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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
August 26, 2010
人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(2)
拍手してくれたら嬉しいな⇒
(その1からの続き)
(3)学習プログラムの内容が実務と連動していない
これは(1)の落とし穴とも深く関連している。(1)の落とし穴にはまると、(3)の落とし穴にもはまる可能性が非常に高くなる。例えば、「営業の提案力を上げたい」と思っている人材育成担当者が、提案力の中身を明確にしないまま、外部の研修ベンダーにお願いして「提案力研修」を実施すると、受講者からは冷たい視線を浴びる羽目になる。
受講者は顧客企業の業務に対する深い理解を武器にして、現状プロセスの詳細な分析を通じた提案を行うことが重要だと考えているのに、研修ベンダーが実施したプログラムが顧客企業のIT戦略立案を支援するような内容だったならば、受講者は「こんな研修は現場で使えない!」とすぐに文句を言うだろう。
提案力のように業務と直結したスキルや知識であれば、企画段階で人材育成担当者と研修ベンダーが密に議論をすることでこうしたギャップを防ぐことができる。だが、その1で述べたような「コミュニケーション能力」や「リーダーシップ」、あるいは「モチベーション向上」や「自立度向上」、「キャリア開発」といったかなり抽象度の高いものになると、話は難しくなる。
リーダーシップ研修を例に取ってみよう。よくあるリーダーシップ研修は、リーダーシップのパターン(戦略型、関係調整型、権威型など)を学習して自分がどのパターンに該当するのかを自覚させるものや、心理学の性格分析の手法をベースにし、部下やメンバーの性格パターンに応じた効果的なコミュニケーションの方法を学ぶといったものである。
しかしながら、仮に会社が戦略的に取り組んでいる部門横断型プロジェクトにどんどん社員を参画させ、高い成果を上げることを求めているのならば、上記の研修はいずれもほとんど効果を発揮しない。なぜならば、部門横断型プロジェクトで必要なのは、
・各部門を代表して集まってるメンバーが、どのような利害を持ってプロジェクトに参画しているのかを、バーバル/ノンバーバルのコミュニケーションから短期間に見抜く
・利害対立が生じた場合に、双方の利害を調整して納得のいく合意点を発見する
・会議の場で、フォーマルな肩書きにとらわれずに意見を発したり、議論を取りまとめたりする
・プロジェクトメンバーの誰が読んでも即座に理解できるドキュメントを作成する
・プロジェクトメンバー以外の社員にプロジェクト内容を公表したり、彼らの協力を仰いだりする際に、適切で訴求力のあるプレゼンテーションを行う
・現場の業務を兼務している場合は、プロジェクトと現場の仕事を両立する時間管理・タスク管理を実施する
などといった能力だからである。これらの点を考慮せずに設計されたトレーニングは、無駄な投資に終わる。
(4)知識・スキルの習熟度合いと人事考課が連動していない
人材育成計画のPDCAサイクルを回すために、各社員の能力レベルをモニタリングする仕組みを構築することが重要だと述べたが、人材育成計画のPDCAサイクルと言うと、どうも研修の実施状況や社員の参加率などをモニタリングすることだと捉えられている節がある。
人材育成の目的は研修の消化ではなく社員の能力アップであるから、測定すべきなのは能力が期待通りに上がっているかどうかである。そのためには、人材育成担当者が能力レベルを把握するアセスメントを開発し、人事考課担当者や現場と協力してアセスメントを定期的に実施することが有効である。
ところが、人事部の内情をつぶさに観察すると、人材育成担当者と人事考課担当者の関係は必ずしも良好ではない。そのせいか、特定のトレーニングで実施されるテストのスコアが昇進・昇格の条件になっていることはあるものの、それぞれの能力レベルが、人事考課で定められている評価基準と緊密に連携してる例は少ない気がする。
当たり前のことだが、社員は評価されないことはやらない。どんなに優れた人材育成計画に従って有益なトレーニングを実施したとしても、そこで身についた能力が人事考課で評価されないならば、社員はトレーニング内容を実務に活かそうとはしないのである。
プレイングマネジャーの増加に頭を悩ます人材育成担当者が、マネジャー向けに部下育成力研修をやったとしよう。だが、マネジャーの評価基準が相も変わらず短期的な数字に偏っていれば、マネジャーは部下の育成などそっちのけで、自分で数字を作ってしまうに違いない。そして、プレイングマネジャーの増加にますます拍車がかかるのである。
(3)学習プログラムの内容が実務と連動していない
これは(1)の落とし穴とも深く関連している。(1)の落とし穴にはまると、(3)の落とし穴にもはまる可能性が非常に高くなる。例えば、「営業の提案力を上げたい」と思っている人材育成担当者が、提案力の中身を明確にしないまま、外部の研修ベンダーにお願いして「提案力研修」を実施すると、受講者からは冷たい視線を浴びる羽目になる。
受講者は顧客企業の業務に対する深い理解を武器にして、現状プロセスの詳細な分析を通じた提案を行うことが重要だと考えているのに、研修ベンダーが実施したプログラムが顧客企業のIT戦略立案を支援するような内容だったならば、受講者は「こんな研修は現場で使えない!」とすぐに文句を言うだろう。
提案力のように業務と直結したスキルや知識であれば、企画段階で人材育成担当者と研修ベンダーが密に議論をすることでこうしたギャップを防ぐことができる。だが、その1で述べたような「コミュニケーション能力」や「リーダーシップ」、あるいは「モチベーション向上」や「自立度向上」、「キャリア開発」といったかなり抽象度の高いものになると、話は難しくなる。
リーダーシップ研修を例に取ってみよう。よくあるリーダーシップ研修は、リーダーシップのパターン(戦略型、関係調整型、権威型など)を学習して自分がどのパターンに該当するのかを自覚させるものや、心理学の性格分析の手法をベースにし、部下やメンバーの性格パターンに応じた効果的なコミュニケーションの方法を学ぶといったものである。
しかしながら、仮に会社が戦略的に取り組んでいる部門横断型プロジェクトにどんどん社員を参画させ、高い成果を上げることを求めているのならば、上記の研修はいずれもほとんど効果を発揮しない。なぜならば、部門横断型プロジェクトで必要なのは、
・各部門を代表して集まってるメンバーが、どのような利害を持ってプロジェクトに参画しているのかを、バーバル/ノンバーバルのコミュニケーションから短期間に見抜く
・利害対立が生じた場合に、双方の利害を調整して納得のいく合意点を発見する
・会議の場で、フォーマルな肩書きにとらわれずに意見を発したり、議論を取りまとめたりする
・プロジェクトメンバーの誰が読んでも即座に理解できるドキュメントを作成する
・プロジェクトメンバー以外の社員にプロジェクト内容を公表したり、彼らの協力を仰いだりする際に、適切で訴求力のあるプレゼンテーションを行う
・現場の業務を兼務している場合は、プロジェクトと現場の仕事を両立する時間管理・タスク管理を実施する
などといった能力だからである。これらの点を考慮せずに設計されたトレーニングは、無駄な投資に終わる。
(4)知識・スキルの習熟度合いと人事考課が連動していない
人材育成計画のPDCAサイクルを回すために、各社員の能力レベルをモニタリングする仕組みを構築することが重要だと述べたが、人材育成計画のPDCAサイクルと言うと、どうも研修の実施状況や社員の参加率などをモニタリングすることだと捉えられている節がある。
人材育成の目的は研修の消化ではなく社員の能力アップであるから、測定すべきなのは能力が期待通りに上がっているかどうかである。そのためには、人材育成担当者が能力レベルを把握するアセスメントを開発し、人事考課担当者や現場と協力してアセスメントを定期的に実施することが有効である。
ところが、人事部の内情をつぶさに観察すると、人材育成担当者と人事考課担当者の関係は必ずしも良好ではない。そのせいか、特定のトレーニングで実施されるテストのスコアが昇進・昇格の条件になっていることはあるものの、それぞれの能力レベルが、人事考課で定められている評価基準と緊密に連携してる例は少ない気がする。
当たり前のことだが、社員は評価されないことはやらない。どんなに優れた人材育成計画に従って有益なトレーニングを実施したとしても、そこで身についた能力が人事考課で評価されないならば、社員はトレーニング内容を実務に活かそうとはしないのである。
プレイングマネジャーの増加に頭を悩ます人材育成担当者が、マネジャー向けに部下育成力研修をやったとしよう。だが、マネジャーの評価基準が相も変わらず短期的な数字に偏っていれば、マネジャーは部下の育成などそっちのけで、自分で数字を作ってしまうに違いない。そして、プレイングマネジャーの増加にますます拍車がかかるのである。
August 25, 2010
人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(1)
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先週は2回にわたって、戦略とリンクした人材育成計画を作成するためのポイントを整理してきた。要点を繰り返すと、まずは戦略を実行するための業務プロセス=「社員に期待する行動」を定義し、それに基づいて社員に求められる能力(知識・スキル)を洗い出す。そして能力をレベル分けし、それぞれのレベルに該当する社員の目標人数を設定する。その上で、目標人数の達成に向けた育成体系を、各能力の性質やレベルに応じて策定する。さらに、各社員の能力レベルを定期的にモニタリングする仕組みを計画段階で構築しておく。これが人材育成計画の要諦である。
戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(1)
戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(2)
人材育成計画は事業戦略の内容から論理的に導かれるものであり、さらにPDCAサイクルを回せるような仕掛けを計画段階で組み込んでおくことが重要だという、言ってしまえば至極当たり前のことなのだが、実際にはすんなりといかないことも多いように思える。あまりうまく機能しない人材育成計画は、以下の4つの落とし穴にはまっている。
(1)現状を見ながら足りない能力を洗い出してしまう
人材要件は戦略の内容からトップダウンで導かれるものだが、往々にして現状の社員を見ながら、「営業の提案力が足りない」、「若手社員にコミュニケーション能力が必要」、「ミドルマネジャーにリーダーシップを発揮してもらいたい」といった具合に、感覚的に能力を洗い出そうとすることがある。もちろん、議論の取っ掛かりとしてボトムアップのアイデアベースで始めることが悪いとは言わないものの、それだけで能力定義を終わらせると、非常に浅い分析に終わる。
ボトムアップで議論を進めると、能力を抽象化しすぎてしまう傾向がある。「営業の提案力が足りない」と言った場合、どのような提案力を指しているのか?SIerを例に取れば、
・顧客企業の業務に対する深い理解を武器にし、現状プロセスの詳細な分析を通じた提案を行うのか
・顧客企業の中長期的な戦略やビジョンに基づいて、IT戦略の立案も支援するのか
・コンサルティング会社のように、IT以外のソリューションも包括的に提案するのか
・自社製品の差別化要因を全面に打ち出した提案を行うのか(よほど自社製品が市場で強くなければ難しいが…)
・(あるいはちょっと違う視点で、)顧客企業内の利害関係者とのリレーション構築を重視し、RFPが出る前に提案の機会をもらうことを目指すのか
などのように、様々な提案力が考えうる。これらのうち、いったいどれのことを提案力と言っているのかを明確にしなければ、議論は先に進まない。
同様に、若手社員のコミュニケーション能力やミドルマネジャーのリーダーシップについても、それらの能力の向上によって何を目指しているのかを明らかにする必要がある。顧客との関係の改善・強化を志向しているのか、社内業務の課題発見と改善を促すのか、後輩や部下の能力開発をうまく行うことを期待しているのか、あるいは会社が戦略的に取り組んでいる部門横断型プロジェクトで高い成果を上げることを求めているのか?この点がクリアになって初めて、能力が定義できたと言える。そして当然、こうした分析は、将来的に実現したい戦略との関係の中で行われるべきなのである。
(2)個々の社員の能力レベルを考慮しない学習プログラムを強制
ビジネスマナーや基礎的なPCスキルのように、全社員が必ず身につけるべき能力については、単一の学習プログラムで能力を平準化することは何の問題もない。だが、たいていの能力にはレベルの高低が存在し、各社員の能力レベルもまちまちである。こうしたレベルのばらつきを考慮せずに画一的な学習プログラムを強制したり、特定の社員にとって難しすぎる、あるいは逆に易しすぎるトレーニングを企画したりすることも、よく見られる過ちである。
私が前の会社でプログラマーをしていた頃の話だが、人事部がシステム開発のプロジェクトマネジメント研修を導入したことがあった。この研修は全社員を対象とした必須研修であり、いわゆるウォーターフォール型のシステム開発プロジェクトをマネジメントするスキルの習得を目的としていた。
しかし、私や私の同期がこの研修を受けた(受けさせられた)のは入社1年目のことである。当時、アジャイル開発などが登場し始めていた頃だったから、「何でいまさらウォーターフォール型なんだ?」という疑問がそもそもあった。まぁ、百歩譲ってウォーターフォール型は許すとしても、入社1年目で詳細設計書からプログラムを起こすことをメイン業務としていた人間が、要件定義や業務プロセス分析のスキルをすっ飛ばして、プロジェクトのプランニングやリソース調達、顧客企業とのネゴシエーションについて学習させられたら、「何のこっちゃ解らん!」と不満たらたらになるのは想像に難くないだろう。
(その2へ続く)
戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(1)
戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(2)
人材育成計画は事業戦略の内容から論理的に導かれるものであり、さらにPDCAサイクルを回せるような仕掛けを計画段階で組み込んでおくことが重要だという、言ってしまえば至極当たり前のことなのだが、実際にはすんなりといかないことも多いように思える。あまりうまく機能しない人材育成計画は、以下の4つの落とし穴にはまっている。
(1)現状を見ながら足りない能力を洗い出してしまう
人材要件は戦略の内容からトップダウンで導かれるものだが、往々にして現状の社員を見ながら、「営業の提案力が足りない」、「若手社員にコミュニケーション能力が必要」、「ミドルマネジャーにリーダーシップを発揮してもらいたい」といった具合に、感覚的に能力を洗い出そうとすることがある。もちろん、議論の取っ掛かりとしてボトムアップのアイデアベースで始めることが悪いとは言わないものの、それだけで能力定義を終わらせると、非常に浅い分析に終わる。
ボトムアップで議論を進めると、能力を抽象化しすぎてしまう傾向がある。「営業の提案力が足りない」と言った場合、どのような提案力を指しているのか?SIerを例に取れば、
・顧客企業の業務に対する深い理解を武器にし、現状プロセスの詳細な分析を通じた提案を行うのか
・顧客企業の中長期的な戦略やビジョンに基づいて、IT戦略の立案も支援するのか
・コンサルティング会社のように、IT以外のソリューションも包括的に提案するのか
・自社製品の差別化要因を全面に打ち出した提案を行うのか(よほど自社製品が市場で強くなければ難しいが…)
・(あるいはちょっと違う視点で、)顧客企業内の利害関係者とのリレーション構築を重視し、RFPが出る前に提案の機会をもらうことを目指すのか
などのように、様々な提案力が考えうる。これらのうち、いったいどれのことを提案力と言っているのかを明確にしなければ、議論は先に進まない。
同様に、若手社員のコミュニケーション能力やミドルマネジャーのリーダーシップについても、それらの能力の向上によって何を目指しているのかを明らかにする必要がある。顧客との関係の改善・強化を志向しているのか、社内業務の課題発見と改善を促すのか、後輩や部下の能力開発をうまく行うことを期待しているのか、あるいは会社が戦略的に取り組んでいる部門横断型プロジェクトで高い成果を上げることを求めているのか?この点がクリアになって初めて、能力が定義できたと言える。そして当然、こうした分析は、将来的に実現したい戦略との関係の中で行われるべきなのである。
(2)個々の社員の能力レベルを考慮しない学習プログラムを強制
ビジネスマナーや基礎的なPCスキルのように、全社員が必ず身につけるべき能力については、単一の学習プログラムで能力を平準化することは何の問題もない。だが、たいていの能力にはレベルの高低が存在し、各社員の能力レベルもまちまちである。こうしたレベルのばらつきを考慮せずに画一的な学習プログラムを強制したり、特定の社員にとって難しすぎる、あるいは逆に易しすぎるトレーニングを企画したりすることも、よく見られる過ちである。
私が前の会社でプログラマーをしていた頃の話だが、人事部がシステム開発のプロジェクトマネジメント研修を導入したことがあった。この研修は全社員を対象とした必須研修であり、いわゆるウォーターフォール型のシステム開発プロジェクトをマネジメントするスキルの習得を目的としていた。
しかし、私や私の同期がこの研修を受けた(受けさせられた)のは入社1年目のことである。当時、アジャイル開発などが登場し始めていた頃だったから、「何でいまさらウォーターフォール型なんだ?」という疑問がそもそもあった。まぁ、百歩譲ってウォーターフォール型は許すとしても、入社1年目で詳細設計書からプログラムを起こすことをメイン業務としていた人間が、要件定義や業務プロセス分析のスキルをすっ飛ばして、プロジェクトのプランニングやリソース調達、顧客企業とのネゴシエーションについて学習させられたら、「何のこっちゃ解らん!」と不満たらたらになるのは想像に難くないだろう。
(その2へ続く)
August 19, 2010
戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(2)
拍手してくれたら嬉しいな⇒
(その1からの続き)
(3)各スキル・知識を有する社員の目標人数の設定
戦略の実現に必要なスキル・知識が明らかになったら、それらの能力を有する社員を何人ぐらい育成するのかを決める段階に入るわけだが、その際にやるべきことが1つある。それは、各スキル・知識のレベル分けである。
どんなスキル・知識にも難易度の高低がある。これを無視して画一的に目標人数を設定すると、現状の社員のスキル・知識レベルのばらつきを無視してしまい、特定の社員にとって難易度が高すぎる、あるいは一部の社員にとっては難易度が低すぎる育成計画ができあがってしまうので要注意だ(この点についても、別の記事で言及する予定)。
レベルは3段階から5段階に分けるのが適切だろう。個人的には、次の5段階が使いやすいと考えている。

市場分析のスキルやLCAの手法は、エコプロダクツを上市するために多くの社員が高いレベルにまで達する必要があると判断し、レベル4の人数を多めにした。部門横断的なプロジェクトマネジメント・チームビルディングについては、全員がプロジェクトマネジメントに従事するわけではないので、少数の精鋭を育成することを目標としている。
一方、環境経営を意識した製品企画・グリーン調達・原価計算・生産管理の基礎知識や設計BOMの活用方法については、全員を標準レベルまで引き上げることを目指し、レベル4・5を設けずに全社員がレベル3まで到達することを目標とした。
(4)各スキル・知識の習得に向けた育成方針の決定
(3)で各スキル・知識を有する社員の目標人数を設定したら、その人数を確保するための育成手段を決定する。一般に、知識とスキルでは下記のように効果的な手段が異なる。

(5)各スキル・知識の習熟レベルをモニタリングする仕組みの構築
(4)の育成体系ができれば育成計画の策定は終了と言いたいところだが、最後に重要なタスクが残っている。せっかく(3)で各スキル・知識のレベル分けを行ったのだから、各社員のスキル・知識レベルを定期的にモニタリングする仕組みを計画段階で作成しておくことが非常に重要である。
この仕組みを活用すれば、(3)の目標人数の達成度合いを人事部や経営陣が把握っできるし、また、人材育成担当者が各研修にどの社員を参加させるべきかを決めやすくなる。
モニタリングの方法は至ってシンプルである。つまり、それぞれのスキル・知識レベルを測定するためのアセスメントを開発することだ。スキルについては、そのスキルが発揮できているかどうかを判断する項目をいくつか設定する。例えば、「部門横断的なプロジェクトマネジメント・チームビルディング」であれば、
このアセスメントは、作成そのものはそれほど大変ではないものの、実施する現場の負荷がそれなりに大きくなるため、人事担当者・人材育成担当者があらかじめ現場との調整を十分に行うことがポイントになる。
以上、駆け足ではあったが、戦略と連動した人材育成計画を作成するためのステップを5つに分けて紹介してきた。次回の記事では、人材育成計画を策定する際に陥りがちな罠をまとめてみたいと思う。
(3)各スキル・知識を有する社員の目標人数の設定
戦略の実現に必要なスキル・知識が明らかになったら、それらの能力を有する社員を何人ぐらい育成するのかを決める段階に入るわけだが、その際にやるべきことが1つある。それは、各スキル・知識のレベル分けである。
どんなスキル・知識にも難易度の高低がある。これを無視して画一的に目標人数を設定すると、現状の社員のスキル・知識レベルのばらつきを無視してしまい、特定の社員にとって難易度が高すぎる、あるいは一部の社員にとっては難易度が低すぎる育成計画ができあがってしまうので要注意だ(この点についても、別の記事で言及する予定)。
レベルは3段階から5段階に分けるのが適切だろう。個人的には、次の5段階が使いやすいと考えている。
レベル5:そのスキルや知識を他人に教えられる各スキル・知識を5段階のレベルに分けた上で、各部門の業務を円滑に遂行するためには、それぞれのスキル・知識を持った社員が何人必要かを明らかにする。製品企画部門の各スキル・知識について、レベルごとの目標人数を整理したのが下表である。
レベル4:自分なりの創意工夫を加えて実行することができる(スキルの場合)
/平均以上の専門的・最先端の知識を持っている(知識の場合)
レベル3:標準的な事柄は一通り自分で理解・実行できる
レベル2:他人から支援を受ければ理解・実行できる
レベル1:他人から大幅な支援を受けなければ理解・実行できない(入社・配置転換直後のレベル)

市場分析のスキルやLCAの手法は、エコプロダクツを上市するために多くの社員が高いレベルにまで達する必要があると判断し、レベル4の人数を多めにした。部門横断的なプロジェクトマネジメント・チームビルディングについては、全員がプロジェクトマネジメントに従事するわけではないので、少数の精鋭を育成することを目標としている。
一方、環境経営を意識した製品企画・グリーン調達・原価計算・生産管理の基礎知識や設計BOMの活用方法については、全員を標準レベルまで引き上げることを目指し、レベル4・5を設けずに全社員がレベル3まで到達することを目標とした。
(4)各スキル・知識の習得に向けた育成方針の決定
(3)で各スキル・知識を有する社員の目標人数を設定したら、その人数を確保するための育成手段を決定する。一般に、知識とスキルでは下記のように効果的な手段が異なる。
知識:座学による集合研修、eLearning上記を参考に、各部門で求められる知識・スキルを習得するための手段を次のように決定した。合わせて、外部ベンダーを活用するか、内製化するかも決めた。
スキル:クロストレーニング(専門スキルの向上を目的として、専門外のトレーニングを行うこと)、シミュレーション・ケーススタディ、事例共有(ナレッジマネジメントシステムを活用する場合もあれば、分科会のようなコミュニティを形成する場合もある)

○環境経営を意識した製品企画・グリーン調達・原価計算・生産管理の基礎知識:汎用的な知識であるため、外部ベンダーのeLearningを活用。あとは、対象者のスキル・知識レベルに応じてコースを分ければ、育成体系の大枠が決まる。例えばレベル0・1の社員を対象に、レベル3への到達を目的とした「初級コース」と、レベル3の社員を対象に、レベル4・5への到達を目的とした「上級コース」に分けるといった具合である。
○環境負荷情報等を加味したBOMの使用方法:環境負荷情報等を加えてバージョンアップしたBOMの利用方法について、情報システム部門と協力して座学の集合研修を開催(社内説明会に近い)。
○LCAの実施方法、REACH・RoHS・JAMPの知識:環境経営に詳しい外部コンサルタントの協力を得て、座学の集合研修を共同で実施。
○部門横断的なプロジェクトマネジメント・チームビルディング:部門横断的な活動の前提として、製品企画部門の社員が、専門外である原価企画・生産管理をある程度本格的に学習するクロストレーニングを実施。
○仮説検証型の市場調査(定量・定性):マーケティングを専門とする外部コンサルタントとケーススタディを複数開発。
○サプライヤに対するトレーニング:サプライヤーごとに異なるトレーニングテキストが作成されることが予想されるため、調達部門内で事例共有のための勉強会を実施(人材育成部門がその運営をサポート)。
○サプライヤとのコミュニケーション・交渉力:研修ベンダーの交渉力研修をカスタマイズし、サプライヤとの交渉のポイントをロールプレイで複数体感できる研修を開発。
○環境負荷低減の観点からの製造プロセス設計および継続的なプロセス・品質改善スキル:生産管理、品質管理システムを活用して、システム上でシミュレーションできるトレーニングを社内で内製化。
(5)各スキル・知識の習熟レベルをモニタリングする仕組みの構築
(4)の育成体系ができれば育成計画の策定は終了と言いたいところだが、最後に重要なタスクが残っている。せっかく(3)で各スキル・知識のレベル分けを行ったのだから、各社員のスキル・知識レベルを定期的にモニタリングする仕組みを計画段階で作成しておくことが非常に重要である。
この仕組みを活用すれば、(3)の目標人数の達成度合いを人事部や経営陣が把握っできるし、また、人材育成担当者が各研修にどの社員を参加させるべきかを決めやすくなる。
モニタリングの方法は至ってシンプルである。つまり、それぞれのスキル・知識レベルを測定するためのアセスメントを開発することだ。スキルについては、そのスキルが発揮できているかどうかを判断する項目をいくつか設定する。例えば、「部門横断的なプロジェクトマネジメント・チームビルディング」であれば、
○プロジェクトのゴールをメンバーと共有し、スケジュールに沿ったタスクの割り当てを行っている。などといった項目を用意し、本人にどの程度できているか自己評価してもらう。場合によっては、上司や同僚などを加えて360度評価を行ってもよいだろう。一方、知識の場合は簡単なテストを実施することでレベルの把握が可能である。
○調達部門の担当者の協力を仰ぎながら、原価企画を自らの手で行っている。
○製造部門の担当者の協力を仰ぎながら、製造フィージビリティ検証を自らの手で行っている。
○メンバーと積極的なコミュニケーションを図り、動機づけのための仕掛けを施している。
○メンバー間で問題が起こった時は率先して間に入り、問題解決や利害調整にあたっている。
このアセスメントは、作成そのものはそれほど大変ではないものの、実施する現場の負荷がそれなりに大きくなるため、人事担当者・人材育成担当者があらかじめ現場との調整を十分に行うことがポイントになる。
以上、駆け足ではあったが、戦略と連動した人材育成計画を作成するためのステップを5つに分けて紹介してきた。次回の記事では、人材育成計画を策定する際に陥りがちな罠をまとめてみたいと思う。


