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August 18, 2010

戦略とリンクした人材育成計画を作成するための5ステップ(1)

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 日本能率協会が毎年実施している「当面する企業経営課題に関する調査」を見ると、ここ数年は売上拡大や利益確保という最重要課題に次いで、人材育成が毎年上位にランクインしている。にもかかわらず、最近は「人材戦略」という言葉をあまり耳にしなくなった気がする。メディアで話題になるのは早期退職(という名のリストラ)や非正規社員の正社員化などばかりで、それに比べると人材戦略が報じられる機会は少ない(世間が食いつきやすい話題にメディアが飛びついているだけだとも言えるが…)。

 人材戦略の目的は、企業の事業戦略を実現する能力(スキル・知識)を有する社員を育成することにある。今回の記事では、戦略とリンクした人材育成計画を作成するためのステップを5つに分けて、自分なりに解説してみたいと思う。

(1)戦略とリンクした業務プロセスの定義
 戦略とリンクした人材育成計画を作成する第1ステップは、戦略を実現するための業務プロセスを明らかにすることである。なぜなら、業務プロセスは「社員に期待する行動」の集合だからだ。

 簡単な例として、家電メーカーの製品企画、調達、製造部門を取り上げてみることにしよう。この家電メーカーは、競争力のあるエコプロダクツ(環境配慮製品)を市場に投入するため、以下の3つの戦略的施策を打ち出した。
 (A)競合他社に負けないエコプロダクツの基準を設定し、その基準に従って調達・生産現場のあり方を全面的に見直す。
 (B)製品企画リードタイムを短縮するため、部門横断型の製品企画プロジェクトを推進し、各部門の目標共有および問題の早期発見・解決を図る。
 (C)各部門のBOMシステム(部品表システム)に環境負荷情報等を追加し、さらに各BOMを緊密に連携させてスピーディーな情報共有を図る。また、外部のサプライヤとも緊密な情報連携を実現する。
 これら3つの施策を業務プロセスのレベルに落とし込み、各部門が実施すべきコアの業務プロセスを次のように定義した(例示ということで、かなりのラフスケッチであることはご容赦いただきたい)。

1_戦略とリンクした業務プロセスの定義

《用語の補足》
 LCA(ライフサイクルアセスメント):ひとつの製品が製造→使用→廃棄または再利用されるまで、すべての段階における環境への影響を総合的に評価する方法。
 REACH:EUにおける人の健康や環境の保護のための欧州議会及び欧州理事会規則。生産者・輸入者は、生産品・輸入品の全化学物質(1トン/年以上)の人類・地球環境への影響について、調査・欧州化学物質庁(European Chemicals Agency、REACH 可決と共に設立)への申請・登録が義務づけられる。さらに、使用を制限されるべき物質(欧州化学物質庁より部分的に公示済み)については、庁の承認が必要になる。
 RoHS:電子・電気機器における特定有害物質の使用制限についてのEUによる指令。
 JAMP:アーティクルマネジメント推進協議会(JAMP:Joint Article Management Promotion-consortium)。アーティクル(部品や成形品等の別称)が含有する化学物質等の情報を適切に管理し、サプライチェーンの中で円滑に開示・伝達するための具体的な仕組みを作り普及することを目的とする。

 人材戦略というといきなりスキルや知識の話に入りたくなるが、まずは業務プロセス=社員に期待する行動を明らかにすることが重要である。最初からスキル・知識の議論をすると、「環境経営の知識」、「部門間のコミュニケーション能力」といった抽象的なものしか出てこず、深い議論にならないことが多い(この点については、別の記事で改めて言及したい)。

(2)社員に求められるコアスキル・知識の洗い出し
 (1)で明らかになった具体的な業務プロセスを集約しながら、社員に求められるスキルや知識を抽出していく。なお、ここでいう知識とは、「方法や手順があらかじめ明確に決まっており、特定の解が導かれるような問題」=「良定義問題」を解決する能力を指し、スキルとは「方法や手順が必ずしも全て明確であるというわけではなく、状況によっては解が何パターンもありうるような問題」=「不良定義問題」を解決する能力を指している。

 (1)で定義したプロセスに従って、各部門の社員に必要とされるスキル・知識をピックアップしたものが下図である。

2_スキル・知識の洗い出し
 (その2へ続く)
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