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May 31, 2012

個人の貢献度に応じた業績給の算出方法は永遠の課題―『「競争力再生」アメリカ経済の正念場(DHBR2012年6月号)』

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Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 06月号 [雑誌]Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 06月号 [雑誌]

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 DHBR2012年6月号のレビューはこれで最後。最近はドラッカーとDHBRと『日経情報ストラテジー』でブログの記事を引っ張りすぎだな・・・。もっと他の書籍のレビューや、自分の仕事のことも書かないと。

歪んだ報酬制度を是正せよ インセンティブ・バブルの憂鬱(ミヒル・デサイ)
 (株式)市場連動型報酬は説得力のある論理的根拠に基づいている。ただし、この構想を実行に移すには、「手腕による成果と、純粋に運だけによる成果とをどのように区別し、さらに区別した成果をどのようにして報酬の基盤とするのか」というきわめてやっかいな問題を解決する必要がある。実に難しい作業の始まりである。

 前述の報酬メカニズムが効果を発揮するには、「普通に成し遂げられる成功」を上回った部分についてのみ、経営者と投資マネジャーが報酬を受けるようにしなければならない。言い換えると、ほとんど何もしないでも得られる利益というものがあり、そのような利益は報酬の対象外とすべきである。どのような船でも潮が満ちれば一様に浮かび上がるのだから、経営者に対しては「超過利益」に対してのみ、報酬を提供すべきである。
 経営陣や投資マネジャーの報酬は株価連動部分の割合が大きい。これはアメリカに限った話ではなく、日本でもそうである。プライスウォーターハウスクーパーズの「役員報酬サーベイ2011」によると、業績連動報酬の導入比率は緩やかに増加しており、とりわけ従来型のストックオプションに代わり、「株式報酬型ストックオプション」(権利行使価額を極めて低く(多くの場合1円)設定し、株式譲渡と同じ効果を狙ったストックオプション制度)を導入する企業が増えているという。

 しかし、株価連動型の報酬制度は、経営陣(や投資マネジャー)の報酬を不当に釣り上げてきた(=つまり、「インセンティブ・バブル」を引き起こした)、と論文の著者ミヒル・デサイは主張する。その問題点は、引用文で述べられている通りである。これは私もかねてから感じていたことであり、株価を用いて経営陣の手腕を評価すると、過大評価につながる可能性がある。HBR誌は、1995年から2007年に就任したCEO1,999人について、在任期間中のTSR(total shareholder return:株価の上昇または下降分と配当の総利回り)を算出してトップ100のランキングを作成したが、このランキングの難点については以前も触れた。

 優れたリーダーは最短距離を走らない(後半)−『人と組織を動かすリーダーシップ(DHBR2010年5月号)』
 なぜ『理系のトップはなぜダメなのか』という本がダメなのか?

 《参考》ランキングはHBR誌のHPにも掲載されている。
 The Best-Performing CEOs in the World | Harvard Business Review

 また、別の視点から株価連動型報酬の問題を指摘したことがある。以前の記事「【論点】経営者の報酬を規定する評価指標とは何か?―『リーダーの役割と使命(DHBR2011年12月号)』」では、ウォルト・ディズニー社の経営陣の報酬について触れた。ロバート・A・アイガーCEOの報酬は完全な株価連動型ではなく、ROIC(投下資本利益率)、営業収入(operating income)、EPS(一株当たり利益)といった指標を加味したものになっている。ただ、これらの指標もやはり経営陣の手腕を過大評価してしまう危険性がある。言うまでもなく、営業収入はアイガーCEO1人の力で上がるわけではない。

 アイガーCEOは、自らの職務を(1)戦略を決定し、その一番の提唱者となり、そして「あれこそ我々が向かっているところだ」と宣言すること、(2)自社に採用すべき基準を設定すること。具体的には、社員の行動規範、社員同士の関係、自社と自社製品に求められる倫理基準、そして自社のグローバルな行動規範を定めること、(3)優れた社員を採用し、その意欲を喚起すること、の3つであると明言している。

 だとすれば、これら3つの職務の遂行度合いが、先ほどの財務指標にどの程度のインパクトを与えたのかを測定し、インパクトの大きさに基づいて報酬を決定すべきではないだろうか。さらに、ミヒル・デサイの問題提起と絡めると、「超過利益」のうち、経営陣の貢献による部分を報酬の根拠とすべきなのではないか?

 とはいえ、第一の課題として、この「超過利益」の計算が難しい。論文によると、以下の引用文にあるように、最近の金融論が1つのモデルをつくり上げたとされているが、多分すごく難解な数式であろう(論文ではその詳細にまでは踏み込んでいない)。
 この問題に対し、近代金融論はギリシャ文字の「アルファ」と「ベータ」で表される、まったくみごとな概念を構築した。ある企業がどの程度、市場リスク(または市場に関連したリスク要因)にさらされているかによって、期待利益、すなわち通常利益の大きさが決まる。(中略)このように市場に対する動きに応じて企業がその投資家へ与えるリスクの合計が「ベータ」である。

 一方、個々の株式や投資戦略には個々の「ベータ」から見て期待される利益値があるが、企業や投資家がそれを上回る利益を上げれば、上回った分すべてが「アルファ」となる。アルファとはすなわち、満ち潮による浮上分をさらに上回った部分を指す。
 仮に「超過利益」を計算できたとしても、第二の課題として、その超過利益のうち、経営陣による貢献度の割合を特定するのがまた一苦労である。そして同様の問題は、経営陣の報酬だけでなく、一般社員や管理職の報酬(より具体的には、業績との連動によって決まることが多い賞与や、管理職の基本給に占める業績連動部分)を決定する際にも生じる。

 このブログでも、報酬の決定方法について断片的にいくつか記事を書いてきたが、体系だった方法論からはまだほど遠い(汗)。算出モデルの複雑さもさることながら、他にもいろいろな課題がある。

 例えば、利益貢献度に応じて報酬が決まるのならば、損失を出してしまった場合には社員から罰金をとらなければならないことになってしまう。しかし、法的にも倫理的にも、社員に金銭的な責任を負わせることはできない(株主でさえ、出資額以上の損失には責任を負わないのに、1円も出資していない社員が損失を被るのはおかしい話である)。さらに、損失=失敗であっても、会社にとって価値のある失敗であることもあり、それはむしろ評価に値する。イノベーションに成功している企業は社員の失敗に寛容であることも、多くの論者が指摘していることである。

 功ある者には禄を、徳ある者には地位を−『人事と出世の方程式』
 「顧客生涯価値」と「社員生涯価値」のまとめ(1)−『バリュー・プロフィット・チェーン』
 「顧客生涯価値」と「社員生涯価値」のまとめ(2)−『バリュー・プロフィット・チェーン』
 「人材の柔軟な配置変更」の実現に向けてクリアすべき課題(1)―『イノベーションの新時代』
 マネジャー(管理職)の評価方法に関する素案
 「イノベーションに失敗した人」の評価方法に関する素案

 経営陣から現場の一般社員に至るまで、各個人の貢献度に応じて業績給を算出する方法の構築は、人事・労務分野の永遠の課題であろう。この問題があまりに複雑すぎるため、多くの企業では、もっと解りやすい目標管理制度、あるいは最近ではコンピテンシー・モデルを導入して、目標の達成度合いやコンピテンシーの得点によって報酬(+昇格の有無)を決定するのであろう。

 だが、目標管理制度は、それぞれの社員の目標がお互いにどのように作用して企業の最終成果に結びつくのか、そのシステマティックな関係をきちんと検討しないまま、「とりあえず人事の言う通りに目標を立てればいいんでしょ?」みたいな態度に現場が陥ると、簡単に形骸化する。また、コンピテンシー・モデルも、自社の戦略から導かれる人材要件や、ハイパフォーマーの行動特性をじっくりと研究せずに作ってしまうと、抽象的な職能資格制度と区別がつかなくなるし、現在のハイパフォーマーが将来の成功を約束しているわけではないので、コンピテンシー・モデルが将来の事業変化についていけなくなるリスクを忘れてはならないと思う。
August 09, 2011

「できるヤツでも組織の価値観に合わなければクビ」のGE流

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 先日の「GEの「9Blocks」というユニークな人事制度」の続きとして、もう1つGEの人事制度の特徴を紹介したいと思う。

 GEは次世代のリーダーを育成するにあたり、「リーダーシップ・ブランド」なるものを構築しようとした。リーダーシップ・ブランドとは、リーダーが何を達成すべきか(成果)、そしてそれをどのように達成すべきか(行動様式)を表すイメージ像である。言い換えれば、GEはリーダーに対して、単に高い成果を出すだけではなく、GEの価値観に沿った形で成果を上げることを要求している。ジャック・ウェルチは、GEのリーダーに期待することとして、非常にシンプルな単語を並べた。つまり、「スピード、シンプル、自信」―この3つだけである。

 だが、これではあまりに抽象的であるため、それぞれの要素が具体的にはどのような考え方や思考パターン、行動様式や価値規範を意味するのか、社内で議論が重ねられた。その結果でき上がったのが、次のような「360度評価シート」である。
要素:スピード
 1.決断は素早く柔軟である
 2.経営状況や職場環境を変えることに積極的である
 3.顧客第一を熱心に追求している
 4.顧客志向の目的を明確にしている
 5.明確なビジョンを示し、それを遂行している

要素:シンプルさ
 1.情報はオープンかつ完全に共有する
 2.「いつものやり方」に固執しない
 3.創造的な問題解決、改革を奨励している
 4.やるべきことをやる、という基本に忠実である
 5.スリム化した組織を運営している

要素:自信
 1.困難に前向きに立ち向かい、挑戦するように励ましてくれる
 2.私に対し尊敬の念をもって接し、私の能力を評価してくれる
 3.私が変化に対応できると信じている
 4.個人として職業人としてのインテグリティーを尊重している
 5.健全な商業倫理を自らが示している
 6.自分や同僚が成長できるような刺激を与えてくれる
 7.厄介な事態は直接扱ってくれる
 8.1つの状況について、要素を直視できる
 9.業績を報奨に正確に結びつけている
 10.ポジティブ・フィードバック、認識、課題を活用する
 この360度評価シートは、手始めにGEキャピタルで運用されることなった。GEキャピタルは、経営幹部を対象とした「リーダーシップ・チャレンジ・ワークショップ」を開催した。ワークショップの事前課題として、それぞれの経営幹部は、自分の同僚や部下、さらには上司にこのシートを記入してもらい、同時に本人による自己評価も行った。

 同僚や部下たちのスコアの平均は、ワークショップ当日に明らかにされる。そして、その平均スコアと、自分の回答結果を比較する。ワークショップの参加者たちは、周囲の評価結果から見えてくる自分の強みと弱みを認識する。加えて、自己評価と他者評価がなぜズレているのかを考察する。ワークショップの最後には、長所をさらに伸ばし、短所を改善するための行動計画を作成する。

 最初はGEキャピタルの経営幹部を対象にスタートした「リーダーシップ・チャレンジ・ワークショップ」は、やがてGEのあらゆる事業部門でも開催されるようになり、数百人のマネジャーがGEの「リーダーシップ・ブランド」を理解するようになった。

 この手のワークショップであれば、GE以外の会社でもやっているところは多い。手前味噌で恐縮だが、私自身もこうした自己評価と他者評価を組み合わせたマネジャー向けの研修をやったことがある。ただ、ここで終わらないのがGEであり、ウェルチである。ウェルチは、先ほどの360度評価で表現されているリーダー像を進化させ、新たに「GEバリュー」というものを発表した。
GE幹部は・・・常にゆるぎないインテグリティーと共に
・優秀さに対する情熱を持ち、官僚主義を嫌う
・誰からのアイデアにもオープンであり・・・そしてワークアウト(※)に積極的に関与する
・品質に生き・・・競争優位の形成のためにコストパフォーマンスとスピードを促進する
・あらゆる人を巻き込むだけの自信を持ち、境界のない振る舞いをする
・鮮明で現実に根差したビジョンを創出し・・・そしてそれを全構成員に伝達する
・自らが活力に溢れ、他者にもエネルギーを与える能力を有している
・ストレッチ・・・つまり積極的なゴールを定め・・・進歩に報い・・・さらに責任とコミットメントについて理解している
・変化を脅威ではなく・・・機会と見る
・グローバルなブレーンを持つ・・・そして多様化したグローバルなチームを構築する
(※以上は全て原文ママ)
 そして、ウェルチは「成果」と「バリュー」という2軸を用いて4つのボックスからなるマトリクスを作成し、各事業部門の経営幹部をを4つのタイプに分類した。

 ・タイプ1=成果を出し、GEバリューを体現している
 ・タイプ2=成果を出さず、GEバリューも体現していない
 ・タイプ3=成果を出していないが、GEバリューを体現している
 ・タイプ4=成果を出しているが、GEバリューを体現していない

 その上で、驚くべきことに、年次の役員会議で「タイプ4」に該当するマネジャーを解雇したのである。つまり、どんなにハイパフォーマーであっても、GEが目指しているリーダー像や、GEが大切にしている価値観に合わなければクビになる、という人事制度を導入したわけだ。

 タイプ4のマネジャーを”追放”するという判断を下すには、並々ならぬ勇気がいる。なぜならば、その人は短期的には成果を上げてくれているわけであり、何かとうるさい株主が要求する高い業績水準を達成するには不可欠な人物だからだ。それでもクビを切ったのは、旧来的なGEのリーダーは官僚主義的であり、時には強権を発動し、部下を搾取してでも成果を上げようとする傾向があったためである。こうしたリーダーを野放しにしておくと、長期的に見れば組織は疲弊し、業績の悪化につながる危険性がある。

 役員クラスの人事異動というのは、その企業が何を重視しているのかを暗示する重要な情報である。特定の部門から多くの役員が登用されれば、会社はその部門を成長エンジンとみなしていることが解る。女性社員から定期的に役員が誕生すれば、その会社はダイバーシティ・マネジメントに本気で取り組んでいることが伝わる。あるいは、あまりいい例ではないけれども、社内に派閥抗争があって、ある派閥のトップが役員から外された場合は、その人と同じ派閥に属するマネジャーが全員干されたことになる。

 ウェルチの人事異動も、これと同じように重要なメッセージをGE全体に発信する結果になった。もはやGEは、最終的な業績だけ上げていればOKという会社ではない。”GEバリューを体現しながら”成果を創出することが必須となったのである。

(※)「ワークアウト|@IT情報マネジメント用語事典」を参照。

《参考》今回の記事は、デーブ・ウルリヒ著『GE式ワークアウト』(日経BP社、2003年)を参考にしている。本文中の引用も、本書からのものである。

デーブ・ウルリヒ
日経BP社
おすすめ平均:
高度な体系書
組織変革の具体的エッセンスが読み取れる良書
不確実性に対応するスピーディな意思決定への解のひとつがここに。しかして、そのまま移植
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August 08, 2011

GEの「9Blocks」というユニークな人事制度

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 ジャック・ウェルチがGEのCEOを務めていた期間は、アメリカを、そして世界を代表する優良企業と言えば、ほぼ例外なくGEの名前が挙がり、GEが実行した様々な施策(ベンチマーキング、シックスシグマ、セッションC、ワークアウトなど)は、世界中のビジネスパーソンや研究者の関心を引いたものだ。今日は、私が知っている範囲で、GEの特徴的な人事評価制度について書いてみたい(ただ、現在のGEがどのような人事制度をとっているかは、申し訳ないが情報がなくて解らない。あくまでも、ウェルチの在任期間中のものとして捉えていただければと思う)。

 GEはまず、厳格な成果主義を取っている。ここで1点注意しておきたいのは、「結果主義(業績主義)」と「成果主義」の違いである。「結果主義」とは、あくまでも最終的な業績のみを評価するやり方である。営業担当者であれば売上高や粗利率、製造責任者であれば在庫回転率や出荷額など、財務上の結果に結び付きやすい指標に基づいて評価を行う。

 他方、本当の意味での「成果主義」では、業績のみを評価するのではなく、そこに至るまでの「中間指標(プロセス指標)」や、最終的な結果に結びつきやすい「行動」も評価対象とする。先ほどの営業担当者の例で言えば、売上高や粗利率に加えて、「中間指標」として、営業活動に対する顧客の満足度や、見込み顧客の商談化率、商談の進捗率などといった指標を用いる。また、「成果に結びつきやすい行動」とは、いわゆるコンピテンシーのことだ(※1)。最終的な結果、中間指標、コンピテンシーの3つをバランスよく評価するのが、本来の意味での成果主義である。

 「成果主義」というと、成果が大きければ大きいほど高く評価されるような感じにも聞こえるが、GEは「成果の大きさ」ではなく、「成果を上げる生産性の高さ」で評価を行っている。なぜならば、成果の大きさで評価してしまうと、育児のために時短勤務制度を利用している女性社員がどうしても不利になるからだ。こうした弊害をなくすためにも、成果の大きさではなく、生産性に基づいて評価を行っている。こうした評価方法は、GEがダイバーシティマネジメント、とりわけ優秀な女性社員をGEにつなぎとめ、その能力を最大限に活用するために、重要な役割を果たしている。

 以上の前提を踏まえて、GEの「9Blocks」という考え方について説明したいと思う。これは、「直近のパフォーマンス(成果)」と「将来的なポテンシャル」という2軸で社員をカテゴライズする方法である。直近のパフォーマンスの軸は、「上位20%」、「中位70%」、「下位10%」に分けられる。一方、将来のポテンシャルの軸は、「今すぐにでも上位職務の担当が可能」、「2〜3年以内に上位職務の担当が可能」、「今の職務が限界」に分けられる。

 これによって、下図のような9つのボックスからなるマトリックスができあがる。このマトリックスが面白いのは、単にパフォーマンスがよいからといって高い評価が得られるわけではなく、またパフォーマンスが低くても幾何の猶予期間が与えられるということである。

GEの9Blocks(人事評価制度)

 営業担当者であれば、市場に追い風が吹いていた、上司や同僚の強力なサポートがあった、競合他社の担当者がボーンヘッドをやらかして、偶然にも自分のところに案件が転がり込んできた、などといった様々な運が作用していた場合、一番右上のボックスではなく、その左隣のボックスに移されてしまう。

 これとは逆に、十分な能力もあり、これまでもそれなりのパフォーマンスを上げてきた人が、今期はたまたま不運が重なって思うような成果が出なかったとしても、一番左下のボックスではなく、その右隣のボックスにプロットされる可能性がある。

 すでにお解りのように、一番右上のボックスの社員は最も優秀な社員であり、逆に一番左下のボックスの社員はC級社員ということになる。そして、GEでは、このC級社員は問答無用で解雇される(日本では直接解雇することが難しいので、「肩たたき」みたいな形で退職を促すのだと思われる)。毎期とも、一番左下のボックスにプロットされる社員が出てくるから、定期的に一定の社員が解雇されるわけだ。こうして、GEはC級社員が社内にとどまり続けることを防ぎ、組織の新陳代謝を促しているのである(※2)。

(※1)「コンピテンシー|Wikipedia」や「コンピテンシー|@IT情報マネジメント」を参照。
(※2)余談になるが、グーグルは世界中から優秀な人材を集めるべく、一般の企業とは比べ物にならないほど複雑で長期間にわたる採用ステップを踏んでいることで知られる。グーグルがそこまで血眼になって採用活動を行っているのは、「バカを入社させてしまうと、そのバカが周囲にも伝染してしまうから」であるという。