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April 13, 2011
P&Gは「数打ちゃ当たる」でイノベーションを乱発しない―『ゲームの変革者』
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(前回からの続き。「長ぇよ!」と言わずにお付き合いくださいな)
【Phase2:事業化検討】2-2.試作品の製造・販売
【Phase2:事業化検討】2-3.フィージビリティスタディ
《プロセスの概要》
この辺からは、通常の新製品開発や新規事業立上げのプロセスとあまり変わらない。試作品を何種類か実際に作ってテスト販売し、事業化に向けたチェックポイントを1つ1つ検証していく。例えば、
・想定していた機能・性能を実現できているか?
・原材料を的確なタイミングで調達できるか?調達先に問題はないか?
・製造上の障害はないか?(生産ライン、生産技術、品質管理などの面で)
・目標原価をクリアできるか?
・顧客に対して製品価値を訴求できるデザインになっているか?
・店頭に並べた時に、製品の特徴が顧客にちゃんと伝わるか?
・競合他社の製品と一緒に並んでも、P&Gの製品だと識別可能か?
・新製品の製造・販売にはいくらぐらいの投資が必要か?
・新製品はどのくらいの販売が見込めるか?投資回収までどのくらいの期間がかかるか?
などといった感じだろう。この段階まで来ると、【Phase1-4.アイデアの取捨選択】で列挙した論点よりもずっと厳しい条件をクリアすることが求められる。試作品&フィージビリティ検証のステップ自体は至って一般的なものであるが、P&Gの場合はこの段階でも消費者や小売業者を徹底的に巻き込む点に特徴がある。
《プロセスを支える仕組み・施策》
(1)イノベーション・センター
イノベーション・センターは世界中に設けられ、家庭や小売店の様子を再現している。プロジェクトチームはこのセンターをカルフールやコストコなどといった小売業者と共同で使用する。モニターとなる消費者には、模擬店舗の中で普段通りに買い物をするよう指示を与える。そして、P&Gと小売業者は、消費者が陳列棚の製品を目にし、手に取った時の反応をじっくりと観察しながら、改善点を見つけていくのである。
【Phase2:事業化検討】2-4.Go/No Goの意思決定
《プロセスの概要》
試作品ができて事業計画が完成したら、いよいよ本格的に事業化するか否かの意思決定を行う。この意思決定を下せるのは、相応の権限を有し、心情的にプロジェクトと距離のある人となる(通常は、複数のイノベーション・プロジェクトをモニタリングしているシニアマネジャーや事業部門長)。
《プロセスを支える仕組み・施策》
(1)プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメント
P&Gのシニアマネジャーや事業部門長は、自部門で進行している数多くのプロジェクトをポートフォリオで管理している。本書では縦軸に「リスク・リターン」を、横軸に「期間」を取り、さらに縦軸を「低リスク・低リターン」、「中リスク・中リターン」、「高リスク・高リターン」の3つに、横軸を「短期(1〜2年)」、「中期(3〜5年)」、「長期(6年以上)」の3つに分けて、9つのボックスに各プロジェクトを分類する、という簡単な方法が紹介されている(実際には、もっと複雑な運用をしていると思う)。
シニアマネジャーや事業部門長は、それぞれのプロジェクトがモノになるかどうかを絶えず見極める必要がある。そして、最低でも年に4回は全てのプロジェクトを精査し、在庫整理をしている。見込みがないプロジェクトは打ち切られ、予算とチームメンバーは他のプロジェクトに再配分される。
プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントを通じて、シニアマネジャーや事業部門長は、ポートフォリオ上のプロジェクトのバランスを最適化し、自部門に課せられたイノベーション目標を達成するのに十分な数のプロジェクトが動いているかどうかをチェックしている。
(2)VPM(Velocity Portfolio Management)
これはハネウェルで導入されているオンラインツール。各プロジェクトの詳細情報を閲覧することが可能だ。VPMには、それぞれのプロジェクトが将来的に見込んでいる売上・利益や、現時点で想定されるリスク、およびそのリスクが収益に及ぼす影響まで克明に記録されている。事業部長は個別プロジェクトの情報を見ながら、事業全体の売上・利益目標の達成に向けて、どのプロジェクトにテコ入れしなければならないかを判断している。
【Phase3:実行&評価】3-1.実行組織立上げ&予算付与
【Phase3:実行&評価】3-2.新規ケイパビリティの獲得
《プロセスの概要》
ここからはもう、通常の戦略実行とほとんど同じプロセス。新しい組織やチームを立ち上げて適材をかき集め、戦略実行に必要な予算を再度与える。自社でまかなえない能力や技術、知的財産などのケイパビリティについては、社外から調達する。
《プロセスを支える仕組み・施策》
(1)コネクト・アンド・ディベロップ(C&D)
新規ケイパビリティの獲得にあたって重要な役割を果たしているのがC&Dである。先日の記事でも述べたように、C&DはP&Gと社外の研究者や企業をつなぐネットワークであるが、単なる情報交換網ではなく、技術ライセンスなどの取得に向けた交渉といったアグレッシブな仕事もこなしている。本書で紹介されている例をいくつか紹介。
・OLAYリジェネリスト
シワを防ぐ技術を研究していたP&Gは、フランスの小企業セダーマ社が「ペンタペプチド」という成分を持っていることを知った。ペンタペプチドは、細胞の活性化と傷の回復に効果がある。そこでP&Gは、C&Dを通じてセダーマ社からペンタペプチドを購入し、P&Gが既に持っていた老化防止成分と組み合わせて、OLAYリジェネリストを開発した。
・マジック・イレイサー(「ミスタークリーン」ブランドで販売されている)
日本の「激落ちくん」というスポンジからヒントを得て開発されたスポンジ。P&Gは主要取引先であるドイツのBASF社からスポンジの技術ライセンスを取得して、「マジック・イレイサー」を販売した。マジック・イレイサーは、子どもが残した壁のシミや床の靴跡など、硬い表面の汚れなら何でも落とせるのが特徴である。
(次で最後ね)
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