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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
November 12, 2010

差別化するほどコモディティ化してしまうという悲しいパラドクス−『ビジネスで一番、大切なこと』

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ヤンミ・ムン
ダイヤモンド社
2010-08-27
おすすめ平均:
マーケティングにおける考え方を整理できる本
顧客を引きつけるには摩擦が必要だ
タイトル
posted by Amazon360

 定期購読しているDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューに、ここ数ヶ月の間、毎月のようにこの本の宣伝が入っていた。私は宣伝されればされるほど身構えるタイプなので(このタイプでよく自社のマーケティングなんかやってるよな、汗)、ずっと放置していたのだけれども、著者のヤンミ・ムンは「競争戦略論」のマイケル・ポーターや、「破壊的イノベーション」のクレイトン・クリステンセンと並ぶハーバードビジネススクールの人気教授だということで読んでみた。

 でもね、正直な感想を言うと、面白くていい本だったよ。ポーターは経済学における産業構造論をベースとして、戦略の「王道」を完成させたのに対し、クリステンセンとムンは「マネジメントのパラドクス」をテーマにしている。クリステンセンは、「顧客のニーズを聞いて製品を高度化させるほど、競合他社から思わぬイノベーションの攻撃を受ける」という現象を指摘して、顧客志向のパラドクスを論じた。ムンは、この記事のタイトルにもあるように、マーケターが必死になって競合との差別化を図ろうとするほど、かえって製品のコモディティ化が進んでしまうというパラドクスを取り上げている。

 原因は、競合他社を徹底的に調べ上げる市場調査にあるとムンは指摘する。マーケターは、他社製品と自社製品の機能を細部にわたってベンチマーキングし、それぞれの機能に対する顧客の満足度を統計的に処理する。そして、自社にない機能を追加し、他社に劣る機能を強化し、他社とあまり差がない機能には無理やりにでも差をつけようとする。

 マーケターは自社製品を差別化するために、よかれと思ってこうした改善活動をやっている。しかし、彼らの努力とは裏腹に、できあがるのは「違いが細かすぎて、専門家(自社の社員を含む)にしか差別化要因が解らない製品」、「他社と違うようで、実際にはほとんど同じ製品」ばかりになる。

 この悲しきパラドクスから抜け出すには、どうすればいいのか?ムンが提案しているのは、製品単位の微細な差別化にこだわるのではなく、顧客の眼に「ブランド全体として」他社とは全く異なるものに映るよう、ブランドを構築するアプローチである。ムンはそのようなブランドを「アイデア・ブランド」と呼び、グーグル、ソニー、ミニクーパー、スウォッチ、レッドブル、アップル、ハーレー・ダビッドソン、ダウなどの事例を紹介している。

 しかも、「ちょっと違う」レベルでは不十分であり、時に顧客を敵に回すぐらいの過激な方法を使って、「大きく変える」のがポイントだという。人間関係だけでなく、ブランドにおいても愛憎は表裏一体というわけだ。だから、ムンの授業は受講者から「人間らしい」という評価を受けているんだな。

 同書はBtoCのマーケティングがテーマとなっているが、私が今の会社で携わっているBtoBのマーケティングでもコモディティの問題は存在する。個人的な悩みをブログにどこまで書いていいものか、若干ためらいはあるのだが、研修というサービスは、サービス単体で見ると他社と非常に差別化しにくい。もし時間がある方は、試しに何社かの研修会社のHPを覗いていただきたい。カリキュラムだけを見ると、どれも似たような研修に感じてしまうはずだ。

 研修サービスに限らず、企業向けのサービスは多かれ少なかれ似たような問題を抱えているように思う。SIerが提供するソリューションも、コンサルティング会社のメニューも、Webマーケティング会社のサービスラインナップも、オフィス向けの文具・OA機器も、会計・税務のような専門サービスも、これといった違いを探し出すのは難しい。しかも、サービスという目に見えないものを扱っているのだから、この問題はより深刻だ。

 そもそも企業向けのサービスは、サービス単体で差別化すること自体に無理があるのかもしれない。例えば、研修をサービス単体で差別化するならば、学習内容を他社とは全く違うものにする必要がある。別の表現を使えば、世間的に受け入れられている理論や方法論、あるいはビジネスパーソンの常識の範疇からかなり離れた、超オリジナルの研修になる。

 だが、そんな突飛なサービスが、合理的な顧客企業の心を揺さぶるかどうかは解らない。奇抜なことを学びたいなら、書店でちょっと逝っちゃっている本を買った方がはるかに安上がりである。研修会社としては、サービス自体の差別化は諦めて、ムンが提唱する「アイデア・ブランド」の道を模索するのがいいのかもしれない。

 しかしながら他方で、そうは言いつつも、製品単体で差別化する余地が実はまだあるのではないか?と懐疑的になっているもう一人の自分がいることも告白せざるを得ない(この辺りから、記事の内容がだんだん支離滅裂になっていく点はお許しください)。

 研修サービスを含め、企業向けのサービスが似たようなものになるのは、顧客企業が似たような課題を抱えているからであるとも言える。誤解がないように付け加えておくが、差別化できない原因を顧客企業に転嫁しようとする意図は全くない。

 顧客企業はどこも、似たような人材の課題を抱え、似たような情報システムの課題を抱え、似たようなWebデザインの課題を抱え、似たような顧客開拓・管理の課題を抱え、似たような製品開発の課題を抱え、似たようなオフィスレイアウトの課題を抱えている。

 これを煎じ詰めていくと、「顧客企業はどこも似たような組織になっているのではないか?」という仮説が立てられる。そして、企業組織の同質化を進めているのは、またしても「ベンチマーキング」なのではないかと思うのである。この点については、別の記事で改めて書くことにしたい。

 仮に、企業がベンチマーキングの呪縛から解き放たれて、エッジの効いた組織を目指すようになれば、BtoBの世界でもエッジの効いた製品が登場するようになる可能性がある。供給企業としては、顧客企業が呪縛から解き放たれるのをただ待つのではなく、顧客企業の呪縛を説くように、途方もない啓蒙の努力を傾けることが必要になるかもしれないけどね。

《参考》
 以前のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューにも、「顧客が求めている以上に機能が複雑化した製品を見直す方法」を紹介した論文があるので、論文名を掲載しておく。

 ローランド・T・ラスト他「便利で不愉快な機能過多を排す」(DHBR2006年6月号)

ダイヤモンド社
2006-05-10
おすすめ平均:
久々の感動企画!
posted by Amazon360
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