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April 03, 2006

【ミニ書評】レスター・サロー著『知識資本主義』

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知識資本主義知識資本主義
レスター・C・サロー 三上 義一

ダイヤモンド社 2004-09-10

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 レスター・C・サロー著、三上義一訳。タイトルは『知識資本主義』となっているが、知識資本主義に直接言及しているのは、本書の後半部において知的財産保護の重要性を主張している部分と、CKO(最高知識責任者)なる新しいポストの創設を提案している部分だけである。大半は望ましいグローバル経済をどのように構築すべきかという議論に費やされている(ちなみに原題はFortune Favors The Bold: What We Must do to Build A New and Lasting Global Prosperity)。とりわけ、やがて訪れるであろうドル暴落に他国はどのように備えるべきか、という問題について多くのページを割いている。

 日本はアメリカ依存型の経済から脱却し、ヨーロッパは閉鎖的な地域主義に拘泥することをやめて、日米欧が連携してグローバリゼーションを主導すべきだというメッセージは前書『資本主義の未来』から引き継がれているものである。

【ミニ書評】レスター・サロー著『資本主義の未来』

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資本主義の未来資本主義の未来
レスター・C. サロー Lester C. Thurow

阪急コミュニケーションズ 1996-10

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 レスター・C・サロー著、山岡 洋一・仁平 和夫 訳。現代の資本主義に大きな影響を与えている変化としてサローは(1)共産主義の崩壊、(2)人間主体の頭脳産業へのシフト、(3)人口の増加、移民の増加、高齢化などによる人口構造の変容、(4)グローバル経済の到来、(5)主権国家の不在・覇権なき世界、という5つの要因を挙げている(ドラッカーの『見えざる革命』『新しい現実』の内容と共通する部分も多いことに気づかされる)。

 資本主義は競争のイデオロギーであり、資本主義自体も社会主義や共産主義と戦いながら今日まで生きながらえてきた。だが、その社会主義と共産主義がこの世から去った今、競争相手なき環境で資本主義は一体どうなってしまうのか、という問題意識がサローにはある。しかし、かといって資本主義以外に選択肢はなく、現在の資本主義をよい方向に持っていくしか方法はないと断言する。とりわけ現代の資本主義は、グローバル経済に適応しうるだけの知識や巨大なインフラに対するますます長期的な投資と、知識労働者が働くためのチームワークを必要としており、個人主義、短期的な利益拡大に走りがちな資本主義が最も苦手とすることを行わなければならない。これが現代経済の直面しているジレンマである。
March 27, 2006

レスター・C・サローの名言

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 「賃金格差の広がりに対する正しい対応策は、技能格差を縮小することである。経済格差の広がりは、グローバリゼーション、資本主義、そして知識資本主義によるという議論は正しくない。正しい対応策とは教育と技能水準を上げることである。これはつまり全員が生活の糧となるような技能を身につけ、生涯にわたって新しい技能を収得していくことに前向きに努力していくことである。十八や二十二歳までに収得した技能で、生涯生活できるということは稀となるであろう。『生涯教育の実施』は現実のものであり、よく話題にのぼるが、さして実行されない単なる標語ではないのである。」
(レスター・C・サロー著、三上義一訳『知識資本主義』ダイヤモンド社、2004年)
 レスター・C・サロー
 1938年生まれ。68年よりマサチューセッツ工科大学経済・経営学教授。87年から93年にかけて同大スローン・スクール経営大学院長を務めた。経済学の世界的権威であり、グローバリズムに対して肯定的な見方をしている。

 日本でも格差社会が話題となっているが、最近の賃金格差拡大は様々な要因が絡み合って引き起こされているので、因果関係を特定するのが容易ではない。引用文のように、グローバリゼーション、資本主義、そして知識資本主義のせいではない、と言い切れるかどうかも解らない。

 ただ、これからの知識資本主義の時代は、知識(ここでいう知識は、学校教育で教えられる知識のことではない。顧客に対して価値を提供することができる源泉となる知識のことである)を持たない人間にとっては厳しい時代になることは確実である。実は、ドラッカーも20年ほど前から似たような指摘をしている。「生涯教育」は確かに必要だが、教育制度が整備されるのにはまだ時間がかかる。それまでは各々が「生涯学習」を自発的に行うしかない。このことに気づいている者とそうでない者との間で、今後さらに賃金格差が拡大する可能性が高い。

知識資本主義知識資本主義
レスター・C・サロー 三上 義一

ダイヤモンド社 2004-09-10

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