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February 16, 2010

不況期こそ基本に戻れってか?(後半)−『不況期の経営力(DHBR2009年8月号)』

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ダイヤモンド社
2009-07-10
おすすめ平均:
右脳型経営、グラニュラーマネジメント。参考になった
posted by Amazon360

 前回の続き。

不況期こそ人材獲得のチャンス(クラウディオ・フェルナンデス=アラオー、ボリス・グロイスバーグ、ニティン・ノーリア)
 転職市場には不況の煽りを受けて優秀な人材とそうでない人材が大量に流れ込んでいる。その人材プールから自社にフィットした人材を的確に見極めるために採用プロセスをきちんと見直しましょう、という内容。採用活動を7つのステップに分けて、各ステップの注意点について解説している。

 7つのステップ自体はありきたりのものだが、私自身が一番難しいと思うのは最初のステップにあたる「人材ニーズの予測」である。過去の傾向で採用人数を決めたり、突然の退職者が出たから慌てて中途採用を始めたりすることが少なくない。本来であれば、各事業の数年後の戦略や目標から考えて、各職種、役職の必要人数を推定し、彼らがどこまでのスキルレベルに達している必要があるのかという「将来像」を検討するところからスタートしなければならない。

 その次に、現在の社員が異動や昇格を繰り返し、トレーニングによってスキルアップを図り、一方でシニア社員の自然減や退職による社員減が起こった場合に、数年後の社員構成は最初に描いた「将来像」と人数、スキルレベルにおいてどの程度のギャップが生まれるのかをシミュレーションする。ここまできてやっと、そのギャップを埋めるための採用をどう進めるのか、という議論に入ることができる。

 この辺りの話は、2008年10月号の「『超高齢社会』の人材管理論」という論文にも詳しく書かれているので、ご参考までに。

posted by Amazon360


事業撤退の正しい方法(ケネス・W・フリーマン)
 事業撤退の際に社員の混乱を最小限にとどめ、社員に可能な限りの配慮を示す「柔和路線」マネジメントのポイントが書かれている。著者自身が幸か不幸か35年以上にわたり様々な事業撤退を経験しており、その中で得られた知恵が濃縮されているだけに、なかなか説得力があった。

 事業撤退は会社全体のことを考えた上での決断ではあるものの、その事業に携わる社員は一発で職を失うことになる。これは事業撤退を決めたマネジャーにとっては辛いことである。「どうせなくなる仕事なのだから」とか、「どうせもうすぐサヨナラする部下だから」と言い訳をして手を抜いた仕事をしたり、社員との接触を避けたりする気持ちも解らなくはない。だが、それではあまりにも顧客や社員に対する配慮が欠ける。

 そうではなく、社員に対して毅然とした態度で事業撤退に至った経緯を包み隠さず説明し、彼らと真摯に向き合い、怒りや不満、不安をきちんと受け止め、対話を重ねる。そして、事業撤退のその日までは、顧客には最高の製品とサービスを提供することを誓い、その間に社員に対して、他の事業部への異動や転職のサポートなど、できる限りの手助けを行う。最後には、社員が皆「いろいろ悔しい思いもあるが、自らの職務を全うした」と思って事業撤退の日を迎える。そういうことができるマネジャーっていうのはやっぱり尊敬するよなぁ。

不況期の上司の心得(ロバート・I・サットン)
 人は苦境に立たされた時に本当の姿を表すと私は思う。だから、不況期には上司の本性が見える。

(1)不況は自分のせいではないと言って責任転嫁する人
(2)他の社員と同じように混乱して何もできなくなる人
(3)自分も苦しいが部下も苦しいはずだと思って配慮を示せる人
(4)不況こそチャンスと捉えて打つべき手を打てる人

 きっとこんな具合に、いろんな上司に分かれることだろう。

 だが、「社会神経科学的に見ても上司のやる気は周囲に伝染するらしい」という記事で書いた通り、上司のモチベーションは部下に伝染する。それはいいモチベーションも悪いモチベーションも同じである。この論文は、不況期において上司が部下にどのように接するべきかを論じたものであるが、要点をかいつまんで言えば、「現状を社員にオープンにし、将来の予測(それがポジティブなものであれネガティブなものであれ)を示し、小さな成功を積み重ねて社員に自信を持たせることが重要である」ということだ。(1)や(2)ではなく、(3)や(4)の上司を目指そう。

不況期のキャッシュ・マネジメント(ケビン・カイザー、S・デイビッド・ヤング)
 売上や利益も大事だが、運転資金がショートしないようにしなければならないという、よく考えれば当たり前の内容の論文。なぜこの論文がハーバード・ビジネス・レビューに掲載されたのかちょっと不思議な気もする。中小企業は資金繰りが命だから、資金繰りにうるさい社長が多い。大企業になると逆にその辺の感覚が鈍るから、あえてこういう論文を載せたのだろうか??以下、「運転資金の管理:べからず6か条」をまとめた(タイトルは論文からの引用、補足説明は私が論文の内容をサマライズした)。
1.損益計算書に基づいて管理しない
 貸借対照表もちゃんと見よう。特に、在庫や売掛金は要注意だ。名前は「流動資産」でも、実際には現金にならず固定されている。不要な流動資産を減らし、流動資産を現金化する方法を考えるべき。

2.営業担当者のボーナスを、営業利益と売上高の伸びだけで決めない
 営業担当者は製品やサービスを売ることだけが仕事ではない。売掛金を回収するまでが仕事である。売掛金を回収できない営業担当者を褒めてはいけない。

3.生産品質を過度に重視しない
 製造現場の評価が生産品質に偏っていると、品質にこだわりすぎて製造リードタイムが伸び、仕掛在庫が増えることがある。品質を上げても顧客への価格転嫁ができない部分はカットし、リードタイムを短縮するべき。

4.売掛金と買掛金の条件を同じにしない
 売掛金はできるだけ早く回収し、買掛金はできるだけ遅く支払うのが原則。顧客や仕入先とのパワーバランスを考慮し、売掛金の回収期間や買掛金の支払サイトを見直す。

5.流動比率や当座比率などに基づいて管理しない
 銀行は融資の際に流動比率や当座比率を重視するが、棚卸資産や売掛金を増やせばこの比率は簡単に操作できる。しかし、その分資産が固定され、キャッシュが減ってしまう。

6.競合他社を基準にしない
 競合他社が上記のべからず5か条を守っていなかったとしたら、競合他社を真似しても一緒に沈没するのがオチである。
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