっと辛抱強く読み続けるか。飽きたらこのブログで取り上げるのをやめます。
2月号で印象に残ったのは、新幹線の車内販売を手掛ける「ジェイアール東海パッセンジャーズ」の事例。販売業務改善に向けた施策の効果を定量的に測定している点が興味深かった。
最近、同社が取り入れたのが「振り返り販売」と「お勧め販売」である。振り返り販売とは客席を通過しても何度も振り返り、お客の見逃しを無くすこと。一方、お勧め販売とは、お弁当を買った人にお茶を勧めるというような”関連販売”だ。(中略)以前の記事「プロセスKPIを設定するための5つの視点」で書いたように、業務プロセスの生産性や各種施策の効果をモニタリングするには、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を用いたマネジメントが有効である。KPIは、これもまた昔「実務的なプロセスKPIにファインチューニングする3つのポイント」という記事で書いた通り、「値を継続的に測定できる」ものでなければならない。実のところ、KPIマネジメントは、この部分で頓挫することが多い。すなわち、値を測定し続けることが困難であるために、だんだんとモニタリングが雑になり、やがて放棄されてしまうのである。
2つの販売について、きっちりと数値管理している。2010年12月では、振り返りとお勧めの回数は、それぞれ7195回(1列車当たり約24回)と3913回(同13回)。うち販売に結び付いた回数は411回(17回に1回ほど)と1312回(3回につき1回ほど)という高さだ。
しかし、ジェイアール東海パッセンジャーズの事例は、工夫次第でKPIの値を取得できることを示唆している。私の推測の域を出ないが、同社は振り返り販売やお勧め販売の効果を測定するために、パーサー(販売員)が持っている端末を多少改良したのであろう。つまり、製品ごとに割り当てられているボタンの一部を、「振り返り販売実施」、「振り返り販売成功」、「お勧め販売実施」、「お勧め販売成功」というボタンにして、それぞれの回数をカウントしたのだと思われる(間違っていたらスミマセン)。
似たような効果測定を、もっと徹底的にやっていると感じるのが、マクドナルドである。マクドナルドは100円マックのクロスセルに力を入れている。例えば昼下がりの時間帯にコーヒーだけを頼むと、必ず100円マックを勧められる。また、週替わりで様々なキャンペーンを展開しており、直近では「マックフライポテトLを買うと、割引券などが当たる福引がついてくる」というものがあった。キャンペーン期間中にポテトMやSを注文すると、クルーは必ずLサイズへのアップセルを行う。
店員がこうしたキャンペーンの紹介を顧客に対して行った後、POSレジに特定のキャンペーンコードが表示されることに気づいた方もいらっしゃるのではなかろうか?店員がPOSレジのキャンペーンボタンを押して、キャンペーン実施の有無をカウントしていると考えられる。さらに、表示されるキャンペーンコードや、店員がPOSレジを打ち込む操作を見ていると、成功・失敗を問わず、押すボタンは1つと決まっているようである。
実際、クロスセルやアップセルの成功率を算出するには、ボタンが1つあれば十分である。「Xという製品の注文があった時はYという製品を勧める」という条件さえ整っていれば、「クロスセル/アップセルの実施フラグ」を立てるボタンが1つあればよい。クロスセル/アップセルの成功率は、フラグが立っているトランザクション(取引)データのうち、Y製品が含まれるトランザクションの割合を計算することで求められる(※)。
ジェイアール東海パッセンジャーズのように、パーサーの数がそれほど多くなければ、多少複雑な操作でもトレーニングでカバーすることができる。ところが、マクドナルドのクルーは16万人にも上り、その大半はパートやアルバイトである。彼ら彼女らが確実に操作できるように配慮されているというわけだ。
(※)逆に、ジェイアール東海パッセンジャーズの場合は、クロスセルのパターンを明確に決めることが難しい。例えば、お酒を買った顧客におつまみを勧めたところ、その顧客はおにぎりなどの軽食を選択するかもしれない。あるいは、ご当地のお土産を買った顧客に別のお土産を勧めたら、その顧客は友人に自分と一緒のお土産を送ろうと、同じお土産をもう1つ購入するかもしれないからだ。こういう場合には、マクドナルドのようにボタン1つでやりくりすることができないため、「お勧め販売実施」、「お勧め販売成功」という2つのボタンを用意する必要があるだろう。
July 10, 2011
結果とプロセスをバランスよく評価しよう―『失敗に学ぶ人 失敗で挫折する人(DHBR2011年7月号)』
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7月号のレビューを書いているうちに、8月号が届いちゃった(汗)それでも7月号の書評を続けるよ。
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なぜ、ビジネスの論理と倫理を切り離してしまうのか 「意図せぬ悪事」の科学(マックス・H・ ベイザーマン、アン・E・テンブランセル)
ビジネスパーソンが倫理に反する行動をとってしまう理由として著者が指摘しているのは次の5つ。
(1)不適切な目標設定(1)の典型例は、売上だけでしか評価されない営業担当者が、期末が迫ってくると顧客に対して無茶な押し売りをしてしまう、というものである。
望ましい行動を促進するために目標やインセンティブを設定するが、逆に倫理に反する行動を助長してしまう。
(2)動機づけられた見落とし
見て見ぬふりをしたほうが自分の利益になる場合、他者の倫理に反する行動を見落とす。
(3)間接的であるがゆえの見落とし
他者が第三者を介して倫理に反する行動をした場合には、直接行った場合よりも責任を問わない傾向がある。
(4)滑りやすい坂
他者の倫理に反する行動が徐々に進行していく場合、気づきにくい。
(5)結果の過大評価
結果がよければ、倫理に反する行動を認めてしまう。
(2)の例として、論文ではMLBの通算本塁打記録を持つバリー・ボンズが挙げられている。ボンズがステロイド剤を使用していると球団側もファンも知りながら、球団側はボンズのホームランによる集客効果を無視できず、ファンもボンズのホームランを見たがっているがゆえに、球団もファンも「見て見ぬふり」をしてしまったと著者は指摘している。
(3)は、個人的にはやや特殊な例のように感じるのでここでは省略。(4)は(2)とも近い。論文の内容からは逸れるが、「壊れ窓理論」は(4)に当てはまると思う。「壊れ窓理論」とは、ある地域にフロントガラスの割れている自動車を放置しておくと、その地域での犯罪率が上がるというものである。
フロントガラスが割れた車を見た人間は、多少の悪事は許されると思い、ごみのポイ捨てや落書きなどといった軽犯罪を起こすようになる。それがエスカレートしていくと、やがては強盗や殺人といった凶悪犯罪までもが発生するようになる、というのである。
(5)に関しては、論文では製薬会社の例が紹介されている。ある新薬の開発中に、その薬を服用すると死亡する危険性があることが明らかになった。ここで、A社はさらに試験を繰り返し、一定の確率で死に至る可能性があることを十分に認識した上で新薬を発売した。これに対し、B社は試験データをねつ造して、死亡の可能性がないように見せかけて新薬を販売した。
A社は実験の結果通り何人かの死者を出してしまったが、B社の顧客からはラッキーなことに死者が出なかったとする。この場合、世間やマスコミはA社を厳しくバッシングするだろう。しかし、本当はB社の方が非倫理的なのではないか?と著者は問いかけている。
このような非倫理的な行動の背後には、結果重視の評価制度が潜んでいると私は考える。IBMの元CEOであるルイス・ガースナーは、「何か変革を起こしたければ、まずは評価制度を変えるべきだ」と主張しているように、評価制度は人間の行動を大きく左右する(※)。評価指標を1つ変えるだけでも、人間の行動は全く違うものになってしまうのである(過去の記事「評価制度を間違えると社員の行動はおかしな方向へ導かれる」で取り上げたコールセンターの事例を参照)。
社員が非倫理的な行動に陥らないようにするためには、結果とプロセスのバランスが取れた評価制度を構築することが有効であろう。プロセスの指標は、「バランス・スコア・カード(BSC)」や、以前このブログで書いた「プロセスKPI(Key Performance Indicator:重要業績指標)を設定するための5つの視点」で設定してもいいのだが、とにかく結果だけに偏った評価制度にしないことが肝要である。
(1)の営業担当者について言えば、押し売りをされた顧客は満足度が下がり、他社の製品にスイッチする可能性が高くなると考えられる。そこで、売上に加えて「営業活動に対する顧客満足度」や「顧客のリピート購入率」など(=これらの指標は、BSCで言うところの「顧客の視点」に該当する)も評価指標に組み込めば、期末の押し売りが低減されるかもしれない。
(2)のボンズの薬物使用を止めるにはどうすればよかったのだろうか?アイデアベースに過ぎないが、次のような方法は考えられないだろうか?MLBでは、球団の資金力の格差によってチームの実力が乖離しないよう、各球団の収益を再配分する仕組みがある。すごくシンプルに言えば、人気も実力もあるニューヨーク・ヤンキースの利益が、万年最下位争いをしているデトロイト・タイガースに配分されるようなものだ(こうした配分を行っても、タイガースは強くならないので、再配分制度にも限界があるわけだが・・・)。
再配分にあたっては、球団の「勝敗数」という結果が第一に考慮される。これに加えて、各球団は「ステロイド剤などの禁止薬物を使用していない選手の割合(当然、100%でなければならない)」を、明確な証拠資料とともにMLB事務局に提示する。万が一100%でない球団が出た場合は、分配金を削減する。さらに、虚偽の申告が後になってから発覚した場合には、さらに厳しい減額措置をとる。こんな感じで、プロセスKPIを組み合わせることができるのではないだろうか?
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大惨事をいかに未然に防ぐか ニアミス:隠れた災いの種(キャサリン・H・ティンズリー、ロビン・L・ディロン他)
人々は結果が成功に終わると、たとえそこに至るプロセスに明らかに問題があっても、基本的に健全だったとみなす性向がある。だからこそ、「成功すれば文句は言えない」と言われるのである。しかし、実際には文句を言えるし、またそうすべきだ。DHBR5月号の『リーダーシップ 真実の瞬間』に所収されているロジャー・E・ボーンの「クライシスの火種を消す 「その場しのぎ症候群」から脱する法」とも関連する論文。ボーンの言葉を再引用すると、
諸研究によれば、組織の災厄が1つの原因だけで起きることはまずない。むしろ、複数の小さな、たいていは外見上取るに足りない人為的ミスや技術的な問題、あるいは不適切な業務上の判断が予想を超えて絡み合い、災厄をもたらす。それらの潜在的誤謬が実現条件と結びつくことによって、重大な失敗が生まれるのだ。
ほとんどのアメリカ企業では、最悪の窮地から組織を救った人は英雄視される。しかしその人は、問題が発生した時には、どこで何をしていたのだろう。なぜ、問題が大きくなる前に、先手を打って行動しなかったのだろう。問題の発生件数が少ないマネジャー、長期的な予防策やシステマティックな問題解決を実践しているマネジャーに報奨を与えるべきである。ニアミスの報告が評価される企業は少ない。しかし、ニアミスが重なって引き起こされた大惨事を鎮圧した人は高く評価される。今回の福島原発の事故を受けて、東京電力がどのような人事評価を行うのかは外部の人間からは解らないが、命懸けで事態の鎮圧にあたっていた人たちは高く評価され、中には大幅に昇進する人も出てくるだろう。他方、事故現場での意思決定や言動に問題があった人たちは、危機的状況に対応する能力が低いというレッテルを貼られるに違いない。
しかし、原発が津波によって崩壊するかもしれないことを、3.11よりずっと前から指摘し続けてきた人たちも高く評価されるべきである。そういう人たちが重要なポストに就けば、周囲の社員は小さな問題でも安心して報告するようになる。逆に、原発の脆弱性を認識していながら事なかれ主義を貫いていた人たちには、事故現場での行動に問題があった人たちよりも厳しい評価を下すべきであろう。
(※)ルイス・ガースナー著『巨象も踊る』(日本経済新聞社、2002年)
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May 25, 2010
実務的なプロセスKPIにファインチューニングする3つのポイント
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前回の記事「プロセスKPIを設定するための5つの視点」では、プロセスKPIを定義するにあたってまずは測定対象となる業務プロセスを明確にすること、そして「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」という5つの視点を使ってできるだけ網羅的にKPIを設定することを述べた。
(※クリックして拡大表示)
ここから、実務的に運用可能なレベルへと微調整を加えていく。その際のポイントは以下の3つである。
(1)定性的な指標は可能な限り定量的な指標に置き換える
これはとりわけ「質」のKPIについて言えることだが、定性的な指標は読み解くのに時間がかかるし、良い−悪いの判断が難しい。定性的な指標はできるだけ定量的に測定可能なものに変換するのが望ましい。
上図では、すでに部分的にファインチューニングを行っているKPIがある。それは「商談の難易度評価(製品・サービス提供にあたり、自社のリソース・ノウハウで十分対応か否か)」、「商談獲得の見込み評価(受注の確度がどの程度あるか)」という指標である。営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。しかし、こうした定性的な情報はそのままでは非常に測定しにくい。そこで、商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる商談数をカウントすることで、定量的な測定を可能にしている。
営業会議で、「今週のA商談は○件、B商談は○件、C商談は○件…」といった進捗報告を行っている企業もあるだろう。その場合の件数が、まさに商談の質を定量的に測定した数値と言える。
(2)測定困難な指標は代替指標を考えるか、方法を変える
KPIはその数値を継続的にモニタリングすることができなければ意味がない。KPIの値を取得するだけで莫大な時間がかかるのであれば、改善策の検討が大幅に遅れてしまう。だから、KPIは測定が容易で、かつ繰り返し取得できるものにしなければならない。
例えば、上図にある「提案書の質」に関しては、営業担当者が顧客企業に「私が書いた提案書の内容はどうですか?満足していただけましたか?」と聞いて回るのはあまりにも常軌を逸した行動である。また、ある期間内に作成された全社員の提案書をマネジャーが評価することも非現実的である。
こういう場合は、サンプリング調査を行う。無作為に抽出した数十件程度の提案書の内容を社内で定めた基準に従って採点するというやり方である。サンプリングと社内基準が適切であれば、提案書の質に関する全社的な傾向を知ることができる。
(3)最終成果との結びつきが薄い指標は削り、KPIにメリハリをつける
プロセスKPIは最終成果に至るまでのプロセスをモニタリングするものであるから、最終成果をどのように位置づけるかによってKPIの優先順位が変わってくる。
とにかく売上拡大が最優先課題であるような場合は、「時間」や「コスト」に関するKPIはごっそり削ってしまうのも1つの手である。逆に、収益性を重視するのであれば「時間」や「コスト」は重要なKPIになるし、「値引率」や「値引になった商談の割合」も見過ごせない指標となる。
営業活動の効率性を重視するのであれば、「量」のウェイトを軽くする。前回の記事の中で、「営業活動はろ過装置のようなものであり、プロセスが進むに従って顧客・商談数が減っていく」と書いたが、効率的な営業とは、入口(=ターゲット顧客数)が多少狭くなったとしても、ほとんどろ過されずに出口から出てくる(=成約できる)状態を指す。この場合は、「量」の代わりに「質」や「次プロセスへの進行率」に重きを置くことが考えられる。
上記の3つのポイントに従って微調整を行えば、プロセスKPI体系ができあがる。あとは各KPIの目標値を設定し、継続的なモニタリングを通じて目標との乖離をチェックする。そして、必要に応じて改善策を打つ。この繰り返しによって、KPIマネジメントのPDCAサイクルが回っていく。
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ここから、実務的に運用可能なレベルへと微調整を加えていく。その際のポイントは以下の3つである。
(1)定性的な指標は可能な限り定量的な指標に置き換える
これはとりわけ「質」のKPIについて言えることだが、定性的な指標は読み解くのに時間がかかるし、良い−悪いの判断が難しい。定性的な指標はできるだけ定量的に測定可能なものに変換するのが望ましい。
上図では、すでに部分的にファインチューニングを行っているKPIがある。それは「商談の難易度評価(製品・サービス提供にあたり、自社のリソース・ノウハウで十分対応か否か)」、「商談獲得の見込み評価(受注の確度がどの程度あるか)」という指標である。営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。しかし、こうした定性的な情報はそのままでは非常に測定しにくい。そこで、商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる商談数をカウントすることで、定量的な測定を可能にしている。
営業会議で、「今週のA商談は○件、B商談は○件、C商談は○件…」といった進捗報告を行っている企業もあるだろう。その場合の件数が、まさに商談の質を定量的に測定した数値と言える。
(2)測定困難な指標は代替指標を考えるか、方法を変える
KPIはその数値を継続的にモニタリングすることができなければ意味がない。KPIの値を取得するだけで莫大な時間がかかるのであれば、改善策の検討が大幅に遅れてしまう。だから、KPIは測定が容易で、かつ繰り返し取得できるものにしなければならない。
例えば、上図にある「提案書の質」に関しては、営業担当者が顧客企業に「私が書いた提案書の内容はどうですか?満足していただけましたか?」と聞いて回るのはあまりにも常軌を逸した行動である。また、ある期間内に作成された全社員の提案書をマネジャーが評価することも非現実的である。
こういう場合は、サンプリング調査を行う。無作為に抽出した数十件程度の提案書の内容を社内で定めた基準に従って採点するというやり方である。サンプリングと社内基準が適切であれば、提案書の質に関する全社的な傾向を知ることができる。
(3)最終成果との結びつきが薄い指標は削り、KPIにメリハリをつける
プロセスKPIは最終成果に至るまでのプロセスをモニタリングするものであるから、最終成果をどのように位置づけるかによってKPIの優先順位が変わってくる。
とにかく売上拡大が最優先課題であるような場合は、「時間」や「コスト」に関するKPIはごっそり削ってしまうのも1つの手である。逆に、収益性を重視するのであれば「時間」や「コスト」は重要なKPIになるし、「値引率」や「値引になった商談の割合」も見過ごせない指標となる。
営業活動の効率性を重視するのであれば、「量」のウェイトを軽くする。前回の記事の中で、「営業活動はろ過装置のようなものであり、プロセスが進むに従って顧客・商談数が減っていく」と書いたが、効率的な営業とは、入口(=ターゲット顧客数)が多少狭くなったとしても、ほとんどろ過されずに出口から出てくる(=成約できる)状態を指す。この場合は、「量」の代わりに「質」や「次プロセスへの進行率」に重きを置くことが考えられる。
上記の3つのポイントに従って微調整を行えば、プロセスKPI体系ができあがる。あとは各KPIの目標値を設定し、継続的なモニタリングを通じて目標との乖離をチェックする。そして、必要に応じて改善策を打つ。この繰り返しによって、KPIマネジメントのPDCAサイクルが回っていく。