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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
January 30, 2006
【ミニ書評】クレイトン・クリステンセン著『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき』
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イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press) クレイトン・クリステンセン 玉田 俊平太 翔泳社 2001-07 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
クレイトン・クリステンセン著。「なぜ技術力も資金力もある巨大企業が新興企業に打ち負かされることがあるのか」という問題意識からクリステンセンの研究は始まっている。クリステンセンの答えは「巨大企業は正しくマネジメントされるが『ゆえに』失敗する」。顧客の声に耳を傾ける、自社の利益構造に見合った収益性が見込める市場に投資するというマネジメントの定石が、時に自社を破滅に追い込むことがあることを「破壊的イノベーション」という概念を用いて示した画期的な著書。すでに現代の古典とも言われている。
【ミニ書評】クレイトン・クリステンセン著『イノベーションへの解―利益ある成長に向けて』
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イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press) クレイトン・クリステンセン マイケル・レイナー 玉田 俊平太 翔泳社 2003-12-13 Amazonで詳しく見るby G-Tools |
クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー著。『イノベーションのジレンマ』が巨大企業が破壊的イノベーションで滅ぼされる様子を描いたものであるのに対し、『イノベーションへの解』は企業が破壊的イノベーションを利用しながら持続的な成長を達成するためにはどうすればよいのかという問題を扱っている。IBM、HPなど、巨大企業でありながら破壊的イノベーションを上手く活用している企業を取り上げて、利益ある成長のための原則を提言している。
January 25, 2006
そのベンチマーキングは「従属変数からの標本抽出(sampling on the dependent variable)」になっていないか?
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ちょっと格好つけて統計学の用語を使ってしまいましたが(笑)、この記事で言いたいのは「成功事例ばかりに気を取られてはいけない」ということです。
ある物事を上手く進めたい、何かを成功させたいと考える場合、私達は過去の成功事例を参照し、その成功要因を探り出そうと努めます。これは私達の思考プロセスが「アナロジー(類似)による推論」を行う傾向があるためです。私達は、過去に似たような事例があれば、それと同じようなことをしようとします。
組織で働く人、とりわけ企業人にとっては、自社の業績を上げることが目下の目標であり、そのためにどうすればよいかを日夜考え行動しています。彼らの助けとなるのが経営学やマネジメント論です。ところで、企業で働く人々は自らの仕事を遂行する傍ら、限られた時間の中で経営学やマネジメント論を学ばざるを得ません。彼らのニーズを満たすためには、可能な限り難解な論理を用いずに、理解しやすい理論に仕上げることが必然的な要請となります。
こうした企業人の要求に応える一番手っ取り早い方法が、過去に好業績をあげた企業を研究し、その成功要因をいくつかの簡潔な原則にまとめるという方法です。『エクセレント・カンパニー』も、財務諸表上の特定の数値が他の企業よりも優れている企業を抽出し、それらの企業に共通することをまとめるという手法をとっています。
しかし、ここに大きな落とし穴が存在すると警告する論者がいます。成功企業だけに注目し、その成功要因を導き出した場合、その要因が逆に足枷となって失敗した企業の存在を覆い隠してしまうというのです。
スタンフォード大学経営大学院助教授のジャーカー・デンレルも同様の指摘をしています。デンレルは「不確実性の高い経営施策(※注1)の普及率」と「企業業績」の関係を調べ、次のような指摘をしています。
・倒産企業を除き、既存の企業のみを標本抽出した場合、不確実性の高い経営施策の普及率と企業業績には正の相関がある。
・しかし、倒産企業も含めて全企業を対象とした場合、不確実性の高い経営施策の普及率が高まれば高まるほど企業業績も悪化する企業が存在し、全企業の平均を取るとむしろ負の相関が見られる。
(「選択バイアスの罠」−『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2005年7月号』より)
経営学やマネジメント論の著書には、「こうしたらうまくいく」という謳い文句の著書が多く、流行を生み出しては多数が消えていくため、読者もしばしば惑わされてしまいます。ここで、クリステンセンらの次のアドバイスが参考になります。
(※注1)例えばクロス・ファンクショナル・チーム。クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)とは、機能の異なる複数の部門から集められた社員でチームを作り、経営課題の解決に取り組むチームのこと。カルロス・ゴーンが好んで用いる手法である。
(※注2)従属変数とは、原因−結果という因果関係において結果に当たるもの。原因に当たるものは独立変数という。デンレルの調査でいえば、「不確実性の高い経営施策の普及率」が独立変数で、「企業業績」が従属変数になる。
ある物事を上手く進めたい、何かを成功させたいと考える場合、私達は過去の成功事例を参照し、その成功要因を探り出そうと努めます。これは私達の思考プロセスが「アナロジー(類似)による推論」を行う傾向があるためです。私達は、過去に似たような事例があれば、それと同じようなことをしようとします。
組織で働く人、とりわけ企業人にとっては、自社の業績を上げることが目下の目標であり、そのためにどうすればよいかを日夜考え行動しています。彼らの助けとなるのが経営学やマネジメント論です。ところで、企業で働く人々は自らの仕事を遂行する傍ら、限られた時間の中で経営学やマネジメント論を学ばざるを得ません。彼らのニーズを満たすためには、可能な限り難解な論理を用いずに、理解しやすい理論に仕上げることが必然的な要請となります。
こうした企業人の要求に応える一番手っ取り早い方法が、過去に好業績をあげた企業を研究し、その成功要因をいくつかの簡潔な原則にまとめるという方法です。『エクセレント・カンパニー』も、財務諸表上の特定の数値が他の企業よりも優れている企業を抽出し、それらの企業に共通することをまとめるという手法をとっています。
しかし、ここに大きな落とし穴が存在すると警告する論者がいます。成功企業だけに注目し、その成功要因を導き出した場合、その要因が逆に足枷となって失敗した企業の存在を覆い隠してしまうというのです。
「戦略本や経営書の著者…は一握りの成功企業を観察すると、同じようにすれば誰でも成功できるという本を書く。状況によっては、その問題解決手法が逆効果となる可能性については、顧みることをしないのだ。」
「多くの研究者や、真剣な学者を自負する多くの人々が、自分たちの理論の価値を『証明』しようと焦るあまり、特殊事例の発見を故意に避けている。たとえばケース・スタディで、理論を支持する事例が故意に選ばれたり、正式な学術研究で、モデルに適合しないデータ要素が『外れ値』と呼ばれ、それらを統計分析から排除することを正当化する理由が探し出される…」
(クレイトン・クリステンセン、マイケル・レイナー著『イノベーションへの解』)
イノベーションへの解 利益ある成長に向けて (Harvard business school press) クレイトン・クリステンセン マイケル・レイナー 玉田 俊平太 翔泳社 2003-12-13 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
スタンフォード大学経営大学院助教授のジャーカー・デンレルも同様の指摘をしています。デンレルは「不確実性の高い経営施策(※注1)の普及率」と「企業業績」の関係を調べ、次のような指摘をしています。
・倒産企業を除き、既存の企業のみを標本抽出した場合、不確実性の高い経営施策の普及率と企業業績には正の相関がある。
・しかし、倒産企業も含めて全企業を対象とした場合、不確実性の高い経営施策の普及率が高まれば高まるほど企業業績も悪化する企業が存在し、全企業の平均を取るとむしろ負の相関が見られる。
(「選択バイアスの罠」−『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2005年7月号』より)
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2005年 07月号 ダイヤモンド社 2005-06-10 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
経営学やマネジメント論の著書には、「こうしたらうまくいく」という謳い文句の著書が多く、流行を生み出しては多数が消えていくため、読者もしばしば惑わされてしまいます。ここで、クリステンセンらの次のアドバイスが参考になります。
「われわれは、論文研究の有意義な研究課題を探し求める博士課程の学生には、流行りの理論が役に立たないのはどんな場合かを考えるように勧めている。たとえば、『プロセスの根本的改革が役に立たないのはどんなときか』『コンピタンスを外部委託し、コンピタンスでないものを社内で行うことが必要になるような状況はないだろうか』といったことだ。このような質問を投げかけることは、ほぼ必ず元の理論の向上につながるのである。」私も気をつけます。
(※注1)例えばクロス・ファンクショナル・チーム。クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)とは、機能の異なる複数の部門から集められた社員でチームを作り、経営課題の解決に取り組むチームのこと。カルロス・ゴーンが好んで用いる手法である。
(※注2)従属変数とは、原因−結果という因果関係において結果に当たるもの。原因に当たるものは独立変数という。デンレルの調査でいえば、「不確実性の高い経営施策の普及率」が独立変数で、「企業業績」が従属変数になる。