※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
November 20, 2010
「よかれと思ってやったのに・・・」というマネジメントのパラドクス集(その6〜7)
拍手してくれたら嬉しいな⇒
(6)BPRで業務を効率化したのに、業務時間が短縮されない
BPR(Business Process Reengineering)は、1990年代にマイケル・ハマー&ジェームズ・チャンピーが提唱したコンセプトであり、主に非製造プロセスの生産性向上にフォーカスが当たっていた。2人の著書『リエンジニアリング革命』の中では、IBMにおける事務処理プロセスの効率化の事例などが紹介されている。
ちょうどこの頃のアメリカ企業は、コスト削減のためにリストラを進めている最中であり、人員整理を行えば株価が上がるという、今から考えれば変な状況にあった。BPRはリストラを正当化するコンセプトとして、一斉にアメリカ企業に受け入れられた。
しかしその後、BPRを断行して組織をスリム化しすぎた企業が、かえって体力を失い業績を悪化させるという現象が見られ始めた。その原因として、BPRの提唱者であるハマーらが槍玉に挙げられてしまい、BPRには悪いイメージがつきまとうようになった。このような歴史的経緯はあるものの、"リストラありきのBPR"のようなおかしなことをしなければ、BPR自体は今でも有効なコンセプトであると考えている。
だが、BPRによって業務プロセスを効率化したはずなのに、なぜか以前よりも時間がかかるようになった、というパラドクスが生じることがある。例えば、製品開発プロセスを効率化して、新製品をよりスピーディーに上市するために、従来はマーケティング部が主導で行っていた製品開発を、製品設計部、製造部、財務部も一体となったプロジェクトチームによって進めることにしたとする。プロジェクトチームは、マーケティング部の中に設置された。
この部門横断型のプロジェクトチームは、マーケティング部だけでは気づかない設計・製造上の問題を早期に発見し、財務部のメンバーが提唱するコスト低減施策を早めに組み込むことで、製品開発リードタイムの短縮を目指した。当初の狙い通り、問題の早期発見・早期解決という意味では、この改革は絶大な効果を発揮した。ところが、開発リードタイム自体は思っていたほど短縮されない。なぜだろうか?
原因は、製品開発プロセスという「横のプロセス」ではなく、稟議プロセスという「縦のプロセス」あった。まず、プロジェクトチームの結成に先立ち、各部門から必要なメンバーを選出してもらう段階で、各部門の稟議に時間がかかった。さらに、各部門が推薦するメンバーを人事部が承認するのにも時間がかかったために、プロジェクトが立ち上がるまでに、すでにかなりのタイムロスが生じていた。
加えて、プロジェクトチーム内で提案された様々な企画や施策を、プロジェクトチームが所属しているマーケティング部内で承認するのにも手こずった。マーケティング部の稟議プロセスは多重階層構造になっており、承認が降りるまでプロジェクトチームは身動きがとれなかったのである。
BPRはどちらかというと「横の業務プロセス」の生産性向上に主眼がある。だが、組織内には「横のプロセス」と「縦のプロセス」があり、「横のプロセス」は短縮したつもりでも、「縦のプロセス」はかえって長くなるケースがある。BPRを実施する際には、このパラドクスに注意しなければならないと思う。
(7)ハイパフォーマーの暗黙知を聞き出そうとすればするほど、誤った情報が出てくる
ハイパフォーマーの暗黙知は、企業にとって重要な知的資産である。彼らの暗黙知を表出させ、一般社員と共有することで、社員全体の底上げを図りたいと考えるのは自然な考えだ。
ハイパフォーマーの暗黙知を引き出すためにしばしば行われるのは、ハイパフォーマーを1時間から2時間ぐらい会議室に閉じ込めて、徹底的にヒアリングするという方法である。ハイパフォーマーが語るテキストを分析して、成果創出と相関関係の高いスキルやノウハウを導き出し、それらを社内で横展開する教育的施策を実行する、というのが一般的な流れだ。
しかしながら、暗黙知はそもそも「言葉では説明しがたい」から暗黙知なのであって、それをヒアリングだけで引き出すことにはどうしても限界がある。しかも、人間は過去のことを無理に思い出そうとすると、記憶を捻じ曲げる傾向があることが心理学の実験でも明らかになっている。
「相手の質問に何とか答えなければならない」、「自分はハイパフォーマーとして呼ばれているのだから、質問に答えられなければ恥ずかしい」というプレッシャーによって、インタビュー対象者がありもしない記憶を捏造してしまうのは、無理からぬことのようにも思える。
(上記の心理学の実験が紹介されている本)
学習は、言葉や文字のみによって行われるものではない。五感をフルに活用して行われるものだ。にもかかわらず、ハイパフォーマーから何かを学ぼうとすると、学習の基本原則を忘れて(往々にして、ヒアリングが最も時間のかからない方法だというだけの理由で)、ヒアリングに頼ってしまう。
もちろん、ヒアリングが全く無益だとは思わないし、暗黙知の手がかりを得ることはできるだろう。ハイパフォーマーにとっても、他人から質問されることで自分が日常的にやっている活動の意味づけを行うことができる。そのような意味づけも、知的資産を形成する貴重な要素だ。だが、ハイパフォーマーから最も効果的に学ぶには、ハイパフォーマーと一緒に仕事をして、彼らの活動を五感で感知する以上の方法はないように思えるのである。
(続く)
BPR(Business Process Reengineering)は、1990年代にマイケル・ハマー&ジェームズ・チャンピーが提唱したコンセプトであり、主に非製造プロセスの生産性向上にフォーカスが当たっていた。2人の著書『リエンジニアリング革命』の中では、IBMにおける事務処理プロセスの効率化の事例などが紹介されている。
ちょうどこの頃のアメリカ企業は、コスト削減のためにリストラを進めている最中であり、人員整理を行えば株価が上がるという、今から考えれば変な状況にあった。BPRはリストラを正当化するコンセプトとして、一斉にアメリカ企業に受け入れられた。
しかしその後、BPRを断行して組織をスリム化しすぎた企業が、かえって体力を失い業績を悪化させるという現象が見られ始めた。その原因として、BPRの提唱者であるハマーらが槍玉に挙げられてしまい、BPRには悪いイメージがつきまとうようになった。このような歴史的経緯はあるものの、"リストラありきのBPR"のようなおかしなことをしなければ、BPR自体は今でも有効なコンセプトであると考えている。
だが、BPRによって業務プロセスを効率化したはずなのに、なぜか以前よりも時間がかかるようになった、というパラドクスが生じることがある。例えば、製品開発プロセスを効率化して、新製品をよりスピーディーに上市するために、従来はマーケティング部が主導で行っていた製品開発を、製品設計部、製造部、財務部も一体となったプロジェクトチームによって進めることにしたとする。プロジェクトチームは、マーケティング部の中に設置された。
この部門横断型のプロジェクトチームは、マーケティング部だけでは気づかない設計・製造上の問題を早期に発見し、財務部のメンバーが提唱するコスト低減施策を早めに組み込むことで、製品開発リードタイムの短縮を目指した。当初の狙い通り、問題の早期発見・早期解決という意味では、この改革は絶大な効果を発揮した。ところが、開発リードタイム自体は思っていたほど短縮されない。なぜだろうか?
原因は、製品開発プロセスという「横のプロセス」ではなく、稟議プロセスという「縦のプロセス」あった。まず、プロジェクトチームの結成に先立ち、各部門から必要なメンバーを選出してもらう段階で、各部門の稟議に時間がかかった。さらに、各部門が推薦するメンバーを人事部が承認するのにも時間がかかったために、プロジェクトが立ち上がるまでに、すでにかなりのタイムロスが生じていた。
加えて、プロジェクトチーム内で提案された様々な企画や施策を、プロジェクトチームが所属しているマーケティング部内で承認するのにも手こずった。マーケティング部の稟議プロセスは多重階層構造になっており、承認が降りるまでプロジェクトチームは身動きがとれなかったのである。
BPRはどちらかというと「横の業務プロセス」の生産性向上に主眼がある。だが、組織内には「横のプロセス」と「縦のプロセス」があり、「横のプロセス」は短縮したつもりでも、「縦のプロセス」はかえって長くなるケースがある。BPRを実施する際には、このパラドクスに注意しなければならないと思う。
(7)ハイパフォーマーの暗黙知を聞き出そうとすればするほど、誤った情報が出てくる
ハイパフォーマーの暗黙知は、企業にとって重要な知的資産である。彼らの暗黙知を表出させ、一般社員と共有することで、社員全体の底上げを図りたいと考えるのは自然な考えだ。
ハイパフォーマーの暗黙知を引き出すためにしばしば行われるのは、ハイパフォーマーを1時間から2時間ぐらい会議室に閉じ込めて、徹底的にヒアリングするという方法である。ハイパフォーマーが語るテキストを分析して、成果創出と相関関係の高いスキルやノウハウを導き出し、それらを社内で横展開する教育的施策を実行する、というのが一般的な流れだ。
しかしながら、暗黙知はそもそも「言葉では説明しがたい」から暗黙知なのであって、それをヒアリングだけで引き出すことにはどうしても限界がある。しかも、人間は過去のことを無理に思い出そうとすると、記憶を捻じ曲げる傾向があることが心理学の実験でも明らかになっている。
「相手の質問に何とか答えなければならない」、「自分はハイパフォーマーとして呼ばれているのだから、質問に答えられなければ恥ずかしい」というプレッシャーによって、インタビュー対象者がありもしない記憶を捏造してしまうのは、無理からぬことのようにも思える。
(上記の心理学の実験が紹介されている本)
![]() |
posted by Amazon360
学習は、言葉や文字のみによって行われるものではない。五感をフルに活用して行われるものだ。にもかかわらず、ハイパフォーマーから何かを学ぼうとすると、学習の基本原則を忘れて(往々にして、ヒアリングが最も時間のかからない方法だというだけの理由で)、ヒアリングに頼ってしまう。
もちろん、ヒアリングが全く無益だとは思わないし、暗黙知の手がかりを得ることはできるだろう。ハイパフォーマーにとっても、他人から質問されることで自分が日常的にやっている活動の意味づけを行うことができる。そのような意味づけも、知的資産を形成する貴重な要素だ。だが、ハイパフォーマーから最も効果的に学ぶには、ハイパフォーマーと一緒に仕事をして、彼らの活動を五感で感知する以上の方法はないように思えるのである。
(続く)
July 05, 2010
「とりあえず箱作っちゃえ」的な組織設計の危うさ
拍手してくれたら嬉しいな⇒
「予算がたっぷりついたので建物だけデカデカと作っちゃったけど、ふたを開けてみたら人が全然入らなくて大赤字でした(汗)」という「箱物行政」は何かと批判の対象になるが、企業経営においてもこれに近いことは起こる。とりあえず新しい組織を立ち上げて予算と人員をつけてみたものの、組織のミッションが明確でないために社員が何をしていいか解らずに戸惑い、結局目立った成果が上げられないというケースである。これは「箱物行政的な組織改編」とでも呼ぶべきものだろう。
組織改編は社内の注目を集めやすいので、組織改編を行うと何か大きな変革を成し遂げた「気分になる」。これはもう一種の麻薬である。だが、組織が変わると、稟議プロセスが煩雑になったり、社員の目標管理制度や評価制度が変わったり、古い社内システムの設定が使えなくなったり、新たな組織間の壁ができたりと、何かとやっかいな問題が起こる。それだけに、組織というものは慎重に設計しなければならない。
「箱物行政的な組織改編」の罠にはまるのは、「組織を作ってから業務プロセスを考える」からである。しかし、これは誤りだ。「業務プロセスを作ってから組織を考える」のがセオリーである。以下に簡単な例を使って説明してみたいと思う。
下図は受注生産型の機械メーカーにおけるBtoBの営業プロセスである。見込み顧客のリストアップから始まってアポイントを取りつけ、提案を繰り返しながら製品仕様を固めていき、価格交渉を経て受注する。そして納品後一定期間が経過するごとにアフターサービスの案内を行うというプロセスである。
まず第一に、業務プロセスをいくつかのステップに分解する。下図で言えば「顧客ターゲティング」〜「アフターフォロー」がこれに該当する。次に、それぞれのステップで、具体的にどのような業務(=社員の行動)を行うのかを書き出す。この段階ではまだ、「どの部署がその業務をするか?」ということを一切考えてはいけない。とにかく、必要な業務を思いつく限り列挙する。

(※クリックすると拡大表示。なお、「既存顧客」と「休眠顧客」はあえて分けて表記している)
業務の洗い出しが終わったら、晴れて組織設計の段階に入ることができる。先ほどの業務を各組織に割り振ったものが下図になる。ただし、これはあくまでも一例である。以下の3つの論点にどのように答えるかによって、最終的にできあがる組織デザインは大きく異なってくる。

(※クリックすると拡大表示)
(1)類似の業務を組織間でどのように分担するか?
この企業は顧客ターゲティングから初期接触までの業務を複数部門で分担している。これは、顧客の規模や重要度などに応じて、アプローチの手厚さを変えるためである。全国各地にある営業部の各営業課に配属されているそれぞれの営業担当者が直接電話でアプローチするのは、a)重要な既存顧客、b)各営業部の営業管理課が作成した新規顧客リストの中に含まれる大口企業である。ビジネスポテンシャルが大きい顧客には、営業担当者が直接電話でアプローチする。
その一方で、上記以外の顧客、すなわち、c)重要度が低い既存顧客、d)新規顧客リストの中の小口企業、e)過去何年にも渡って取引がない休眠顧客については、できるだけ効率的にアプローチするため、本社のマーケティング部に業務を集約させている。マーケ管理課がDMを作成・送付し、コールセンターがDM送付後の架電フォローをするという流れだ。コールセンターがアポイントを取れれば、各営業部の営業担当者にアポを引き継ぐ。
こうした分担には様々なパターンがありうる。営業担当者が全て自分でアプローチするという場合もあるし、逆にコールセンターによるアウトバウンドコールを重視するというケースもある。顧客属性や扱っている製品の特性、ターゲティングに要する業務量、企業が抱えている人材の質と量、その企業の行動規範など、様々な要因を考慮しながら業務分担を決めていく必要がある。
業務分担の設計を誤ると、違う部署が同じ業務を重複して行ってしまうということや、本来やるべき業務を担当する部署がないという事態が発生してしまうので要注意である。
(2)マネジメントのための組織を作るか否か?
「管理」と名のつく組織は、マネジメントを行うための組織である。だが、別にマネジメントのための組織が存在しなくても、現場社員の上に立つマネジャーが十分なマネジメントを行えば足りるという考え方もできる。
上図で言えば、「ターゲティングリストの精度の検証」や「商談のランクづけ」、「その後の営業活動の優先順位づけ」は、営業担当者の上司が行ってもよさそうな業務である。しかし、この企業は1商談あたりの金額が大きい反面、受注までにある程度の製品仕様を顧客と詰める作業があるために、リードタイムが長くなりがちという特徴があったとする。
この場合、それぞれの上司に案件マネジメントを任せるよりも、各営業部で組織的に案件をモニタリングした方がリスクを抑制できる。組織的に統一された基準で案件をチェックし、基準を満たさない案件については早々に営業工数を減らしつつ、他方で重要な案件に工数を集中投下することで、営業生産性を高めることが可能だ。そこで、この企業では営業管理課に対し、通常の企業であれば営業担当者の上司が行うような案件マネジメント業務を実施する権限を与えている。
マネジメントのための組織を作るか否かは、マネジメント業務の量や質などを考慮しながら決めていく。マネジメントのための組織を作ると、上述のようにマネジメント業務のレバレッジ効果が効くというメリットがあるが、社内手続きや稟議プロセスが複雑になりやすいというデメリットもある。
(3)特定の業務を支援するための組織を作るか否か?
この企業では、製品仕様を顧客と決める際に、営業担当者をサポートする目的で、製品に詳しい設計部・製造部の社員が営業同行することがある。こうしたサポート業務がある場合、サポート業務専門の組織を設けるか否かも大きな論点になる。
実際の企業には、「営業支援部」、「技術支援部」といった名前で、営業支援を専任で行う部隊を持っているところもある。だが、上図の企業では特に支援部隊を作ることはせず、必要に応じて営業担当者が本社から設計・製造担当者を呼び寄せることにした。これは、1つにはサポート業務の発生頻度がイレギュラーであること、もう1つには営業担当者の製品知識レベルを上げれば、サポート業務をさらに減らせると考えたからである。
サポート業務の専任部隊を検討する場合は、想定されるサポート業務の量や質などを事前によく見積もっておくことが大事だ。せっかく専任部隊を立ち上げたのに、思ったよりサポート業務が発生しなかったら、サポート部隊の人員の稼働率が下がり、組織に余計なコストを負わせることになる。
以上、組織設計に関する重要な3つの論点を紹介してきた。繰り返すが、「組織を作ってから業務プロセスを考える」のではなく、「業務プロセスを作ってから組織を考える」のである。「箱物行政」は税金の無駄遣いになるが、「箱物行政的な組織改編」は経営資源を浪費するので、同じように気をつけるべきだと思う。
組織改編は社内の注目を集めやすいので、組織改編を行うと何か大きな変革を成し遂げた「気分になる」。これはもう一種の麻薬である。だが、組織が変わると、稟議プロセスが煩雑になったり、社員の目標管理制度や評価制度が変わったり、古い社内システムの設定が使えなくなったり、新たな組織間の壁ができたりと、何かとやっかいな問題が起こる。それだけに、組織というものは慎重に設計しなければならない。
「箱物行政的な組織改編」の罠にはまるのは、「組織を作ってから業務プロセスを考える」からである。しかし、これは誤りだ。「業務プロセスを作ってから組織を考える」のがセオリーである。以下に簡単な例を使って説明してみたいと思う。
下図は受注生産型の機械メーカーにおけるBtoBの営業プロセスである。見込み顧客のリストアップから始まってアポイントを取りつけ、提案を繰り返しながら製品仕様を固めていき、価格交渉を経て受注する。そして納品後一定期間が経過するごとにアフターサービスの案内を行うというプロセスである。
まず第一に、業務プロセスをいくつかのステップに分解する。下図で言えば「顧客ターゲティング」〜「アフターフォロー」がこれに該当する。次に、それぞれのステップで、具体的にどのような業務(=社員の行動)を行うのかを書き出す。この段階ではまだ、「どの部署がその業務をするか?」ということを一切考えてはいけない。とにかく、必要な業務を思いつく限り列挙する。
(※クリックすると拡大表示。なお、「既存顧客」と「休眠顧客」はあえて分けて表記している)
業務の洗い出しが終わったら、晴れて組織設計の段階に入ることができる。先ほどの業務を各組織に割り振ったものが下図になる。ただし、これはあくまでも一例である。以下の3つの論点にどのように答えるかによって、最終的にできあがる組織デザインは大きく異なってくる。
(※クリックすると拡大表示)
(1)類似の業務を組織間でどのように分担するか?
この企業は顧客ターゲティングから初期接触までの業務を複数部門で分担している。これは、顧客の規模や重要度などに応じて、アプローチの手厚さを変えるためである。全国各地にある営業部の各営業課に配属されているそれぞれの営業担当者が直接電話でアプローチするのは、a)重要な既存顧客、b)各営業部の営業管理課が作成した新規顧客リストの中に含まれる大口企業である。ビジネスポテンシャルが大きい顧客には、営業担当者が直接電話でアプローチする。
その一方で、上記以外の顧客、すなわち、c)重要度が低い既存顧客、d)新規顧客リストの中の小口企業、e)過去何年にも渡って取引がない休眠顧客については、できるだけ効率的にアプローチするため、本社のマーケティング部に業務を集約させている。マーケ管理課がDMを作成・送付し、コールセンターがDM送付後の架電フォローをするという流れだ。コールセンターがアポイントを取れれば、各営業部の営業担当者にアポを引き継ぐ。
こうした分担には様々なパターンがありうる。営業担当者が全て自分でアプローチするという場合もあるし、逆にコールセンターによるアウトバウンドコールを重視するというケースもある。顧客属性や扱っている製品の特性、ターゲティングに要する業務量、企業が抱えている人材の質と量、その企業の行動規範など、様々な要因を考慮しながら業務分担を決めていく必要がある。
業務分担の設計を誤ると、違う部署が同じ業務を重複して行ってしまうということや、本来やるべき業務を担当する部署がないという事態が発生してしまうので要注意である。
(2)マネジメントのための組織を作るか否か?
「管理」と名のつく組織は、マネジメントを行うための組織である。だが、別にマネジメントのための組織が存在しなくても、現場社員の上に立つマネジャーが十分なマネジメントを行えば足りるという考え方もできる。
上図で言えば、「ターゲティングリストの精度の検証」や「商談のランクづけ」、「その後の営業活動の優先順位づけ」は、営業担当者の上司が行ってもよさそうな業務である。しかし、この企業は1商談あたりの金額が大きい反面、受注までにある程度の製品仕様を顧客と詰める作業があるために、リードタイムが長くなりがちという特徴があったとする。
この場合、それぞれの上司に案件マネジメントを任せるよりも、各営業部で組織的に案件をモニタリングした方がリスクを抑制できる。組織的に統一された基準で案件をチェックし、基準を満たさない案件については早々に営業工数を減らしつつ、他方で重要な案件に工数を集中投下することで、営業生産性を高めることが可能だ。そこで、この企業では営業管理課に対し、通常の企業であれば営業担当者の上司が行うような案件マネジメント業務を実施する権限を与えている。
マネジメントのための組織を作るか否かは、マネジメント業務の量や質などを考慮しながら決めていく。マネジメントのための組織を作ると、上述のようにマネジメント業務のレバレッジ効果が効くというメリットがあるが、社内手続きや稟議プロセスが複雑になりやすいというデメリットもある。
(3)特定の業務を支援するための組織を作るか否か?
この企業では、製品仕様を顧客と決める際に、営業担当者をサポートする目的で、製品に詳しい設計部・製造部の社員が営業同行することがある。こうしたサポート業務がある場合、サポート業務専門の組織を設けるか否かも大きな論点になる。
実際の企業には、「営業支援部」、「技術支援部」といった名前で、営業支援を専任で行う部隊を持っているところもある。だが、上図の企業では特に支援部隊を作ることはせず、必要に応じて営業担当者が本社から設計・製造担当者を呼び寄せることにした。これは、1つにはサポート業務の発生頻度がイレギュラーであること、もう1つには営業担当者の製品知識レベルを上げれば、サポート業務をさらに減らせると考えたからである。
サポート業務の専任部隊を検討する場合は、想定されるサポート業務の量や質などを事前によく見積もっておくことが大事だ。せっかく専任部隊を立ち上げたのに、思ったよりサポート業務が発生しなかったら、サポート部隊の人員の稼働率が下がり、組織に余計なコストを負わせることになる。
以上、組織設計に関する重要な3つの論点を紹介してきた。繰り返すが、「組織を作ってから業務プロセスを考える」のではなく、「業務プロセスを作ってから組織を考える」のである。「箱物行政」は税金の無駄遣いになるが、「箱物行政的な組織改編」は経営資源を浪費するので、同じように気をつけるべきだと思う。
May 25, 2010
実務的なプロセスKPIにファインチューニングする3つのポイント
拍手してくれたら嬉しいな⇒
前回の記事「プロセスKPIを設定するための5つの視点」では、プロセスKPIを定義するにあたってまずは測定対象となる業務プロセスを明確にすること、そして「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」という5つの視点を使ってできるだけ網羅的にKPIを設定することを述べた。

(※クリックして拡大表示)
ここから、実務的に運用可能なレベルへと微調整を加えていく。その際のポイントは以下の3つである。
(1)定性的な指標は可能な限り定量的な指標に置き換える
これはとりわけ「質」のKPIについて言えることだが、定性的な指標は読み解くのに時間がかかるし、良い−悪いの判断が難しい。定性的な指標はできるだけ定量的に測定可能なものに変換するのが望ましい。
上図では、すでに部分的にファインチューニングを行っているKPIがある。それは「商談の難易度評価(製品・サービス提供にあたり、自社のリソース・ノウハウで十分対応か否か)」、「商談獲得の見込み評価(受注の確度がどの程度あるか)」という指標である。営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。しかし、こうした定性的な情報はそのままでは非常に測定しにくい。そこで、商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる商談数をカウントすることで、定量的な測定を可能にしている。
営業会議で、「今週のA商談は○件、B商談は○件、C商談は○件…」といった進捗報告を行っている企業もあるだろう。その場合の件数が、まさに商談の質を定量的に測定した数値と言える。
(2)測定困難な指標は代替指標を考えるか、方法を変える
KPIはその数値を継続的にモニタリングすることができなければ意味がない。KPIの値を取得するだけで莫大な時間がかかるのであれば、改善策の検討が大幅に遅れてしまう。だから、KPIは測定が容易で、かつ繰り返し取得できるものにしなければならない。
例えば、上図にある「提案書の質」に関しては、営業担当者が顧客企業に「私が書いた提案書の内容はどうですか?満足していただけましたか?」と聞いて回るのはあまりにも常軌を逸した行動である。また、ある期間内に作成された全社員の提案書をマネジャーが評価することも非現実的である。
こういう場合は、サンプリング調査を行う。無作為に抽出した数十件程度の提案書の内容を社内で定めた基準に従って採点するというやり方である。サンプリングと社内基準が適切であれば、提案書の質に関する全社的な傾向を知ることができる。
(3)最終成果との結びつきが薄い指標は削り、KPIにメリハリをつける
プロセスKPIは最終成果に至るまでのプロセスをモニタリングするものであるから、最終成果をどのように位置づけるかによってKPIの優先順位が変わってくる。
とにかく売上拡大が最優先課題であるような場合は、「時間」や「コスト」に関するKPIはごっそり削ってしまうのも1つの手である。逆に、収益性を重視するのであれば「時間」や「コスト」は重要なKPIになるし、「値引率」や「値引になった商談の割合」も見過ごせない指標となる。
営業活動の効率性を重視するのであれば、「量」のウェイトを軽くする。前回の記事の中で、「営業活動はろ過装置のようなものであり、プロセスが進むに従って顧客・商談数が減っていく」と書いたが、効率的な営業とは、入口(=ターゲット顧客数)が多少狭くなったとしても、ほとんどろ過されずに出口から出てくる(=成約できる)状態を指す。この場合は、「量」の代わりに「質」や「次プロセスへの進行率」に重きを置くことが考えられる。
上記の3つのポイントに従って微調整を行えば、プロセスKPI体系ができあがる。あとは各KPIの目標値を設定し、継続的なモニタリングを通じて目標との乖離をチェックする。そして、必要に応じて改善策を打つ。この繰り返しによって、KPIマネジメントのPDCAサイクルが回っていく。

(※クリックして拡大表示)
ここから、実務的に運用可能なレベルへと微調整を加えていく。その際のポイントは以下の3つである。
(1)定性的な指標は可能な限り定量的な指標に置き換える
これはとりわけ「質」のKPIについて言えることだが、定性的な指標は読み解くのに時間がかかるし、良い−悪いの判断が難しい。定性的な指標はできるだけ定量的に測定可能なものに変換するのが望ましい。
上図では、すでに部分的にファインチューニングを行っているKPIがある。それは「商談の難易度評価(製品・サービス提供にあたり、自社のリソース・ノウハウで十分対応か否か)」、「商談獲得の見込み評価(受注の確度がどの程度あるか)」という指標である。営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。しかし、こうした定性的な情報はそのままでは非常に測定しにくい。そこで、商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる商談数をカウントすることで、定量的な測定を可能にしている。
営業会議で、「今週のA商談は○件、B商談は○件、C商談は○件…」といった進捗報告を行っている企業もあるだろう。その場合の件数が、まさに商談の質を定量的に測定した数値と言える。
(2)測定困難な指標は代替指標を考えるか、方法を変える
KPIはその数値を継続的にモニタリングすることができなければ意味がない。KPIの値を取得するだけで莫大な時間がかかるのであれば、改善策の検討が大幅に遅れてしまう。だから、KPIは測定が容易で、かつ繰り返し取得できるものにしなければならない。
例えば、上図にある「提案書の質」に関しては、営業担当者が顧客企業に「私が書いた提案書の内容はどうですか?満足していただけましたか?」と聞いて回るのはあまりにも常軌を逸した行動である。また、ある期間内に作成された全社員の提案書をマネジャーが評価することも非現実的である。
こういう場合は、サンプリング調査を行う。無作為に抽出した数十件程度の提案書の内容を社内で定めた基準に従って採点するというやり方である。サンプリングと社内基準が適切であれば、提案書の質に関する全社的な傾向を知ることができる。
(3)最終成果との結びつきが薄い指標は削り、KPIにメリハリをつける
プロセスKPIは最終成果に至るまでのプロセスをモニタリングするものであるから、最終成果をどのように位置づけるかによってKPIの優先順位が変わってくる。
とにかく売上拡大が最優先課題であるような場合は、「時間」や「コスト」に関するKPIはごっそり削ってしまうのも1つの手である。逆に、収益性を重視するのであれば「時間」や「コスト」は重要なKPIになるし、「値引率」や「値引になった商談の割合」も見過ごせない指標となる。
営業活動の効率性を重視するのであれば、「量」のウェイトを軽くする。前回の記事の中で、「営業活動はろ過装置のようなものであり、プロセスが進むに従って顧客・商談数が減っていく」と書いたが、効率的な営業とは、入口(=ターゲット顧客数)が多少狭くなったとしても、ほとんどろ過されずに出口から出てくる(=成約できる)状態を指す。この場合は、「量」の代わりに「質」や「次プロセスへの進行率」に重きを置くことが考えられる。
上記の3つのポイントに従って微調整を行えば、プロセスKPI体系ができあがる。あとは各KPIの目標値を設定し、継続的なモニタリングを通じて目標との乖離をチェックする。そして、必要に応じて改善策を打つ。この繰り返しによって、KPIマネジメントのPDCAサイクルが回っていく。


(ビジネスパースンにも)実用的な心理学の本

