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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
July 20, 2011

戦略とビジネスモデルの違いが解る特集―『ビジネスモデル 構想と決断(DHBR2011年8月号)』

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 8月号のレビューはこれで最後。「戦略」と「ビジネスモデル」は非常に紛らわしい言葉であるが、個人的には次のように解釈している。

 <戦略>
 自社がどの顧客に対して、どのような価値を提供するのか?そして、競合とどのように差別化を図るのか?という問いに対する答え。言い換えれば、市場における自社のポジショニング、立ち位置を示すコンセプト。

 <ビジネスモデル>
 ・戦略を実現するためのビジネスプロセス(=社員の行動の束、時に取引先や提携先の企業の行動を含む)、およびビジネスプロセスに対する経営資源の投入の仕組み(IT基盤、人材の採用・育成・配置・評価に関するルール、ナレッジやノウハウ、重要な技術や知的財産を蓄積・共有する仕組み、予算配分の制度、およびこれらの経営資源を全体的にコントロールする意思決定のメカニズム)を含むビジネスの全体像であり、かつ売上や利益の創出、コストの発生を示すシナリオ。

 ちょっと前に『ストーリーとしての競争戦略』という本が流行ったけれども、この本でいう「ストーリー」がほぼビジネスモデルに該当する(実際のところ、『ストーリーとしての競争戦略』の著者は、ビジネスモデルとストーリーを厳密に区別しているが)。

 「(※注)以降の記述で作品に関する核心部分が明かされています―『ストーリーとしての競争戦略』
 「既存企業が戦略ストーリーを再構築することは不可能なのか?―『ストーリーとしての競争戦略』

 「戦略」や「ビジネスモデル」という語句と関連して、「戦略を再構築する」とか、「戦略的打ち手を打つ」といった文言が使われることがある。「戦略の再構築」とは、自社のポジショニングの変更であり、「戦略的打ち手」とは、ビジネスモデルを修正する各種施策であると言えるだろう。

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【再掲】コンセプトのあいまいさが失敗を招く ビジネスモデルの正しい定義(ジョアン・マグレッタ)
 ビジネスモデルとは、端的に言えば「物語」、つまりどうすれば会社がうまくいくかを語る筋書きである。優れたビジネスモデルは、ピーター・ドラッカーの古くて新しい質問である「顧客はだれで、顧客価値は何か」という質問に答えるものだ。また、マネジャーが避けては通れない基本的な質問である「どのようにこの事業で儲けるか、どのような論理に基づいて適切なコストで顧客に価値を提供するか」にも答えてくれるだろう。
 この論文は今月号の最後から2番目に所収されているのだが、最初に読んだ方が他の論文を理解しやすくなるように思える。戦略とビジネスモデルの違いを説明するにあたって、著者はウォルマートとデルの違いに言及している。つまり、「サム・ウォルトンは戦略を描き、マイケル・デルはビジネスモデルを描いた」と言うのである。

 ウォルマートと言えば、徹底的に標準化された店舗オペレーション、厳格な在庫管理システム、緻密な需要予測に基づく大量発注の実現、大幅なディスカウントなどを想起するが、これらはビジネスモデルを構成する要素である。ウォルマートはビジネスモデルを徹底的に磨き上げることで競争優位を築いている。とはいえ、個別の要素自体は、実はウォルマートよりも前に登場しているものばかりである。

 サム・ウォルトンは、すでに大型スーパーがしのぎを削っている大都市部を避け、敢えて郊外に出店した。こうした地域では、車で何時間もかけてスーパーに行かなければならない。自らも田舎町の出身であったサム・ウォルトンは、郊外での買い物の大変さを肌身で感じていた。そこで、田舎町に住む人々にとって身近なスーパーを作り、かつ手ごろな価格で製品を提供しようと考えたのである。これはまさしくポジショニングの問題であり、この点でサム・ウォルトンは戦略を描いた、というわけだ。

 他方、マイケル・デルはPCの直販事業を作り上げた。これは、従来のPC業界には存在しなかったビジネスモデルである。ただし、マイケル・デルは、決して戦略を無視したわけではない。マイケル・デルは、個人向けPCの市場を捨てて、大口の法人顧客のみにターゲットを絞った。

 法人顧客はある程度PCに詳しいので、面倒な製品説明やアフターサービスをしなくてもよい。デルは、法人顧客向けのビジネスモデルを十分に練り上げた後で、個人向けPC市場に進出している(ただし、デルは法人顧客を相手にしていたせいでカスタマーサポートのノウハウが溜まらなかったため、しばしば個人顧客から対応の悪さを批判されてきたが)。

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優位性を高める選択がカギ 優れたビジネスモデルは好循環を生み出す(ラモン・カサデサス=マサネル、ジョアン・E・リカート)
 我々の調査からは、ビジネスモデルの要素として欠かせないものの1つが、オペレーションのやり方に関わる選択であることがわかる。ここで言う選択とは、報酬慣行、調達契約、施設の立地、垂直統合の度合い、営業・マーケティングの施策などである。(中略)わかりやすく概念化すれば、ビジネスモデルは、経営上の選択と、その選択がもたらす結果から成り立っている。
 この論文では、格安航空会社であるラインエア社のビジネスモデルが図示されている。だが、その図をよく見ると、実はM・ポーターがサウスウェスト航空を例にとって、同社における「アクティビティ」の関係を図示したものと酷似している。本論文の著者は、「優れたビジネスモデルは、正のフィードバックループによって自己強化される」と主張しているが、それはちょうど、ポーターが「各アクティビティが”フィット”していることが重要である」と説いたのと同じである気がした。

マイケル・E. ポーター
ダイヤモンド社
1999-06
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新規事業研究の第一人者が語る よいビジネスモデル 悪いビジネスモデル(リタ・ギュンター・マグレイス)
 (自社のビジネスモデル変革を検討する前に、)まず、自社のビジネスモデルに組み込まれている前提を疑ってみるプロセスが必要です。(中略)私がみなさんにお勧めするのは、「どのようなデータがあれば、これとは違う意思決定を下すだろうか」と自問することです。既存の信条を裏づける情報ばかりを集めないように気をつけてください。そうすれば、求めなければならない、これまでとは違った情報について考えられるようになります。
 要約すれば、「例外」について検討する場を設けることが、ビジネスモデル再構築のスタートになるということ。ただ、「例外」を発見するためには、「標準」が定められていなければならない。そういう意味では、明快な戦略とそれを実現する業務プロセスや仕組み、さらにプロセスや仕組みの成果を測定する指標をきちんと定義しておく必要がある。この辺りの話については、以下の記事もご参照ください。

 「実行を通じて戦略を修正するフィードバックループが欠けてるよな−『戦略の実現力(DHBR2010年11月号)』
 「「業務プロセスがイノベーションの原動力」というのは別の意味で一理あり―『イノベーションの新時代』

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衰退が始まってからでは遅すぎる 持続的成長のS字曲線(ポール・ヌネシュ、ティム・ブリーン)
 修復の必要がだれの目にも明らかになる前に再構築に取り組むことは、たやすいことではない。多くの場合、企業は衰退し始める直前に、最も輝いて見えるものだ。既存のビジネスモデルからの収入は急増し、利益は堅調で、株価はとんでもなく割高に取引されているからである。しかし、それこそマネジャーが手を打つべき時なのである。
 この論文を読んでいて、誰が言っていたかは忘れてしまったけれど、「お笑いは、ネタが一番ウケている時に、次のステップを考えておかなければならない。それを怠ると一発屋で終わってしまう」というタレントの話を思い出した。お笑いと経営には、意外なところで共通点があるものだ。

 お笑いの場合は、「ネタでブレーク⇒フリートークのゲスト、またはロケタレントとして多くの番組に出演⇒冠番組で司会を担当」というのが出世の王道のように思える。ネタでブレークしている間に、例えば雑誌のインタビューなど、話が滑ってもあまり痛手を負わない場面でフリートークの技術を身につけ、いろんな番組に出演しながら司会業の技を盗むことが重要なのだろう。

 ただし、お笑いと違って経営の場合は、お笑いの出世街道に該当するはっきりとした筋道など存在しない。それを見つけられるマネジャーとそうでないマネジャーの間に出世スピードの差が生まれるし、それを見つけられる企業とそうでない企業の間に成長スピードの差が生じる。
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