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February 03, 2012

《補足》「ワーストプラクティスのベンチマーキング」という考え方―『日経情報ストラテジー(2012年3月号)』

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日経 情報ストラテジー 2012年 03月号 [雑誌]日経 情報ストラテジー 2012年 03月号 [雑誌]
日経情報ストラテジー

日経BP社 2012-01-28

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 昨日の記事「再現性の低い失敗の分析に意味はあるか?という問い―『日経情報ストラテジー(2012年3月号)』」が、個人的にあまりにイマイチだったので、結局何が言いたかったのかをもう一度整理してみた。要するに、東京大学・中尾教授のコラムにあった「人のふり見て我がふり直せ」ではないけども、他社の失敗事例を真剣に検討して自社の仕組みを改善している企業が一体どのくらいあるのか?ということが言いたかったわけ。失敗の再現性があろうとなかろうと、あるいは自社の事業内容とは遠い企業や団体・組織の事例であっても、冷静に分析すれば何らかの教訓は必ず得られる(「歴史から学ぶ」というのは、まさにその一例)。

 多くの企業は、ベストプラクティスのベンチマーキングには力を入れる。日本企業は特に他社事例に敏感なようで(例えば、取引先から新しい技術を採用した製品やサービスを提案されると、「競合が導入しているなら、うちも入れよう」という理由で導入が決まるケースが多いと聞く)、競合はもちろんのこと、異業種も含めて成功要因を深く探ろうとする。ところが、「ワーストプラクティス(=失敗)」のベンチマーキングとなると、どうしてもトーンが下がる気がする。これには2つの要因があるだろう。

 1つは物理的な要因であり、失敗事例はなかなか表に出ないという情報面の制約がある(それでも最近は、失敗事例を集めた書籍が幾ばくか出版されるようになったと思う)。もう1つは、こちらの方が重要だと思うのだが、人間には基本的に楽観志向が埋め込まれているという心理的な要因である。心理学の研究が示すところによると、我々は「自分にはいいことが起こるはずだ」、あるいは「自分は他人のように失敗するはずがない」と考える性向があるという。前者を「非現実的な楽観主義(unrealistic optimism)」、後者を「不死身の錯覚(illusion of personal invulnerability)」と呼ぶ。

 「非現実的な楽観主義」にとらわれた人は、幸せな結婚、出世、長生きなど、よいことが自分に起こる可能性をしばしば過大評価する。また、「不死身の錯誤」に陥ると、人生には災厄のリスクが存在することを客観的に承知しているにもかかわらず、わが身には降りかかってこないと考えてしまう(※)。

 こうした心理的傾向があるために、ベストプラクティスに関しては、「あの会社が成功したのなら、わが社にだってできるに違いない」と確信して必死に勉強するものの、ワーストプラクティスについては、「うちの会社はあそこのように失敗するはずがない」、「わが社だけは危険を回避できる」と考えて、真剣にとり合わないと推測される。

 本号によると、キヤノン電子には他の事業部で発生した失敗事例を分析・共有する「他部門勉強会」が存在するという。だが、他社の失敗事例を分析・共有する仕組みを備えている企業というのは、(私の狭い見聞の範囲内での話だが)今まで聞いたことがない。将来的に今の自分の個人事業を法人化したら、ワーストプラクティスをベンチマーキングする仕組みを検討してみようかなぁ?と思った。


(※)ロデリック・M・クラマー「「過度な信頼」に関する7つのルール 信頼の科学」(『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2009年9月号)

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2009年 09月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2009年 09月号 [雑誌]

ダイヤモンド社 2009-08-10

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January 19, 2012

怒りを上手に表現できないと人生で割を食う―『どうしても「許せない」人』

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どうしても「許せない」人 (ベスト新書)どうしても「許せない」人 (ベスト新書)
加藤 諦三

ベストセラーズ 2008-01-09

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 決して読みやすい本ではなかったのだが、それなりに考えさせられるところがあった本。「どうしても許せない人たち」に苦しんでいる人は、どうすればその苦しみから脱することができるか?という内容である。

 「『どうしても許せない人たち』に苦しんでいる人」というのは、本書を読むと2タイプに大別できるようだ。1つ目のタイプは、蓄積した怒りが一般化・誇張されてしまった人である。このタイプの人たちは、怒りを表現することは少ないものの、陰では「私は『いつも』酷い目に遭っている」、「あの人のことは『絶対に』許せない」、「『私だけ』が惨めな思いをしている」と繰り返す癖があり、過去の出来事をいつまでも引きずる傾向があるという。

 もう1つのタイプは、怒りを無意識のうちに抑制してしまっている人であり、相手とトラブルになっても、「悪いのは全部自分のせい」、「自分は相手よりも劣っているのだから、相手には従うべきだ」と考えてしまう。確かに、何か問題が起きた際に、全てを相手の責任にせず、自分にも非があるのではないか?と反省することは、対人関係を円滑にする1つのコツではある。しかし、世の中にはどうしようもなく非道で下劣な人間も存在するのであって、そういう人間と対峙しても自分のせいだと思うのは行き過ぎだと著者は警告している(※)。

 2つのタイプは、口癖だけを見れば両極端なのだが、怒りを過剰に抑え込んでいるという点では同じである。そして、こういうタイプの人は概して「人生で割を食う」。なぜなら、「他人を意のままに利用しようとする人たち」にとって、彼らは格好の”カモ”だからだ。そういうズルい人たちから見ると、どちらのタイプも怒りを表立って表さないので、多少おかしな要求や無茶な仕事を押しつけても大丈夫だと勘違いしてしまう。そして、予想通り彼らからの反発がなければ、ズルい人たちはまた同じように滅茶苦茶な要求をつきつけるのである(往々にして、その要求はエスカレートしていく)。

 「どうしても許せない人たち」に苦しんで「割を食っている人」というのは結構いるもので、私もそういう人たちを少なからず見てきた。私が見た中で一番可哀そうだった人は、

 ・ある会社で、社長の肝入りで新規事業の子会社を設立することになったのだが、最初の担当者が途中で仕事を放り投げてしまい、その人が知らぬ間に後釜に据えられてしまった。
 ・新会社の製品は海外の技術を利用しており、その人が英語に長けているという理由だけで、海外との交渉やマニュアルの日本語化などを一人で全部やらされた。
 ・新会社の社長に就任した人が極端に時間にルーズで、ミーティングのドタキャンは当たり前。また、ミーティングが2時間、3時間遅れて始まることも日常茶飯事(一番酷かったのは、社長がキャバ嬢へのプレゼントを買っていてミーティングに遅刻したという話)。しかも、仕事とは無関係な社長のプライベート話でミーティングが長引く。
 ・新規顧客獲得のためのセミナーで、新会社の社長が「製品説明は全部オレがするから」と言っていたのに、いざ説明を始めたら途中から説明できなくなり、突然その人にバトンタッチした(しかも、無茶振りされた箇所は、まだ十分に開発が進んでいない機能であった)。
 ・そんな社長なので当然のことながら仕事が取れるはずもなく、親会社の社長からは「高い給料に見合った働きをしていない」と酷評され1年足らずで社長が交代。会社も売却されることになり、諸々のゴタゴタに伴ってその人も転職を余儀なくされた。

 という人である。その人からあまりにたくさんの話を聞いたため、全部のエピソードはさすがに覚えていない(汗)。その人からは冗談半分で「うちの会社に来て仕事を手伝ってよ〜」とよく言われたけれど、「いやいや、そんな話を聞かされた後で手伝おうと思う人なんかいないよ・・・」と苦笑いで返していた記憶がある。

 「どうしても許せない人たち」に振り回される2タイプの人たちに共通しているのは、「怒りを上手に表現できない」ことだと思う。1つ目のタイプの人は、最初に何か些細な問題が発生した時、自分の怒りを相手にちゃんと伝えればよかったのに、それができなかった。しかも、問題発生から時間が経過するほど、自分の怒りを相手に訴えることが困難になるものである。

 すると、「あの時ちゃんと言っておけばよかった」という後悔だけが残る。次に問題が起きても、また怒りを表現できず後悔する⇒さらに問題が起きてもやっぱり我慢してしまう・・・この繰り返しで雪だるま式に怒りが蓄積されていき、ついには「あの人は私に対して『いつも』酷いことをする」といった具合に、怒りが一般化されるのである(稀に溜めていた怒りが爆発することもあるが、怒りに含まれる過去の出来事が多すぎて、合理的に説明できないことが多い)。

 もう一方のタイプは、怒りを自分で意識していない分だけより深刻である。相手に酷いことをされると、怒りの感情よりも先に「あの人に嫌われたくない」、「あの人に見捨てられたら自分の居場所がなくなる」という自己防衛の心理が働く。だが、あくまで怒りを意識していないだけであって、潜在的には怒っているのである。「相手に嫌われたくない」という気持ちが湧き上がった時は、実は怒りのサインだと考えた方がよい。

 そのサインを見過ごしていい人を演じ続ければ、表面的には人間関係がスムーズに進むかもしれない。しかしその反面、いつしか身体の方が悲鳴を上げてしまい、食欲不振や吐き気、不眠などの症状に陥る。また心理的にも、うつ病までは行かないが、気分が優れない、何となくやる気が出ない、無気力であるといった状態になるという。

 人生で割を食わないようにするためには、上手な怒りの表し方を身につけた方がよさそうだ。1つ目のタイプの人であれば、問題が大きくならないうちに、そして時間が経たないうちに勇気を出して怒りを訴えてみる。2つ目のタイプの人は、「あの人に嫌われたくない」という潜在的な怒りのサインを読み取って、「自分に非があるのではないか?」という発想を敢えてひっくり返し、「実は相手にも非があるのではないか?」と考えてみる。

 もちろん、自分より年上や目上の人、自分と大事な関係にある人に対して怒りを表現することは容易ではない。自分が怒りを訴えたことで、本当に関係が壊れてしまう危険性もある(閑職に追いやられる、部課内で孤立する、友人を失う、離婚させられる、など)。とはいえ、こちらから少し怒りを伝えただけで簡単に関係が壊れてしまうようであれば、「その人は本当の意味で大事な人ではなかったのだ」と割り切ることも必要なのかもしれない。その方が、怒りを訴えないまま誰にも解ってもらえない苦しい思いを続けるよりも、精神的にはずっとマシな生活を送れる気がするのである。

 何でこんな記事を書いたかというと、恥ずかしながら私自身も怒りの表現が上手ではないという自覚症状があるからだ。「相手に遠慮せずに、言うべきことは言う」というスタンスは、ある意味、大人としての美徳の1つと言っても過言ではない気がする。


(※)本書には、もう1つのタイプとして、ナルシストのような神経症の人が挙げられている。神経症の人は、自分の要求レベルが高すぎるために、相手がその要求に応えてくれないと怒りをあらわにする。ただこのタイプは、本文で述べた2つのタイプとは異なり、怒りを上手に表現できないことに問題があるのではなく、自分の期待水準や欲求が世間一般の基準と照らし合わせても過剰である点に問題があるので、治療法が異なる。
July 14, 2011

M・セリグマンによる「自分の強み診断(VIA-IS)」(無料)

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 DHBR2011年7月号で取り上げられていたもう1つの無料診断は、ポジティブ心理学の権威であるM・セリグマンによるもので、「VIA・強みに関する調査票(VIA-IS)」という名前がついている。この診断では、好奇心、創造性、粘り強さ、勇敢さ、誠実さ、公正さ、リーダーシップ、自制心など24のポジティブな性格特性を測定することができる。

 ・ポジティブ・サイコロジー|ペンシルバニア大学公式サイト
 http://www.authentichappiness.sas.upenn.edu/Default.aspx

 ページの右上で日本語を選択できるから、昨日のIPIPテストよりも気楽に受診できる。ただし、診断にあたってはユーザ登録が必要。それから、設問は全部で240問と非常に多いため、1時間前後の時間を確保してから受診されることをお勧めします。

 私の5つの強みは以下のようになった。

あなたの最高の強み=向学心
 あなたは、学校でも、あるいは独学でも、新しいことを学ぶのが大好きです。あなたは学校や読書や博物館など、いつでもどこでも学ぶ機会を得るのが大好きな人です。

あなたの第2位の強み=愛情(愛し愛される力)
 あなたは他人との親密性、特に互いに共感し合ったり、思いやったりする関係に価値を見出す人です。あなたが最も親しみを感じる人々と、あなたに対して最も親しみを感じる人々とは一致しており、同じ人々です。

あなたの第3位の強み=柔軟性 [判断力、批判的思考力]
 あらゆる角度から物事を考え抜いて検討することは、あなたがどういう人間かということの重要な要素となっています。あなたは決して安易に結論に飛びつくことなく、決断する際にはきちんとした証拠にのみ基づいてそうします。あなたは自分の考えを柔軟に変えることができる人です。

あなたの第4位の強み=誠実さ [真情、正直さ]
 あなたは正直な人であり、真実を語るだけではなく、純粋に、真心をもって人生を生きています。あなたは地に足が着いている人で、偽りのない人間、つまり「本物」です。

あなたの第5位の強み=大局観 [知恵]
 あなたは自分のことを賢いと思っていないかもしれませんが、あなたの友人たちはあなたのことを賢い人だと思っています。あなたの友人たちはあなたの物の見方に一目置いており、あなたに助言を求めます。あなたは他人にとっても、また自分にとっても納得のいく世界観を持っている人です。

 あーそうか、第2位には「愛情(愛し愛される力)」が来るのか。これは予想外だった。残りの4つは概ね納得感がある。

 ところで、診断を受けていて、「リーダーとしてメンバーを公平に扱うか?」、「メンバーには平等に発言権やチャンスを与えるか?」といった類の設問がよく目についた。自分のことを振り返ってみると、プロジェクトなどでは、メンバーの肩書きや経験にこだわらずに、わけ隔てなく仕事を割り当てたり、会議での発言を求めたりするようにしている。

 ただし、自分が期待している水準の成果をいつまでも上げられないメンバーは、あっさりと見捨ててしまっているような気がする。言い換えれば、機会の平等には気をつけているけれども、見切りが早いといったところだろうか。こういう性格は、プロジェクトをすばやく成功に導くためには有効だが、中長期的なスパンでメンバーの長所を発見することができず、メンバーのポテンシャルを奪ってしまうリスクがあると言えそうだ。ふーむ、この点には気をつけよう。

 ちなみに、ポジティブ・サイコロジーのページでは、VIA-IS以外にも「全体的な幸福度に関する調査票(AHI)」、「ポジティブ感情・ネガティブ感情評定尺度(PANAS)」、「仕事と生活に関する調査票」など、様々な診断を受診することができる。