※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
Top > 価値観 アーカイブ
<<前の3件
April 14, 2006

制度の導入⇒行動の変化⇒価値観の変化⇒新しい企業文化の定着

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 「考え方・価値観」と「行動パターン」のどちらがより変えやすいかというと、私は「行動パターン」の方だと考えます。他人の考え方を直接変えることがいかに難しいかは誰もが思い知らされていることです。もし本気で社員の考え方を直接変えようとするならば、それはほとんどマインドコントロールに近い手法をとらざるを得ないでしょう。それが正攻法であるとは私には思えません。

 自分の人生の中でそれまでの考え方や価値観が変わった時期を思い返してみると、必ず行動の変化が重要なウエイトを占めているはずです。変化の初期においては、考え方の変化が行動の変化に大抵先行します。誰かにそうするべきだと言われてやってみた、あるいは、こうした方がよりいい結果が出そうだと思ってそうしてみた、という具合に、考え方を改めてから人は行動を起こします。しかし、変化した考え方や価値観を最終的に強固なものにするのは、考え方が変化した後に繰り返される行動パターンに他なりません。頭の中でいくら考え続けたところで価値観が固まるわけではありません。ある行動を継続的にとり、それが従来の行動よりも効果的であることが立証されるに従って、新たな価値観が結晶化されていくのです。

 私は数年前から読書を重視する価値観を持っていますが、誰かにそれを徹底的に教え込まれたわけではありません。本を何冊か読むうちに書物の有用性に気づいたことが、読書を重視する価値観を強化していきました。企業においても同じで、企業文化を変えようとするならば、構成員の行動パターンを変えることに注力するべきです。

 ここで、社員の行動を半ば強制的に変えるために、新たな制度、特に人事制度が導入されたり、新たな業務上のルールが制定されたりすることがよくあります。「ハイパフォーマンス人材を増やすために、成果主義型の報酬制度を導入する」などが典型的な例です。制度やルールは、行動パターンの変化を促す一定の効果があるため、全くないよりはあった方がいいのは確かです。とはいうものの、制度やルールばかりに頼りすぎると、いつしかそれらを作り、運用することが目的化して管理的な業務が増え、肝心の行動の変化が起こらなくなることがあります。

 行動パターンは、組織の成果の向上に直接つながるように変化させなければなりません。そして、変化をもたらすのは、成員自身でなければなりません。もし、顧客の視点に立った情報システムを構築するエンジニアを増やしたいならば、上司が部下のエンジニアをできるだけ顧客との会議の場に参加させ、顧客とのコミュニケーションの機会を設けるべきです。それをするのは制度でも業務ルールでもなく、他でもない上司です。

 「企業文化を変えるためにはどうすればよいか」という問いに私が答えるならば、こうなります。「企業文化を直接変えようとしない方がいい。従来の行動を、より望ましい成果に直結するような行動に変えることを目指すべきである」


《参考》 株式会社スコラ・コンサルトのHPにある「風土改革を知る」のコーナーを読んでも、価値観(HPではパラダイムという言葉が使われている)の変化よりも、行動の変化をもたらすことに焦点があるように思えます。
April 13, 2006

企業文化の変革とは、組織に染みついた価値観や行動パターンを変えること

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 先日、「企業文化を変えるためにはどうしたらいいですか?」と聞かれて返答に困ってしまいました。答えを用意していなかったわけではないのですが、その答えを直接言うのがちょっと憚られたのです。

 私は私なりに答えを持っています。私の答えはこうです。「企業文化を変えようとしない方がいい」決して、企業文化は絶対に変えられないと言いたいのではありません。企業文化を「直接的に」変えようとしない方がいいということです。

 これまで約1年に渡ってマネジメントに関する記事を書いてきましたが、実は企業文化だけは意図的に取り上げてきませんでした。それは、企業文化が非常に広い意味を持つ概念であるからです。「企業文化」という言葉には、どこか漠然としたイメージが付きまとって離れません。「企業文化を変える」と言っても、とらえどころのないものを変えようとするのは困難です。変えるべき対象は、もう少し明確にしなければなりません。

 《参考》のところで、企業文化の主な概念を列挙してみました。様々な定義のバリエーションがありますが、大まかにまとめるならば、「意思決定基準」と「行動パターン」に着目したものが大半であると言えます。列挙した概念の中には、エドガー・シャインのように「意思決定基準」しか定義に含めないものもあります。しかし、「意思決定基準」と「行動パターン」は完全に切り離されているわけでも、単純な因果関係にあるわけでもなく、相互に影響を及ぼしあっているものであると考えられます。ゆえに、私は両方とも企業文化の概念に含めるのが適切であると思っています。

 意思決定基準は平たく言えば「何を重要とみなし、何を重要とみなさないかということに関わる考え方・価値観」のことなので、企業文化の変革は「考え方・価値観」と「行動パターン」をどのように変えるかという問題に行き着きます。


《参考》 飯田史彦氏によると企業文化には次の9つの概念があるといいます。
第一概念
 構成員が共有しているすべての潜在的意思決定基準(シャイン他)
第二概念
 構成員が共有しているすべての潜在的および顕在的な意思決定基準(デーヴィス、加護野・伊丹他)
第三概念
 当該企業に特有で優れているいくつかの意思決定基準(ピーターズ&ウォーターマン)
第四概念
 構成員が共有しているすべての意思決定基準および行動パターン(ジャックス、河野、野中他)
第五概念
 構成員が共有している意思決定基準や行動パターン、およびそれらを構成員に浸透させる媒体や手段(社是社訓、シンボル、逸話、儀式的行事など)(オオウチ他)
第六概念
 当該企業に特有で優れているいくつかの意思決定基準や行動パターン(梅澤他)
第七概念
 各企業の構成員が共有している意思決定基準や行動パターンおよびそれらによって具象化された創造物(組織、戦略、制度など)(境他)
第八概念
 あらゆる企業の構成員が共有すべき普遍的かつ絶対的な意思決定基準(植木、梅澤他)
第九概念
 企業による文化振興活動や社会貢献活動(池上他)
 詳しくはこちらを参照。書籍の中には、図などを用いたもっと詳細かつ体系的な解説があります。

企業文化論を学ぶ人のために企業文化論を学ぶ人のために
梅沢 正

世界思想社 1995-04

Amazonで詳しく見る by G-Tools
March 09, 2006

多様性(ダイバーシティ)のマネジメント(4)−「価値観の多様性」を活かすことが真髄

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 ダイバーシティ・マネジメントへの取り組みが本格化したのは90年代に入ってからであり、今のところ性別や人種などといった「表層的なダイバーシティ」に関するマネジメントが大半となっています。おそらく、もう何年かすれば「深層的なダイバーシティ」のマネジメントも明らかになってくるのではないでしょうか。

 「深層的なダイバーシティ」の中で、おそらく最も厄介なのが「価値」だと思います。そもそも「価値」とは何なのかという議論も必要なのですが、始めると泥沼にはまるので(哲学や社会学の文献をひっくり返して調べる必要が出てくる)、簡単に「何を重要と捉え、何を重要でないと捉えるか、ということに関する個人の考え方」としておきます。

 組織においては様々な人の様々な価値観を認め合うべきだ、という教訓は珍しいものではありません。有名なホンダの「わいがや」は、5〜6人で一つのテーマについて議論をし、様々な意見を出し合いながら、互いの考えを理解するとともに、新たな発想を得るというものです。

 しかし、「多様な価値を認め合う」という言い回しには注意しなければならないことがあります。それは、「価値相対主義」に陥ってはならないということです。価値相対主義とは、あらゆる価値は相対的なものであり、それらの存在をすべて肯定するという政治学の考え方ですが、これには重大な欠陥があります。すなわち、価値相対主義は、価値相対主義そのものをを否定する価値、具体的には「あらゆる価値を認めない」という価値の存在も認めてしまうという矛盾を抱えているのです。

 全ての価値を認めないというのは極端な例だとしても、現実的に考えれば、どんな価値でも認めるというのは妄想に過ぎないことは容易に想像できます。組織は特定の目的に向かって進んでいる以上、組織の構成員の間で共通する価値が存在しなければなりません。ビジョンや理念はそういった共通価値の例です。

 価値の多様性を考えるに当たっては、次の問いに答える必要があります。

 「組織として絶対に譲ることのできない価値は何か」
 「組織として絶対に譲れない価値を、どのようにして組織の成員に浸透させるのか」
 「組織として絶対に譲れない価値に反する価値を有する個人が存在する場合、どうするのか。その個人の価値が組織にとって有害であるのか、それとも組織の価値が時代遅れになっている、あるいは倫理に反しているのかをどのようにして判断するのか」
 「価値の対立のうち、有益なものはどのようなタイプで、無益なものはどのようなタイプか」
 「対立する価値から有益な結論を導くためには、どのようなプロセスを経ればよいのか」