※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
September 20, 2010

「需要は予測すべき」という前提を大胆にも捨てたゴールドラット−『ザ・チョイス』

拍手してくれたら嬉しいな⇒
エリヤフ・ゴールドラット
ダイヤモンド社
2008-11-08
おすすめ平均:
まずは書店の人が読むべきビジネス書
あきらめずに原因と結果を追求すれば
カーペットの下に隠しただけでは、対立はなくなりません。
posted by Amazon360

 やっとゴールドラットの新作を読み終わった。新刊のレビューはもうちょっと早くブログにアップできればいいんだけど、どうも怠慢で…。

 今年3月の記事「エリヤフ・ゴールドラットが師と仰ぐ人物−『「大野耐一」論 ものづくりの原点(DHBR2010年1月号)』」で、ゴールドラットのインタビューを紹介したが、同書はまさにこのインタビューで触れられている「リアルタイムで対応できるサプライチェーン」の構築に言及するものである。
 今回の経済危機、正しくは経済危機への恐怖心が、新しい何かをもたらすとすれば、それは、小売業が少量の注文を頻繁に繰り返すという傾向に拍車がかかることではないでしょうか。

 (中略)顧客をよく知り、販売予測の精度をさらに高めることで、売れ残りや売り逃しを避けようという発想自体、すでに古いものです。規模の経済を前提としている限り、小売業者も製造業も、どうしても予測に頼らざるをえません。しかし、予測はあくまでも予測です。代替するものが限られている汎用品ですら、ままならないのですから、競争の激しい製品の場合、予測が裏切られることは不可避といえましょう。

 少量かつ高頻度で発注・生産できるようになれば、予測の呪縛から解放されるようになります。リアルタイムで対応できるサプライチェーンが築かれれば、おのずと不確実性が低くなり、今回のような事態が生じても、あわてふためくことはなくなるはずです。

(※ここで「あわてふためく」と言っているのは、金融危機に端を発する需要減に伴って小売業者が一気に発注を減らしたため、製造業が一斉に過剰在庫を抱えることになり、製造業の利益が圧迫される事態に陥ったことを指している)

(「実需は交代していない」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2009年5月号)

ダイヤモンド社
2009-04-10
おすすめ平均:
HBR読者@三島
不況でなくても。。。
■今一度、大野耐一に学ぶべし!
posted by Amazon360

 ゴールドラットは、トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一を「マイ・ヒーロー」と呼んで非常に尊敬しており、自身の制約理論(TOC)は大野の業績に負うところが大きいと述べている。トヨタ生産方式のコンセプトは、「必要なものを、必要な時に、必要なだけ生産することで、可能な限り在庫を減らす」というものであるが、実は大野がトヨタ生産方式の着想を得たのは、アメリカでスーパーマーケットを見学した時のことである(当時の日本には、アメリカのような大型スーパーマーケットが存在していなかった)。

 消費者は、何かが欲しいと思う時にスーパーマーケットを訪れる。そして陳列された製品の中から、必要なものを必要な分だけカゴの中に入れて買っていく。大野はこれを生産工程に応用できないかと考えた。

 通常の工場では、需要予測に基づく生産計画によって、各工程が期間内に生産する量が決められる。そして、できあがった仕掛品は前工程から後工程へと順番に流れていく。一般的に、工場では需要の急増による欠品を恐れて生産量を多めに見積もるため、仕掛品や最終製品の在庫が溜まりやすい。

 これに対して大野が考えたのは、後工程が前工程から必要な分の仕掛品を必要な時に持って行くという仕組みだった。最も消費者に近い最終製品組み立てラインでは、受注が入った分だけ仕掛品を前工程に引き取りに行く。これが起点となってその前工程、さらにその前工程へと仕掛品の引き取りが行われる。こうすると、各工程の作りすぎを最小限に抑えることができ、結果として在庫回転率が上がる。

 自動車業界では、販社とメーカーの連携によってこうした仕組みがすでに実現されているが、それ以外の業界では相変わらず需要予測に頼ってメーカーと小売店が動いていることが多い。ゴールドラットは「需要は予測すべき」という常識を捨てて、「需要予測はどうせ当たらないのだから、予測などするな」と喝破する。大野が半世紀近く前にアメリカの小売業から得たヒントを、今度はゴールドラットが小売業に適用しようとしているのである。

 同書にはいくつかの事例が登場する。1つはアパレル業界だ。アパレルは流行を読むことが非常に難しい上に、製品のライフサイクルがとても短い。だからアパレルメーカーは、とにかく数多くのアイテムをデザインし、どのアイテムも程度の差はあれ一定量を最初から生産しておき(欠品が怖いので大抵は多めに生産する)、シーズンが来たら一気に小売店に納入するという方法で、何とかリスクを分散させようとする。

 ところが小売店で起こるのは、予想外に売れてしまったアイテムの欠品と、予想外に売れなかったアイテムの売れ残りである。欠品アイテムが販売機会のロスにつながることは言うまでもないが、売れ残りアイテムについても、本来であればもっと売れ筋のアイテムを置くはずだった陳列スペースをいつまでも占拠しているという点で、やはり販売機会のロスを生んでいる。

 ゴールドラットは、アパレルメーカーに対して、需要予測とシーズンごとの納品をやめるように助言している。代わりに、小売店が売れた分だけをメーカーに発注するシステムを整備し、「小売店が必要とする分だけを生産して、小売店に納品する」というサプライチェーンの構築を提案している。

 もう1つの興味深い事例は、パンのメーカーと小売店である。アパレルメーカーは、欠品を恐れて「多めに」生産する傾向がある。これに対してパンの小売店は、売れ残りがあると鮮度が落ちた製品が陳列棚に並ぶことになり、消費者の印象を害することを恐れる。そこで、小売店は実際の需要よりも「少なめに」発注し、メーカーもそれに従って保守的な生産を行う。

 だが、これも結局は、需要を正確に予想しようとする姿勢が問題であるわけだから、その前提を捨てればよい。ゴールドラットはここでも、小売店からのリアルタイム受注と、それに対応した生産・物流体制の構築を提案している(パンの小売店特有の保守的なマインドを打破するために、アパレルのケースとは違った若干の工夫を加えているのだが、ここではその内容は省略)。

 という具合に、ゴールドラットの主張自体は至って簡潔なのだが、なぜか「物事はすべてシンプルである」とか、「人間は基本的に善良である」とか、「物事は際限なく改善できる」といった一般論が途中に入っていて、個人的にはその位置づけがよく解らなかった(汗)。すんなりと小売業のリアルタイムサプライチェーンに話を絞ってくれた方が「シンプル」だったようにも思える。
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする