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January 12, 2011
(メモ書き)研修をビジネスの成果に結びつけるための6原則―"The Six Discipline of Breakthrough Learning"
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Calhoun W. Wick Pfeiffer 2006-04-14 |
posted by Amazon360
2年近く前に、研修が現場で効果を上げるための条件をメモ書き程度にまとめたことがあったのだが、ブラッシュアップすることなくそのまま放置してしまっていた(汗)。
研修が成果につながるための職場の条件を整理してみた
この4つのプロセスの前に敢えて何か追加するならば、「研修内容を事業戦略とリンクさせる」というプロセスが必要になるはずだ。この点についても、簡単ではあるが以前に記事を書いたことがある。
戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(1)
戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(2)
人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(1)
人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(2)
「研修そのものをどうデザインするか?」という「インストラクショナルデザイン」に関する本は日本でも結構出ているのだけれども、「研修の前後も視野に入れ、かつ現場も学習環境の一部とみなして研修をどのように企画・実行するか?」という問題に関する和書は、実はあんまり出版されていないように感じる。仕方ないので、洋書で探してみたところ見つかったのがこの本。
タイトルの通り、研修をビジネスの成果に結びつけるための原則が6つにまとめられている。今日の記事では、6つの原則のポイントを私なりに整理しておこうと思う(原則によって内容の濃淡が激しいがご容赦ください)。
Discipline1: Define Outcomes in Business Terms6つの原則の中では、「原則4」が割と特徴的かな。研修後のフォローにITを活用するというのは、何ともアメリカ的な発想だなぁと感じた。ただ、これが日本でどのくらい機能するかどうかは未知数な気もする。もともと日本企業には、OJTに代表されるリアルコミュニケーションを通じた学習の風土が備わっている。
研修の成果を「ビジネスの用語」で定義すること。つまり、「製造知識の向上」、「提案スキルの強化」、「モチベーションの向上」、「部下マネジメント力の向上」といった言葉で研修の成果を定義するのではなく、
・各製造ラインにおける不良品率の低下
・商談の成約率の向上
・部門別に見た離職率の低下
・それぞれのマネジャーが管轄する部門の成果の増大
などのように、「ビジネス上の成果」で表現する必要がある。
Discipline2: Design the Complete Experience
学習のプロセスを「研修前」、「研修そのもの」、「研修後」の3つのフェーズに分け、それぞれのプロセスが一貫性を持つようにデザインすること。各フェーズで重要になるポイントは以下の通り。
≪フェーズ1=研修前≫
・研修プログラムに対する受講者の期待値を上げる
・受講者のマネジャーの支援をとりつける
・研修後のフォローアップがあることを知らせる
・研修内容にふさわしい受講者を選択する
・事前課題を実施する
≪フェーズ2=研修そのもの≫
・事業戦略の内容に基づいた研修プログラムをデザインする
・成人教育の原則にのっとったプログラムにする
≪フェーズ3=研修後≫
・受講者に対し継続的なサポートを提供する
・アクションプランの進捗をモニタリングし、必要に応じてアドバイスを提供する
・マネジャーによる支援、コーチングを実施する
・その他の支援ツールを提供する
Discipline3: Deliver for Application
研修内容と現場での仕事を適切にリンクさせること。とりわけ、研修の最後に、研修後の業務内容を意識した綿密な「アクションプラン」を立案することが求められる。
Discipline4: Drive Follow-Through
研修後のフォローアップの仕組みを構築すること。同書では、ITを活用したフォローアップシステムが紹介されている。このシステムは、アクションプランの内容を受講者にリマインドする機能や、プランの進捗度合いを数値化する機能、さらにマネジャーやメンターがオンラインで受講者にメッセージを送信する機能などを備えている。
Discipline5: Deploy Active Support
「原則4」は主にITによるバーチャルなサポートにフォーカスを当てているが、「原則5」はリアルなサポートを取り上げている。例えば(「原則2」のフェーズ3とも関連するが)、
・マネジャーによる受講者の支援
・人材開発部門によるインストラクション、ファシリテーションの実施
・受講者のコミュニティ形成
などを行うことにより、リアル&バーチャルの両面から受講者の学習を促進することが可能となる。
Discipline6: Document Results
「原則6」では、研修の効果をドキュメントに残すことが必要であると説いている。このドキュメントは、経営陣に対しては研修の投資対効果を説明する資料として、現場の各部門に対しては研修が日常業務に与えるインパクトの大きさを示す資料として活用できる。人材開発部門がこのような資料を作っておけば、社内での研修のプレゼンスが向上する。
残念ながら、最近では「OJTは『お前、じっと立っていろ』の略だ」と揶揄されるように、OJTの崩壊があちこちの企業で発生しているようなのだが、崩壊気味のOJTを前述のITがすんなりと補完するとは考えにくい。OJT不全の問題が情報不全の問題であれば、ITという技術的なソリューションが威力を発揮するだろう。しかし、OJT不全とはつまるところコミュニケーション不全のことであり、人間側の問題なのである。
「じゃぁ、OJTのようなものを復活させて、研修と現場の学習をスムーズにつなぐにはどうすれいばいいのか?」という問いに対しては、私自身もまだ十分な答えを用意できているわけじゃないんだけどね…。結局は、マネジャーの役割に占める人材育成の割合を増やして人事考課上のウェイトも高くし、マネジャーが泥臭いフォローアップを行うように動機づける、といった解決策に落ち着くようにも思える。
「こっちは日常業務で手一杯だから、人材育成に割ける時間などない」とマネジャーが言うのであれば、マネジャーの業務(あるいは、マネジャーを含む部門全体の業務)を抜本的に見直して無駄な作業を減らし、人材育成の時間を無理やりにでも確保するしかないだろう。ひょっとしたら、そこまで積極的に介入することが、これからの人材開発部門には必要とされるのかもしれない。
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