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May 20, 2011

「人材の柔軟な配置変更」の実現に向けてクリアすべき課題(1)―『イノベーションの新時代』

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M・S・クリシュナン、C・K・プラハラード
日本経済新聞出版社
2009-06-11
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「個客経験の共創」と「グローバル資源の利用」の価値創造戦略
主張に新規性なし
肩すかし
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 (前回からの続き)

 そんなに中身のある本ではないんだけれども、書き始めたら何だかんだでいろいろと書きたいことが出てきて、同じ本で何日も引っ張ってしまうんだな・・・どうやら、自分の考えを短くまとめられないのが私の悪いクセみたい(苦笑)。

 既存事業において、既存の製品・サービスに多少の改良を加え、安定的な成長を目指す場合は、誰がどういう仕事をすればよいのか、各人の仕事の進捗やクオリティを誰がどのタイミングでチェックすればいいのかが比較的明確である。こういうケースでは、従来型の階層型組織の方が適している。

 一方で、イノベーションのように、既存の枠組みの破壊に挑戦する場合は、組織や階層の違いを超えて適材を結集させる必要性が出てくる。部門の違いを超えるという意味では、日産がかつて導入した「クロスファンクショナルチーム」のようなものが今では一般的になっているとはいえ、階層の違いを超えたところまで踏み込んでいる企業はなかなかない。

 階層の違いを超えるとは、極端なことを言えば、日常業務では上司と部下の関係にある管理職のAさんと若手のBさんが、プロジェクトの中ではBさんがAさんの上司になる、というようなことだ。例えばこんなケースを想定してみる。AさんとBさんが所属する部門は、すでに成熟した技術をベースにした既存製品のバージョンアップが主たるミッションである。Aさんは製品開発の初期メンバーであり、功績が評価されて管理職に昇進した。

 一方、若手のBさんは成熟技術にも詳しいが、社内外の研究会に積極的に顔を出すなど人脈作りに熱心であり、最新技術にもかなり精通している。このたび、会社ではその最新技術を活かした新製品を開発するプロジェクトが立ち上がり、AさんとBさんがメンバーとして選出された。こういうケースだと、BさんがAさんの上司になった方が適切かもしれないのである。ここまでやっている例は、インテルぐらいしか私は知らない(単に私の調査不足でもあるんだけど・・・)(※1)

 以上のような「部門や職位を超えた人材の柔軟な配置転換」は、理屈では解るものの、本気でやろうとするといくつかの困難な課題に直面する。その1つが、先日取り上げた「(1)人材データベースの構築」だが、それ以外にも思いつく課題を挙げてみたいと思う。

(2)通常の部門とプロジェクトの両方で働く社員の評価と給与をどうするか?
 従来の階層型組織と部門横断的なプロジェクトが混在する組織を野中郁次郎教授は「ハイパーテキスト型組織」と呼んでいるが(※2)、この組織では、普段は特定の部門に所属しながら、ある時期はプロジェクトにも在籍するという社員が増えていく。

 しかも、例えばPさんという社員がいて、日常業務では主任クラスでXさんが直属の上司なのだが、プロジェクトでは課長クラスの権限と責任を与えられ、プロジェクトマネジャーであるYさんと、プロジェクトオーナーである役員のZさんがレポートラインになる、といった複雑な構図も十分に考えられる。こういうケースでは、Pさんの評価や給与はどうなるのだろうか?

 評価に関しては、少なくともレポートラインが明確になっていれば問題は軽減される。先ほどの例で言うと、X、Y、Zの3人がPさんを評価することになる。もっとも、評価プロセスがかなり複雑になるので、運用方法はよく検討しなければならない。

 より大きな問題なのは、Pさんの給与であろう。基本的には主任クラスの給与が支払われるが、プロジェクト期間中は課長クラスの給与に上がり、プロジェクトが終わると主任クラスの給与に戻る、ということが果たして受け入れられるだろうか?一時的に給与が上がる分にはさほど波紋を呼ばないだろうけれども、前述のAさんのように、プロジェクト期間中は役職が下がる場合は、給与を下げてもいいのだろうか?

 市場原理を極限まで貫く人であれば、人材の価値はその時の仕事によって決まるから、給与が上下するのは当然だと主張するだろう。ただ、基本給に関しては、頻繁に上下させると、強い反対を食らうに違いない(私も市場原理を支持する側の人間ではあるけれども、基本給の頻繁な変更はやはり心理的抵抗がある)。というのも、基本給は社員の生活保障の意味合いもあり、基本給の変動(特に減少)は社員の生活に支障をきたす可能性があるからだ(基本給が下がって社員のモチベーションが下がれば、会社での成果にも影響する)。

 この問題に対してスパッと解を提示することができなくて申し訳ないのだけれども、1つのアイデアとしては、

 ・基本給は日常業務における役職や能力で決定する。
 ・プロジェクトの報酬については、プロジェクトにおける役職や期待能力に応じて、別途「プロジェクト手当」などの名目でプロジェクト期間中だけ基本給に加算するか、プロジェクト終了後の賞与で調整する。

という方向性がありうるのではないだろうか?もちろん、これは本当にざっくりとしたアイデアであって、細かい論点を挙げればキリがない。毎年一定期間は日常業務に加えてプロジェクトに参画している社員であれば、この方向性である程度は公正に給与を決定できるかもしれない。

 しかし、例えばある社員が、2009年はほとんどプロジェクトにかかりっきりで、日常業務は他のメンバーに任せていたのに対し、2010年は全くプロジェクトがなく日常業務に専念していたとする。するとこの社員は、2009年は日常業務をやっていないにも関わらず、基本給とプロジェクトの報酬を両方受け取ることになるため、給与の総額が跳ね上がる。ところが、2010年は日常業務しかやっていないので、今度は一気に給与の総額が下がってしまう。この点をどう調整するか?といった問題はあるだろう。

 (すみません、やっぱりまだまだ続きます)

(※1)以前の記事「これからの人事制度は「上を下への人事異動」が必要になる?」、および「戦時には戦時の人事制度ってものが必要だ」を参照。
(※2)野中郁次郎、竹内広高、梅本勝博著『知識創造企業』(東洋経済新報社、1996年)
December 10, 2010

「顧客生涯価値」と「社員生涯価値」のまとめ(2)−『バリュー・プロフィット・チェーン』

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ジェームス・L. ヘスケット
日本経済新聞社
2004-12
おすすめ平均:
成功するための秘訣とは?
バリュー・プロフィット・チェーン
翻訳の稚拙さが、星二つを減ず
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 (その1からの続き)

 ELVは、「その社員が入社してから退職するまでに企業にもたらす収益の合計」と定義できる。同書には具体的な数式が載っていなくて残念なのだが、CLVの計算式を参考にすると、こんな感じになるのではないだろうか?

 ELV={その社員が担当している既存顧客のCLVの総和(A)
     +その社員が獲得した新規顧客のCLVの総和(B)
     +その社員が影響力を及ぼしている既存社員のELVの総和(C)
     +その社員が誘引した新卒・中途社員のELVの総和(D)}
    −{その社員の採用コスト
     +その社員に対して支払う給与・賞与の総和
     +その社員の雇用を維持するのに必要なその他のコスト}

 理論上、全社員のELVを合計すると、その企業の全顧客(将来の潜在的な顧客も含む)のCLVの合計に等しくなるはずである。

 (A)と(B)は「その社員が担当している顧客のCLVの総和」と一括りにしてもよいのだが、あえて既存顧客と新規顧客に分けておいた。どんなに企業が努力をしても、既存顧客の流出を100%防ぐことは不可能だ(極端なことを言えば、既存顧客が死亡[倒産]してしまえば、それだけでも顧客の流出になる)。流出した既存顧客の利益を取り戻し、かつ残りの既存顧客が毎年自社に支払ってくれる金額の伸び率を上回るスピードで企業が成長しようとするならば、新規顧客の獲得が必須要件である。よって、この2つは分けておいた方が、管理上有益であると思われる。

 (C)と(D)は、CLVでいうところの「紹介顧客」の価値に該当するものである。(C)は社内に対して、(D)は社外に対して発せられる社員の影響力の効果を意味する。マネジャーは、部下に対するトレーニングやリテンションを通じて、彼らの能力やモチベーションを向上させ、部下本来の能力を超えるパフォーマンスを引き出すのが仕事である。マネジャーの働きによって上積みされた部下のCLVが、上記の(C)に該当する。また、マネジャーでなくても、後輩や同僚に対して影響力を有する社員であれば、その社員のELVには(C)が加わる。

 逆に、部下や後輩を自分の手足のようにこき使い、彼らをストレスで休職に追い込んだり、彼らの離職を早めてしまったりする消耗型マネジャーの場合は、(C)がマイナスになる。

 (D)はその社員が採用活動に積極的に関与している場合に加算される項目である。日本企業は人事部が採用の権限の大部分を握ってしまっているため、ライン部門の社員で(D)を計算するのはちょっと難しい。これに対し、グーグルやゴールドマン・サックスのように、候補者の面接に何人(時に何十人)もの現場社員が関わるような場合は、その現場社員のELVに(D)が加わることになる。

 (D)についても(C)と同様に、社外に対して自社のネガティブなイメージを発信し、本来ターゲットとしていた優秀な候補者を遠ざけてしまうような厄介な社員については、やはりマイナスの金額となる。

 しかしながら、自分で書いておいてこんなことを言うのも何なのだが、ELVはCLV以上に複雑すぎておそらく計算できない(汗)。(A)と(B)はまだ何とかなりそうだが(それでも、前述のようにCLVの計算には困難がつきまとう)、(C)と(D)は社内外の複雑な人間関係を仔細に分析しないことには金額換算することができない。

 (C)について言えば、その社員が影響力を及ぼしている社員を特定した上で、影響力の程度を測定する必要がある。例えば、Xというマネジャーの下にYという優秀な部下がいたとする。Yは現在の仕事にあまり満足しておらず、3年後ぐらいに転職しようと思っていたものの、Xの献身的なフォローによって転職を思いとどまったというケースを考えてみる。

 この場合、マネジャーXにとって(C)に該当するのは、Yが4年後以降も今の会社にもたらしてくれるであろう収益の合計になる。ただ、実はYにはZというメンターがついており、Zの存在もYの意思を大きく左右していたとすると、「Yが4年後以降も今の会社にもたらしてくれるであろう収益」を、XとZの影響力の程度に応じて2人の間で分かち合うようにしなければならない。

 こうした計算をするには、「Yが3年後に転職しようと思っていたこと」、「Xがどの程度Yを献身的にフォローしていたのか?」、「Zは殿程度Yを献身的にフォローしていたのか?」という事実を、ELVを計算する部署(人事部?)が把握しておく必要がある。とはいえ実際問題として、そんなナイーブな情報を事細かに掌握して数値に反映させるのは神の仕業に近いだろう。

 それよりも、この式を整理して思ったのは、どんな組織でも、社員の役割というのは大きく分けると、

 (A)既存顧客の離脱を防ぎ、それぞれの顧客の収益を高めること
 (B)部門や企業の成長のために、収益ポテンシャルの高い新規顧客を獲得すること
 (C)トレーニングやリテンションによって、部下や後輩などのスキルを底上げし、転職を防ぐこと
 (D)有能で意欲のある新卒社員・中途社員の採用に貢献すること

という4つに整理できるということだ(スタッフ部門の場合は、社内顧客に置き換える)。まぁ、文章にしてしまえば至極当たり前のことなんだけどね。この4つの役割の比重と目標の大きさを、ポジションや入社年次によって調整する。

 マネジャーに上がる前の若手社員であれば、(A)と(B)の比重が大きくなる(営業担当者を例にとって、(A)と(B)の比重と目標の大きさが、入社年次によってどのように変化するかを考察した記事として、「新人・若手には「会社にとってのリスクは低いが、完結した仕事」を任せよう(1)」、「新人・若手には「会社にとってのリスクは低いが、完結した仕事」を任せよう(2)」がある)。(C)についても、後輩に対するOJTやメンタリングを実施することで、部分的にその役割を担うことになる。

 マネジャーに上がれば、やはり(C)が中心となる。ただ、最近のマネジャーは部下の育成に専念していればいいという状況ではなく、自らも実績を上げることが求められている。ここで言う実績とは、既存顧客の深耕というよりも、会社の成長に大きく貢献するような、重要な新規顧客の開拓を指すはずである。

 これに加えて、マネジャーは人事部と協力しながら、新卒・中途社員の確保をサポートすることもあるだろう。リクルーティング制度がない会社であっても、マネジャーが会社説明会で事業の内容を説明したり、採用HPで自社PRをしたり、面接を実施したり、内定後のフォローをしたりと、採用に関する役割は重要性を増しているように感じる。

 ELVを正確に計算することよりも、上記の4つの視点から各職種、各ポジションの役割の比重と目標の大きさを定義し、その達成度を評価する人事制度を構築することの方が、実務上は有益であると思われる。

 もちろん、ELVが正確に計算できないのだから、人事制度も完璧を目指すことは非現実的だ(あっさりとそう言い切ってしまっていいものか?という突っ込みはナシね)。それよりも、どの社員が見ても納得でき、かつ人事部・現場社員双方の運用負荷を考慮した役割・目標の設定と評価の方法を確立する方が、よっぽど大切である。
October 25, 2010

新人・若手には「会社にとってのリスクは低いが、完結した仕事」を任せよう(2)

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 (その1からの続き)
 新人・若手には「会社にとってのリスクは低いが、完結した仕事」を任せよう(1)

 営業担当者の仕事を前回の記事で示した4つのフェーズに当てはめるならば、理想的なパターンは次のようになるのではないだろうか?

第1フェーズ:新規の小口顧客
 入社してからしばらくは新規の小口案件を担当する。小口であるから、失注が多くても会社へのダメージは少ない。小さな商談を最初から最後までやりきることで、営業活動のコツをつかんでいく。また、この時期に商談の敗戦を多く経験することは、メンタルの強化にもつながる。

第2フェーズ:既存の小口顧客
 第1フェーズで獲得した小口顧客を維持し、継続取引へと持ち込む。小口とはいえ、リピート受注が続けば会社にキャッシュを落とすことができるようになる。このフェーズでは、顧客と密なリレーションを構築し、顧客を深く理解することが求められる。そうした活動の中で、それぞれの顧客のビジネスポテンシャル(=将来の受注金額の見込み)に伸びしろがあるか否かを見極めることも大切である。

第3フェーズ:既存の大口顧客
 第3フェーズでの主要な役割は、前フェーズの小口顧客のうち、ビジネスポテンシャルが大きい顧客を大口顧客へと押し上げることである。小口の継続案件を受注し続けるより、1回の受注金額を拡大させる方が難易度が高い。これまで購入してもらっていた商品に、関連商品やサービスをつけて商談規模を膨らませようとするならば、顧客の潜在ニーズをじっくりと見極める必要があるからだ。大口顧客化に成功すれば、顧客と太いパイプが形成され、会社に多額のキャッシュを落としてくれるようになる。

第4フェーズ:新規の大口顧客
 第4フェーズでは、最も営業工数がかかり、最も難易度が高い新規の大口顧客にチャレンジする。市場におけるアーリーアダプター(早期採用者)のような、新商品を一気に市場に浸透させるための突破口となる顧客や、競合を打ち負かすために会社として絶対に獲りたい顧客を狙う。これは非常にリスクが高い仕事ではあるが、会社の将来を左右する重要な仕事である。

 第1フェーズをすっとばして、第2〜第3フェーズで細切れの仕事をさせると、社員が思うように成長しない。第2〜第3フェーズの顧客は既存顧客であるから、一からリレーションを構築する大変さが若手には伝わらない。また、既存顧客の商談はルーチン化している仕事も多くなってくるから、仕事のやり方を自ら設計する機会も少ない。この状態のまま第4フェーズの仕事をやらせようとしても、社員は勘所が解らないのである。

 大口の優良既存顧客を多数抱えている企業であれば、それでも収益を上げ続けられるかもしれない。しかし、顧客のバーゲニングパワーが強く、顧客がいつ離反するか解らない場合は、悠長なことを言っていられなくなる。

 先日、二次請けのSIerに勤める私の知人が、次のような悩みを語ってくれた。「うちの会社は大手SIerの下請けだから、元請けとうまく交渉すれば仕事は何とかもらえる。でも、うちは二次請けの中でも力が弱く、自分の下についている若手はいつまでも小さいプログラムしか開発できない。だから、開発スキルがなかなか上がらないし、まして、プロジェクトマネジメントのスキルを身につけようとか、ユーザ企業に積極的に営業をかけて案件を取りに行こうといった発想が生まれてこない。

 下請けだから、仕事を切られる時は本当にあっさりと切られる。仕事を切られた後に、若手がやっていけるのかどうか、見ていてとても心配になる」

 この会社の1つの方向性として考えられるのは、大手SIerがあまり攻めていない中堅企業から元請けで開発案件を受注することだろう(それでも最近は、どこの大手SIerも大手企業相手のビジネスだけでは苦しいので、中堅企業に食い込もうとしており、彼らとの競争は避けられない)。そして、二次請け案件の中でも特に小さな仕事しかやっていない新人・若手を積極的に元請け案件に移し、ある程度まとまった規模のプログラム開発を任せることではないだろうか?

 もちろん、営業と違ってシステム開発は失敗の許容度が低い。ただ、大手企業のように絶対に失敗が許されないような大規模案件に比べれば、中堅企業の場合は多少失敗をしても、顧客との交渉次第でリカバリするチャンスがあるように思う。そうした失敗を経験することは、開発プロセスのマネジメントスキルや顧客とのリレーション構築力を習得する機会でもある。中堅企業相手のビジネスは、会社にとってはそれほど売上・利益貢献をしないかもしれないが、新人・若手社員にとってはこの上ない学習ステージを用意してくれる。

 前回の記事で、第1フェーズの仕事は「失敗しても会社にとって痛手が少ない、小規模な仕事」と書いたが、これは決して、大勢に影響が出ないように仕事を細分化して任せればよいという話ではない。大勢に影響は出ないが、ある程度完結した仕事を担当させる必要がある。そうした仕事を通じて、新人や若手は、失敗を受け入れる度量や、仕事を自分一人でやりきることの難しさと責任を学習していくものだと思う。


《2011年3月31日追記》
 バランス・スコア・カード(BSC)で有名なロバート・キャプランとデイヴィッド・ノートン2人の著書『BSCによるシナジー戦略』を読んでいたら、新入社員ではないが、新人マネジャーを育成するGEのユニークな制度についての記述を発見したので、紹介しておきたいと思う。
 GEの元CLO(Chief Learning Officer:最高学習責任者)であるスティーブ・カーは、製品ラインと地理的多様性によって、GEが世界中の「ポップコーン工場」で働く若く有望なマネジャーにユニークな機会をどのように提供できるかについて述べている。「ポップコーン売り場」とは、その成否がGEの年次営業損益の最初の3桁(※これは誤訳で、下3桁が正しい)のいずれにも影響を与えないほどの小規模事業のことである。GEはこれらの事業のマネジャーの業績に関して集約した情報を利用し、誰を昇進させるべきか、誰に追加投資を行うべきか、世界中で経営されているGEのさまざまな別の子会社におけるより大きな責任を誰に与えるべきかといったことを評価している。
 「ポップコーン工場」にいる若手のマネジャーは、担当事業が小規模であるとはいえ、その損益に責任を負っているという点では、「完結した仕事」に従事していると言ってよいだろう。GEでは、「小規模の完結した仕事」で一通り事業をマネジメントできる能力を身につけながら、段々と大きい事業のマネジメントを担うように、キャリアパスが設計されている。

BSCによるシナジー戦略 組織のアラインメントに向けて (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)BSCによるシナジー戦略 組織のアラインメントに向けて (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
ロバート S キャプラン デビッド P ノートン 櫻井 通晴

武田ランダムハウスジャパン 2007-10-12

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