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July 22, 2011
【第19回】自社を介して2種類の顧客を持つ―ビジネスモデル変革のパターン
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【パターンの概要と適用できるケース】
結局、6月中に第20回まで全て終えるという目標は達成できませんでした。すみません。あと2回なので、7月中に何とかします!
今回のビジネスモデルは、一言で言えばマッチングビジネスであり、売り手と買い手の間に立って仲介役を担う。代表的なビジネスは、言うまでもなくテレビや雑誌、ネットの広告である。グーグルも、創業者のサーゲイ・ブリンとラリー・ペイジの2人は、検索エンジンそのものを企業に販売しようとしていたが、エリック・シュミットの提案によって、現在のような広告モデルができ上がったと言われる。
広告ビジネスについてもう少し補足すると、膨大な顧客基盤を有する企業は、ほぼ例外なく広告ビジネスを展開できる。極端な話をすれば、食品メーカーは自社製品のパッケージの一部を広告枠にして、消費者の興味をそそるような広告を掲載することだってできるはずだ。
しかし、実際のところ、そこまでやらないのは、1つには過剰な広告を消費者が嫌がり、製品のブランドイメージを傷つけてしまうリスクがあるからであり、もう1つは食品メーカー自身が広告主を開拓する営業部隊を新たに設ける必要があり、新しいケイパビリティを獲得しなければならないためである。
広告ビジネス以外にも、業界内に売り手が数多く存在し、買い手へのアプローチが難しくなると、両者の橋渡しを行うプレイヤーが登場する。このプレイヤーにとって、売り手はサプライヤではなく、「何とかして製品・サービスを売りたい」というニーズを持った顧客と化す。こうして、仲介役のプレイヤーは、売り手と買い手の両方を自社の顧客にすることができるわけだ。
「お金を払ってでも売りたい」という売り手が存在する業界の1つに、出版業界が挙げられる。著名な作家であれば、出版社が出版権をめぐって争奪戦を繰り広げるものの、無名の人間が出版する場合には、出版社に対して百万円単位のお金を先に支払わなければならない。これはもちろん、本が売れないリスクを出版が作家に転嫁しているわけだが、見方を変えれば、「お金を払ってでも自分の作品を世に出したい」という作家のニーズに応えているとも捉えられる。
【パターンが当てはまる事例】
《サービス共同購入サイト[GROUPON、ポンパレなど]》
昨年から注目を集めているのが、このサービス共同購入サイトのビジネスである。製品の共同購入ビジネスは以前から存在したが、そのサービス版だ。アメリカでGROUPONが人気を博すようになってから、その人気が日本にも飛び火し、一気に多数のプレイヤーが参入してきた。

GROUPONを例にとってみよう。まず、サービス業者は、クーポン価格とクーポンの最低販売枚数を決定し、GRUPONに情報を掲載する。消費者は、ほぼ日替わりで更新される情報の中から、気に入ったサービスのクーポンを購入し、代金をGROUPONに支払う。販売枚数が最低ラインを超えれば取引が成立し、GROUPONからクーポンが発行される(取引が成立しなかった場合は払い戻し)。消費者は、クーポンの有効期限内にサービスを利用する、という流れになる。
GROUPONは、クーポンの販売総額に一定のパーセンテージをかけた金額を手数料として手元に残し、残りをサービス業者に支払う。このパーセンテージはサービス共同購入サイトの運営企業によってまちまちだが、GROUPONの場合は約30%のようだ。つまり、あるサービス業者が3,000円のクーポンを500枚販売した場合、サービス業者には3,000円×500枚×70%=105万円、GROUPONには3,000円×500枚×30%=45万円が入る計算になる。
サービス業者から見ると、クーポンの価格を通常の価格よりも低く設定しなければならない上に、GROUPONに約30%の手数料を持って行かれるため、たいていのクーポンはサービス業者にとって赤字になる。それでもサービス業者がGROUPONに情報を掲載するのは、クーポンを利用した消費者の一部がリピーターになってくれれば、赤字の分を取り戻せるからである。
ここで、このビジネスに向いているサービス業は何か考えてみよう。GROUPONやポンパレ、さらに他のサービス共同購入サイトも、飲食店のクーポンが目立つ。ポンパレはリクルートが主体であり、ホットペッパーなどで蓄積した飲食店向けの営業ノウハウを活用していると言える。
ところが、このビジネスの成立条件は、前述したように「クーポンを購入した消費者の一部がリピーターになること」である。私の周りで飲食店、特に飲み屋関係のクーポンを購入した人に話を聞いてみると、「同じ店に2度は行かない」という人が多数を占めている。よく考えれば至極当然なのだが、よほどお気に入りの飲み屋でもない限り、同じ店に何度も足を運ぶことは考えにくい。
さらに、赤字覚悟でクーポンを販売していることを考えると、売れば売るほど損になるビジネス、すなわち変動費率が高いビジネスは危険である。飲食店のように、そもそも薄利多売のビジネスがむやみにクーポンに頼ると、自分で自分の首を絞めることになりかねない。むしろ、固定費率が高く、顧客が多少増えても追加コストがほとんど発生しないビジネスの方が向いている。
これらの点を総合すると、この手のビジネスに向いているサービス業とは、美容院やエステ、スパ、ネイルサロン、マッサージ、ゴルフの打ちっ放しなど、固定費率が高く、かつ一度利用した顧客がリピーターになりやすい(=顧客がロックインされやすい)業態であると考えられる。つまり、向いているサービス業はそれほど多くないのだ。アメリカでGROUPONが上場するかも?という情報が流れた時に、ビジネスモデルが脆弱で投資対象としては不適格だという声も聞かれた。サービス共同購入サイトの今後の動向が気になるところだ。

もう1つ、広告ビジネス以外で2種類の顧客を有するビジネスモデルを図示してみた。上図はショッピングセンター(SC)のビジネスモデルである。SCの運営会社には、テナント企業と消費者という2種類の顧客が存在する。SC運営会社は、消費者に対してはSCに来てもらうためのキャンペーンを実施し、テナント企業に対しては単なる場所貸しという枠を超えて、テナントの経営改善に向けたサポートなどを提供している。テナント企業は、毎月の家賃に加えて、売上の数%を手数料としてSC運営会社に支払う。これがSC運営会社の収益源になる。
SC運営会社にとって重要なのは、SC全体の来客数を増やすために、目玉となるテナント企業を誘致することである。魅力的なテナントが出店すれば、来場者が増加する。来場者が増加すれば、他のテナントも売上増の恩恵にあずかることができる。そして、「あのSCに出店すると、売上が伸びやすい」という評判が流れれば、出店を希望するテナント企業が増えていく。
今回のビジネスモデルは、自社の両側に2種類のネットワークが存在するとも言える。こうしたビジネスでは、ネットワークの外部性が働く。しかも面白いことに、片方のネットワークのプレイヤーが増加すると、そのネットワークのプレイヤーが増加するだけでなく、もう片方のネットワークのプレイヤーも増えていくのである。
先ほどのSCの例で言えば、目玉となるテナントが出店すると、そのテナントを目当てに消費者側のネットワークができ上がる。消費者側のネットワーク内に、口コミでSCの評判を広げてくれる人がいれば、消費者側のネットワークが増大する。すると今度は、消費者側のネットワークの大きさに惹かれて、新たに出店を希望するテナント企業が登場する。つまり、テナント側のネットワークが拡大するのである。
サービス共同購入サイトも同じである。まずは、目玉となるサービス業者にクーポンを発行してもらう。ポンパレがハーゲンダッツと組んで、1個100円のアイスのクーポンを100万枚販売しようとしたのを覚えている方も多いだろう(この仕掛けそのものは、悲惨な結果に終わったわけだが)。
サービス共同購入サイトの運営会社は、消費者側のネットワークを拡大するために、ほぼ例外なくtwitterやfacebookなどのソーシャルネットワークを活用している。クーポンを購入した消費者が、「あそこのお店のクーポンが○○円で買えたよ!」とtwitterでつぶやいてくれれば、フォロワーにもその情報が伝わるからである。
ソーシャルメディアの利用者の中に、芸能人など影響力の強い人がいれば、消費者側のネットワークが一気に広がる可能性がある。すると今度は、「あのサイトにクーポンを出せば、確実に取引が成立する」という評判がサービス業者に流れて、サービス業者のネットワークが広がっていくのである。
【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
事例から見えてくるCSFはこんな感じだろうか?
・膨大な顧客基盤を有すること
(広告ビジネスの場合は、これが必須)
・両方の顧客ニーズのマッチング精度を向上させる仕組み
(グーグルのAdSenseがよい例)
・ネットワーク拡大のカギを握るプレイヤーを押さえること
(サービス共同購入サイト、ショッピングセンターの事例より)
《参考》今回のビジネスモデルについては、トーマス・アイゼンマン他「「市場の二面性」のダイナミズムを生かす ツー・サイド・プラットフォーム戦略」(DHBR2007年6月号)が参考になる。
結局、6月中に第20回まで全て終えるという目標は達成できませんでした。すみません。あと2回なので、7月中に何とかします!
今回のビジネスモデルは、一言で言えばマッチングビジネスであり、売り手と買い手の間に立って仲介役を担う。代表的なビジネスは、言うまでもなくテレビや雑誌、ネットの広告である。グーグルも、創業者のサーゲイ・ブリンとラリー・ペイジの2人は、検索エンジンそのものを企業に販売しようとしていたが、エリック・シュミットの提案によって、現在のような広告モデルができ上がったと言われる。
広告ビジネスについてもう少し補足すると、膨大な顧客基盤を有する企業は、ほぼ例外なく広告ビジネスを展開できる。極端な話をすれば、食品メーカーは自社製品のパッケージの一部を広告枠にして、消費者の興味をそそるような広告を掲載することだってできるはずだ。
しかし、実際のところ、そこまでやらないのは、1つには過剰な広告を消費者が嫌がり、製品のブランドイメージを傷つけてしまうリスクがあるからであり、もう1つは食品メーカー自身が広告主を開拓する営業部隊を新たに設ける必要があり、新しいケイパビリティを獲得しなければならないためである。
広告ビジネス以外にも、業界内に売り手が数多く存在し、買い手へのアプローチが難しくなると、両者の橋渡しを行うプレイヤーが登場する。このプレイヤーにとって、売り手はサプライヤではなく、「何とかして製品・サービスを売りたい」というニーズを持った顧客と化す。こうして、仲介役のプレイヤーは、売り手と買い手の両方を自社の顧客にすることができるわけだ。
「お金を払ってでも売りたい」という売り手が存在する業界の1つに、出版業界が挙げられる。著名な作家であれば、出版社が出版権をめぐって争奪戦を繰り広げるものの、無名の人間が出版する場合には、出版社に対して百万円単位のお金を先に支払わなければならない。これはもちろん、本が売れないリスクを出版が作家に転嫁しているわけだが、見方を変えれば、「お金を払ってでも自分の作品を世に出したい」という作家のニーズに応えているとも捉えられる。
【パターンが当てはまる事例】
《サービス共同購入サイト[GROUPON、ポンパレなど]》
昨年から注目を集めているのが、このサービス共同購入サイトのビジネスである。製品の共同購入ビジネスは以前から存在したが、そのサービス版だ。アメリカでGROUPONが人気を博すようになってから、その人気が日本にも飛び火し、一気に多数のプレイヤーが参入してきた。

GROUPONを例にとってみよう。まず、サービス業者は、クーポン価格とクーポンの最低販売枚数を決定し、GRUPONに情報を掲載する。消費者は、ほぼ日替わりで更新される情報の中から、気に入ったサービスのクーポンを購入し、代金をGROUPONに支払う。販売枚数が最低ラインを超えれば取引が成立し、GROUPONからクーポンが発行される(取引が成立しなかった場合は払い戻し)。消費者は、クーポンの有効期限内にサービスを利用する、という流れになる。
GROUPONは、クーポンの販売総額に一定のパーセンテージをかけた金額を手数料として手元に残し、残りをサービス業者に支払う。このパーセンテージはサービス共同購入サイトの運営企業によってまちまちだが、GROUPONの場合は約30%のようだ。つまり、あるサービス業者が3,000円のクーポンを500枚販売した場合、サービス業者には3,000円×500枚×70%=105万円、GROUPONには3,000円×500枚×30%=45万円が入る計算になる。
サービス業者から見ると、クーポンの価格を通常の価格よりも低く設定しなければならない上に、GROUPONに約30%の手数料を持って行かれるため、たいていのクーポンはサービス業者にとって赤字になる。それでもサービス業者がGROUPONに情報を掲載するのは、クーポンを利用した消費者の一部がリピーターになってくれれば、赤字の分を取り戻せるからである。
ここで、このビジネスに向いているサービス業は何か考えてみよう。GROUPONやポンパレ、さらに他のサービス共同購入サイトも、飲食店のクーポンが目立つ。ポンパレはリクルートが主体であり、ホットペッパーなどで蓄積した飲食店向けの営業ノウハウを活用していると言える。
ところが、このビジネスの成立条件は、前述したように「クーポンを購入した消費者の一部がリピーターになること」である。私の周りで飲食店、特に飲み屋関係のクーポンを購入した人に話を聞いてみると、「同じ店に2度は行かない」という人が多数を占めている。よく考えれば至極当然なのだが、よほどお気に入りの飲み屋でもない限り、同じ店に何度も足を運ぶことは考えにくい。
さらに、赤字覚悟でクーポンを販売していることを考えると、売れば売るほど損になるビジネス、すなわち変動費率が高いビジネスは危険である。飲食店のように、そもそも薄利多売のビジネスがむやみにクーポンに頼ると、自分で自分の首を絞めることになりかねない。むしろ、固定費率が高く、顧客が多少増えても追加コストがほとんど発生しないビジネスの方が向いている。
これらの点を総合すると、この手のビジネスに向いているサービス業とは、美容院やエステ、スパ、ネイルサロン、マッサージ、ゴルフの打ちっ放しなど、固定費率が高く、かつ一度利用した顧客がリピーターになりやすい(=顧客がロックインされやすい)業態であると考えられる。つまり、向いているサービス業はそれほど多くないのだ。アメリカでGROUPONが上場するかも?という情報が流れた時に、ビジネスモデルが脆弱で投資対象としては不適格だという声も聞かれた。サービス共同購入サイトの今後の動向が気になるところだ。

もう1つ、広告ビジネス以外で2種類の顧客を有するビジネスモデルを図示してみた。上図はショッピングセンター(SC)のビジネスモデルである。SCの運営会社には、テナント企業と消費者という2種類の顧客が存在する。SC運営会社は、消費者に対してはSCに来てもらうためのキャンペーンを実施し、テナント企業に対しては単なる場所貸しという枠を超えて、テナントの経営改善に向けたサポートなどを提供している。テナント企業は、毎月の家賃に加えて、売上の数%を手数料としてSC運営会社に支払う。これがSC運営会社の収益源になる。
SC運営会社にとって重要なのは、SC全体の来客数を増やすために、目玉となるテナント企業を誘致することである。魅力的なテナントが出店すれば、来場者が増加する。来場者が増加すれば、他のテナントも売上増の恩恵にあずかることができる。そして、「あのSCに出店すると、売上が伸びやすい」という評判が流れれば、出店を希望するテナント企業が増えていく。
今回のビジネスモデルは、自社の両側に2種類のネットワークが存在するとも言える。こうしたビジネスでは、ネットワークの外部性が働く。しかも面白いことに、片方のネットワークのプレイヤーが増加すると、そのネットワークのプレイヤーが増加するだけでなく、もう片方のネットワークのプレイヤーも増えていくのである。
先ほどのSCの例で言えば、目玉となるテナントが出店すると、そのテナントを目当てに消費者側のネットワークができ上がる。消費者側のネットワーク内に、口コミでSCの評判を広げてくれる人がいれば、消費者側のネットワークが増大する。すると今度は、消費者側のネットワークの大きさに惹かれて、新たに出店を希望するテナント企業が登場する。つまり、テナント側のネットワークが拡大するのである。
サービス共同購入サイトも同じである。まずは、目玉となるサービス業者にクーポンを発行してもらう。ポンパレがハーゲンダッツと組んで、1個100円のアイスのクーポンを100万枚販売しようとしたのを覚えている方も多いだろう(この仕掛けそのものは、悲惨な結果に終わったわけだが)。
サービス共同購入サイトの運営会社は、消費者側のネットワークを拡大するために、ほぼ例外なくtwitterやfacebookなどのソーシャルネットワークを活用している。クーポンを購入した消費者が、「あそこのお店のクーポンが○○円で買えたよ!」とtwitterでつぶやいてくれれば、フォロワーにもその情報が伝わるからである。
ソーシャルメディアの利用者の中に、芸能人など影響力の強い人がいれば、消費者側のネットワークが一気に広がる可能性がある。すると今度は、「あのサイトにクーポンを出せば、確実に取引が成立する」という評判がサービス業者に流れて、サービス業者のネットワークが広がっていくのである。
【考えられるCSF(Critical Success Factor:最重要成功要因)】
事例から見えてくるCSFはこんな感じだろうか?
・膨大な顧客基盤を有すること
(広告ビジネスの場合は、これが必須)
・両方の顧客ニーズのマッチング精度を向上させる仕組み
(グーグルのAdSenseがよい例)
・ネットワーク拡大のカギを握るプレイヤーを押さえること
(サービス共同購入サイト、ショッピングセンターの事例より)
《参考》今回のビジネスモデルについては、トーマス・アイゼンマン他「「市場の二面性」のダイナミズムを生かす ツー・サイド・プラットフォーム戦略」(DHBR2007年6月号)が参考になる。
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