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June 24, 2012

部下へのフィードバック法「SBI(Situation-Behavior-Impact)法」ついての補足

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 数年前の記事「効果的なフィードバックを行うための3つの要素」への補足。この記事では、部下に対する効果的なフィードバックの方法として、アメリカのCCL(Center for Creative leadership)が開発した「SBI(Situation-Behavior-Impact)法」という技法を紹介した。昔の記事にはCCLへのリンクがなかったので、以下に掲載しておく。

 Feedback That Works: How to Build and Deliver Your Message (Executive Summary)
 The SBI Observation Form 

Feedback That Works: How to Build and Deliver Your MessageFeedback That Works: How to Build and Deliver Your Message
Sloan R. Weitzel

Center for Creative Leadership 2008-08-30

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 CCLから書籍も出ているけれども、上記リンクのエグゼクティブサマリでおおよその内容は理解いただけると思う。SBI法では、フィードバックの対象者に対し、"Situation(状況)"⇒"Behavior(行動)"⇒"Impact(影響)"の順番でフィードバックを行う。

 (1)Situation: To capture and clarify the specific situation in which the behavior occurred. (フィードバックの対象となる行動が起きた時の状況を明確にする)
 (2)Behavior: To Describe behavior. (その行動の具体的な中身を説明する)
 (3)Impact: To relay the impact that the other person’s behavior had on you. (その行動が自分に与えた影響をリアルに伝える)

 3番目の「相手の行動が”自分に”与えた影響を相手に伝える」というのがSBI法のミソであり、これによって上司は部下に対し、「部下と自分の関係を重視している」というメッセージを送ることになる。また、部下の立場からすると、「自分の行動は上司から見られている」というプレッシャーを受けると同時に、「上司は自分のことをよく見てくれている」という一種の安心感を感じ取ることができる。

 ところが最近、このSBI法について考えを少し改めなければならないかも?と思うような出来事があった。ある診療所の待合室で、診察の順番を待っていた時のこと。待合室には1組の親子が座っていた。子どもは退屈しのぎのためか、診察室にあった置物でがちゃがちゃと音を立てながら遊び始めた。それを見た母親は、「やめてちょうだい!お母さんの頭が痛くなるでしょう?」と子どもを叱ったのである。

 SBI法に従えば、(1)(2)のステップは省略されているものの(この場合、(1)(2)の内容は自明なので触れるまでもないのだが)、(3)のステップには忠実に従っている。だが、子どもの行為で影響を受けたのは母親だったのだろうか?確かに、その母親が深刻な頭痛持ちであったならば、子どもの音に不快感を示しても仕方なかろう。しかし、子どもの行為で一番影響を受けた、言い換えれば、一番迷惑を蒙ったのは、同じ待合室で待っていた(私を含む)他の人たちだったはずだ。それなのに、母親が自分の利害を最優先にして子どもを叱ったことに対して、(他の患者はどう感じたか知らないが、)少なくとも私は違和感を覚えたわけである。

 冒頭に掲載した昔の記事の中で紹介している例も、読み返してみると「本当にこれでいいのかなぁ?」と自問自答したくなるようなものがある。
<良い例>
 「君の作ったシステム構成図には何点か不備があった。お客さんの期待に応えられなくて私は残念だ」
<悪い例>
 「君の作ったシステム構成図には何点か不備があった。お客さんはそれを見て不満げだった」
 仮に<良い例>のようなフィードバックを受けたとすると、今の私ならばきっと、「お前の手柄のために仕事をしているんじゃない。お客さんのために仕事をしているんだ」と心の中で反発するに違いない。むしろ、<悪い例>のようなフィードバックの方が効くと思うのである。

 ただし、お客さんの心情をもう少し具体的に表現する必要はあるだろう。例えば、「君の作ったシステム構成図には何点か不備があった。お客さんは今回のシステムリニューアルに並々ならぬ情熱を注いでおり、君が開く要件定義の会議にお客さんは何度もつき合って、システムへの希望をモレなく伝えてくれた。今日の会議にしても、普段の会議にはなかなか顔を出さない部長クラスの方々が、忙しい業務の合間を縫って出席してくれた。それなのに、君のシステム構成図を見たら、『あの会議は無駄だった』、『あの人にシステム設計を任せて大丈夫なのか?』とがっかりしたかもしれない」といった具合である。

 要するに何を言いたいのかというと、(3)のImpactのステップでは、「部下の行動が自分に与えた影響」を伝えるのではなく、「部下の行動によって、最も被害を蒙った人々の気持ちを代弁すること」が重要ということだ(そんなの当たり前じゃないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれないが・・・)。これがアメリカと日本の文化の違いに起因するのかどうかはよく解らないけれども、上司がSBI法に素直に従ってフィードバックを行うと、日本では自己本位的と受け取られる可能性が高いのではないか?と思うのである。
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