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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
January 10, 2011
年明けということで、改めて自分の価値観を棚卸ししてみた
拍手してくれたら嬉しいな⇒
リーダーシップ開発における「自分自身の価値観」の重要性については昨年も何度かブログで取り上げたが、「そういえば、私自身の仕事における価値観をちゃんとブログで書いたことがないなぁ?」と思い、改めて整理してみることにした。カテゴリ別に「Do's(すべきこと)」と「Don'ts(すべきでないこと)」を並べている。組織文化の研究では、「価値観(暗黙の前提)」と「行動規範(価値観を体現する言動)」を厳密に区別するようだが、今回はそこまでの正確さは追求せずに、思いつくままに書いてみた。
顧客ターゲティングの考え方(取引をしたい顧客)
《Do's》
・「太く長く続く顧客(=我々の主たる顧客は人事部・人材開発部)」を作る。
(⇒顧客企業を深く理解し、顧客企業のビジネスに合ったコンテンツを提供する上ではこれが重要)
・研修だけでは本当はダメだと内心では思っている問題意識の強い顧客。
・事業戦略と人材育成のリンクを真剣に考えている顧客。
・研修実施にあたって、現場(=受講者の直属のマネジャーなど)を積極的に巻き込みたいと考えている顧客
・現場部門とのリレーションが深い顧客。
(⇒そのような顧客は、研修内容を現場で実践してもらうために現場を巻き込んでくれるし、巻き込みに成功すると、受講者が研修内容を現場で実施するのをマネジャーがサポートしてくれる)
《Dont's》
・研修の運営方法ばかりにいちいちこだわる顧客とは付き合わない。
(私は別に、研修オペレーションのプロフェッショナルになりたいわけではない)
・「とりあえず上層部から研修をやれと言われたから」とか、「予算が余っているから」という理由で研修を実施しようとする顧客とは付き合わない。
(⇒そういう顧客に対して研修をしても、受講者にとっては有益な研修にならないことが多い)
顧客への提供価値
《Do's》
・顧客企業の事業戦略と密接にリンクした研修コンテンツを提供する。
・場合によっては、顧客企業の人材戦略の構築から支援をする。
(⇒その方が、内容の濃い研修ができあがるし、現場で研修を活用してもらえる可能性が高まる)
・現場で使える実践的な知を提供する。
・一方的な知の提供だけではなく、顧客の事業発展に貢献するナレッジを顧客とともに協創する。
(⇒講師が顧客より偉いわけでは決してない。顧客の知と我々の知を融合させると新しい知が生まれる)
《Dont's》
・書籍で学習できるレベルの内容は絶対に提供しない。
(⇒それなら、本を社員の人数分買うことをお勧めする。その方が研修を実施するより安上がりだから)
・新人研修など、汎用スキル系は重視しない。
(⇒競合が多すぎるので、差別化が難しいし、価格競争になりやすい)
製品開発の進め方
《Do's》
・「自分がほしい」、「こういう研修を受けたい」、「自分が社長だったら自社の社員に学習させたい」と思えるサービスを開発する。
(⇒自分がほしいと思わないものを顧客に提供するのはほとんど詐欺)
・講義の時間を極力減らし、演習の時間を長く確保する。
(⇒研修の目的は、講師の話を聞いてもらうことではなく、受講者自身に考えてもらうことである)
・投資回収点を意識した開発・販売スケジュールを組む。
(⇒昔、これをおろそかにして痛い目に遇ったことがあるので)
《Dont's》
・顧客の声を聞きすぎない。顧客の言いなりにはならない。
(⇒顧客が全ての解を知っているのならば、我々の存在意義はどこにもない)
・「自分がやりたいこと」に固執しすぎない。
(⇒「自分がほしい」と思うサービスに偏りすぎないよう、ある程度のブレーキは必要)
プロモーションの展開
《Do's》
・「誠実なプロフェッショナルであること」を示す情報を発信する。
・研修は目に見えないサービスであるがゆえに、サービスの内容はできるだけ広く公開し、顧客の研修導入の意思決定をサポートする。
・プロモーションに対する投資回収点を明確にし、回収具合をモニタリングする。
(⇒「そんなの当たり前だろう?」と思われるかもしれないが、意外と忘れやすいんだな…)
《Dont's》
・カウントの仕方によっては確かに事実だと言える実績であっても、一見すると極端に思える数的実績は表示しない。
(⇒一気に胡散臭くなるため)
・雑誌広告など、成果を測定しにくい広告投資は控える。
競合他社に対する姿勢
《Do's》
・競合他社に対しても、できるだけ自社サービスの内容をオープンにする。
(⇒研修業界は何かと閉鎖的なので、いつまでもコンテンツの質が安定しないと個人的には思っている。過去の記事「研修業界はまだまだ未熟な業界かもしれない」も参照)
《Dont's》
・競合他社のベンチマーキングはほどほどにする。
(⇒最低限のクオリティをクリアするためのベンチマークはするが、やりすぎると差別化できなくなる)
・競合他社との価格競争はしない。
(⇒安くしなければ売れないような自社サービスの方に問題がある)
仕事の進め方
《Do's》
・どのタスクでも、「目標作業時間」を常に意識する。
(⇒最近のビジネスパーソンの多くがそうであるように、我々の仕事も即興的なものが多く、1つとして同じ仕事はない。しかし、ある程度のカテゴライズは可能なので、カテゴリ別に目標作業時間を設定することで、仕事の生産性を意識することができる)
・品質を落とさずに目標作業時間を短縮できるような改善策を常に検討する。
・時には1人きりになる時間を確保する。
(顧客全体や、サービス体系全体のことを冷静になって考えるには、1人になることが必要)
・仕事が速く終わったら、自己研鑽やネットワーキングに時間を使う。
(⇒将来に役立つ知や人脈を獲得しておかなければ、ビジネスが長続きしない)
《Dont's》
・スケジュールをぎちぎちに組まない。
(⇒バッファがないと、精神的にも肉体的にもゆとりがなくなる。ゆとりがなくなると、結局はクオリティに悪影響を及ぼす)
・半期ごとの目標は片手に収まる程度に抑える。
(⇒たくさんの目標を一度に追いかけても、達成できたためしがない)
・だらだらと残業しない。
(⇒必要以上に会社にいても、いいことなんて何一つない)
意思決定(会議の進め方)
《Do's》
・会議では必ず目的と議題、論点を明示する。
(⇒特に社内会議の場合は、気が緩んでついつい忘れがち)
・会議での決定事項に関わりのある利害関係者は、会議のメンバーに忘れずに入れる。
(⇒彼らに対して、会議終了後に決定事項を説明しようとしてはいけない。たいてい、「何で勝手にそんなことを決めたんだ?」となって、話をひっくり返される)
・建設的な対立が見られない会議は失敗とみなす。
・確実に実施される決定事項については、会議の参加者以外にも迅速に公開する。
・リアルコミュニケーションによる意思決定を重視する。
《Dont's》
・下準備のない会議はやらない。
(⇒議題や論点、討議用資料がない会議で、何かいいことが決まったためしがない)
・感情的な対立は避ける。
・社内にあらぬ憶測や噂が流れないよう、秘密会議をしない。
・不確実性を含む決定事項は性急にオープンにしない。
(⇒事業計画や予算など、将来に関する事項でまだ正式に決まっていないものは、議論の経過に関する情報であっても性急にオープンにしない。なぜならば、聞く人によって解釈の違いが生まれ、あらぬ誤解が発生するリスクがあるから)
・メールでは議論しない。
(⇒読むのがうっとうしいし、言外の意味をつかみ損ねることが多い)
チームワーク
《Do's》
・それぞれのメンバーのパフォーマンスを見える化する。
(⇒ピア・プレッシャーを生み出すと同時に、相互の健全な社内競争を刺激する)
・他のメンバーの仕事内容に関心を持つ。
・他のメンバーに仕事を依頼する場合は、その人がその仕事をやりたいと思っているかどうかを確認する。
(⇒やりたくないことを無理にやらせても、たいした成果は出ない。ただ、その人がやりたくないと思っていても、会社にとってどうしても必要な仕事である場合は説得する)
・誰かが自分の元に相談に来た場合は、作業の手を止めてすぐに相談に乗る。
・事業の発展に役立つ新しい情報やナレッジはすぐにメンバー間で共有する。
《Dont's》
・「他のメンバーがどんな仕事をやっているのか解らない」という状況を作らない。
(⇒組織全体が重くなる。過去の記事「組織が<重い>主たる要因は仕事の属人化だと思う」も参照)
・努力しない人には手を差し伸べない。
・間違った努力を続ける人にも手を差し伸べない。
(⇒私はそこまでお人よしではない)
私と一緒に仕事をしている皆さんの中には、「お前、そんなのできてねーじゃねぇか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、今年は言行一致を目指します!
顧客ターゲティングの考え方(取引をしたい顧客)
《Do's》
・「太く長く続く顧客(=我々の主たる顧客は人事部・人材開発部)」を作る。
(⇒顧客企業を深く理解し、顧客企業のビジネスに合ったコンテンツを提供する上ではこれが重要)
・研修だけでは本当はダメだと内心では思っている問題意識の強い顧客。
・事業戦略と人材育成のリンクを真剣に考えている顧客。
・研修実施にあたって、現場(=受講者の直属のマネジャーなど)を積極的に巻き込みたいと考えている顧客
・現場部門とのリレーションが深い顧客。
(⇒そのような顧客は、研修内容を現場で実践してもらうために現場を巻き込んでくれるし、巻き込みに成功すると、受講者が研修内容を現場で実施するのをマネジャーがサポートしてくれる)
《Dont's》
・研修の運営方法ばかりにいちいちこだわる顧客とは付き合わない。
(私は別に、研修オペレーションのプロフェッショナルになりたいわけではない)
・「とりあえず上層部から研修をやれと言われたから」とか、「予算が余っているから」という理由で研修を実施しようとする顧客とは付き合わない。
(⇒そういう顧客に対して研修をしても、受講者にとっては有益な研修にならないことが多い)
顧客への提供価値
《Do's》
・顧客企業の事業戦略と密接にリンクした研修コンテンツを提供する。
・場合によっては、顧客企業の人材戦略の構築から支援をする。
(⇒その方が、内容の濃い研修ができあがるし、現場で研修を活用してもらえる可能性が高まる)
・現場で使える実践的な知を提供する。
・一方的な知の提供だけではなく、顧客の事業発展に貢献するナレッジを顧客とともに協創する。
(⇒講師が顧客より偉いわけでは決してない。顧客の知と我々の知を融合させると新しい知が生まれる)
《Dont's》
・書籍で学習できるレベルの内容は絶対に提供しない。
(⇒それなら、本を社員の人数分買うことをお勧めする。その方が研修を実施するより安上がりだから)
・新人研修など、汎用スキル系は重視しない。
(⇒競合が多すぎるので、差別化が難しいし、価格競争になりやすい)
製品開発の進め方
《Do's》
・「自分がほしい」、「こういう研修を受けたい」、「自分が社長だったら自社の社員に学習させたい」と思えるサービスを開発する。
(⇒自分がほしいと思わないものを顧客に提供するのはほとんど詐欺)
・講義の時間を極力減らし、演習の時間を長く確保する。
(⇒研修の目的は、講師の話を聞いてもらうことではなく、受講者自身に考えてもらうことである)
・投資回収点を意識した開発・販売スケジュールを組む。
(⇒昔、これをおろそかにして痛い目に遇ったことがあるので)
《Dont's》
・顧客の声を聞きすぎない。顧客の言いなりにはならない。
(⇒顧客が全ての解を知っているのならば、我々の存在意義はどこにもない)
・「自分がやりたいこと」に固執しすぎない。
(⇒「自分がほしい」と思うサービスに偏りすぎないよう、ある程度のブレーキは必要)
プロモーションの展開
《Do's》
・「誠実なプロフェッショナルであること」を示す情報を発信する。
・研修は目に見えないサービスであるがゆえに、サービスの内容はできるだけ広く公開し、顧客の研修導入の意思決定をサポートする。
・プロモーションに対する投資回収点を明確にし、回収具合をモニタリングする。
(⇒「そんなの当たり前だろう?」と思われるかもしれないが、意外と忘れやすいんだな…)
《Dont's》
・カウントの仕方によっては確かに事実だと言える実績であっても、一見すると極端に思える数的実績は表示しない。
(⇒一気に胡散臭くなるため)
・雑誌広告など、成果を測定しにくい広告投資は控える。
競合他社に対する姿勢
《Do's》
・競合他社に対しても、できるだけ自社サービスの内容をオープンにする。
(⇒研修業界は何かと閉鎖的なので、いつまでもコンテンツの質が安定しないと個人的には思っている。過去の記事「研修業界はまだまだ未熟な業界かもしれない」も参照)
《Dont's》
・競合他社のベンチマーキングはほどほどにする。
(⇒最低限のクオリティをクリアするためのベンチマークはするが、やりすぎると差別化できなくなる)
・競合他社との価格競争はしない。
(⇒安くしなければ売れないような自社サービスの方に問題がある)
仕事の進め方
《Do's》
・どのタスクでも、「目標作業時間」を常に意識する。
(⇒最近のビジネスパーソンの多くがそうであるように、我々の仕事も即興的なものが多く、1つとして同じ仕事はない。しかし、ある程度のカテゴライズは可能なので、カテゴリ別に目標作業時間を設定することで、仕事の生産性を意識することができる)
・品質を落とさずに目標作業時間を短縮できるような改善策を常に検討する。
・時には1人きりになる時間を確保する。
(顧客全体や、サービス体系全体のことを冷静になって考えるには、1人になることが必要)
・仕事が速く終わったら、自己研鑽やネットワーキングに時間を使う。
(⇒将来に役立つ知や人脈を獲得しておかなければ、ビジネスが長続きしない)
《Dont's》
・スケジュールをぎちぎちに組まない。
(⇒バッファがないと、精神的にも肉体的にもゆとりがなくなる。ゆとりがなくなると、結局はクオリティに悪影響を及ぼす)
・半期ごとの目標は片手に収まる程度に抑える。
(⇒たくさんの目標を一度に追いかけても、達成できたためしがない)
・だらだらと残業しない。
(⇒必要以上に会社にいても、いいことなんて何一つない)
意思決定(会議の進め方)
《Do's》
・会議では必ず目的と議題、論点を明示する。
(⇒特に社内会議の場合は、気が緩んでついつい忘れがち)
・会議での決定事項に関わりのある利害関係者は、会議のメンバーに忘れずに入れる。
(⇒彼らに対して、会議終了後に決定事項を説明しようとしてはいけない。たいてい、「何で勝手にそんなことを決めたんだ?」となって、話をひっくり返される)
・建設的な対立が見られない会議は失敗とみなす。
・確実に実施される決定事項については、会議の参加者以外にも迅速に公開する。
・リアルコミュニケーションによる意思決定を重視する。
《Dont's》
・下準備のない会議はやらない。
(⇒議題や論点、討議用資料がない会議で、何かいいことが決まったためしがない)
・感情的な対立は避ける。
・社内にあらぬ憶測や噂が流れないよう、秘密会議をしない。
・不確実性を含む決定事項は性急にオープンにしない。
(⇒事業計画や予算など、将来に関する事項でまだ正式に決まっていないものは、議論の経過に関する情報であっても性急にオープンにしない。なぜならば、聞く人によって解釈の違いが生まれ、あらぬ誤解が発生するリスクがあるから)
・メールでは議論しない。
(⇒読むのがうっとうしいし、言外の意味をつかみ損ねることが多い)
チームワーク
《Do's》
・それぞれのメンバーのパフォーマンスを見える化する。
(⇒ピア・プレッシャーを生み出すと同時に、相互の健全な社内競争を刺激する)
・他のメンバーの仕事内容に関心を持つ。
・他のメンバーに仕事を依頼する場合は、その人がその仕事をやりたいと思っているかどうかを確認する。
(⇒やりたくないことを無理にやらせても、たいした成果は出ない。ただ、その人がやりたくないと思っていても、会社にとってどうしても必要な仕事である場合は説得する)
・誰かが自分の元に相談に来た場合は、作業の手を止めてすぐに相談に乗る。
・事業の発展に役立つ新しい情報やナレッジはすぐにメンバー間で共有する。
《Dont's》
・「他のメンバーがどんな仕事をやっているのか解らない」という状況を作らない。
(⇒組織全体が重くなる。過去の記事「組織が<重い>主たる要因は仕事の属人化だと思う」も参照)
・努力しない人には手を差し伸べない。
・間違った努力を続ける人にも手を差し伸べない。
(⇒私はそこまでお人よしではない)
私と一緒に仕事をしている皆さんの中には、「お前、そんなのできてねーじゃねぇか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、今年は言行一致を目指します!
May 20, 2010
ビジョンの3要素「目的」「価値観」「未来イメージ」はどう関係し合っているのか?
拍手してくれたら嬉しいな⇒
先日の記事「ビジョンを構成する要素とは一体何なのだろうか?」では、『ビジョナリー・カンパニー』の著者ジェームズ・C・コリンズと、『ザ・ビジョン』の著者ケン・ブランチャードの見解を紹介し、ビジョンを構成する要素は「目的」、「価値観」、「未来イメージ」の3つであると整理した。では、この3つの要素はお互いにどのように関係し合っているのだろうか?
(1)目的
あらゆる生物が究極的には「種の保存」を目的として生存しているように、あらゆる企業や組織も目的を持って存在している。目的のない組織は、社会からその存在を認められない。つまり、目的とは、社会から与えられた「生存の許可証」のようなものである。
ただし、目的は崇高である代わりにどうしても抽象的にならざるを得ない。生物の究極の目的が「種の保存」であるならば、企業の究極の目的はドラッカーが述べたように「顧客の創造」ということになる。もう少し具体化するとしても、例えば製薬業界であれば「医療技術を活用して人類の健康に貢献する」、エンターテインメント業界であれば「顧客の期待を上回る驚きや感動を与え、人々の生活を精神的に豊かにする」といった感じにしかならない。
何が言いたいのかというと、目的そのものは、少なくとも同じ業界内ではそれほど差が出ないということである。目的は企業が社会に存在するための「最低限のお許し」にしか過ぎないのであって、競合との差別化を行って競争に打ち勝ち、環境変化を乗り越えながら、長きに渡って存続するための要件とはならない。
(2)価値観
各社の事業活動に多様性を与える上で貴重な役割を果たすのが、この「価値観」である。価値観とは「何を重要視するか?」という判断基準であり、「企業を取り巻く世界の捉え方」や「企業や社員が取るべき行動の選択肢」に大きく影響している。
多くの企業のHPには「企業理念」というページが設けられており、その中に「行動規範」という形でその企業の価値観が明文化されている。その数はたいてい3つから5つぐらいに集約されているが、実際に事業活動を左右する価値観は多岐に渡る。それこそ、組織文化のレベルにまで埋め込まれた暗黙的な価値観も合わせれば、その数は限りがないだろう。そうした無数の価値観が、事業環境に対する経営陣や社員の見方に影響を及ぼし、彼らがどのような行動を取るかを規定しているのである。
企業や社員が持つ価値観のカテゴリとしては、次のようなものが考えられる。カッコ内には価値観の例を示してみた。ただし、カテゴリにしても価値観の中身にしても、実際にはありとあらゆるものが考えうる。
・ステークホルダーの優先順位(最優先にするのは株主か、顧客か、社員か、それともそれ以外のステークホルダーか)
・社会的責任に対する考え方(法令順守にとどまるのか、それ以上を追求するのか)
・顧客との接し方(顧客との接点を大事にするのか、あえて顧客の声を聞かないようにするのか(※1))
・製品コンセプト(簡潔さを追求するのか、高度さを追求するのか)
・競合他社との戦い方(真っ向から勝負するのか、勝負を避けて安泰な市場を狙うのか)
・イノベーションへの取り組み方(社内でイノベーションに積極的に投資するのか、他社のイノベーションをうまく活用するのか)
・新規事業に対する取り組み方(リスクを奨励し無数の事業に挑戦するのか、事前の十分なフィージビリティ検証を重視するのか)
・社員の採用・登用の仕方(内部育成を重視するのか、転職市場を積極的に活用するのか)
・社員の育成の仕方(OJTを重視するのか、OFF-JTを重視するのか)
・取引先・仕入先との関係(単なるコストセンターと見るのか、自社の製品・サービスの品質を上げるパートナーとみなすのか)
・意思決定の仕方(現場社員を意思決定に参画させるのか、トップダウンで意思決定を行うのか)
・業務プロセスの設計の仕方(スピード・効率を追求するのか、斬新なアイデアが生まれる業務を重視するのか)
・社内におけるコミュニケーションのあり方(リアルコミュニケーションを重視するのか、バーチャルコミュニケーションを重視するのか)
・社外への情報の発信の仕方(徹底的な秘密主義に徹するのか、あえていろんな情報を発信するのか(※2))
(※1)『イノベーションのジレンマ』の著者であるクレイトン・クリステンセンは、顧客の声を聞き過ぎる企業は「破壊的イノベーション」の犠牲になる危険性が高いことを指摘している。ジェームズ・コリンズによると、ソニーの基本理念には「顧客の視点」がないという。これは、ソニーが顧客のニーズに従って製品開発をするのではなく、顧客が思いつかないような製品を開発することを重視しているためと考えられる。
(※2)アップルの徹底した秘密主義は有名である。一方、テーブルマーク(旧加ト吉)は、何かと情報発信にネガティブになりがちな食品業界の慣行を逆手にとって、twitter上で積極的に消費者とコミュニケーションを取り、ソーシャルメディアを活用したマーケティングに注力している。
(3)未来イメージ
目的を実現するための手段は多岐に渡る。ちょうど、大阪から東京に行くのに様々な手段があるのと同様である。時間を優先するならば飛行機や新幹線で、ドライブを楽しみたいのならば自動車で、コストを優先するならば深夜バスで(「水曜どうでしょう」みたいに、あえて旅を辛くするために深夜バスを選択するということもあるかもしれない(笑))、あるいは己の限界に挑戦するために「走る」(何年か前、24時間テレビで間寛平さんが挑戦した)という手段もある。
目的を達成するのに複数の手段がある際、そのどれを選択するかは価値観にかかっている。上記の大阪−東京の移動の例でもそれがお解りいただけるだろう。経営においても、企業が掲げた目的の実現に向けて、どのような選択肢を取り、どのような行動を取るのかは、その企業や社員が持つ価値観に依存している。
企業や社員が様々な価値観に従って行動を繰り返した結果として現れる世界が「未来イメージ」に他ならない。未来イメージは目的に向かう途中段階ではあるが、抽象的な目的に比べてはるかに具体的なものとなり、認識しやすくなる。
先の大阪−東京間の移動の例で言うと、飛行機や新幹線を選択すれば「快適でスピーディーな移動」や「忙しい仕事の合間にできる束の間の休息時間」が、自動車を選択すれば「途中で各地の名所に立ち寄り、名産に舌鼓を打つ楽しみ」や「高速道路を突っ走る快感」が、深夜バスを選択すれば「多少体が痛くなるかもしれないが、1泊分のホテル代が浮き得した気分」が未来イメージにあたるだろう。
価値観が多様であることによって、未来イメージも多様になる。そして、この多様性こそが自社と他社を区別するカギとなり、競争力の源泉になっていくのである。
(1)目的
あらゆる生物が究極的には「種の保存」を目的として生存しているように、あらゆる企業や組織も目的を持って存在している。目的のない組織は、社会からその存在を認められない。つまり、目的とは、社会から与えられた「生存の許可証」のようなものである。
ただし、目的は崇高である代わりにどうしても抽象的にならざるを得ない。生物の究極の目的が「種の保存」であるならば、企業の究極の目的はドラッカーが述べたように「顧客の創造」ということになる。もう少し具体化するとしても、例えば製薬業界であれば「医療技術を活用して人類の健康に貢献する」、エンターテインメント業界であれば「顧客の期待を上回る驚きや感動を与え、人々の生活を精神的に豊かにする」といった感じにしかならない。
何が言いたいのかというと、目的そのものは、少なくとも同じ業界内ではそれほど差が出ないということである。目的は企業が社会に存在するための「最低限のお許し」にしか過ぎないのであって、競合との差別化を行って競争に打ち勝ち、環境変化を乗り越えながら、長きに渡って存続するための要件とはならない。
(2)価値観
各社の事業活動に多様性を与える上で貴重な役割を果たすのが、この「価値観」である。価値観とは「何を重要視するか?」という判断基準であり、「企業を取り巻く世界の捉え方」や「企業や社員が取るべき行動の選択肢」に大きく影響している。
多くの企業のHPには「企業理念」というページが設けられており、その中に「行動規範」という形でその企業の価値観が明文化されている。その数はたいてい3つから5つぐらいに集約されているが、実際に事業活動を左右する価値観は多岐に渡る。それこそ、組織文化のレベルにまで埋め込まれた暗黙的な価値観も合わせれば、その数は限りがないだろう。そうした無数の価値観が、事業環境に対する経営陣や社員の見方に影響を及ぼし、彼らがどのような行動を取るかを規定しているのである。
企業や社員が持つ価値観のカテゴリとしては、次のようなものが考えられる。カッコ内には価値観の例を示してみた。ただし、カテゴリにしても価値観の中身にしても、実際にはありとあらゆるものが考えうる。
・ステークホルダーの優先順位(最優先にするのは株主か、顧客か、社員か、それともそれ以外のステークホルダーか)
・社会的責任に対する考え方(法令順守にとどまるのか、それ以上を追求するのか)
・顧客との接し方(顧客との接点を大事にするのか、あえて顧客の声を聞かないようにするのか(※1))
・製品コンセプト(簡潔さを追求するのか、高度さを追求するのか)
・競合他社との戦い方(真っ向から勝負するのか、勝負を避けて安泰な市場を狙うのか)
・イノベーションへの取り組み方(社内でイノベーションに積極的に投資するのか、他社のイノベーションをうまく活用するのか)
・新規事業に対する取り組み方(リスクを奨励し無数の事業に挑戦するのか、事前の十分なフィージビリティ検証を重視するのか)
・社員の採用・登用の仕方(内部育成を重視するのか、転職市場を積極的に活用するのか)
・社員の育成の仕方(OJTを重視するのか、OFF-JTを重視するのか)
・取引先・仕入先との関係(単なるコストセンターと見るのか、自社の製品・サービスの品質を上げるパートナーとみなすのか)
・意思決定の仕方(現場社員を意思決定に参画させるのか、トップダウンで意思決定を行うのか)
・業務プロセスの設計の仕方(スピード・効率を追求するのか、斬新なアイデアが生まれる業務を重視するのか)
・社内におけるコミュニケーションのあり方(リアルコミュニケーションを重視するのか、バーチャルコミュニケーションを重視するのか)
・社外への情報の発信の仕方(徹底的な秘密主義に徹するのか、あえていろんな情報を発信するのか(※2))
(※1)『イノベーションのジレンマ』の著者であるクレイトン・クリステンセンは、顧客の声を聞き過ぎる企業は「破壊的イノベーション」の犠牲になる危険性が高いことを指摘している。ジェームズ・コリンズによると、ソニーの基本理念には「顧客の視点」がないという。これは、ソニーが顧客のニーズに従って製品開発をするのではなく、顧客が思いつかないような製品を開発することを重視しているためと考えられる。
(※2)アップルの徹底した秘密主義は有名である。一方、テーブルマーク(旧加ト吉)は、何かと情報発信にネガティブになりがちな食品業界の慣行を逆手にとって、twitter上で積極的に消費者とコミュニケーションを取り、ソーシャルメディアを活用したマーケティングに注力している。
(3)未来イメージ
目的を実現するための手段は多岐に渡る。ちょうど、大阪から東京に行くのに様々な手段があるのと同様である。時間を優先するならば飛行機や新幹線で、ドライブを楽しみたいのならば自動車で、コストを優先するならば深夜バスで(「水曜どうでしょう」みたいに、あえて旅を辛くするために深夜バスを選択するということもあるかもしれない(笑))、あるいは己の限界に挑戦するために「走る」(何年か前、24時間テレビで間寛平さんが挑戦した)という手段もある。
目的を達成するのに複数の手段がある際、そのどれを選択するかは価値観にかかっている。上記の大阪−東京の移動の例でもそれがお解りいただけるだろう。経営においても、企業が掲げた目的の実現に向けて、どのような選択肢を取り、どのような行動を取るのかは、その企業や社員が持つ価値観に依存している。
企業や社員が様々な価値観に従って行動を繰り返した結果として現れる世界が「未来イメージ」に他ならない。未来イメージは目的に向かう途中段階ではあるが、抽象的な目的に比べてはるかに具体的なものとなり、認識しやすくなる。
先の大阪−東京間の移動の例で言うと、飛行機や新幹線を選択すれば「快適でスピーディーな移動」や「忙しい仕事の合間にできる束の間の休息時間」が、自動車を選択すれば「途中で各地の名所に立ち寄り、名産に舌鼓を打つ楽しみ」や「高速道路を突っ走る快感」が、深夜バスを選択すれば「多少体が痛くなるかもしれないが、1泊分のホテル代が浮き得した気分」が未来イメージにあたるだろう。
価値観が多様であることによって、未来イメージも多様になる。そして、この多様性こそが自社と他社を区別するカギとなり、競争力の源泉になっていくのである。
November 04, 2009
<布教>という時代は終わりました−『感じるマネジメント』
拍手してくれたら嬉しいな⇒
リクルートHCソリューショングループ 英治出版 2007-04-20 おすすめ平均: 意味・目的の共有化と共感によるマネジメント つながり力 ビジョンをつくり浸透していくプロセスとして理想 |
powerd by Amazon360
組織内の価値観やビジョンの共有をテーマに「人と組織」のあり方を追求しているリクルート HCソリューショングループが、自動車部品メーカーのデンソーから投げかけられた1つの問い−「世界30カ国、総勢10万人にのぼるデンソーの全社員で『価値観(デンソー・スピリット)』を共有するには、どうしたらいいか?」
本書は、リクルートHCのメンバーがデンソーのスタッフと共に、「そもそも、理念を浸透させるとはどういうことか?」、「ビジョンとは何か?」、「価値観の共有には、何が必要なのか?」をめぐって3年間試行錯誤を続けた記録となっている。
最初は海外企業を訪問し、ベストプラクティスを調査するところからスタートしている。ちなみに、同書では会社名が伏せられているこの事例
その会社では、人事制度に理念が組み込まれており、従業員の評価が「業績」と「理念の実践」の二つの観点で行われている。また、マネジャー以上の層に対しては、理念の実践についての360度調査を毎年行っているという。つまり、課長であれば、部長、他の課長、そして部下から評価を受けるということである。はGEのことと思われる。GEの評価制度については、デーブ・ウルリヒ他著の『GE式ワークアウト』で詳しく紹介されている。
が、これだけには飽き足らず、古くから伝わる物語や、マーティン・ルーサー・キングJr.など優れたリーダーたちの「共感を得る技術」を分析し、果ては宗教にもヒントを求めてキリスト教の教会や大学の神学部に取材に行くという型破りなプロジェクトになっている。「<布教>という時代は終わりました」とは、上智大学神学部の山岡三治学部長の言葉である。
布教というパラダイム−伝道者が上に立ち、下にいる人々に教えを授けるという構図が、成り立たなくなったという意味だ。われわれはよく「ビジョンが浸透しない」という表現を使うが、「浸透」という単語には組織の上層部でまず誰かがビジョンを作り、ヒエラルキーの階層を1つずつ下りながら末端の社員にまで教えを広げるというニュアンスが感じられる。だが、これは間違った理解だということになる。
「教えるのではなく、共に学ぶのです。キリスト教文化の馴染みのない土地に住む、キリストの名前や教えをまったく聞いたことがない人々でも、神の存在や、何かしら本質的なものへの畏怖心や信仰は、持っているに違いありません。<相手の心の中にある宝物>を相手と一緒に見つけながら、共に豊かになること。伝道者の役割とは、そういうことです」
パンフレットや社内報などに載っているビジョンは所詮「要約」に過ぎない。自社の行動規範や目指すべき姿に関する基本的なラインを示しているだけであって、ビジョンの全てではない。だから、紙に書かれた内容を逐一社員に覚えさせることは、ビジョンの共有とは言えない。
そうではなく、社員一人一人が日々の業務の中で、「今、自分がとっているこの行動はわが社らしい、あるいはわが社らしくない」とか、「この仕事をしていると、わが社の将来的な目標に近づいている気がする、あるいは将来的な目標から逸れている気がする」といった具合に、個別具体的な場面において深く「感じる」ことができて初めて、ビジョンが共有できていると言えるのだろう。その意味では、ビジョンの共有とは言語的というよりも身体的である。
ここでポイントが2つある。まず第一に、一人一人が携わっている仕事は違うし、それぞれちょっとずつ違う価値観を持っているから、全員が同じようにビジョンの中身を認識することは「ありえない」(「共有」という表現を使っておきながら、実は社員同士が所有しているビジョンは同じものではないというのは、やや矛盾した話に聞こえるかもしれないが…)。だが、一人一人が認識している内容は違えど、皆が「深い次元でビジョンを認識しようとしている」という共通の行為が、社員の間に「共同体意識」を芽生えさせる。これこそが、ビジョンの共有を意味あるものにしていると思う。
もう1つは、当たり前だがビジョンの共有に「終わりはない」。ビジョンは事業環境の変化と対峙し、毎日の実践の中で社員に試される。また、他の社員が自分とは異なるビジョンの認識を持っていることを知ると、自省のきっかけとなる。たとえ社内資料の中で用いられている文言や図は一定期間変わらないとしても、その意味するところは少しずつ変わっていくのである。そうしたビジョンを共有するとはつまり、組織の構成員がビジョンの意味について認識と修正を繰り返す永遠の学習と言える。