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June 05, 2012

《要約》『戦略サファリ』―ミンツバーグによる戦略の10学派(5.コグニティブ・スクール)

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 アントレプレナー・スクールでは踏み込めなかった「起業家の心の中」を、認知心理学の知見を踏まえながら分析しようとするのが今回のコグニティブ・スクールである。コグニティブ・スクールはさらに、「客観性重視」と「主観性重視」の立場に分かれる。ミンツバーグは、第4学派までの比較的客観的なスクールと、第6学派以降のもっと主観的なスクールへの橋渡し的な存在として、このスクールを5番目に位置づけている。

【第5学派:コグニティブ・スクール】
<代表的な論者・理論>
(1)【客観性重視】ハーバード・サイモンの「限定的合理性」、「情報処理モデル」
(2)【主観性重視】グレゴリー・ベイトソンらの「社会的構成主義」

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<特徴>
(1)戦略形成は、戦略家の心の中(mind)で起こる認知プロセスである。
(2)戦略家の心の中には、知識を系統づける心的構造=フレーム(スキーマ、コンセプト、スクリプト、プラン、マップ、メンタル・モデルといった用語もほぼ同じ意味)が存在する。フレームは、環境からのインプットをどのように処理するのかを決める。戦略は、このフレームを通じてパースペクティブとして出現する。
(3)「客観性重視」の立場によれば、環境からのインプットは、フレームによって解読されるまでに、あらゆる種類のフィルターによって歪曲される可能性がある。一方、「主観性重視」の立場によれば、そもそも分離した対象としての環境は存在しない。世界は、人間の行動やその行動の意味を理解しようとする知的努力によって「イナクト(enact:想造)」される。
(4)概念としての戦略はそもそも達成することが難しく、実際達成されたとしても、最善であったとは言い難い。さらに、もはや実行不可能になったとしても、変更するのは難しいものである。

<功績>
(1)コグニティブ・スクールは、戦略形成の特定のステージに注目した。特に、戦略の最初の着想段階、既存の戦略の再考段階、認知に固執するがために組織が既存の戦略に執着する段階に注目している。
(2)人間の認知の限界に注目したことで、かえって戦略作成の創造的な側面が後押しされた。
(3)とりわけ主観性重視の立場は、戦略がメンタルなプロセスであるがゆえに、戦略に行き着くまでに重大な誤りが起こりうることに気づかせてくれる。一方で、戦略家の認知スタイルは変化するものであり、その変化が戦略に重大な結果をもたらすことにも気づかせてくれる。

<問題点>
(1)客観性重視の立場は、「成功体験に引きずられる」など、意思決定が歪曲されるパターンを指摘している。ところが、経験による知恵、創造的な洞察力、直観的統合など、意思決定を歪めやすいとされる要素が、逆に戦略形成にプラスの影響も及ぼしうる点を軽視すると、戦略の理解自体も歪曲される可能性がある。
(2)客観性重視の立場に立つと、環境が複雑すぎて完全には理解できないために、環境にもてあそばれるリスクがある(もっとも、それを乗り越えられれば、<功績>で指摘したように、創造性の発揮が可能となる)。
←これらの問題については、主観性重視の立場が克服を試みている。その試みも含めて、ミンツバーグはこのスクールのポテンシャルに注目したいと述べている。

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 《10学派一覧》
 第1学派:デザイン・スクール
 第2学派:プランニング・スクール
 第3学派:ポジショニング・スクール
 第4学派:アントレプレナー・スクール
 第5学派:コグニティブ・スクール
 第6学派:ラーニング・スクール
 第7学派:パワー・スクール
 第8学派:カルチャー・スクール
 第9学派:エンバイロメント・スクール
 第10学派:コンフィギュレーション・スクール
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