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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
July 23, 2010

法定の育休と時短制度を整備して満足してるようじゃ女性活用は進まない

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 ダイバーシティ・マネジメントの取り組みの一環として、「女性が働きやすい職場づくり」に注力している企業は多い。特に大企業を中心として、法律で定められた期間よりも長い育児休暇制度の導入や、多様な時間短縮勤務の形態を認める動きが見られる。

 ところが、そうした企業側の努力とは裏腹に、日本における女性の労働力人口は諸外国に比べると依然として低水準にある。特に、結婚・出産を迎える30代に労働力人口が落ち込むのが日本の特徴であり、グラフの形から「M字カーブ」と呼ばれたりもする。

各国年齢階級別女性労働力率

(※厚生労働省「平成20年版 労働経済の分析−働く人の意識と雇用管理の動向−」より抜粋。元データはOECD Labour Forceによる。)

 昔はもっと極端なM字カーブを描いていて、これでもだいぶ改善された方である。同省の「平成21年版 働く女性の実情」には、「M字型の底の値は0.6ポイント上昇し、過去最高の65.5%となった」とある。年齢階級別に見ると、労働力率が一番アップしたのは30〜34歳であり、平成20年の65.1%から67.2%へと2.1ポイント上昇している。35〜39歳についても、64.9%から65.5%とわずかながら増加が見られる。

平成21年版働く女性の実情

 だが、現在の育休制度や時短制度は重大な欠陥を抱えている。それは、1歳〜3歳ぐらいまでのごくごく幼少期の子どもを持つ女性社員を対象としている点にある。一般に、産後は育休制度を活用し、幼稚園・保育園の時期は時短制度でやりくりすれば足りるように思えるが、実際はそうではない。

 問題なのは、子どもが小学校に上がってからである。夏休みなどの長期休暇中は、いくら小学生とはいえ、一人で家に置いておくわけにはいかない。かといって、小1から塾に通い詰めにさせることも難しい。幼稚園・保育園が年がら年中夜遅くまで子どもの世話をしてくれるのに比べると、実は小学校の方がケアが薄いのである(決して小学校が悪いと責めているのではないことを一応断っておく)。

 結局、女性社員は子どもが小学校に上がるタイミングで、子どもの面倒を見るために仕事を辞めざるを得ない。これは「小1の壁」とも呼ばれる。この壁を乗り越えられなかった女性は、仕事に復帰する際には正社員の道を諦め、アルバイトやパートを選ぶことになる。これが、M字カーブが完全に解消されない大きな要因の1つである。

 従来の育休と時短制度を整備して満足しているようでは、女性活用は大きく進展しない。もちろん、これは企業側だけの問題ではない。例えば、地域でコミュニティやNPOを立ち上げて、小学校の長期休暇中に子どもの面倒を見る仕組みを作るとか、いっそのこと学校の長期休暇を思いっきり短縮して、総合学習の時間を大幅に増加させる(当然、これに伴って教員の数も増やす)といった解決策も合わせて検討しなければならないだろう。

 だが、企業側にもまだまだできることはある。ここではそのポイントを3つほど述べてみたいと思う。

(1)小学校低学年の子どもを持つ女性社員も利用できる柔軟な休暇・時短制度
 これは問題を裏返しただけの解決策であるが、現在の制度が小学校低学年の子どもを持つ女性社員を対象としていないならば、彼女らを対象にする制度に拡張すればよい。基本的に、小学校低学年のうちは帰宅が早い。だから、例えば小学校1年生の子どもを持つ女性社員向けには、「勤務時間を10時から15時の5時間に限定する時短制度を導入する」という方法が考えられる。

 小学校2〜3年生になると、授業時間が増えて帰りが遅くなる曜日が出てくる。そこで今度は、「週2日だけ時短制度で働き、残りは通常の勤務時間で働く」という形態もあっていいと思う。

 合わせて、小学校低学年の子どもを持つ場合は、子どもの長期休暇と同時に休暇を取ることができる制度もあるといいかもしれない。これは育休ではないから何と名前をつければいいか解らないが、上記の時短制度とこの休暇制度を併用すれば、「小1の壁」はかなり和らげられるに違いない。

(2)成果の大きさではなく、「生産性」を基準とした成果主義
 女性活用が進んでいる先進的な海外企業(GEやP&G、IBMなど)の事例を見ると、たいていは成果主義型の人事制度を導入している。しかし、これを額面どおりに受け止めて、成果の「大きさ」で評価すればいいと解釈するととんでもない間違いを犯すことになる。当たり前だが、絶対的な成果の量で評価すれば、育休や時短制度を利用した女性社員は必ず不利になる。

 そうではなく、「生産性」を基準にした成果主義の評価制度を構築しなければならない。時短制度によって仕事量が半分、勤務時間が半分になったとしても、フルタイムで働いている他の社員と同じ生産性で仕事ができていれば、同等の評価を与えるようにする。(1)のように、女性が何度も休暇・時短制度を利用するようになればなるほど、「生産性」による評価が絶対不可欠の条件となる。

 生産性を基準とした評価制度を導入すれば、各社員(女性社員のみならず男性社員も)は自分の仕事を、マネジャーは担当する職場の業務プロセスを否が応でも効率化しなければならない。すると、会社全体として生産性が上がるという副次的な効果も見込めるだろう。

(3)女性社員同士の「ジョブ・シェアリング」の可能性
 これは大胆な提言かもしれないが、女性社員同士のジョブ・シェアリングという道も考えられる。ジョブ・シェアリングは、リーマン・ショックで急速に景気が減速した際に話題になった。この仕組みを不況期の雇用維持のためではなく、女性活用のために使うのである。

 例えば、小学校1年生の子どもを持つ女性社員(Aさんとする)と、高校生の子どもを持つ女性社員(Bさんとする)がいたとする。Aさんは、(1)で述べた時短制度を利用しており、基本的には10時から15時までの5時間しか出社しない。一方、Bさんは子どもがある程度自立していて、多少夜が遅くなっても問題ないので、14時から19時までの5時間出社する。2人が同時に出社する14時から15時の1時間は、仕事の引継ぎに充てる。

 さらに、Aさんの子どもが夏休みの間はAさんが完全休暇を取得するため、期間限定でBさんがフルタイムで働く。Bさんの子どもは部活や予備校の授業で朝から夜まで家にいないから、これでも問題ない。このような形でジョブ・シェアリングを行うことが可能なのではないか?

 「そんな無茶な!?」と思われる方もいらっしゃると思うが、海外では数は限られるものの成功事例がある。例えば、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2005年7月号に所収されている「1つのキャリアを2人で築く」という論文には、アメリカのフリート・バンク(現バンク・オブ・アメリカ)において、幼い子どもを持つ2人の女性社員が「バイス・プレジデント」の職をシェアする事例が紹介されている。

 最初は周囲の理解が得られなかったり、業務に関する情報共有がうまくいかなかったりと様々な困難があったものの、それらを乗り越えて良好な協調関係を構築していく様子が細かく記録されている。

posted by Amazon360

 「バイス・プレジデント」という激務でさえ、ジョブ・シェアリングをやろうと思えばできる。これを例外だと片付けるのは簡単だ。しかしながら、「人間の理性の限界を徹底的に茶化してるな−『ブラック・スワン』」でも述べたように、例外に着目することには意義がある。ひょっとしたら、女性社員同士のジョブ・シェアリングは、企業の女性活用を飛躍的に前進させる(そして、優秀な女性社員をつなぎ止め、自社の競争力を強化する)ブラック・スワンなのかもしれないのだ。
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