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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
May 24, 2010

プロセスKPIを設定するための5つの視点

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 以前の記事「スコアボードを見ずに野球ができるか!−プロセス指標の必要性」では、最終成果だけを測定するのではなく、そこに至るプロセスをモニタリングするKPIの必要性に触れた。そして、営業プロセスを例にとり、KPIを設定する視点として、「量」と「次プロセスへの進行率」の2つを指摘した。今回の記事では、プロセスKPIの設定方法をもう少し深めてみようと思う。

 プロセスKPIを設定するに当たって、まず最初にやらなければならないことは「プロセスの定義」である。測定対象をはっきりさせないことには測定しようがない。最終成果に至るまでのプロセスをいくつかの段階に分け、各プロセスにおける社員の行動を記述していく。

 以下にごくごく一般的な法人営業のプロセスを書いてみた。コピー機でもITシステムでも工作機械でも何でもいいのだが、顧客企業に対して何らかの製品を販売し、そのアフターフォローまで行うという営業活動を念頭に置いている。
営業プロセスの定義
(※クリックして拡大表示)

 ここからプロセスKPIの設定に入る。プロセスKPIを設定する視点は、「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」の5つである。この5つの視点に基づいてKPIを設定すると、かなり網羅性の高いKPI体系ができあがる。以下、先ほど定義した法人営業プロセスに対応するKPIを各視点から設定してみた(ごめんなさい、「顧客ターゲティング」の「質」だけどうしてもいい指標が思いつかなかったので、ブランクにしてあります…)。
プロセス定義に基づくKPI設定
(※クリックして拡大表示)

(1)量
 量はさらに、「各プロセス内における行動量」と「各プロセスのアウトプットの量」に分けて考えることができる。上記の図で言えば、

 ・各プロセス内における行動量=営業による初期接触回数、顧客訪問・ヒアリング実施回数、顧客との討議回数、価格交渉実施数など
 ・各プロセスのアウトプット量=抽出した顧客ターゲット数、キーマン情報入手数、パワーポリティクス・競合情報入手数、成約数、1件あたり成約金額など

 となる。

(2)質
 各プロセスのアウトプットの質を指す。製造プロセスであれば、各工程のアウトプット(中間製品)の品質を測定するのは比較的容易である。それに比べると、営業プロセスは中間成果物が目に見えにくいのでKPIの設定は難しいのではないかと思われるかもしれない。ただ、「提案」においては提案書がプロセスの成果物として必ず発生するから、その品質をKPIとして設定することができる。「アフターフォロー」における「次期商談・製品改善に役立ちそうな情報の数」も同じである。

 それ以外のプロセスはどうするか?(1)で挙げた「抽出した顧客ターゲット」、「入手したキーマン情報」、「入手したパワーポリティクス・競合情報」の質を評価するのは非常に難しい。キーマン情報やパワーポリティクス情報が合っているかどうかは、検証のしようがない。

 営業活動から生まれるアウトプットの質とは、言い換えれば「顧客や商談の良し悪し」である。つまり、「自社にとって利益をもたらす優良顧客か否か」、「受注の確度が高い商談か否か」ということである。こうした定性的な情報はそのままではKPIとはならないが、例えば顧客や商談をA〜Eの5段階で評価して、それぞれのランクに含まれる顧客数、商談数をカウントすれば、KPIの測定が可能になる。

 なお、「値引率」、「値引になった商談の割合」を質のKPIとしているのは、それらが「自社にとって利益をもたらす優良顧客か否か」を表す指標となるからである。

(3)時間
 各プロセスにおいて求められる行動を実施するのに社員が費やした時間、またはあるプロセスのスタートから次プロセスに移行するまでのリードタイムをKPIとして設定する。

 工場であれば、実際にストップウォッチを持って各工程の作業時間を測定することもあるが、営業活動でそれをやるのはかなり難しい。こういう場合は、営業日報から時間を計算したり、アンケート形式で1週間のうちそれぞれの活動に何時間費やしたかを営業担当者に答えてもらったりすることで代用する。

(4)コスト
 各プロセスにおいて発生する費用をKPIとして設定する。工場とは異なり、材料や機械を使っているわけではないため、ここでいうコストの大半は人件費である。(3)で計算した業務時間に基づいて、ABC(activity-based costing:活動基準原価計算)の手法を使うと、各プロセスにおけるコストを算出することができる。

 もちろん、商談で使った交通費や、契約手続時に発生した法務関連費用など、明確に判明している費用は上乗せする必要がある。

(5)次プロセスへの進行率
 製造プロセスにおける「歩留率」を裏返したものと考えていただければ解りやすい。営業プロセスはろ過装置のようなものであり、プロセスが進むにつれて対象顧客・商談数が減っていく。あるプロセスに滞留していた顧客・商談数のうち、次のプロセスに移行することができた割合をKPIとして設定する。この作業をそれぞれのプロセスにおいて行う。

 「量」、「質」、「時間」、「コスト」、「次プロセスへの進行率」という5つの視点を使うと、プロセスKPIが整理しやすくなる。ただ、これだけ多くの指標を全部チェックしなければならないのかというと、そういうわけではない。5つの視点はあくまでもKPIの網羅性を高めるためのものであり、実務運用上スムーズにモニタリングできるKPIにファインチューニングする必要がある。その方法については、次回の記事で書くことにしよう。
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