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December 23, 2010

「やりたいこと」と「得意なこと」のどちらを優先すればいいんだろう?―『リーダーへの旅路』

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ビル ジョージ
生産性出版
2007-08
おすすめ平均:
直訳したような日本語が残念だが、読む価値あり
posted by Amazon360

 同書の内容は、20代から90代(!)までのビジネスリーダー数十名を対象としたインタビュー調査に基づいている。「リーダーシップへの旅路」というタイトルが示す通り、リーダーシップは一生をかけて開発することが必要な、紆余曲折を含んだ長い道のりである。その道のりは、リーダーシップの準備を行う第1フェーズ(~30歳ごろまで)、リーダーシップを発揮し、他者をリードする第2フェーズ(30歳~60歳ごろまで)、リーダーシップの英知を社会に還元する第3フェーズ(60歳~90歳ごろまで)という3つのフェーズに分けられる、という著者の指摘は興味深く思えた。リーダーシップは、一定の役職に就いてから初めて習得するものでもないし、まして先天的にしか獲得できないものではないんだな。

 今回の記事では、同書の中で個人的に気になった点を3つほどまとめておきたいと思う。

(1)自分のやりたいことと得意なことのどちらを優先させるのがよいか?
 海外のリーダーシップの書籍や研究を読むと、必ずといっていいほど「自己認識」の重要性が指摘されている。自己認識とは、端的に表現すると自分の「拠り所」を明らかにすることだ。自分の拠り所がはっきりしていれば、意思決定の軸がぶれなくなるし、仮に間違いを犯したとしても、拠り所に照らして間違いの原因を分析できる。逆に、拠り所がはっきりしていないリーダーは、意思決定の根拠が曖昧になり、周囲のメンバーの信頼を失いやすい。また、拠り所がないから、成功と失敗を識別することも困難になる。

 では、「拠り所」とは一体何を指すのか?著者はあるCEOの言葉を紹介している。
 人生のはじめの頃に自己認識を持つことは大変重要だ。あなたが生きている文化を理解し、あなたが得意とする役割、あなたの天性の強み、生まれつき興味を覚える分野を理解することが求められる。そのあと、自分が輝ける場所に自らを導くことが可能になるのだ。
 つまり、自己認識によって明らかにすべき拠り所は、「自分が生きている文化」、「得意とする役割」、「天性の強み」、「生まれつき興味を覚える分野」の4つである。私は、この4つの順番には意味があると思う。

 「自分が生きている文化」とは、自分が生活している文化に埋め込まれた価値観や道徳を指すものと考えられる。こうした価値観や道徳は、善悪の区別や程度を教えてくれるものであり、個人の意思決定の根幹をなす判断基準を形成する。

 「得意とする分野」、「天性の強み」は、一言で言えば「強みとする能力」である。判断基準だけでは物事を成し遂げることはできない。決定した事柄を実行に移すためには、リソースとなる能力が不可欠である。「生まれつき興味を覚える分野」とは、文字通り「自分がやりたいと思うこと」であり、モチベーションの源泉となる。

 自分の強みとやりたいことが一致している場合は問題ないのだが、この両者はそうそう一致するものではない。両者が異なる場合にはどうすればよいのか?これは、キャリア開発においてよく話題になる問題である。

 個人的には、両者が一致しない時は「自分が得意とすること」を優先させるのがよいと思う。なぜならば、「やりたいこと」は個人の一時的な感情であり、時間の経過とともに変化する可能性があるからだ。これに対して「得意とすること」は能力のことであり、その価値を無に帰すような劇的な環境変化(=事故や病気で能力が発揮できない状態になるとか、技術イノベーションによって旧来的な能力が陳腐化するといった変化)でも起きない限り、突然失われるものではない。

 「好きこそ物の上手なれ」とは言うものの、好きだからといって必ずしも能力が後からついてくるとは限らない。「下手の物好き」という言葉もあるくらいである。「下手の物好き」は、最初は楽しんで仕事に打ち込むかもしれないが、いつまでも能力が上がらずに思った成果が出なければ、さすがにやっていることが嫌いになるはずだ。こうなると、能力もやる気もない人に成り下がってしまうから、周囲としては手の施しようがなくなる。

 逆に、最初は好きな仕事ではなかったが、自分の能力を活かして成果を出し続ければ、少なくとも周囲の評価は上がる(「君はあまり楽しそうに仕事をしないけれど、仕事のパフォーマンスは高いねぇ」などと嫌みったらしいフィードバックをする人はいないだろう)。周りのポジティブなフィードバックが積み重なっていけば、その人は自分の仕事を好きだと思えるようになるかもしれない。足りなかった能力が後からついてくる可能性と、最初は好きでなかった仕事を後から好きになる可能性のどちらが高いかと問われれば、私は間違いなく後者だと答える。

 (続く)
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