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August 26, 2010
人材育成計画の立案時に陥りやすい4つの落とし穴(2)
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(その1からの続き)
(3)学習プログラムの内容が実務と連動していない
これは(1)の落とし穴とも深く関連している。(1)の落とし穴にはまると、(3)の落とし穴にもはまる可能性が非常に高くなる。例えば、「営業の提案力を上げたい」と思っている人材育成担当者が、提案力の中身を明確にしないまま、外部の研修ベンダーにお願いして「提案力研修」を実施すると、受講者からは冷たい視線を浴びる羽目になる。
受講者は顧客企業の業務に対する深い理解を武器にして、現状プロセスの詳細な分析を通じた提案を行うことが重要だと考えているのに、研修ベンダーが実施したプログラムが顧客企業のIT戦略立案を支援するような内容だったならば、受講者は「こんな研修は現場で使えない!」とすぐに文句を言うだろう。
提案力のように業務と直結したスキルや知識であれば、企画段階で人材育成担当者と研修ベンダーが密に議論をすることでこうしたギャップを防ぐことができる。だが、その1で述べたような「コミュニケーション能力」や「リーダーシップ」、あるいは「モチベーション向上」や「自立度向上」、「キャリア開発」といったかなり抽象度の高いものになると、話は難しくなる。
リーダーシップ研修を例に取ってみよう。よくあるリーダーシップ研修は、リーダーシップのパターン(戦略型、関係調整型、権威型など)を学習して自分がどのパターンに該当するのかを自覚させるものや、心理学の性格分析の手法をベースにし、部下やメンバーの性格パターンに応じた効果的なコミュニケーションの方法を学ぶといったものである。
しかしながら、仮に会社が戦略的に取り組んでいる部門横断型プロジェクトにどんどん社員を参画させ、高い成果を上げることを求めているのならば、上記の研修はいずれもほとんど効果を発揮しない。なぜならば、部門横断型プロジェクトで必要なのは、
・各部門を代表して集まってるメンバーが、どのような利害を持ってプロジェクトに参画しているのかを、バーバル/ノンバーバルのコミュニケーションから短期間に見抜く
・利害対立が生じた場合に、双方の利害を調整して納得のいく合意点を発見する
・会議の場で、フォーマルな肩書きにとらわれずに意見を発したり、議論を取りまとめたりする
・プロジェクトメンバーの誰が読んでも即座に理解できるドキュメントを作成する
・プロジェクトメンバー以外の社員にプロジェクト内容を公表したり、彼らの協力を仰いだりする際に、適切で訴求力のあるプレゼンテーションを行う
・現場の業務を兼務している場合は、プロジェクトと現場の仕事を両立する時間管理・タスク管理を実施する
などといった能力だからである。これらの点を考慮せずに設計されたトレーニングは、無駄な投資に終わる。
(4)知識・スキルの習熟度合いと人事考課が連動していない
人材育成計画のPDCAサイクルを回すために、各社員の能力レベルをモニタリングする仕組みを構築することが重要だと述べたが、人材育成計画のPDCAサイクルと言うと、どうも研修の実施状況や社員の参加率などをモニタリングすることだと捉えられている節がある。
人材育成の目的は研修の消化ではなく社員の能力アップであるから、測定すべきなのは能力が期待通りに上がっているかどうかである。そのためには、人材育成担当者が能力レベルを把握するアセスメントを開発し、人事考課担当者や現場と協力してアセスメントを定期的に実施することが有効である。
ところが、人事部の内情をつぶさに観察すると、人材育成担当者と人事考課担当者の関係は必ずしも良好ではない。そのせいか、特定のトレーニングで実施されるテストのスコアが昇進・昇格の条件になっていることはあるものの、それぞれの能力レベルが、人事考課で定められている評価基準と緊密に連携してる例は少ない気がする。
当たり前のことだが、社員は評価されないことはやらない。どんなに優れた人材育成計画に従って有益なトレーニングを実施したとしても、そこで身についた能力が人事考課で評価されないならば、社員はトレーニング内容を実務に活かそうとはしないのである。
プレイングマネジャーの増加に頭を悩ます人材育成担当者が、マネジャー向けに部下育成力研修をやったとしよう。だが、マネジャーの評価基準が相も変わらず短期的な数字に偏っていれば、マネジャーは部下の育成などそっちのけで、自分で数字を作ってしまうに違いない。そして、プレイングマネジャーの増加にますます拍車がかかるのである。
(3)学習プログラムの内容が実務と連動していない
これは(1)の落とし穴とも深く関連している。(1)の落とし穴にはまると、(3)の落とし穴にもはまる可能性が非常に高くなる。例えば、「営業の提案力を上げたい」と思っている人材育成担当者が、提案力の中身を明確にしないまま、外部の研修ベンダーにお願いして「提案力研修」を実施すると、受講者からは冷たい視線を浴びる羽目になる。
受講者は顧客企業の業務に対する深い理解を武器にして、現状プロセスの詳細な分析を通じた提案を行うことが重要だと考えているのに、研修ベンダーが実施したプログラムが顧客企業のIT戦略立案を支援するような内容だったならば、受講者は「こんな研修は現場で使えない!」とすぐに文句を言うだろう。
提案力のように業務と直結したスキルや知識であれば、企画段階で人材育成担当者と研修ベンダーが密に議論をすることでこうしたギャップを防ぐことができる。だが、その1で述べたような「コミュニケーション能力」や「リーダーシップ」、あるいは「モチベーション向上」や「自立度向上」、「キャリア開発」といったかなり抽象度の高いものになると、話は難しくなる。
リーダーシップ研修を例に取ってみよう。よくあるリーダーシップ研修は、リーダーシップのパターン(戦略型、関係調整型、権威型など)を学習して自分がどのパターンに該当するのかを自覚させるものや、心理学の性格分析の手法をベースにし、部下やメンバーの性格パターンに応じた効果的なコミュニケーションの方法を学ぶといったものである。
しかしながら、仮に会社が戦略的に取り組んでいる部門横断型プロジェクトにどんどん社員を参画させ、高い成果を上げることを求めているのならば、上記の研修はいずれもほとんど効果を発揮しない。なぜならば、部門横断型プロジェクトで必要なのは、
・各部門を代表して集まってるメンバーが、どのような利害を持ってプロジェクトに参画しているのかを、バーバル/ノンバーバルのコミュニケーションから短期間に見抜く
・利害対立が生じた場合に、双方の利害を調整して納得のいく合意点を発見する
・会議の場で、フォーマルな肩書きにとらわれずに意見を発したり、議論を取りまとめたりする
・プロジェクトメンバーの誰が読んでも即座に理解できるドキュメントを作成する
・プロジェクトメンバー以外の社員にプロジェクト内容を公表したり、彼らの協力を仰いだりする際に、適切で訴求力のあるプレゼンテーションを行う
・現場の業務を兼務している場合は、プロジェクトと現場の仕事を両立する時間管理・タスク管理を実施する
などといった能力だからである。これらの点を考慮せずに設計されたトレーニングは、無駄な投資に終わる。
(4)知識・スキルの習熟度合いと人事考課が連動していない
人材育成計画のPDCAサイクルを回すために、各社員の能力レベルをモニタリングする仕組みを構築することが重要だと述べたが、人材育成計画のPDCAサイクルと言うと、どうも研修の実施状況や社員の参加率などをモニタリングすることだと捉えられている節がある。
人材育成の目的は研修の消化ではなく社員の能力アップであるから、測定すべきなのは能力が期待通りに上がっているかどうかである。そのためには、人材育成担当者が能力レベルを把握するアセスメントを開発し、人事考課担当者や現場と協力してアセスメントを定期的に実施することが有効である。
ところが、人事部の内情をつぶさに観察すると、人材育成担当者と人事考課担当者の関係は必ずしも良好ではない。そのせいか、特定のトレーニングで実施されるテストのスコアが昇進・昇格の条件になっていることはあるものの、それぞれの能力レベルが、人事考課で定められている評価基準と緊密に連携してる例は少ない気がする。
当たり前のことだが、社員は評価されないことはやらない。どんなに優れた人材育成計画に従って有益なトレーニングを実施したとしても、そこで身についた能力が人事考課で評価されないならば、社員はトレーニング内容を実務に活かそうとはしないのである。
プレイングマネジャーの増加に頭を悩ます人材育成担当者が、マネジャー向けに部下育成力研修をやったとしよう。だが、マネジャーの評価基準が相も変わらず短期的な数字に偏っていれば、マネジャーは部下の育成などそっちのけで、自分で数字を作ってしまうに違いない。そして、プレイングマネジャーの増加にますます拍車がかかるのである。
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