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September 02, 2011
最後の論文「Cスイートの新たな役割」は管理職にこそお奨め―『偉大なるリーダーシップ(DHBR2011年9月号)』
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(これで9月号は終了です)過去10年の調査が明らかにする Cスイートの新たな役割(ボリス・グロイスバーグ他)
「Cスイート」とは、「CXO(CなんとかO)」という肩書を持つ経営幹部のこと。日本企業であれば、「X分野担当常務」とか、「Y分野担当取締役」とかが、Cスイートに該当する。この論文は、将来のCスイートに求められると予測される役割や能力をまとめたものである。
調査方法を読むと、かなり手の込んだやり方をとっている。まず、企業の人材募集要項がまとめられた文書を10年分分析している。例えば、CIOについては、募集企業が作成した100以上の職務記述書を分析している。調査の過程で著者が特に重視したのは、各記述書のテーマと、そこに列記されている能力が「必須」から「あれば望ましい」まで、どのようにランクづけされているかという、能力の優先順位である。
こうして、過去10年間におけるCスイートの人材要件の変化を踏まえた上で、次に、各ポストの能力要件が今後どのように変化していくかを、それぞれの職能を専門とする人材コンサルタントに予測してもらっている。例えば、CIOについては、サーチ会社でIT人材の案件を担当しているコンサルタントを集め、技術革新の動向から見て、人材に対するニーズがどのような変化するかを話し合ったという。
このような調査を経て、7つのCスイートについて、あるべき将来像を明らかにしたものが以下の一覧である。もっとも、著者が論文の内容を一覧化したサマリなので、かなり簡素化されている点は留意していただきたい(補足が必要な箇所には、青字斜体で追記した)。
なお、この論文は「Cスイートに求められる役割」に焦点が当たっているけれども、個人的には、(1)30代〜40代の管理職と、(2)彼らの人材育成を担っている人事・人材育成担当者にこそ読んでもらいたいと思っている。言うまでもなく、誰もがある日突然Cスイートになれるわけではなく、何十年もかけて知識とスキル、経験とノウハウを積んでCスイートへと昇進するものだ。だから、以下に列記した役割は、それぞれの職能で現在管理職のポジションにいる人たちが、中長期的に開発目標とすべき能力なのである。
人事部は、以下の一覧を参考にしつつ、自社を取り巻く事業環境の変化と戦略の方向性を踏まえて、自社のCスイートにはどのような役割や能力が求められるのかを具体化する。そして、現在の管理職全員を対象に、それぞれのスキルが現在どのレベルにあるのかを評価する。
評価内容は人事部が管理職本人と共有し、会社の重要な戦力として今後どのような価値を発揮してほしいのか?今はまだ十分でない能力や経験は何か?といった点についての人事部の考えを共有する。一方で、管理職本人にもキャリアの展望やニーズがあるはずだから、本人がどのようなキャリアを望んでいるのか?本人が自覚しているキャリア上の課題は何か?を聞き出す。
その両者を擦り合わせて、管理職本人のキャリア開発の目標と、能力開発の計画を、人事部と管理職本人が共同で策定する。こうした一連のサイクルを定期的に回すことができれば、いざCスイートを任命しなければならないという局面に直しても、潤沢なCスイート候補者のプールから、適材を配置することが可能になるに違いない。
CIO(最高IT責任者)CEO(最高経営責任者)
・機能、部門、地域の違いを超えて、ビジネスを包括的にとらえられる。
・プロセス志向で、組織設計になじんでいる。
・情報分析の知識があり、会社が情報を整理し活用するのを支援できる。
・投資配分の専門知識があり、ROIに基づいて将来のIT支出に関する決断を下せる。
CMSO(最高マーケティング・営業責任者)
・その分野内での経験が豊富にある。
・新しいチャネルがもたらしたマーケティング関連の課題や機会に取り組んだ経験がある(例えば、Web販売チャネルの構築や、フランチャイズ網の強化など)。
・CEOのために、マーケティング、営業、eコマースを一括して扱う窓口になれる。
・チャネルにとらわれない流通が増えているので、高度な技術に関するノウハウがある。営業部門と技術部門の経営幹部との関係をうまく管理できる(「チャネルにとらわれない流通」というのが解りにくいが、同じ製品が営業担当者による直販、コールセンター経由、Web通販チャネル経由、代理店経由など、様々なチャネルで販売されるため、それぞれのチャネルでどのような顧客価値・経験価値を訴求し、どのようなプロモーションを実施し、顧客とどのように対話するのかについて、部門横断的に検討することが要求される、という意味だと考えられる)。
・リスク・マネジメントとレピュテーション(評判)管理のスキルがある(ここでのリスク・マネジメントとは、この後のCFOで出てくるリスク・マネジメントとはやや異なり、顧客からのクレームや製品・サービスの不備に対して適切な対応を行うことを指す。また、自社の製品価値やブランドを損ないかねない、不当なネガティブメッセージが市場に蔓延しないようにすることも含まれる[レピュテーション・マネジメントに近い])。
・透明性を高め、顧客コミュニティーや一般消費者との対話を管理できる。
CFO(最高財務責任者)
・会社の現在のニーズに合った経験を持っている(成長期の企業ならM&Aの経験、財務諸表の修正や収支報告の違反経験がある企業なら強力な統制手腕など)。
・会計スキルは以前ほど重視されず、むしろ戦略的思考に重点が置かれる。
・会計と新しいビジネスモデルや戦略との関連性を見つけられる。
・リスクと、それを業績とバランスさせる方法を理解している。
・特にIR(投資家向け広報)面で社外をはっきりと認識している(ただし、会計面ではCFOは今後も優秀な監督者でなければならない)。
・自国のことだけを考えるのではなく、グローバルな視点で財務に取り組んでいる。
GC(最高法務責任者)
・ビジネス感覚がある(こう書くと「そりゃ当たり前だろ?」という気もするけれども、要するに単なる契約書等のリーガルチェック機能を超えて、契約段階で自社に有利な条件やスキームを形成する能力が重要になるということ)。
・取締役会と対話ができる(これもこの項目だけ読むと意味不明だが、取締役の役員報酬に関する規定や、報酬額の算出方法の妥当性について、取締役会で議論することが求められる、ということ)。
・企業の法務部門を率いた経験がある。
・規制当局や監視機関と交渉できる。
・強力な社外ネットワークを持っている。
・適切かつ費用効率のよいかたちで法務をアウトソースするために必要な判断力を備えている(最初の2つの箇条書きとも関連するが、法務部門がより高度な業務に集中できるよう、それこそ契約書のリーガルチェックといった、それほど専門知識を要しない定型業務をアウトソーシングすることになるだろうと著者は予測している)。
・新しい環境規制や環境配慮に詳しい。
・CMSOと連携したリスク・マネジメント、レピュテーション・マネジメントの実施(CMSOは顧客の声に真摯に耳を傾け、顧客に適切な情報を提供し、迅速な対策を打つことで自社の信頼を回復することに集中するが、GCは製品・サービスの不備による被害者が出た場合に、法的観点から損害賠償のスキームを構築し、企業、顧客双方の合意を早期に形成する役割を担うことになる)。
CSMO(最高サプライチェーン・マネジメント責任者)
・サプライチェーンをすみずみまで熟知している。
・業務をアウトソースするか社内で行うかを、コストを意識しながら検討できる。
・CIOと協力して、顧客やサプライヤーとの交流を改善できる。技術に精通している。
・事業部門の運営、損益管理、顧客対応の経験がある。
・あらゆる事業部門、グローバル機能、サポート部門と連携できる。
・グローバルレベルに及ぶ長距離・大規模のサプライチェーン全体を管理し、各国で発生する政治・経済的リスクに素早く対応する。
・自社の戦略の変化に伴い、サプライチェーン全体を迅速に再構築し、社内外の組織との関係や連携のあり方をデザインし直す。http://www.syncr.com/
CHRO(最高人事責任者)
・商業的なセンスがある(これは、《A》自社のビジネスの方向性をよく理解し、そのビジネスを実現するのに必要なスキル・ノウハウを持った人材を、どのように採用・育成するか?という点について、中長期的に考えることをCHROに要求しているとも読めるし、《B》最後の「最高人事責任者という立場を組織全体に売り込むことができる」と関連して、自分自身を組織全体に売り込む商業的センスを指しているとも解釈できる。ただ、どちらもCHROにとって重要なタスクであるのは間違いない)。
・文化の違いや人口統計の変化を理解している。
・チェンジ・マネジメントのスキルがある。企業文化を変える取り組みを円滑に進められる。
・CEOや取締役会で社内アドバイザーの役割を果たせるという信頼を得ている(自社の戦略とリンクさせて、次世代リーダーの育成プランを作成し、CEOや取締役と共有する必要が出てくるという意味。プランの進捗具合と次世代リーダーの候補者数、育成をめぐって新たに発生した課題などについて、定期的にボードと議論しなければならない)。
・取締役会と連携しながら、サクセッション・プラン(=経営幹部の後継者育成計画のこと)を推進できる。
・技術に推進している。
・ガバナンス構造に報酬と業績を組み込める専門知識がある。
・最高人事責任者という立場を組織全体に売り込むことができる(「なぜCHROだけこんな売込みが必要なのか?」と思われるかもしれないが、日本企業では人事部が聖域と呼ばれるほど強い権限を持つのに対し、アメリカ企業はライン部門でも採用や育成を行い、人事部は基本的な採用ステップの整備と基礎的なトレーニングの提供ぐらいしかできないことも多い。必然的にCHROの立場が弱くなるため、こういう売り込みが必要になるというわけ)。
CEOに関しては、著者も「どういうCEOが望ましいかは、もう皆さんも十分に知っていることだろう」といった感じで、一切言及していない。代わりに、P&GのCEOアラン・ラフリーがDHBR2009年9月号に「CEOにしかできない仕事」という論文を寄せているので、そちらを参照するとよいかも。
ちなみに、ラフリーの論文を含むDHBR2009年9月号についてのレビュー記事はこちら。
何でもコラボすりゃいいってもんじゃないんだよ(前半)−『信頼学(DHBR2009年9月号)』
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