※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
March 05, 2010

エリヤフ・ゴールドラットという人物について補足

拍手してくれたら嬉しいな⇒
posted by Amazon360

 先日の記事「エリヤフ・ゴールドラットが師と仰ぐ人物−『「大野耐一」論 ものづくりの原点』(DHBR2010年1月号)」の中で、現在ゴールドラット氏がTOC理論に小売業を巻き込もうとしていることを紹介したが、これは非常に、非常に、ひじょ〜に難しい挑戦である。何せ、従来のサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)においても、製造業や流通業などの各プレイヤーが自社に有利なシステムを作りたがるため、足並みが揃いにくいという課題がある。それをより高次元の理論で実現しようというのだから、並大抵のことではない。

 ゴールドラット氏自身も、その点はよく解っている。実際にゴールドラット氏に会った人(A氏としておこう)から聞いた話を少し紹介したい。冒頭の記事の中で紹介したゴールドラット氏のインタビューは非常に穏やかな口調で書かれており、落ち着いた人柄を想像させるが、実際のゴールドラット氏はどうやらかなり気難しい人物のようだ。

 A氏はある製造業に勤務し、工場の生産管理などを担当している。TOC理論を自ら勉強して現場に適用し、いくつかの目覚しい成果を上げてきた。A氏の会社が製造している製品は、消費者の情報を蓄積することができる。同社製品の納入先である小売業者とうまく連携して消費者の情報を活用すれば、ゴールドラット氏が目指す究極のSCMが完成するのではないか?という期待を持っていた。

 まさにそのタイミングで、A氏は講演のために来日するゴールドラット氏に面会するチャンスを得ることができた。A氏はこれまでの自社の取り組みをまとめた資料を作成し、小売店を巻き込んだサプライチェーンの構想についてゴールドラット氏と議論する予定だった。

 A氏がまとめた資料を読んだゴールドラット氏は、「あなた方の取り組みは非常に素晴らしい!私の考えをまさに実践してくれている」と褒めてくれた。A氏は嬉しくなって新しいサプライチェーンの構想に話を移した。だが、その瞬間、ゴールドラット氏から飛び出したのはとんでもない一言だった。

 "You are crazy!"(あなた方は気が狂っている!)

 どうやら、ゴールドラット氏に会ったことのある複数の人の話を総合すると、これはゴールドラット氏の口癖らしい。自分の新しい取り組みをまさに体現しようとしてくれる会社を目の前にして、なぜゴールドラット氏はこんな暴言(?)を吐いたのか?

 この言葉の真意は、「自社と自社の仕入先との間のサプライチェーンを完備することでさえ難しいのに、簡単に小売業を巻き込んだ取り組みなど口にしてはならない。足元のサプライチェーンを固めるために、まだまだやるべきことはたくさんあるはずだ」ということだったようである。

 この気迫に押されて、A氏の新しいサプライチェーンの構想は残念ながらトーンダウンしてしまった。A氏は、まずは自社内でもっとTOC理論に精通し、それを実行できる人材の育成に着手することに決めたそうだ。

 "You are crazy!"と吐き捨てておきながらも、ゴールドラット氏は本来1時間の予定であった面会を大幅に延長して議論をしてくれたらしい。自分を尊敬してくれる人に"You are crazy!"などと言ったら相手はドン引きしてしまうに違いないが、それだけTOC理論を小売業にまで拡張するのは難しいことであり、協力してくれるパートナーをゴールドラット氏自身も必死で探してしているということなのだろう。"crazy"という言葉は、本気で自分の理想を実現してくれる相手なのかどうかを見極めるリトマス試験紙のようなものなのかもしれない。

 ↓買ってみたけど、何か評価が低いね。何でだろう??

エリヤフ・ゴールドラット
ダイヤモンド社
2009-11-13
おすすめ平均:
ユニクロはかく勝ち抜きぬ
読み物としては面白いが
残念です。
posted by Amazon360
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメントする