※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
October 01, 2011

主要なリーダーシップ論の個人的整理―整理の軸と考え方&特性論・性格論編

拍手してくれたら嬉しいな⇒
ジョセフ S ナイ
日本経済新聞出版社
2008-12-17
posted by Amazon360

 アメリカの政治学者ジョセフ・ナイの著書『リーダー・パワー』の書評に入る前に、これまでの主要な(というか、私が読んだり聞いたりした)リーダーシップ論を一度整理してみることにした。かなりざっくりとした図なので、不自然な点や、漏れている重要なリーダーシップ論があったら、ご指摘いただけるとありがたいです。

主要なリーダーシップ論の整理図(仮)

 まず、リーダーシップ論においては、「誰を分析対象とするか?」がポイントとなる。最も多くの研究が積み重ねられ、多様な知見が蓄積されているのは、言うまでもなく「トップ・マネジメント層」である。ここで言うトップ・マネジメントには、企業の経営幹部だけではなく、大統領や首相といった政界のリーダーや、NPOや病院の理事のような非営利組織のトップ層も含まれる。

 しかし、リーダーシップは組織のトップに限定されたものではない。福島原発事故の際には、吉田所長が官邸からの命令を振り切って海水注入を継続し、東京消防庁の名もなき隊員たちが被曝の危険性と戦いながら炉心の冷却作業を進めた。「トップ・マネジメント層」よりも下位の「ミドル・マネジメント層」、さらには「役職を持たないメンバー」もリーダーシップの分析対象となる。

 ただ、これらの階層別の視点は、ある1つの前提を暗黙のうちに置いていることに留意しなければならない。それは、「リーダーシップは、1人のリーダーによって発揮される」という前提である。だから、どの層を分析対象にするにせよ、「特定の誰か1人」を中心として、その人の言動を考察することが多い(とりわけ、「トップ・マネジメント層」のリーダーシップ研究では、この傾向が顕著である)。

 これに対して、リーダーシップによって導かれる「集団全体」を分析対象とするアプローチもある。集団内では、リーダーが特定のメンバーに限定されず、時間の経過や状況の変化とともにリーダーが入れ替わりで登場する。各メンバーは、リーダーとフォロワーという2つの役割の間を何度も往来することになるわけだ。さらに、複数のリーダーがお互いに役割を補完しながら、リーダーシップを発揮することもある。この「集団全体」という分析対象も含めると、リーダーシップの分析対象としては、4パターンが挙げられる。

 リーダーシップの「分析対象」に加えて、リーダーシップ論を整理するのに有効なもう1つの軸は、「リーダーシップを方向づける要因」である。言い換えれば、リーダーシップの成果を規定する要因である。この要因は、大きく分けて「リーダーを取り巻く環境要因」と、「リーダー自身の個人的要因」の2つから構成される。環境要因はさらに、リーダーの行動を限定する方向に働く、どちらかというとネガティブな要因である「制約要因」と、リーダーの目標達成をプラスの方向に後押しする「活用可能な資源」という2つに分かれる。

 「リーダー自身の個人的要因」としては、「ビジョン・価値観」、「スキル」、「身体的・心理的特性」の3つを指摘することができるだろう。このうち、最後の「身体的・心理的特性」は、正直に言えばおまけのようなものだ。経営学におけるリーダーシップ論の黎明期(今からおよそ100年ぐらい前)には、リーダーと通常の人間とで異なる身体的な特徴(背が高い、声が大きいなど)を並べ立てる「特性論」が存在した。ただし、これは「血液型によって性格が規定される」と言っているのとほとんど同じで、科学的な根拠がないため、今ではほとんど用いられることがない。

 また、「身体的・心理的特性」のカテゴリの中には、リーダーに固有の性格を探ろうとする「性格論」もあるが、これも個人的にはあまり優れたアプローチだとは思わない。「性格論」も歴史が古く、いろんな論者が様々な性格を指摘している。ところが、よく突き詰めて見ていくと、実は「真摯さ」、「誠実さ」、「正直さ」、「勝負強さ」などといった、非常に抽象的でごく自然な性格に帰着することが多いように感じる。とはいえ、その性格が解ったからといって、性格が抽象的すぎるがゆえに、何か実践的な教訓が得られるわけではない。この点で、個人的には「性格論」に不満を抱いている。

 「分析対象」と「リーダーシップを方向づける要因」の2軸でマトリックスを作成し、主要なリーダーシップ論を整理してみたのが上図である。「リーダーシップを方向づける要因」について補足すると、どのリーダーシップ論であっても、多かれ少なかれ(「リーダーの身体的・心理的傾向」を除いて)全ての要因にまたがる部分があるのだが、図中では、特にウェイトが大きい要因に限定している(例えば、ウォーレン・ベニスは、リーダーに必要なスキルに関して全く言及していないわけではない。しかし、リーダー自身の価値観を中心としたリーダーシップ論を展開しているため、スキルにまたがらないように図示している)。

 次回は、図中に挙げた各リーダーシップ論について、補足説明を加えていきたいと思う(「リーダーの身体的・心理的傾向」に関しては、今日の記事で先取りして説明したので、次回の記事では省略)。
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする