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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
August 10, 2010

優秀なマネジャーも内発的動機と外発的動機を組み合わせる

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 昨日の記事「『内発的動機と外発的動機のどっちが重要か?』という問いは意味があるか?」の補足。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2010年5月号に収録されている「優秀なマネジャーに成長する条件」という論文は、マネジャーとして成功するためには、外発的動機と内発的動機の両方が必要であることを教えてくれる。

ダイヤモンド社
2010-04-10
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リーダーはただの人気者とは違います
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 まず外発的動機についてだが、この論文の著者であるJ・スターリング・リビングストンは、「達成動機」の研究で知られるデイビッド・C・マクレランドによる興味深い文章を紹介している。
 いかに達成動機が高くても、人間関係にうまく対処できるとは限らないことは明白である。マネジャーの場合、他者に影響を及ぼすことが最大の関心事であり、これはまさしく権力動機によるものである。動機の源を調べることで、優秀なリーダーはどのように行動するのかを知ることができる。
 成功するマネジャーは、高い達成動機(=内発的動機、マズロー風に言えば自己実現欲求)に突き動かされていると考えられがちだが、マクレランドによればそれだけでは不十分だという。マクレランドは「権力動機」、つまり出世して地位パワーを手に入れたいという欲求が不可欠だと指摘する。出世するためには他者から評価される必要があるから、権力動機は外発的動機であると言える。達成動機の研究に長年携わったマクレランドが、実は権力動機が重要だと主張しているのは面白い話である。

 とはいえ、外発的動機だけでは成功できないこともまた自明である。リビングストンは、MBAを出ても企業で出世できないマネジャーの観察を通じて、優秀なマネジャーになるためには「マネジメント欲求」なるものが必要であることを突き止めた。
 他者の成果に影響を及ぼすことを強く欲し、そうすることで満足感が得られる人だけが、マネジャーとして成果を出す方法を身につけられる。また、部下の生産性に責任を負うことを本心から望み、彼ら彼女らの能力を開発し、これまで以上の成果を出せるように動機づけることを楽しめる人でなければ、その方法を学ぶことができない。(※太字は私がつけた)
 マネジメント欲求は、部下やメンバーの仕事に深く関与すること、彼ら彼女らを育成することそのものに楽しみや満足感を覚えるという点で、内発的動機だと言えよう。リビングストンは、多くのMBA卒業者は、大企業の役員になって社会的地位や高い報酬を得たいという野心(=外発的動機)ばかりが強く、この「マネジメント欲求」が欠けているために、マネジャーとして大成しないと述べている。

 他者に影響を及ぼすためには、出世して高い地位に就き、それなりの権限と権力を手に入れなければならない。だから、出世欲に燃え、目の前にぶら下げられたニンジンに食らいつくような外発的動機は、有害であるどころかむしろ必要不可欠ですらある。

 一方で、他者に影響を及ぼすこと自体を楽しむような内発的動機がなければ、マネジャーとしてはやっていけない。他者に影響を及ぼすとは、単に地位を利用して権力を振りかざすことではなく、他者の能力や仕事の質の向上を積極的にサポートすることである。

 もっとも、部下を育成することで彼らが高い成果を上げれば、マネジャー自身の評価も上がり、さらに出世する可能性が開けるという点では、他者に影響を及ぼしたいという欲求は外発的動機の要素も帯びていることは否めない。

 しかし、リビングストンの主張からは(特に、太字にした部分の言葉遣いから察するに)、自分が高く評価されたいから、もっと高い給料が欲しいからという外発的動機だけではなく、純粋に他者の仕事を支援すること自体に喜びを感じること、つまり内発的動機に基づいて他者に影響を及ぼすことが、マネジャーのキャリアを好転させるポイントであると言えそうだ。
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