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August 31, 2011
【再考察】菅直人首相はなぜ退陣に追い込まれたのか?(3完)
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(3)「重要度は高いが緊急性が低い」課題に着手し、復興を遅らせた
今回の震災後に最優先で取り組むべき課題は、「被災地の生活支援と雇用創出」、「福島原発事故の鎮静化と健康被害など各種被害の抑制」の2つである。そして、そのための補正予算を早く成立させなければならない。それが、「国民の生活が第一」を掲げる民主党であればなおさらである。ところが、原発事故処理の失点で信頼を失った菅首相は、信頼を回復させるために、国民の目を別の方向へ向けさせようとした。それが、先ほどの「ソーラーパネル1,000万戸設置宣言」も含めた「再生エネルギーの推進」である。
確かに、再生エネルギーの推進は重要課題である。原発事故を機に、国民も再生エネルギーを前向きに捉えるようになったことも、菅首相にとっては追い風であった。しかし、今この時期に検討するほど、優先度が高いと言い切れるだろうか?二酸化炭素の排出量が少ない日本は、世界から低酸素社会の早期実現を迫られているわけではない(少なくとも、アメリカほど切迫した課題ではない)。本来であれば、復興のメドがつき、事故処理の道筋が立った段階で、エネルギー戦略と経済成長戦略の見直しとともに、再生エネルギーの議論を始めるのが筋だろう。
ところが、菅首相が再生エネルギーの推進を急ぎ、退陣条件にも「再生エネルギー特別措置法案の成立」が盛り込まれたものだから、国会で十分な議論が行われないまま法案は成立してしまった。24日に成立した再生エネルギー特別措置法は、
・電力会社側の買い取り価格をいくらにするか?
・電力会社の買い取りに必要な設備をどうやって増強するか?国はどこまで支援するのか?
・仮に、電力会社が買い取りを拒否をした場合はどうするのか?
・電力会社による値上げの影響を大きく受ける大口契約者への優遇措置をどうするか?
など多くの課題を抱えている(※12)。極端な言い方をすれば、今回の法律は”スカスカ”の法律であり、「とりあえず、再生エネルギーを推進することにしました!」と言っているにすぎないのである。
以上、菅首相が退陣に追い込まれた要因を3つに分けて論じてきた。だが、ここでもう1つの疑問が出てくる。それは、これら3要因は野党側が菅首相を退陣に追い込む理由にはなるけれども、なぜ身内である民主党内でも激しい「菅降ろし」の風が吹いたのか?ということである。ここからは完全に推測の域を出ないけれども、菅首相の性格・資質そのものに問題があったのかもしれない。
すなわち、東電社員を怒鳴り散らし、思いつきでポンポンと新しい施策を打ち出したように、被災地対応や原発事故対応に当たっている民主党議員にも怒鳴り声を上げ、支離滅裂な指揮命令を出していたことが理由で、”嫌菅”の民主党議員が増えていったのかもしれない。この辺りは、もうしばらくして民主党がぶっ壊れてくれれば、暴露話となってあちこちで表面化するだろう(※13)。
忘れてはならないのは、東北地方の避難所が相次いで閉鎖へと向かっている中、仮設住宅の建築の遅れなどによって、福島県では現時点でもまだ約5,000人が避難所生活を続けており(※14)、岩手・宮城・福島の3県で震災後に離職を余儀なくされた約15万人のうち、就職したのは約1割の1万4,700人程度にとどまる(※15)という事実である。菅首相が民主党代表選の行方を悠長に眺めている間にも、東北は復興の道のりを歩んでいかなければならないのである。
(※12)「再生可能エネルギー特措法 残る課題 価格の決め方 買い取り拒否 優遇の線引き」(MSN産経ニュース、2011年8月24日)
(※13)MSN産経ニュースの記事「【民主漂流】党を覆う虚脱感 一人はしゃぐ首相、軽口叩きピザをパクリ」(2011年6月22日)では、岡田克也幹事長、さらには気性の荒いことで知られる仙谷由人官房副長官までもが、菅首相に怒鳴りつけられたことが報じられている。
(※14)「福島県内の避難所 10月閉鎖の工程厳しく」(河北新報社、2011年8月24日)
(※15)「民間の力で被災者に職を」(日本経済新聞、2011年8月23日)
【再考察】菅直人首相はなぜ退陣に追い込まれたのか? (1)|(2)|(3完)
今回の震災後に最優先で取り組むべき課題は、「被災地の生活支援と雇用創出」、「福島原発事故の鎮静化と健康被害など各種被害の抑制」の2つである。そして、そのための補正予算を早く成立させなければならない。それが、「国民の生活が第一」を掲げる民主党であればなおさらである。ところが、原発事故処理の失点で信頼を失った菅首相は、信頼を回復させるために、国民の目を別の方向へ向けさせようとした。それが、先ほどの「ソーラーパネル1,000万戸設置宣言」も含めた「再生エネルギーの推進」である。
確かに、再生エネルギーの推進は重要課題である。原発事故を機に、国民も再生エネルギーを前向きに捉えるようになったことも、菅首相にとっては追い風であった。しかし、今この時期に検討するほど、優先度が高いと言い切れるだろうか?二酸化炭素の排出量が少ない日本は、世界から低酸素社会の早期実現を迫られているわけではない(少なくとも、アメリカほど切迫した課題ではない)。本来であれば、復興のメドがつき、事故処理の道筋が立った段階で、エネルギー戦略と経済成長戦略の見直しとともに、再生エネルギーの議論を始めるのが筋だろう。
ところが、菅首相が再生エネルギーの推進を急ぎ、退陣条件にも「再生エネルギー特別措置法案の成立」が盛り込まれたものだから、国会で十分な議論が行われないまま法案は成立してしまった。24日に成立した再生エネルギー特別措置法は、
・電力会社側の買い取り価格をいくらにするか?
・電力会社の買い取りに必要な設備をどうやって増強するか?国はどこまで支援するのか?
・仮に、電力会社が買い取りを拒否をした場合はどうするのか?
・電力会社による値上げの影響を大きく受ける大口契約者への優遇措置をどうするか?
など多くの課題を抱えている(※12)。極端な言い方をすれば、今回の法律は”スカスカ”の法律であり、「とりあえず、再生エネルギーを推進することにしました!」と言っているにすぎないのである。
以上、菅首相が退陣に追い込まれた要因を3つに分けて論じてきた。だが、ここでもう1つの疑問が出てくる。それは、これら3要因は野党側が菅首相を退陣に追い込む理由にはなるけれども、なぜ身内である民主党内でも激しい「菅降ろし」の風が吹いたのか?ということである。ここからは完全に推測の域を出ないけれども、菅首相の性格・資質そのものに問題があったのかもしれない。
すなわち、東電社員を怒鳴り散らし、思いつきでポンポンと新しい施策を打ち出したように、被災地対応や原発事故対応に当たっている民主党議員にも怒鳴り声を上げ、支離滅裂な指揮命令を出していたことが理由で、”嫌菅”の民主党議員が増えていったのかもしれない。この辺りは、もうしばらくして民主党がぶっ壊れてくれれば、暴露話となってあちこちで表面化するだろう(※13)。
忘れてはならないのは、東北地方の避難所が相次いで閉鎖へと向かっている中、仮設住宅の建築の遅れなどによって、福島県では現時点でもまだ約5,000人が避難所生活を続けており(※14)、岩手・宮城・福島の3県で震災後に離職を余儀なくされた約15万人のうち、就職したのは約1割の1万4,700人程度にとどまる(※15)という事実である。菅首相が民主党代表選の行方を悠長に眺めている間にも、東北は復興の道のりを歩んでいかなければならないのである。
(※12)「再生可能エネルギー特措法 残る課題 価格の決め方 買い取り拒否 優遇の線引き」(MSN産経ニュース、2011年8月24日)
(※13)MSN産経ニュースの記事「【民主漂流】党を覆う虚脱感 一人はしゃぐ首相、軽口叩きピザをパクリ」(2011年6月22日)では、岡田克也幹事長、さらには気性の荒いことで知られる仙谷由人官房副長官までもが、菅首相に怒鳴りつけられたことが報じられている。
(※14)「福島県内の避難所 10月閉鎖の工程厳しく」(河北新報社、2011年8月24日)
(※15)「民間の力で被災者に職を」(日本経済新聞、2011年8月23日)
【再考察】菅直人首相はなぜ退陣に追い込まれたのか? (1)|(2)|(3完)
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