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March 19, 2010
前提をあえてひっくり返してみよう(2)−『逆転の思考 ステレオタイプを排す(DHBR2010年3月号)』
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サーカス・リーダーシップ−一人多役のプレイング・マネジャー(チャック・ワグナー)
138年の伝統を誇るリングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカスの団長、チャック・ワグナーのインタビュー記事。サーカスの団長というと、華麗なムチさばきによって猛獣を操り、整然と団員たちの指揮を取る勇壮なイメージがつきまとう。また、団長は内部昇格が慣例とされる。しかし、チャック・ワグナーはもともとミュージカル俳優であり、ブロードウェー出身という変わった経歴を持つ。
彼はサーカスの伝統を守りながら、ブロードウェーの華やかな演出を取り入れ、サーカスをスケールの大きいショーへと進化させた。それだけでなく、自らもエンターテイナーとして積極的に観客の前に立つプレイヤーでもある。彼は「一人多役のプレイングマネジャー」として活躍している。
ビジネスの世界に目を向けると、最近の人事部は「管理職がプレイングマネジャー化していて、本来のマネジメント業務ができていない」といった問題意識を口にすることが多い。だが、組織の階層を減らし、可能な限り余剰人員を抱えずに業務を回すようにしたのだから、管理職のプレイングマネジャー化は必然的な結果といえる。しかも、それを仕掛けたのは当の人事部である。
ここは思い切った発想の転換が必要な気がする。つまり、これからは「プレイングマネジャーを前提とした組織づくり」が主流になるのではないか?PDCAサイクルのうち、マネジャーはPとCに注力し、DとAは部下が行うという従来の前提から脱却し、マネジャーと部下の新たな役割分担、関係性を模索することが求められていると私は思う。
プロフェッショナルこそ計画的に休まなければならない(レスリー・A・パルロー、ジェシカ・L・ポーター)
一番印象に残ったのはこの論文かなぁ。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で実施された「計画休暇」(※日本企業における有休取得の計画的な消化とは異なる)という実験の内容と結果についての論文だが、これが結構面白い。
コンサルティングファームの仕事は、基本的にタイトなスケジュールの中で非定型かつ複雑な仕事をこなさなければならない。また、顧客から何か新しい要望が出れば、どんな状況であっても即座に対応することが求められる。そのため、コンサルティングの仕事は長時間労働になりやすいし、休日がいきなりつぶれることも珍しくない。最近の言葉を使えば、「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」が完全に崩れているのである。
BCGはWLBの改善を目的として「計画休暇」を導入した。これは、プロジェクト期間中でも、各メンバーが週1日は完全な休暇を取得することを義務づけるというものである。その際、メンバーの休暇日が重ならないように考慮する。
すると、単にWLBが改善しただけでなく、仕事の生産性の向上や、メンバー間の積極的な対話、知識の共有の促進といった効果も見られ、結果的には企業風土そのものの変革につながったという。
なぜ、WLBの改善以上の効果が現れたのか?おそらく、メンバーが交代で強制的に休むことにより、メンバーの穴を随時補う必要性が生じ、プロジェクト全体の仕事の進め方を見直すきっかけになったと考えられる。当然のことながら、各メンバーの担当業務をお互いに十分理解しなければならないし、誰かが休んでいる間の仕事をカバーするために、他のメンバーが業務を一部引き継いだり、ナレッジを共有したりもしなければならない。それが、メンバー間のコミュニケーションや知識共有の活性化に結びつき、効率的なプロジェクトマネジメントを後押ししたのであろう。
業務を「定型/非定型」、「難易度低/高」という2軸のマトリクスで整理すると、4タイプに分けられる。業務効率化はどんな企業でも永遠の課題であろう。事務処理のような「定型かつ難易度低」の業務はIT化によって、国際規格の取得のような「定型かつ難易度高」の業務はアウトソーシングによって、接客やアフターサービス業務のような「非定型かつ難易度低」の業務は柔軟な雇用形態やシミュレーション教育によって効率化を進めてきた。
だが、コンサルティングや経営企画、デザイン、広告、研究開発のような「非定型かつ難易度高」の業務効率化については、ほとんどお手上げ状態であった。BCGの「計画休暇」は、具体的な効率化の方法を教えてくれるわけではない(メンバーが実際に従来の仕事をどのように改めたのかまでは言及されていない)が、効率化のきっかけを与える一つの方法として非常に示唆に富んでいるように思える。
東洋的思考のすすめ(リチャード・ターナー・パスカル)
日本企業の経営の特徴を分析した1978年の論文。パスカルは、日米両国の企業の意思決定について調査を行った結果、意思決定のスタイルや質には違いがないが、日本企業のマネジャーは「自分たちの方がアメリカ企業より実行能力に優れている」と考えることに当惑を覚えた。
なぜ、日米の企業で実行力に差が出るのか?そこでパスカルが目をつけたのは、「ボトムアップのコミュニケーションの多さ」であった。いわゆる根回しに代表される非公式のコミュニケーションが、日本企業には圧倒的に多いのである。これは、今となっては日本企業の代表的な特徴として広く認識されているが、当時の西洋人には奇異に映ったことだろう。
さらにパスカルは、そうしたコミュニケーションの多さの根底には、人間重視の価値観があると指摘する。
日本人は、利益に決して無関心ではないが、多くの西洋人ほど一辺倒ではない。むしろ日本人には、次のような二重の認識がある。成功しても、これが人間関係を深めるものだったか、あるいは逆に損なうものだったかによって、成功を資産と見たり、負債と見たりする「第二のバランスシート」を持っているのである。昔、ある中小企業診断士の人に、「アメリカでは、コンサルタントでも社内の人間でも、誰でもいいからとにかくうまく使いこなして成果を上げれば評価される。だが日本の場合、コンサルタントを使いたいと言うと、経営陣が『なぜ、自社の社員を使わないのか?』と難色を示すことがある。まずは社内の人間を使うことが優先される」と教えてもらった。
アメリカ式でとにかく誰でもいいからうまく使いこなせばいいという考えは、職場の雰囲気を悪くする可能性がある。日本企業は、単に成功すればいいわけではなく、「どう成功するか」も重視するのである。「功ある者には禄を、徳ある者には地位を」という西郷隆盛の言葉の通り、単に成功しただけでは、給料が上がることはあっても昇進はできない。人徳、つまり周囲からの信頼があって初めて昇進できるのである。こうした価値観が組織の結束力を強め、実行力を高める源泉になっているのではないか?日本人として、この強みは捨ててはいけないように思える。
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