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January 25, 2011

M・ポーターの競争戦略論のグローバル版といった感じ―『コークの味は国ごとに違うべきか』

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パンカジ・ゲマワット
文藝春秋
2009-04-23
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 (前回からの続き)

 同書は、各国の差異に着目して適切な戦略を立案するのに役立つフレームワークを提供してくれる。一連のツールを眺めてみると、マイケル・ポーターが提唱した競争戦略の立案プロセスと非常によく似ているとの印象を受けた(なので、今回のブログのタイトルを「M・ポーターの競争戦略論のグローバル版といった感じ」としてみた)。

 ポーターの競争戦略論は、大まかに言えば(1)できるだけ魅力的な業界を選択し、(2)その業界で利益を上げるためのポジショニングを決定する、という流れになっている。そして、(1)については「ファイブ・フォーシズ・モデル(5 Forces Model)」が、(2)については「3つの基本戦略」(=差別化戦略、コストリーダーシップ、集中戦略)というフレームが与えられてる。

 ゲマワットが提案しているグローバル戦略の立案ステップは、次の通りである(同書の最終章では5つのステップに分けて整理されているが、私なりの理解に従ってもうちょっと簡素化してみた)。

(1)本国から見て、魅力的な国を選択する
 ポーターが「魅力的な業界」の選択を出発点としたように、ゲマワットは「魅力的な国」の選択を出発点としている。ゲマワットが開発した「CAGEの枠組み」が、魅力的な国の発見を助けてくれる。

 C:文化的な隔たり(Cultural)
  言語、価値観、規範、宗教、民族、気質などの違い。
 A:制度的な隔たり(Administrative)
  法律、政策、政治的背景からできた制度などの違い。
 G:地理的な隔たり(Geographical)
  本国と進出先の国の間の物理的な距離。
 E:経済的な隔たり(Economic)
  購買力、労働コスト、資本の規模などの違い。

 ここでは何を持って「魅力的な国」とするのかが論点となるが、ゲマワットは、まず第一に本国との差異が「小さい」国へ進出するのが望ましいと指摘している。この点については、グーグルが中国で苦戦したことや、役人の汚職が横行しているロシアへの進出は難しいと言われていることを思い出せば、感覚的に理解できる。なお同書では、ウォルマートの国別収益がアメリカから遠い国ほど悪くなるという興味深い分析結果も披露されている。

 もう1つは、本国特有の差異が自国にとって「有利に働く」ケースである。最も解りやすいのは労働コストの差である。インドのシステムエンジニアの人件費が先進国に比べて非常に低い点を活かして、インドのITサービス企業各社がオフショア開発を積極的に受託したのはその一例である。

(2)その国で取るべき戦略を選択する
 ポーターが「3つの基本戦略」を提示したのと同様に、ゲマワットも「AAA戦略」という3つの戦略オプションを提示している。どれか1つの戦略に特化するのが望ましいが、場合によっては複数の戦略を組み合わせた方がよいこともある。

 適応戦略(Adaptation)
  国ごとの差異に順応する。(例:コカ・コーラ、マクドナルド、グーグル)
 集約戦略(Aggregation)
  国ごとの差異のうち、類似するものの集約によって差異を部分的に克服する。(例:トヨタ)
 裁定戦略(Arbitrage)
  国ごとの差異を制約条件として扱うのではなく、その差異を活用する。(例:インドのITオフショア開発)

 私が理解しているところでは、(1)で本国との差異が「小さい」国へ進出することを選択した場合は「適応戦略」か「集約戦略」が、本国との差異が「有利に働く」国へ進出することを選択した場合は「裁定戦略」が自ずと選択されるように思える。

(3)戦略の有効性を検証する
 このプロセスはゲマワット特有のものだが、(2)で選択した戦略オプションが本当に経済的な価値をもたらしてくれるかどうかをチェックするのが目的である。ここで使用するフレームワークは、「ADDINIG価値スコアカード」と呼ばれる。

 A:販売数量/伸び率の向上(Adding Volume)
  その戦略を実行すると、全社レベルで見た場合の販売数量の伸び率は向上するか?
 D:コストの削減(Decreasing Cost)
  その戦略を実行すると、コストの割合を下げることができるか?
 D:差別化(Differentiating)
  その戦略を実行すると、現地企業との差別化を図ることができるか?
 I:業界の魅力と交渉力の向上(Improving Industry Attractiveness)
  その戦略を実行すると、自社の交渉力を向上させることができるか?
 N:リスク平準化(Normalizing Risk)
  その戦略を実行すると、全社的なリスクを平準化することができるか?
  (=特定の地域に極端に依存した収益モデルになっていないか?)
 G:知識その他の経営資源と能力の開発(Generating Knowledge)
  その戦略を実行するにあたり、既存の国や地域の知識・経営資源を移転することができるか?
  進出先で新たな知識が創造される可能性はあるか?その知識は既存の国や地域にも適用可能か?
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