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April 23, 2011

「たくさん働けば、その分報われる」という価値観が組織を壊すことも―『リーダーシップ 真実の瞬間(DHBR2011年5月号)』

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 (これで最後ね)

クライシスの火種を消す 「その場しのぎ症候群」から脱する法(ロジャー・E・ボーン)
 ほとんどのアメリカ企業では、最悪の窮地から組織を救った人は英雄視される。しかしその人は、問題が発生した時には、どこで何をしていたのだろう。なぜ、問題が大きくなる前に、先手を打って行動しなかったのだろう。問題の発生件数が少ないマネジャー、長期的な予防策やシステマティックな問題解決を実践しているマネジャーに報奨を与えるべきである。
 「その場しのぎ」の仕事が増えていくと、いずれは社員の処理能力を超える。それでも放置して「その場しのぎ」を続けていると、やがて大問題に発展してしまうという、頭で考えればすぐ解りそうなことなんだけれども、実際にはよくある話だ。

 組織というものは、業務を効率的に回すために「仕組み化」を志向する。しかし実際には、時々刻々と変わる環境に適応すべく、例外的な処理が増えていくものだ。また、社会学者パーキンソンの有名な法則に従えば、「人は時間がある限り仕事を増やしていく」動物であり、個性を強調する個人主義者ならば、ルーチンに自我を埋没させないよう、オリジナリティのある仕事をすべきだと主張するだろう。こうした諸々の要因が重なって、組織にはアドホックで属人的な仕事が増えていく。

 例外的な処理やオリジナルの方法の中には、組織全体にとって大きな意味を持つものもある。当初の仕組みが想定していなかった最新の事業環境に、実は最もうまく適合したやり方なのかもしれない。本来であれば、そうした「意味のある例外」を仕組みに取り込み、それ以外の「意味のない例外」を思い切って捨て去るという活動を定期的に繰り返す必要がある。これが、ドラッカーの言う「体系的廃棄」というものである。

 体系的廃棄を行うのはマネジャーの重要なミッションなのかもしれないけれど、肝心のマネジャーが「その場しのぎ症候群」にかかっていることもある。H・ミンツバーグが実証的な研究で明らかにしたように、マネジャーとはそもそも複数の仕事を同時並行的にこなさなければならない職務である。十分な熟慮の時間が得られず、その場しのぎの決断をしてしまうこともあるに違いない。

 マルチタスク型のマネジャーの性質を変えることはおそらく困難だろう。マネジャーとはそういう仕事だと割り切るしかない。ただし、仮にマルチタスク型であっても、意思決定の拠り所や判断基準が組織的に明確になっていれば、その場しのぎ症候群に陥るリスクを押さえられる可能性が出てくる。

 それよりも深刻なのは、「たくさん働けば、その分報われる」という、量的な価値観が組織を支配している場合である。確かに、バブル経済の頃まではそういう価値観も通用しただろう。また、発達心理学者のE・エリクソンが発見した「10年ルール」(=スポーツや音楽の世界で、プロフェッショナルとそうでない人を分けるのは、「10年間の継続的な練習を積んでいるかどうか」であるというルール)のように、量が成果に結びつくケースもあることはある。

 しかし、今のビジネスは量が成果、つまり売上や利益に直結するとは限らない。量的な価値観は足かせにすらなっているのだ。それよりも、「仕事に優先順位をつける」という価値観(これ自体はすごく当たり前なんだけど・・・)を組織内に醸成しなければならない。余計な仕事はやらない、利益にならない仕事は断る、一時的なヒマを恐れない、こういう価値観こそがその場しのぎ症候群を避ける上で非常に重要だと思うのである。
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