※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
Top > 組織 アーカイブ
次の3件>>
October 08, 2010

『個を活かす企業』は「酸い」と「甘い」が入り混じっている

拍手してくれたら嬉しいな⇒
クリストファー A. バートレット
ダイヤモンド社
2007-08-31
おすすめ平均:
組織論、戦略論を考える上で大きな示唆☆
単なるエンパワーメントではだめなことを教えてくれる良書
posted by Amazon360

 以前の記事で、社員の潜在的な能力を引き出し、個々の社員を活性化させるためには、逆説的ではあるが組織の制度やITなどの基盤を整備・強化することが重要だと書いた。

 逆説的だが、「個を活かす」ためには「よく整備されたシステムや制度」が必要(1)
 逆説的だが、「個を活かす」ためには「よく整備されたシステムや制度」が必要(2)

 本書には「個の活性化」と「組織の一体感の醸成」を両立させている企業の例が豊富に紹介されている。「個を活かす企業」の要件と事例を一覧にまとめてみた。

(※クリックで拡大表示)
個を活かす企業

 以前の記事では、個を活かす企業の要件として、
 (1)スキルを平準化・底上げする十分なトレーニング
 (2)改善・アイデアを奨励するオープンなコミュニケーションの場
 (3)目標と現実がオープンに見える仕組み(組織・個人ともに)
の3つを挙げたのだが、上図の要件を基にもう少し考え直してみると、
 (A)「経営資源(人材・モノ・資金・知識)」の円滑な流通を促す仕組み
 (B)経営資源の量・質に関する「情報」の円滑な流通を促す仕組み
 (C)(A)(B)の仕組みを機能させるために必要な規律・行動規範の確立と浸透
の3つに集約されるような気がする(ちなみに、(1)(2)の要件は(A)に、(3)の要件は(B)に包含される)。

 伝統的な組織では、組織の上層部が決定した経営目標を論理的に細分化してライン部門に割り当て、スタッフ部門が各ライン部門の目標達成に必要な経営資源を配分する、という流れになっていた。この仕組みは、出発点となる経営目標が合理的であり、かつ経営資源の最適配分ができるのは専門知識を有するスタッフ部門である、という2つの前提の上に成り立っている。

 しかし、市場や競合他社の変化を最も身近に感じているのは他ならぬ現場である。変化に対応し、変化を乗り越えるために何をなすべきか、そして新たにどのような経営資源を投入なければならないか、これらの問いには、時に現場の方が的確に答えることができる。先ほどの2つの前提が完全に崩壊したとまでは思わないが、2つの前提「だけ」に頼るのはリスクが大きくなりつつあると言える。

 ある部門が新しい現実に適応するべく、相応の能力を有する人材を定例の人事異動を待たずに他部門から異動させたり、別の部門で眠っている知的財産を活用したりすることもあるだろう。これは前述の(A)に該当する。本書には、資金の円滑な流通に関する事例は掲載されていなかったが、先日の記事「企業経営に市場原理を入れてみよう!でもマネジャーの仕事はどうなる?−『経営の未来』」では、各部門の予算の一部を、他部門のイノベーションのアイデアに自由に投資するというゲイリー・ハメルの構想を紹介した。

 なお、モノ=有形資産の自由な流通については、本書にもハメルの本にも出てきていないが、例えば他部門の製造ラインの一部を、新製品の実験的な生産のために自由に利用する、といったことがありうるかもしれない(有形資産の円滑な流通は、物理的な制約があるために、他の経営資源に比べるとなかなか難しいが…)。

 経営資源の柔軟な取引を実現するには、経営資源そのものに関する的確な情報が不可欠となる。これは前述の(B)に当たる。株式市場において、上場会社が証券取引法に従い財務情報などを公開するのと同じだ。

 人材であればその人の能力や経験に関する情報が、知的財産であれば技術の内容、新規性、想定される用途などに関する情報が自由に入手できることが条件となる。個を活かす企業が情報のオープン化に取り組むのはそのためだ。

 さらに、このような社内市場が適切に機能するには、大前提として「市場に対する信頼」が醸成されていなければならない。すなわち、社内市場はより最適な経営資源の組合せを追求するために存在するのであり、その目的に反する行為は批判の対象となることを、各社員の意識に植えつける必要がある。これが(C)の要件の意味するところである。

 取引に参加する各部門は、他部門が欲しがっている人材やノウハウを、正当な理由なしに自部門で囲い込むことは許されない。また、他部門の業績を悪化させることを意図して、他部門の優秀な人材を強引に引き抜くような行為も許されない。社内政治に走り市場の目的を歪めるマネジャーは、社内市場からの退出を求められるだろう。

 さらに、取引の対象となる社員(この表現はやや語弊があるが…)の立場からすると、常に自分の能力を高めるよう努力し、自分の能力が最も発揮される場所を探すことが求められる。人事部がキャリアパスを用意し、必要なトレーニングを全て用意してくれると期待することはできない。人事部に過度な期待を寄せ、企業に依存しているだけの社員は、先ほどのマネジャーと同じように、やはり市場から淘汰されることだろう。
タグ:
February 12, 2006

「マネジメントが上手くいっていない」という不満から議論を広げる

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 企業をはじめとする組織で仕事をする人からしばしば聞かれる愚痴が「マネジメントが上手くいっていない」というものです。

 ところが、よく考えてみるとこの台詞は奇妙です。マネジメントは法学や医学といった専門分野と同じように、体系化された実学の一種です。しかし、「法律が上手くいっていない」とか「医療が上手くいっていない」とは普通言いません。法律や医療が対象とする範囲が広すぎて、これでは何が言いたいのか解らないのです。これに対してマネジメントの場合は、「マネジメントが上手くいっていない」と言っても会話が成立してしまうという奇妙な現象が起こります。

 法学には大きく基礎法学と法解釈学があります。そして、基礎法学には法哲学、法社会学、比較法学、法制史、犯罪学などの個別分野が、法解釈学には公法、民事法、刑事法、国際法などの個別分野があります(法解釈学については、法律の数だけ個別分野が存在するとも言える)。医学には基礎医学(人体の構造・機能、疾患とその原因などに関する領域)、社会医学(社会的な環境と健康に関する領域領域)、臨床医学(診断や治療などに関する応用科学)などの分野があります。

 マネジメントにも、戦略、組織、マーケティング、イノベーション、財務会計、人材マネジメント、情報システムなど様々な分野が存在しています。(以前の記事「マネジメントとはそもそも何か?」で、私なりにマネジメントの各分野を整理しています。)「マネジメントが上手くいっていない」と言う場合、一体何を指して批判しているのかを明らかにすべきです。もっとも、所詮愚痴なのだから言いたいように言わせておけばいいという冷たい考え方もできますが、愚痴から建設的な議論へと発展させることは無意味ではありません。

 もし周りに「マネジメントが上手くいっていない」とこぼす人がいたら、次の質問を投げかけてみるといいかもしれません。

 「あなたが言う『マネジメント』とは一体何か?」
 「それ(上の質問の答え)が上手くいっていないのはなぜか、原因を掘り下げて考えるとどうなるか?(さながらトヨタの「WHY×5(「なぜ」を5回繰り返す)」のように)」
June 15, 2005

「組織のために働くのではなく、知識のために働く」という誓い

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 私は思いました。

 「組織のために仕事をするのは大いに結構だが、今後は組織に属することで自らを埋没させてしまうことだけは絶対にやめよう」

 と。