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June 06, 2012
《要約》『戦略サファリ』―ミンツバーグによる戦略の10学派(8.カルチャー・スクール)
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ミンツバーグらは、カルチャー(企業文化)の構成要素を、世界に対する解釈と、その解釈を反映する行動と捉えており、それらは社会的プロセスの中で集合的に共有された信念として凝縮するとしている。カルチャーは、組織の共通の利益にフォーカスし、戦略的安定を維持する機能を持つ。この点で、カルチャー・スクールとパワー・スクールは表裏一体の関係にある(前回の記事で見たように、パワー・スクールは、どちらかと言うと分裂や対立にフォーカスしている)。
カルチャーは、組織が好む思考スタイルや分析方法、そして戦略形成プロセスに大きな影響力を持つ。ここで、他の学派との関係性を考えてみる。コグニティブ・スクールの「主観性重視」の立場は、個人が世界を主観的に解釈し、環境をイナクト(想造)すると説いた。これを組織単位に拡張すれば、ラーニング・スクールが説明する「組織学習」へとつながる。組織は新しい状況に適合する、あるいは新しい状況を創り出すために、既存のフレーム(=知識や信念の体系)を再構築する。そのフレームが強化され、組織の大部分のメンバーがほぼ無意識のうちにそのフレームに従うようになった時、カルチャーが形成されたと言えるだろう。
ただし、そのフレームやカルチャーが機能不全を起こした場合は、再びコグニティブ・スクールの考えに戻り、環境を再解釈するところから始めなければならない。カルチャーが強すぎると、組織は変化の必要性に気づかず(あるいは、気づいても無視してしまい)、”ゆでガエル現象”に陥って死滅するかもしれない。だからこそ、カルチャーから若干外れた異端児(=世界に対して、組織とはやや異なる見方を持っている人間。必ずしも”変人”である必要はない)を入れておくことが重要なのである。ここに、数年前から注目を集めている「ダイバーシティ・マネジメント」のポイントがある。
ところで、企業文化というとエドガー・シャインの名前を思い浮かべないわけにはいかないのだが、ミンツバーグはシャインの理論に触れていない(参考文献に名前が見当たらない)。これが意図的なものなのかどうかは、全く不明である。
【第8学派:カルチャー・スクール】
<代表的な論者・理論>
(1)エリック・レンマン、リチャード・ノーマン(1965年に設立されたスカンジナビア経営研究所[SIAR]の中心メンバーであり、その後のスウェーデン学派に影響を与えた)
(2)1960年代後半のスウェーデン学派(カルチャーに関する多くの文献は、なぜカルチャーが組織の停滞や衰退を生じるのか?を論じている。これに対してスウェーデン学派は、組織の戦略的変化に着目した。組織は新しい現実に「適合」するために、集合的な「再構築[リフレーム]」をしなければならないという)
(3)バーガー・ウェルネーフェルト、J・B・バーニーらの「資源ベース論」(競争優位を持つ資源についての説明は他のサイトなどに譲るとして、カルチャー・スクールの立場として重要なのは、模倣困難性の源泉が「社会コミュニティとしての組織全体」、すなわちカルチャーそのものにある、と主張したことである)
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<特徴>
(1)戦略形成は、社会的な相互作用のプロセスであり、組織のメンバーによって共有される信念や理解に基づいている。
(2)個人は、他の文化に対する適応(文化変容)や、社会化のプロセスを通して、こうした信念を手に入れる。それはほとんどの場合、暗黙裡で言葉を介さないが、時としてより形式的な教義によって強化される。
(3)したがって組織のメンバーは、そのカルチャーを支える信念については、断片的にしか説明することができず、またその起源や説明に関しても曖昧なままである。
(4)結果として戦略は、ポジションというよりも、特にパースペクティブの形を取ることになる。そのパースペクティブは、必ずしも明らかでないが、集合的な意図に根づいており、戦略や行動パターンに影響を与える。そして、そのパターンによって、深く埋め込まれた組織の資源や能力が守られ、競争優位に活用される。
(5)カルチャー、特にイデオロギーは戦略的変化を促すことはせずに、むしろ既存の戦略を永続させようとする。そして、組織全体の戦略的なパースペクティブの中でのポジションの変更を促す程度にとどまる。
(6)プランニング・スクールやポジショニング・スクールが歴史に無頓着であり、言うなれば服を着替えるように戦略を変えるのとは対照的に、カルチャー・スクールは、組織がこれまで歩んできた豊かな歴史というタペストリーの中に戦略を位置づける。
<功績>
(1)パワー・スクールの非連結的な衝突に対し、イデオロギーによって統合されたコンセンサスに注目した。
(2)デザイン/コグニティブ/アントレプレナー・スクールの個人主義に対し、社会的プロセスの重要な集産主義的側面を取り入れている。
(3)ラーニング・スクールが答えなかった、「再構築(リフレーム)」が必要な時期を教えてくれるかもしれない(ラーニング・スクールのページで、ラーニング・スクールは学習を強調するあまりに、組織のメンバーに「常に学習し続けなければならない」と勘違いさせてしまい、うまくいっている戦略を捨てて、単に新しいとか面白そうだという理由だけで、新しいアイデアに移行させる危険性がある、と指摘した)。
<問題点>
(1)ポジショニング・スクールが人為的な精確さについて咎められるのならば、カルチャー・スクールはその概念の曖昧さについて咎められなければならない(スウェーデン学派に登場する「幽霊神話」、「組織のドラマ」、「不適格」などといった言葉に直面することは、それ自体一種のカルチャーショックである)。
(2)ラーニング・スクールが学習を極端に推し進める危険性があるのとは反対に、カルチャー・スクールは必要な変化を阻止してしまう危険性がある(その危険性を回避するために、スウェーデン学派が生まれたわけであるが・・・)
(3)戦略的優位性と組織の独自性が同等であると捉えている点にも問題がある。多くの場合、他と違うことはよいことである。しかし、それは競争力の本質ではないし、自然に競争力を備えるわけでもない。
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《10学派一覧》
第1学派:デザイン・スクール
第2学派:プランニング・スクール
第3学派:ポジショニング・スクール
第4学派:アントレプレナー・スクール
第5学派:コグニティブ・スクール
第6学派:ラーニング・スクール
第7学派:パワー・スクール
第8学派:カルチャー・スクール
第9学派:エンバイロメント・スクール
第10学派:コンフィギュレーション・スクール
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