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August 04, 2010
地位パワーがなくてもリーダーシップは発揮できる(1)−『静かなる改革者』
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副題の「『しなやか』に『したたか』に組織を変える人々」を見て、田中康夫氏がかつて長野県知事に就任した際に掲げた「しなやかな県政」というスローガンが曖昧すぎると批判されていたことを思い出した。田中県政の実態について私はよく知らないのだが、この本は実例が豊富なので、著者が副題で言わんとする意味は読者に十分伝わるのではないかと思う。
以前の記事「大事なのはリーダーシップのスタイルじゃないということ−『静かなリーダーシップ』」で紹介したジョセフ・バダラッコの著書と同様、この本もトップダウンのリーダーシップではなく、ボトムアップのリーダーシップに焦点を当てている。ただし、『静かなリーダーシップ』がトップと現場の板ばさみの中で倫理、道徳に関わる意思決定を求められるミドルマネジャーを扱っているのに対し、同書のターゲットはもっと広く、組織のありとあらゆる階層(非管理職も含む)で観察される草の根的なリーダーシップを論じている。
著者はトップダウンのリーダーシップを否定してはいない。むしろ、トップダウンとボトムアップのリーダーシップは補完関係にあると断言する。同様の主張は『静かなリーダーシップ』を含む他のリーダーシップの著書でも見られるものだ。このように2つのリーダーシップが重なり合って組織が発展して行く様子は、「デュアル・スタンダード・リーダーシップ」とでも名づけることができるのではないだろうか?
この本は、下記の3つのカテゴリに該当する人たちに有益なアドバイスを提供してくれると私は思う。
(1)役職に就いていないとリーダーシップは発揮できないと思っている若手社員
リーダーシップをめぐる誤解の1つに、「リーダーシップは役職や地位に紐づいている」というものがある。もちろん、役職や地位によって与えられる権限や権力が、変革を推進する上で重要なリソースとなることは否定できない。しかし、リーダーになるためには必ずしも地位や役職が必要ではないこと、極端な話をすれば新入社員だってやろうと思えばリーダーシップを発揮できることを本書は教えてくれる。
著者は、地位や役職を持たない人たちがリーダーとなるための5つの戦略を整理している。(A)から順番に影響力の範囲が広くなるが、その分、難易度も高くなる((A)〜(E)のタイトルは同書から引用、補足説明は同書の内容を基に私がまとめた)。
(A)自己に忠実に、静かに抵抗する(残り2つのカテゴリについてはその2で)
組織の価値観に同調しつつも、自分の価値観や信念、アイデンティティを表す言動によって静かに抵抗する。例えば、長時間のハードワークが当たり前の職場で働く人が、自分のデスクの上に家族の写真を飾るなど(「自分は仕事と家庭を両立したい」と願っていることをひそかにアピールしている)。
(B)個人の危機をチャンスに変える
自分の価値観やアイデンティティを脅かす周囲の侮辱的、攻撃的な言動を、双方にとっての学習機会に変える。例えば、ある男性社員と女性社員が同じように高い成果を上げているのにもかかわらず、男性は優秀と評価され、女性は傲慢とレッテルを貼られる現状に対して、女性側が評価のダブルスタンダードの存在を指摘し、男性・女性がお互いに納得のいく評価を行うといったケースが該当する。
(C)交渉を通じて影響力を拡大する
(B)が個人間の関係におけるリーダーシップであるのに対し、(C)はもう少し組織的な意味合いが強くなる。つまり、時間をかけて戦略を練り、その場での最善の対応はもとより、多くの社員に対して幅広い学習機会を生み出すリーダーシップである。同書では、フェアトレードのプロジェクトを進める社員が、R&D部門・購買部門と交渉する事例が登場する。
この社員は、プロジェクトの優先度を低く見ている両部門に対し、経営陣の肝煎りだからと押し付けるのではなく、両部門にとっての阻害要因を探る話し合いの場を持ちかけた。すると、R&D部門はフェアトレードで購入する原料に保存料が使われておらず、品質や消費期限が読めないため、製品開発に活用したがらないこと、また購買部門の社員は調達コストの低さで評価されるため、一般の原料よりも割高なフェアトレードはやりたがらないことが判明した。
そこでこの社員は、両部門と協力して製品開発プロセスや社員の評価基準を見直すことにした。1つのプロジェクトが他部門の従来の業務や制度の中身までも変えてしまったという例である。
(D)小さな勝利を活用する
簡単に言うと、表面的には組織の論理に従いながら、実際には組織の規範からは逸脱する既成事実を積み上げ、最終的には組織の論理をひっくり返すというものである。著者は、従来の(=白人重視の)採用プロセスにのっとりながら優秀なマイノリティを20年に渡って積極的に採用し、結果的に全社的なダイバーシティマネジメントを実現させた人事担当者の例などを紹介している。
(E)集団行動を組織する
これはちょっとリスキーな戦略である。危機やチャンスが差し迫っている時、また共通の利害を有するメンバーの組織化が見込める時は、思い切って集団行動に出ることが有効であると著者は言う。
同書には、MITで性差別に悩む女性研究者が結束し、学長に直談判して性差別の実態解明に向けた委員会の発足を求めるという事例が取り上げられている。この事例では、訴訟などの敵対的な手段が用いられることなく、学長と女性研究者の双方が前向きに問題解決に当たった。この経験を活かして、MITは2001年1月に「科学とエンジニアリング分野における女性研究者」をテーマに、他大学の関係者を招いてサミット会議を開催したそうだ。
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