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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
April 15, 2010
「バランス」の意味を再考してみる−『バランススコアカード−新しい経営指標による企業変革』
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過去の記事「スコアボードを見ずに野球ができるか!−プロセス指標の必要性」や「部門のミッションに合ったKPIを設定しよう」でKPI(Key Performance Indicator)の重要性に触れたが、KPIを語る上ではやはりこの本は欠かせないということで改めて読み返してみた。
バランススコアカード(BSC)の「財務の視点」、「顧客の視点」、「社内ビジネスプロセスの視点」、「学習と成長の視点」それぞれについて具体的な指標が示されており、またBSCを実際に導入している企業のBSCが部分的ではあるが紹介されているため、内容を理解するのに苦労することはない(多少、翻訳に難がある程度)。ただ、例示されている一部の指標がやや混乱を招くようにも感じるので、私なりの見解を書いておきたいと思う。
例えば、「社内ビジネス・プロセスの視点」の章では、研究開発部門のKPIとして「新製品売上高の割合」、「主力製品売上高の割合」(p139)が挙げられているが、これらは「顧客の視点」に入れるのがふさわしいだろう。代わりに、「新製品開発件数」や「新製品の市場投入リードタイム」、あるいは「実際に製品化された製品企画の割合」などが「社内ビジネス・プロセス視点」のKPIになりうるはずだ。
また、同様に「社内ビジネス・プロセスの視点」の章において、「ブランドマネジメント」という活動の成果を測るKPIの例が「市場占有率」、「ブランドの認知度」(p150)となっている。これらもやはり「顧客の視点」のKPIとして位置づけた方がよい。「社内ビジネス・プロセスの視点」のKPIとしては、「雑誌広告の出稿回数」、「キャンペーンの企画実行数」の方が適切だと考える。
さらに「学習と成長の視点」の章では、保険会社の変革プロジェクトを例にとり、「チームで作成した事業計画の割合」(p187)をKPIとして挙げているが、事業計画自体は業務プロセスのアウトプットであるから、「社内ビジネス・プロセスの視点」に入れるべきだろう。仮に事業計画作成にあたり、何らかの部門横断的な研修を実施したとすれば、「学習と成長の視点」には、例えば「事業計画作成のトレーニング回数」を入れることができる。
BSCにおけるKPIの妥当性や各KPIの因果関係を実感するためには、やはり自分の会社や部門を例にとって、実際に自分でBSC書いてみるのが一番だろう。
ところで、BSCの「バランス」とは何のバランスなのか?これについてはいくつかのサイトを見てみると、多種多様な解釈が存在するようだ。キャプランとノートンは、同書の中で次のように述べられている。
業績評価指標は、株主や顧客という外部的業績評価指標と、重要なビジネス・プロセスやイノベーション、さらに学習と成長といった内部的業績評価指標との「バランス」を表している。さらに、この業績評価指標は、過去の努力結果を表す成果の業績評価指標と、将来の業績向上を導く業績評価指標との「バランス」も表している。バランス・スコアカードは、客観的で定量化しやすい業績評価指標と、何らかの主観的な判断を要する業績評価指標とで「バランス」を保っている。たまに、「短期的な財務の視点と長期的な学習と成長のバランスをとる」といった趣旨の表現を見かけるが、これは正確な表現ではない。
BSCの4つの視点は、「学習と成長によって従業員の行動やスキルが変われば業務プロセスが改善され、それによって顧客の満足度やブランド価値が高まり、結果として財務状態が上向く」という因果関係で結ばれている。よって、KPIの値が短期的に変化するのはむしろ「学習と成長の視点」や「社内ビジネス・プロセスの視点」であって、「顧客の視点」や「財務の視点」のKPIの値は、もっと長時間をかけて変化することになる。
バランススコアカードの本来の目的は、「戦略の実現をサポートすること」にある。戦略はその本質からして、基本的には3年〜5年程度の将来を見据えて立案される。したがって、必然的に「財務の視点」に掲げる目標は中長期な実現を目指す目標になるし、「顧客の視点」でいうところの顧客は、将来の顧客にフォーカスを当てる必要がある。
その上で、「その戦略を実現するために、今日からわが社の社員はどのような能力を身につけ、どのような業務を行う必要があるのか?」と問う。その答えが、「学習と成長の視点」や「社内ビジネス・プロセスの視点」のKPIとなって現れるのである。
また、「短期と長期の財務目標のバランスをとる」という表現にも注意が必要だ。もっとも、キャプランとノートンは、この点を否定しているわけではない。次の記述がそうだ。
財務的な視点により、短期的な利益を維持ないし確保できる一方で、バランス・スコアカードは、長期の財務的業績向上と競争優位を確保するためのバリュー・ドライバー(価値創造要因)を明らかにしてくれる。だが、私が思うに、もし仮に短期と長期の財務目標のバランスをとるならば、短期的な財務目標からブレイクダウンされるBSCと、長期的な財務目標から導かれるBSCの2種類を作った方がいいような気がする。前者には各年度の事業計画や過去の戦略に紐づいている戦術、後者には中長期の新しい戦略がバックボーンとして存在する。この2つを1つのBSCにまとめてしまうと、社員も経営陣も混乱してしまうに違いない。
BSCは、コンセプト自体は非常に解りやすいがゆえに、簡単に使いこなせるように錯覚してしまうのだが、その本来の目的や4つの各視点の因果関係を見失ってはいけない。何よりも、自社の戦略に対する深い洞察が求められる。その点で、非常に奥深いツールである。
November 30, 2008
「君のお陰で助かった」という上司の言葉は褒め言葉なのか?
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お客様から「君のお陰で助かった」と言われることほどうれしいことはない。自分の仕事がお客様に評価されたと実感できるし、お客様の役に立つ仕事ができたという充実感で満たされる。特に、普段は厳しい要求ばかり突きつけてくるお客様が、最後の最後になって「助かった、ありがとう」とさらっと声をかけてくれる時などは、もはや涙ものである。
ところが、これが自分の会社の上司の場合だと違ってくる。上司から「君のお陰で助かった」と言われることが私はあまり好きではない。むしろ嫌だ。部下は上司を助けるために仕事をしているのではない。上司から「君のお陰で助かった」と言われても、何だか上司が好きなことを実現するのに自分がうまく使われたかのように感じるのである。極言を恐れずに言えば、「君のお陰で助かった」という上司の言葉は、上司の自己中心的な感想に過ぎず、部下をヘルパーのように見なしている態度の表れではないかと思うのだ。
繰り返すようだが、部下は上司のために仕事をしているのではない。お客様のために仕事をしている。それならば、上司は部下に対して、「君のお陰で助かった」という個人的な感想ではなく、「君の仕事はお客様にとってこういう価値があった」というお客様の視点でのフィードバックを返すべきではないかと思う。つまり、お客様の声を代弁する形で評価を下してほしいのだ。そうすれば、部下としては、自分の仕事のどの部分が価値あるものだったのかを再確認することができ、今後もそれを継続しようと思える。逆に、「君のお陰で助かった」と言われても、「あ、そうですか。お役に立ててよかったです」で終わってしまい、次につながらない。
こんなことを思うのは私だけだろうか?
ところが、これが自分の会社の上司の場合だと違ってくる。上司から「君のお陰で助かった」と言われることが私はあまり好きではない。むしろ嫌だ。部下は上司を助けるために仕事をしているのではない。上司から「君のお陰で助かった」と言われても、何だか上司が好きなことを実現するのに自分がうまく使われたかのように感じるのである。極言を恐れずに言えば、「君のお陰で助かった」という上司の言葉は、上司の自己中心的な感想に過ぎず、部下をヘルパーのように見なしている態度の表れではないかと思うのだ。
繰り返すようだが、部下は上司のために仕事をしているのではない。お客様のために仕事をしている。それならば、上司は部下に対して、「君のお陰で助かった」という個人的な感想ではなく、「君の仕事はお客様にとってこういう価値があった」というお客様の視点でのフィードバックを返すべきではないかと思う。つまり、お客様の声を代弁する形で評価を下してほしいのだ。そうすれば、部下としては、自分の仕事のどの部分が価値あるものだったのかを再確認することができ、今後もそれを継続しようと思える。逆に、「君のお陰で助かった」と言われても、「あ、そうですか。お役に立ててよかったです」で終わってしまい、次につながらない。
こんなことを思うのは私だけだろうか?
January 07, 2008
効果的なフィードバックを行うための3つの順番
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フィードバックをどの順番で行うか?
前回の記事では、フィードバックのメッセージを構成する3つの要素(�‐�況(Situation)、��観察された言動(Behavior)、��その言動が及ぼした影響(Impact))について述べた。今回は別の角度から、効果的なフィードバックを行うためのポイントを論じてみたい。
フィードバックとは、相手に対して、高い成果を上げるために「維持すべき言動」と「改善すべき言動」を指摘する行為である。それでは、「維持すべき言動」と「改善すべき言動」はどちらから言及した方がより効果的なのだろうか?まあ、こんな問題は乱暴な言い方をすれば、「どっちだっていい」話のようにも思えるが、考えてみると意外と興味深い問題であったりする。
3つの順番「維持する(Keep)」→「止める(Stop)」→「改善する(Improve)」
私の会社の一部で試験的に行っているのが、「維持する(Keep)」→「止める(Stop)」→「改善する(Improve)」の順番でフィードバックを行う、というものだ。頭文字を取って「KSIフィードバック」と呼ぶ。この順番は、次のような考え方に立脚している。
�� まず、「維持すべき言動」と「改善すべき言動」では、「維持すべき言動」から言及する。フィードバックを受ける人は、最初は多少の緊張や不安を感じているものである。そこで、「維持すべき言動」=良い言動から言及することで、フィードバックを受ける人の気持ちを和らげる効果がある。また、人間は後から聞いた話の内容の方が記憶に残りやすい。そのため、「維持すべき言動」と「改善すべき言動」のうち、より重要な「改善すべき言動」をフィードバックの後半に回している。
�� 次に、「改善すべき言動」を2つに分ける。「ある特定の言動を今後は行わない」という意味の「止める」と、「言動の質を高める」という意味の「改善する」の2つだ。自分の言動を変えることは大変な労力のいる作業である。そんな時は、何か取り掛かりやすい課題があった方が心理的負担も軽くなる。通常は、「ある言動の質を高める」ことよりも、「ある言動を止める」ことの方が容易である。そこで、容易な課題を「止める」というカテゴリーで別に切り出している。
�� 「改善する」はフィードバックの最も重要な要素であり、かつフィードバックを行う人と受ける人との間で、改善の方法を巡って議論を行う部分でもある。この議論を建設的なものにし、双方が充実感を味わってフィードバックを終えたいということで、「改善する」を最後に位置づけている。
これは、私の会社で商談のロールプレイを行った際に、実際に行われたフィードバックの一部である。
要素×順番で作成したフィードバックテンプレート
要素と順番を掛け合わせて、こんな表を作ってみた。あなたが会議中の部下のファシリテーションの出来具合や、同行した営業担当者の商談の様子、同僚が提案したマーケティング・プロモーション企画の内容などについてフィードバックを行うとき、思いつくままにあれこれと伝えるのではなく、下のテンプレートに何を伝えるのかまとめてみよう。そうすれば、より効果的なフィードバックが行えるようになるのではないだろうか?

前回の記事では、フィードバックのメッセージを構成する3つの要素(�‐�況(Situation)、��観察された言動(Behavior)、��その言動が及ぼした影響(Impact))について述べた。今回は別の角度から、効果的なフィードバックを行うためのポイントを論じてみたい。
フィードバックとは、相手に対して、高い成果を上げるために「維持すべき言動」と「改善すべき言動」を指摘する行為である。それでは、「維持すべき言動」と「改善すべき言動」はどちらから言及した方がより効果的なのだろうか?まあ、こんな問題は乱暴な言い方をすれば、「どっちだっていい」話のようにも思えるが、考えてみると意外と興味深い問題であったりする。
3つの順番「維持する(Keep)」→「止める(Stop)」→「改善する(Improve)」
私の会社の一部で試験的に行っているのが、「維持する(Keep)」→「止める(Stop)」→「改善する(Improve)」の順番でフィードバックを行う、というものだ。頭文字を取って「KSIフィードバック」と呼ぶ。この順番は、次のような考え方に立脚している。
�� まず、「維持すべき言動」と「改善すべき言動」では、「維持すべき言動」から言及する。フィードバックを受ける人は、最初は多少の緊張や不安を感じているものである。そこで、「維持すべき言動」=良い言動から言及することで、フィードバックを受ける人の気持ちを和らげる効果がある。また、人間は後から聞いた話の内容の方が記憶に残りやすい。そのため、「維持すべき言動」と「改善すべき言動」のうち、より重要な「改善すべき言動」をフィードバックの後半に回している。
�� 次に、「改善すべき言動」を2つに分ける。「ある特定の言動を今後は行わない」という意味の「止める」と、「言動の質を高める」という意味の「改善する」の2つだ。自分の言動を変えることは大変な労力のいる作業である。そんな時は、何か取り掛かりやすい課題があった方が心理的負担も軽くなる。通常は、「ある言動の質を高める」ことよりも、「ある言動を止める」ことの方が容易である。そこで、容易な課題を「止める」というカテゴリーで別に切り出している。
�� 「改善する」はフィードバックの最も重要な要素であり、かつフィードバックを行う人と受ける人との間で、改善の方法を巡って議論を行う部分でもある。この議論を建設的なものにし、双方が充実感を味わってフィードバックを終えたいということで、「改善する」を最後に位置づけている。
これは、私の会社で商談のロールプレイを行った際に、実際に行われたフィードバックの一部である。
維持する
・相手が自分の話を理解しているかどうか確認していた
・専門用語をあまり使っていなかった
・サービスの必要性を説明するのに先立って、時代背景の変化を詳しく説明していた
止める
・説明の途中で不必要に笑わない
・説明中に提案書ばかりを見ない
改善する
・サービスの特徴を表現する比喩が多すぎて、逆に特徴が伝わりにくくなっている
・相手の記憶に残るキーワードが少なく、説明がやや冗長
要素×順番で作成したフィードバックテンプレート
要素と順番を掛け合わせて、こんな表を作ってみた。あなたが会議中の部下のファシリテーションの出来具合や、同行した営業担当者の商談の様子、同僚が提案したマーケティング・プロモーション企画の内容などについてフィードバックを行うとき、思いつくままにあれこれと伝えるのではなく、下のテンプレートに何を伝えるのかまとめてみよう。そうすれば、より効果的なフィードバックが行えるようになるのではないだろうか?



中身はいいのだが
BSCの古典です

