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November 17, 2010
「よかれと思ってやったのに・・・」というマネジメントのパラドクス集(その1〜3)
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先日までヤンミ・ムンの『ビジネスで一番、大切なこと』を題材に、「マネジメントの定石に従って行動したはずなのに、期待していたのとはまるで違う結果になってしまった」というマネジメントのパラドクスについて記事を書いてきたが、せっかくなので似たようなパラドクスを10ほどまとめてみた。
(1)差別化しようとすればするほど、製品がコモディティ化する
これはつい最近書いたばかりなので、詳細は以下の記事に譲るよ。
差別化するほどコモディティ化してしまうという悲しいパラドクス−『ビジネスで一番、大切なこと』
ベンチマークするほど組織が凡庸化するってパラドクスもあるかもね−『ビジネスで一番、大切なこと』
(2)顧客の声を聞けば聞くほど、競合他社につけ入られる隙が生まれる
クレイトン・クリステンセンが著書『イノベーションのジレンマ』などで指摘したパラドクス。顧客志向、顧客第一主義などといったスローガンの下に、重要顧客の声に深く耳を傾けて製品の改善を続けると、必要以上に製品の多機能化・高度化が進む。その結果、一般の顧客は、「そこまでの機能は必要としていない」とか、「その機能に価格プレミアムを支払うつもりはない」と考えるようになる。
破壊的なイノベーターは、この「満たされすぎたセグメント」にターゲットを絞り、もっと単純化された製品を市場に投入する。これらの製品は往々にして、従来の技術よりも"劣る"技術によって製造されている。にもかかわらず、「満たされすぎたセグメント」の顧客をごっそりと獲得し、業界の構図を破壊してしまうのである。
最近の破壊的イノベーションの例で解りやすいのは、アップルのiPodだろう。MP3プレイヤーが競って高音質を追求していたのに対し、iPodは音質を捨ててHDDの容量を追求した。またアップルは、競合他社が敏感になっていたデータ保護の仕組みにも無頓着だった。競合他社がiPodを分解してみたら、HDDがゴロンと入っているだけで、データ保護対策などほとんどされていなかったことにビックリしたという話を聞いたことがある。消費者にとっては、音質やデータ保護なんていうのはどうでもよくて、それよりもたくさんの曲を持ち歩いていつでも自由に聞けることの方がよっぽど重要だったというわけだ。
これは、クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』の中で紹介している、ソニーのトランジスタラジオの事例を思い起こさせる。トランジスタラジオの音質は家庭用ラジオよりもはるかに劣っていたのだが、ラジオを持ち歩いていつでも好きな場所で聞くことができる点が若者にウケて大ヒットとなった。
ソニーの経営ビジョンには「顧客の視点」が入っていないと指摘したのは、『ビジョナリー・カンパニー』の著者であるジェームズ・コリンズだ。コリンズは、ビジョンの中に顧客の視点が入っているかどうかは、優れたビジョンの要件ではないと結論づけている。
確かに、ソニーの設立趣意書を読むと、技術力というキーワードが前面に打ち出されており、顧客や消費者、お客様といった言葉は出てこないことに気づかされる。ソニーには、「顧客の声を聞き過ぎるのではなく、技術の力で顧客の期待を超える」という価値観が植えつけられているように思える。
(ただそのソニーも、最近は携帯音楽プレーヤーと電子書籍の両市場でアップルの後塵を拝し、ゲーム市場では任天堂の後追いになっている印象が否めないけどね)
(3)製造プロセスをアウトソーシングすればするほど、イノベーションが止まる
これは、ノンコアだと思われる製造プロセスを、コストが低い海外に安易にアウトソーシングすると、実は業界全体としてイノベーションが生まれなくなるという矛盾を指摘したもの。製造プロセスの改善を通じて生まれるプロセスイノベーションは、プロダクトイノベーションの源泉にもなっている、というのが著者の主張であった。
引用文にぴったりと当てはまる最近の事例がすぐに思いつかないのだが、何十年も前に日本企業がヨーロッパに進出した際には、このパラドクスをうまく利用したように思われる。当時の日本企業は、コスト優位性を生かして、ヨーロッパ企業に対しOEM供給を行っていた。ヨーロッパ企業から見れば、製造を日本企業にアウトソーシングした形である。
ところが、数年後には、日本企業がヨーロッパ企業よりも安価でかつ高品質の製品を携えて、ヨーロッパ市場に参入してきた。日本企業は、OEM供給をする中でヨーロッパ企業の製品を隅から隅まで研究し尽くし、ヨーロッパ企業をしのぐ製品を独自に開発してしまったのである(だから、日本は「産業スパイ」扱いされた)。
(続く)
(1)差別化しようとすればするほど、製品がコモディティ化する
これはつい最近書いたばかりなので、詳細は以下の記事に譲るよ。
差別化するほどコモディティ化してしまうという悲しいパラドクス−『ビジネスで一番、大切なこと』
ベンチマークするほど組織が凡庸化するってパラドクスもあるかもね−『ビジネスで一番、大切なこと』
ヤンミ・ムン ダイヤモンド社 2010-08-27 おすすめ平均: マーケティングにおける考え方を整理できる本 顧客を引きつけるには摩擦が必要だ タイトル |
posted by Amazon360
(2)顧客の声を聞けば聞くほど、競合他社につけ入られる隙が生まれる
クレイトン・クリステンセン 翔泳社 2001-07 おすすめ平均: 技術革新の進化と衰退を見事に明らかにした 経営者には必読の一冊。 本書の理論から考えて、現在のシステムが続くなら、日本経済が勢いを取り戻すことは二度とないかも知れない。 |
posted by Amazon360
クレイトン・クリステンセンが著書『イノベーションのジレンマ』などで指摘したパラドクス。顧客志向、顧客第一主義などといったスローガンの下に、重要顧客の声に深く耳を傾けて製品の改善を続けると、必要以上に製品の多機能化・高度化が進む。その結果、一般の顧客は、「そこまでの機能は必要としていない」とか、「その機能に価格プレミアムを支払うつもりはない」と考えるようになる。
破壊的なイノベーターは、この「満たされすぎたセグメント」にターゲットを絞り、もっと単純化された製品を市場に投入する。これらの製品は往々にして、従来の技術よりも"劣る"技術によって製造されている。にもかかわらず、「満たされすぎたセグメント」の顧客をごっそりと獲得し、業界の構図を破壊してしまうのである。
最近の破壊的イノベーションの例で解りやすいのは、アップルのiPodだろう。MP3プレイヤーが競って高音質を追求していたのに対し、iPodは音質を捨ててHDDの容量を追求した。またアップルは、競合他社が敏感になっていたデータ保護の仕組みにも無頓着だった。競合他社がiPodを分解してみたら、HDDがゴロンと入っているだけで、データ保護対策などほとんどされていなかったことにビックリしたという話を聞いたことがある。消費者にとっては、音質やデータ保護なんていうのはどうでもよくて、それよりもたくさんの曲を持ち歩いていつでも自由に聞けることの方がよっぽど重要だったというわけだ。
これは、クリステンセンが『イノベーションのジレンマ』の中で紹介している、ソニーのトランジスタラジオの事例を思い起こさせる。トランジスタラジオの音質は家庭用ラジオよりもはるかに劣っていたのだが、ラジオを持ち歩いていつでも好きな場所で聞くことができる点が若者にウケて大ヒットとなった。
ソニーの経営ビジョンには「顧客の視点」が入っていないと指摘したのは、『ビジョナリー・カンパニー』の著者であるジェームズ・コリンズだ。コリンズは、ビジョンの中に顧客の視点が入っているかどうかは、優れたビジョンの要件ではないと結論づけている。
確かに、ソニーの設立趣意書を読むと、技術力というキーワードが前面に打ち出されており、顧客や消費者、お客様といった言葉は出てこないことに気づかされる。ソニーには、「顧客の声を聞き過ぎるのではなく、技術の力で顧客の期待を超える」という価値観が植えつけられているように思える。
(ただそのソニーも、最近は携帯音楽プレーヤーと電子書籍の両市場でアップルの後塵を拝し、ゲーム市場では任天堂の後追いになっている印象が否めないけどね)
(3)製造プロセスをアウトソーシングすればするほど、イノベーションが止まる
アウトソーシングによって、これを委託した企業の能力だけでなく、先端材料、各種ツール、製造機器やコンポーネントのサプライヤーなど、当該産業に関わる他社の能力も長期的に失われる。(ゲイリー・ピサノ他「競争力の処方箋」 2009年マッキンゼー賞金賞)受賞論文からお気に入りをピックアップ(2009〜2006年)−『マッキンゼー賞 経営の半世紀(DHBR2010年9月号)』
これは、ノンコアだと思われる製造プロセスを、コストが低い海外に安易にアウトソーシングすると、実は業界全体としてイノベーションが生まれなくなるという矛盾を指摘したもの。製造プロセスの改善を通じて生まれるプロセスイノベーションは、プロダクトイノベーションの源泉にもなっている、というのが著者の主張であった。
引用文にぴったりと当てはまる最近の事例がすぐに思いつかないのだが、何十年も前に日本企業がヨーロッパに進出した際には、このパラドクスをうまく利用したように思われる。当時の日本企業は、コスト優位性を生かして、ヨーロッパ企業に対しOEM供給を行っていた。ヨーロッパ企業から見れば、製造を日本企業にアウトソーシングした形である。
ところが、数年後には、日本企業がヨーロッパ企業よりも安価でかつ高品質の製品を携えて、ヨーロッパ市場に参入してきた。日本企業は、OEM供給をする中でヨーロッパ企業の製品を隅から隅まで研究し尽くし、ヨーロッパ企業をしのぐ製品を独自に開発してしまったのである(だから、日本は「産業スパイ」扱いされた)。
(続く)
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