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October 20, 2010
コルブの経験学習モデルの欠点を補った実証研究−『経験からの学習』
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営業担当者、システムエンジニア、コンサルタントといった、顧客との密なリレーションの中で仕事をするプロフェッショナルに焦点を当てて、経験学習のメカニズムを明らかにした実証研究。研究のベースになっているのは、経験学習の代表的なモデルであるコルブの学習サイクルである。
具体的経験(Concrete Experience)著者によると、コルブの経験学習モデルは個人単位で完結しており、個人を取り巻く「環境要因」の影響が考慮されていない。また、4つのプロセスは比較的表面的な認知活動を指しており、それらを背後からつかさどる「メタ認知」の視点が抜けているという。
その人自身の状況下で、具体的な経験をする。
省察(Reflective observation)
自分自身の経験を多様な観点から振り返る。
概念化(Abstract Conceptualization)
他の状況でも応用できるよう、一般化、概念化する。
試行(Active Experimentation)
新しい状況下で実際に試してみる。
そこで、著者は新たに「環境要因」と「メタ認知(同書の中では、「信念」という言葉に置き換えられている)」という2つの要因を付け足して、経験学習モデルを再構築している。その上で、営業担当者らを対象とした定性・定量調査を通じ、プロフェッショナルの経験学習を促進する環境要因と信念を分析している。
結論は至ってシンプルなものであり、経験学習を促進するのは(a)健全な内部競争、(b)顧客志向の風土という2つの環境要因と、(c)目標達成志向、(d)顧客志向という2つの信念であるという。結論だけを見れば、おそらく多くのビジネスパーソンにとってそれほど目新しいことはないように思われるが、我々の経験則が統計的解析によって実証されたことに価値があるだろう。
しかしながら、本書で論じられているのは「単一の職種における現場社員の経験学習」である。言うまでもなく、多くの社員は複数の職種の間を渡り歩くし、現場から管理職への昇進も経験する。その意味では、本書の研究対象は「最小単位の経験学習」にとどまっている。
本書の研究からさらに論点を広げるとすれば、
<別の職種への異動に関して>
・別の職種に異動した後、目覚しい成果を上げる人とそうでない人の間には、どのような経験学習の違いがあるか?
・別の職種に異動した後、前の職種での経験学習は新しい職種での経験学習にどのように影響するか?
<同一職種内における管理職への昇進に関して>
・管理職の経験学習プロセスは、現場社員の経験学習プロセスとどのような相違点が見られるか?
・同一の職種で現場社員から管理職に昇進した後、管理職として目覚しい成果を上げる人とそうでない人の間には、どのような経験学習の違いがあるか?
・同一の職種で現場社員から管理職に昇進した場合、昇進前の経験学習は管理職としての経験学習にどのように影響するか?
<未経験職種の管理職への昇進に関して>
・未経験職種の管理職に昇進した場合、同一職種内で管理職に昇進した人の経験学習プロセスとどのような相違点が見られるか?
・未経験職種の管理職に昇進した後、目覚しい成果を上げる人とそうでない人の間には、どのような経験学習の違いがあるか?
・未経験職種の管理職に昇進した場合、昇進前の経験学習は管理職としての経験学習にどのように影響するか?
などといった論点が挙げられる。これらの実証研究が進むと、かなり面白い結果が得られるような気がする。
もう1点付け加えるならば、著者による修正版の経験学習モデルは、組織から個人に対する一方的な影響のみを取り上げており、個人から組織への影響は考慮されていない。特定の社員の進取的な活動が、組織の旧来的な風土を破壊し、時代と環境に適合した新たな価値観や規範を組織内に構築することもある。個人と組織の間に見られるこうした相互作用を、経験学習の枠組みに取り入れる余地もあるように思える。
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