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February 23, 2010

シナジーは「足し算」ではなく「掛け算」で考える(補足)

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 以前、「シナジーは『足し算』ではなく『掛け算』で考える」という記事で、お互いの強みを活かし、新しいものを生み出す「創造的関係」においては、シナジーは「1.3×1.3=1.69」といったふうに掛け算で考えるべきだ、といった内容のことを書いた。

 ちょうど今日、武田信玄に関する文章を読んでいたら、武田家には「三四十二、三四七つ」という秘伝があることを知った。これは、「3と4は掛け合わせれば12になるが、足せば7にしかならない」という意味である。武田信玄は「人をば使わず、わざを使う」とも述べており、それぞれの家来の優れた能力に着目し、相乗効果を引き出して最強の軍団を目指した。武田信玄は、シナジーを「足し算」ではなく「掛け算」で考えていたのである。
 信玄は軍議のさいに家臣団から意見を求める合議制を取り入れていたことはよく知られています。ただし、合議制は信玄の専売特許というわけではなく、毛利元就、北条氏康、上杉謙信などの武将も導入していました。戦国大名の家臣団には、直属だけではなく、その地方の有力な国人(豪族)も配下に加わっていたため、戦国大名が独断先行するわけにはいかない事情もあったのです。

 とはいえ、信玄の場合は馬場美濃守、内藤昌豊、山県昌景といった歴戦の勇将に加え、軍師として名高い山本勘助がおり、合戦に際しては彼らの意見を取り入れながら傑出したリーダーシップを発揮しました。
(「無敵の甲州軍団をつくったリーダーシップ 武田信玄にみる人材活用術 第7回」
 冒頭に挙げた先日の記事では、たとえ優れたメンバーが揃っていても、方向性がばらばらだと、「1.3×(-1.3)=-1.69」といった具合にシナジーの効果はマイナスになることも述べた。武田信玄の合議体には錚々たる面々が揃っている。彼らがどのような議論を行い、意見の対立や葛藤を乗り越え、戦略や戦術を詰めていったのか非常に気になるなぁ。そこには、優秀な人材がシナジーを生み出すコミュニケーションや思考のヒントがきっとあるはずだ。何か歴史の文献にでもあたってみるかな。
February 14, 2010

孤独と闘う「準備ルーチン」が創造性を生む

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 「良質の『準備ルーチン』は創造性を生む」、「良質の『準備ルーチン』は創造性を生む(補足)」という2つの記事で、「準備ルーチン」についていろいろと見てきたが、良質の「準備ルーチン」には「業務外(本番以外)で行われる」という点以外に何か共通点はないのだろうか?

 準備ルーチンの中には、菅野寛氏の「エモーショナル・メッセージの記述」ように、特定スキルの習得にフォーカスが絞られた明確な目的を持つものもあれば、立命館小学校のモジュールタイムのように、それ自体は知識の習得を目的としないものもある。また、松下幸之助の「素直な心を持つための祈り」などは、本業との関連も薄く抽象的な行為である。だから、目的の明確さや本業との関連性はあまり重要でないように思える。

 それよりも注目すべきもう1つの共通点は、良質の準備ルーチンは「1人で行われる」という点である(モジュールタイムは学級全員がやっているが、やっている行為自体は個々人に完全に委ねられている)。昨日紹介した村山昇著『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』を読んでいたら、アン・モロウ・リンドバーグの『海からの贈物』に次のような一節があることを知った。
 我々が一人でいる時というのは、我々の一生のうちで極めて重要な役割を果たすものなのである。或る種の力は、我々が一人でいる時だけにしか湧いてこないものであって、芸術家は創造するために、文筆家は考えを練るために、音楽家は作曲するために、そして聖者は祈るために一人にならなければならない。

 しかし女にとっては、自分というものの本質を再び見いだすために一人になる必要があるので、その時に見いだした自分というものが、女のいろいろな複雑な人間関係の、なくてはならない中心になるのである。女はチャールズ・モーガンが言う、『回転している車の軸が不動であるのと同様に、精神と肉体の活動のうちに不動である魂の静寂』を得なければならない。

アン・モロウ・リンドバーグ
新潮社
1967-07
おすすめ平均:
ああ、なんという
一歩を踏み出す勇気があれば!
現代社会において忘れがちなことを思い出させてくれる
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 後半の女性に関する記述は、男性にも当てはまると思う。創造的な作品は1人だけでは完成させることができないが、基となる創造的なアイデアは1人で思索する時間から生まれるものだ、ということをリンドバーグは言いたいのだろう。

 どこの研究だったか忘れてしまったが(記憶違いならご容赦いただきたい)、日本とアメリカの経営者の時間の使い方を調べた研究があって、アメリカの経営者は日本の経営者よりも1人で考える時間が長いことが明らかになったという。もっとも、この調査結果だけを見て「日本の経営者よりもアメリカの経営者の方が創造的だ」と言うつもりは毛頭ないし、日本が合意による意思決定を重視するのに対し、アメリカはトップの決断に頼るケースが多いという文化的背景の違いもある。

 ただ、合意による意思決定がうまくいくのは、1人1人が確固たる意見を持っており、それらが衝突し揉まれる中で新たなアイデアに至る場合だ。発言力の強い人間がいたり、他人の意見に流されやすいフリーライダー的存在が混じっていたりすると、いわゆる「グループシンキング」の罠にはまってしまう。各人が確固たる意見を持つためには、意思決定の前に1人で考えをまとめる時間を持つ必要があると思うのである。1人で思索にふける「準備ルーチン」を持つ経営者は、真っ当な意思決定に到達できる確率が高いのではないだろうか?

 「準備ルーチン」を1人で黙々とこなす中で、集中力が増し、神経が研ぎ澄まされ、感度が高くなる。すると、通常の人ならば見過ごしてしまうような情報やサインをキャッチできるようになり、それが創造的なアイデアにつながるのかもしれない。良質の準備ルーチンとは、孤独と闘う準備ルーチンでもあると言えそうだ。
February 13, 2010

良質の「準備ルーチン」は創造性を生む(補足)

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 以前、「良質の『準備ルーチン』は創造性を生む」という記事で、ルーチン業務は人間の創造性を奪うという「計画のグレシャムの法則」に対し、業務外の準備段階におけるルーチンは逆に人間の集中力を高め、本番=業務での創造力を増す効果があるのではないか?ということを書いた。今回はその補足として、いろんな人の「準備ルーチン」を集めてみた。

松下幸之助
 経営者として客観的に、素直な心で物事を観察し、本質を見抜くために長年実施していた準備ルーチン。
 朝起きたら、仏壇のあるところやったら仏壇、神棚のあるところやったら神棚の前で、「きょう一日素直な心で無事にいかせてください」と心に念ずる。

 それを30年やったらな、30年続けたら、まあ大きなまちがいなく、素直な心で、ものは見えるやろうと。要は素直の初段やな。(中略)今、もう35年になるからな、まあ、ようやく初段になったくらいや。だから、こういう考え方はあかん、これはこうしたほうがええということがある程度わかる。初段の程度でわかると。
(松下幸之助述、松下政経塾編『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』PHP研究所、2009年)

松下 幸之助
PHP研究所
2009-03-24
おすすめ平均:
人生訓として是非読んでおきたいです
今年一番の作品 名著
穏やかな気持ちになれる
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中村俊輔
 スポーツ選手の中でも特に優れた選手は、必ずと言っていいほど自分なりに工夫した良質の「準備ルーチン」を持っており、試合の前後に実践していると思う。数いるプロ選手の中でも最前線で活躍し続けることができる選手と、数年で消えてしまう選手の違いはそこにあるような気がする。
 彼は試合後、どんなに疲れていてもフリーキックの練習をして帰宅します。いつも何球蹴るか数字を決めていて、それを自分に課しています。途中できょうは体調が悪いな、早く帰りたいなと思っても、決して例外をつくらず、課した球数を蹴るまでは絶対に家に帰りません。なぜなら、そこで球数を減らしたら最後、どんどん自分に甘くなるからだと言います。
(村山昇著『ぶれない「自分の仕事観」をつくるキーワード80』クロスメディア・パブリッシング、2009年)

村山 昇
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
2009-05-14
おすすめ平均:
30歳前後の方(=私と同世代の方)に勧めたい本です
ヒントがたくさん詰まった本
滋味
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菅野寛(ボストンコンサルティンググループ ヴァイス・プレジデント アンド ディレクター)
 BCGに入社して3年目の頃、菅野氏は上司や同僚から、「ロジカルに物事を考えてクライアントに物申すことはできても、クライアントの気持ちを理解する力に欠けている」という評価を受けた。このままではコンサルタントとしての成長が止まってしまう。そこで、クライアントが心の底から納得し、厚い信頼を勝ち取れるよう、次のようなトレーニングを考えたそうだ。
クライアントとのミーティング前:
 私は自然体で、「今度のミーティングでどのようなロジカル・メッセージを伝えようか」と考えることはできていたので、それに加えて、「今度のミーティングでどのような”エモーショナル”・メッセージを伝えようか」と考えて、ノートに書き留めることを習慣にすることにした。もし筆が止まって、伝えるべきエモーショナル・メッセージを書くことができなければ、相当まずい、と思うことにした。

クライアントとのミーティング後:
 今日のミーティングでクライアントが伝えようとしていたエモーショナル・メッセージは何かを考え、必ずノートに書き留める習慣をつけた。もし筆が止まって、書き留めることができなければ、これは相当まずい。クライアントの伝えてきたロジカル・メッセージがわからなければ、経営コンサルタントとして、次の調査・分析プランが立てられないではないか。エモーショナル次元でもまったく同じであると考えることにした。
(菅野寛著『経営者になる 経営者を育てる』ダイヤモンド社、2005年)
 要するに、お互いの「言外の意味」を汲み取り、ノートにまとめることを習慣化したというわけだ。

菅野 寛
ダイヤモンド社
2005-06-10
おすすめ平均:
経営スキルは“天賦の才”ではない?
経営者人材の育成に重要なのは右脳型スキル
中途半端
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ピーター・ドラッカー
 ドラッカーの「準備ルーチン」は比較的中期スパンでサイクルが回っている。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューのインタビューで「あなた流の自己分析法などはありますか?」と尋ねられて次のように答えている。
 記録をつけることです。私が自分の記録をつけ始めたのは30年ほど前です。

 何かを始める時や意思決定を下す時は、どんな結果を期待するのかをかならず書き留めておくことです。これに封をして、しまっておき、数ヶ月は触れないようにします。その後しばらくしてから何が書いてあったかを確かめるのです。すると、3つのことが見えてきます。

 (1)私は何が得意なのか。
 (2)新しいことを学ぶ必要があるのはどの分野か。あるいは私のナレッジ・プール(知識の集積)はどの分野にあるのか。
 (3)不得手な分野は何か。

 私はいまでも年に2回、1月と8月にこれを実施しています。いまでも必ず驚くのですよ。自分の行動や考えのなかで「これこそ最善である」と思ったものは、まずうまくいきません。逆にあまり注意を払わなかったものが素晴らしい成果につながる。これこそ私が得意とするところなのです。
(ピーター・ドラッカー「明日への指針(上)」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2003年11月号)
 私自身も、読書やこのブログを完全に習慣化したいのだが、なかなかできていないなぁ・・・