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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
January 25, 2011
M・ポーターの競争戦略論のグローバル版といった感じ―『コークの味は国ごとに違うべきか』
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(前回からの続き)
同書は、各国の差異に着目して適切な戦略を立案するのに役立つフレームワークを提供してくれる。一連のツールを眺めてみると、マイケル・ポーターが提唱した競争戦略の立案プロセスと非常によく似ているとの印象を受けた(なので、今回のブログのタイトルを「M・ポーターの競争戦略論のグローバル版といった感じ」としてみた)。
ポーターの競争戦略論は、大まかに言えば(1)できるだけ魅力的な業界を選択し、(2)その業界で利益を上げるためのポジショニングを決定する、という流れになっている。そして、(1)については「ファイブ・フォーシズ・モデル(5 Forces Model)」が、(2)については「3つの基本戦略」(=差別化戦略、コストリーダーシップ、集中戦略)というフレームが与えられてる。
ゲマワットが提案しているグローバル戦略の立案ステップは、次の通りである(同書の最終章では5つのステップに分けて整理されているが、私なりの理解に従ってもうちょっと簡素化してみた)。
(1)本国から見て、魅力的な国を選択する
ポーターが「魅力的な業界」の選択を出発点としたように、ゲマワットは「魅力的な国」の選択を出発点としている。ゲマワットが開発した「CAGEの枠組み」が、魅力的な国の発見を助けてくれる。
C:文化的な隔たり(Cultural)
言語、価値観、規範、宗教、民族、気質などの違い。
A:制度的な隔たり(Administrative)
法律、政策、政治的背景からできた制度などの違い。
G:地理的な隔たり(Geographical)
本国と進出先の国の間の物理的な距離。
E:経済的な隔たり(Economic)
購買力、労働コスト、資本の規模などの違い。
ここでは何を持って「魅力的な国」とするのかが論点となるが、ゲマワットは、まず第一に本国との差異が「小さい」国へ進出するのが望ましいと指摘している。この点については、グーグルが中国で苦戦したことや、役人の汚職が横行しているロシアへの進出は難しいと言われていることを思い出せば、感覚的に理解できる。なお同書では、ウォルマートの国別収益がアメリカから遠い国ほど悪くなるという興味深い分析結果も披露されている。
もう1つは、本国特有の差異が自国にとって「有利に働く」ケースである。最も解りやすいのは労働コストの差である。インドのシステムエンジニアの人件費が先進国に比べて非常に低い点を活かして、インドのITサービス企業各社がオフショア開発を積極的に受託したのはその一例である。
(2)その国で取るべき戦略を選択する
ポーターが「3つの基本戦略」を提示したのと同様に、ゲマワットも「AAA戦略」という3つの戦略オプションを提示している。どれか1つの戦略に特化するのが望ましいが、場合によっては複数の戦略を組み合わせた方がよいこともある。
適応戦略(Adaptation)
国ごとの差異に順応する。(例:コカ・コーラ、マクドナルド、グーグル)
集約戦略(Aggregation)
国ごとの差異のうち、類似するものの集約によって差異を部分的に克服する。(例:トヨタ)
裁定戦略(Arbitrage)
国ごとの差異を制約条件として扱うのではなく、その差異を活用する。(例:インドのITオフショア開発)
私が理解しているところでは、(1)で本国との差異が「小さい」国へ進出することを選択した場合は「適応戦略」か「集約戦略」が、本国との差異が「有利に働く」国へ進出することを選択した場合は「裁定戦略」が自ずと選択されるように思える。
(3)戦略の有効性を検証する
このプロセスはゲマワット特有のものだが、(2)で選択した戦略オプションが本当に経済的な価値をもたらしてくれるかどうかをチェックするのが目的である。ここで使用するフレームワークは、「ADDINIG価値スコアカード」と呼ばれる。
A:販売数量/伸び率の向上(Adding Volume)
その戦略を実行すると、全社レベルで見た場合の販売数量の伸び率は向上するか?
D:コストの削減(Decreasing Cost)
その戦略を実行すると、コストの割合を下げることができるか?
D:差別化(Differentiating)
その戦略を実行すると、現地企業との差別化を図ることができるか?
I:業界の魅力と交渉力の向上(Improving Industry Attractiveness)
その戦略を実行すると、自社の交渉力を向上させることができるか?
N:リスク平準化(Normalizing Risk)
その戦略を実行すると、全社的なリスクを平準化することができるか?
(=特定の地域に極端に依存した収益モデルになっていないか?)
G:知識その他の経営資源と能力の開発(Generating Knowledge)
その戦略を実行するにあたり、既存の国や地域の知識・経営資源を移転することができるか?
進出先で新たな知識が創造される可能性はあるか?その知識は既存の国や地域にも適用可能か?
September 28, 2010
スライウォツキーの戦略論は面白くて好きだ−『プロフィット・ゾーン経営戦略』
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![]() | エイドリアン・J. スライウォツキー ダイヤモンド社 1999-08 おすすめ平均: ![]() 日本企業が遅れを取るビジネスデザインの法則と実例の数々 小企業の経営者や自営業の方にこそお勧めしたいと思います ビル・ゲイツは如何にして世界一の金持ちになったか |
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戦略とは何かを説明するのは結構難しい。何年か前、ある勉強会で先輩のコンサルタントから戦略の定義を聞かれたのだが、うまく答えられずに軽く叱られたほろ苦い経験がある。だけど、今なら多少はマシな説明ができるよ。戦略とは、
・中期的な時間軸(3年程度)で考えた場合に、
・いかなる顧客に対して、
・いかなる価値を提供し、
・他社との競争をいかにして制しながら、
・どのように利益を上げるか、
をめぐる構想のことである(しばしば「戦略は実行されなければ意味がない」と言われることからも解るように、戦略自体はあくまでも「構想」である)。どうだい?あの時先輩が「戦略とは、企業のあるべき姿のことだ」と自信ありげに言っていた定義に比べると随分と具体的でしょう?(その先輩の発言を聞いて、勉強会のメンバーが若干落胆したことも覚えている)
エイドリアン・スライウォツキーは、アメリカの『インダストリー・ウィーク誌』でピーター・ドラッカー、マイケル・ポーター、ビル・ゲイツ、ジャック・ウェルチ、アンディー・グローブとともに「経営に関する世界の6賢人」にも選ばれたことがある人物である。スライウォツキーの戦略論は、ポーターの戦略論と違って、スマートにまとまりすぎていないところが好きだ。
もともと経済学者であったマイケル・ポーターは、産業構造論に基づいて非常にシンプルな競争戦略論を構築した。ポーターは、儲かりやすい産業とそうでない産業があることに着目し、産業の魅力を測定するツールとして「ファイブ・フォーシズ・モデル」を開発した。
さらにポーターは、同一産業における各企業の業績に目を向け、儲かっている企業とそうでない企業の違いを分析した。横軸に売上高、縦軸に売上高対営業利益率をとって各企業をマッピングすると、多くの業界でVの字型のグラフになることが解った。つまり、売上規模が非常に大きいか、非常に小さい企業の中に高い収益を上げる企業があり、他方で多くの企業はそこそこの売上規模があるにもかかわらず低収益にとどまっているというわけだ。
高い収益率を実現する、すなわちV字の両端に上るための戦略としてポーターが提唱したのが、差別化戦略、集中戦略、コスト・リーダーシップ戦略という3つの競争戦略である。企業はこれら3つのうちどれか1つの戦略に集中しなければならない、そうしなければV字の底に落ちてしまう、とポーターは主張したのだ。3種類の戦略から1つ選べばいいというのだから、これほど解りやすいものはない。
ポーターに比べると、スライウォツキーの戦略論は割と複雑である。スライウォツキーの戦略論は、「利益モデル」という考え方に特徴がある。同書では、企業に利益をもたらす22(!)ものパターンが紹介されている。
もちろん、22の利益モデルの中から自社に合ったものを適当に選べばよいという単純な話ではなく、まずは「自社が顧客に対してどのような価値を提供するのか?」を決定することが大前提となる。顧客への提供価値が決まれば、適切な利益モデルがある程度絞られる。
例えば、ネットオークション事業のように、複数の売り手と買い手の間に立って取引を仲介する(この場合、買い手に対しては「選択肢を比較検討する手間を省く」という価値を、売り手に対しては「買い手を捜す手間を省く」という価値を提供することになる)ビジネスであれば、スライウォツキーが「スイッチボード型」と呼ぶ利益モデルが採用される。
ただし、単一の利益モデルで戦略が成立することはむしろ稀である。多くの場合、複数の利益モデルを組み合わせることによって、顧客への提供価値を増幅させ、同時に自社の利益を増やすことができるとスライウォツキーは言う。最近のITベンダーは、たとえ競合他社の製品であっても、それが顧客企業の経営課題の解決(ソリューション)に最も適しているのであれば、自社製品よりも優先して販売することがある。こうしたビジネスの利益モデルは、スライウォツキーの言葉を借りれば「ソリューション型」にあたる。
とはいえ、ITベンダーは自社製品へのこだわりを完全に捨てているわけではない。何かしら基盤となるハードウェアやソフトウェアを自前で開発し、競合他社の製品がその基盤の上でも動くようにしておく。そうすると、最初にその基盤製品を顧客企業に導入することができれば、後からその上に自社製品、他社製品を問わず様々な製品を追加していくことが可能になる。
最初に導入(インストール)した基盤製品をベースとして、追加販売した製品から継続的に利益がもたらされることから、スライウォツキーはこの利益モデルを「インストール・ベース型」と呼んでいる。顧客企業側も、ITベンダーごとの仕様や規格の違いを気にせずに、自由にシステムを拡張できるから、単純な「ソリューション型」よりも高い価値を享受することができる。
「利益モデル」は、戦略を実行する上での組織デザインに関するヒントも与えてくれる。それぞれの利益モデルには、モデルが本当に機能するために必要ないくつかのKSF(Key Success Factor:重要成功要因)がある。例えば、映画会社やレコード会社ように、次から次へとヒット作を世に送り出さなければならない「ブロックバスター型」という利益モデルがあるのだが、この利益モデルのKSFとしては、
・アーティストや俳優、脚本家、監督といった、クリエイティブ人材の才能を発掘する目利き能力
・(たいていは通常のビジネスパーソンよりもクセが強い)クリエイティブ人材をマネジメントし、動機づける能力
・ヒット作の定石を踏んだ作品を作る一方で、定石を打ち破る作品を試験的に制作するような、作品のポートフォリオ管理
・緩やかな予算管理と失敗に寛容な風土(ルールでガチガチに縛ったら創造性は発揮されない。また、何がヒットするか解らない業界なので、通常の企業に比べて多少の失敗は大目に見る寛容さも必要)
・「売れる」と思った作品は強力に売り込むプロモーション
などが挙げられる。これらのKSFを踏まえた上で、組織構造や人材、制度、IT、プロセスなどを設計していくことが、戦略を成功へと導くのである。22の利益モデルを基に、世の中の企業が一体どのような利益モデルを構築しているのか、そして利益モデルのKSFがどのように組織デザインに反映されているのか、なんてことを考えてみると、ちょっと厄介なパズル問題を解いているようで結構楽しい。
September 12, 2005
【ミニ書評】キャロル・ケネディ著『マネジメントの先覚者』
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![]() | マネジメントの先覚者 キャロル ケネディ Carol Kennedy ダイヤモンド社 2000-03 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
100年間のマネジメントの歴史を代表する40人の理論を一挙に解説したもの。1人につき数ページのボリュームなので、マネジメント論の全体を俯瞰するには持って来い。理論の説明のほかにも、個人的なエピソードもあったりして面白い。(科学的管理法で有名なフレデリック・W・テイラーは、ピッチャーは下投げより上投げのほうが効率がいいと主張して野球のルールを変えたとか、世界的ベストセラー『エクセレント・カンパニー』の著者トム・ピーターズは2日の講演で15万ドル稼いだとか。)
ちなみに表紙に描かれている5人は、真ん中がドラッカー、左から2人目がポーター、右から2人目が大前研一、一番左がミンツバーグだと思うが、一番右は誰の顔でしたっけ??


地に足が付いている分析。
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