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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
February 15, 2010

不況期こそ基本に戻れってか?(前半)−『不況期の経営力(DHBR2009年8月号)』

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ダイヤモンド社
2009-07-10
おすすめ平均:
右脳型経営、グラニュラーマネジメント。参考になった
posted by Amazon360

 2009年5月号でも「不況期の戦略」という似たような特集をやっていたが、その続編のような感じ。全体的な印象としてそれほど目新しいコンセプトやアイデアは書かれておらず、不況期だからと言って何か新しいことをやらなければならないというよりも、不況期こそ経営の基本に立ち戻ることが重要であることを思い知らされる。

あなたの会社の「グーグル戦略」を考える(アンドレイ・ハジウ、デイビッド・B・ヨッフィー)
 MSP(マルチサイド・プラットフォーム)戦略についての論文。MSPとは、「タイプの異なる顧客同士をつなぐ製品、サービス、技術」と定義される。例えば、クレジットカード会社は小売店と消費者をつなぎ、グーグルは検索ユーザーと広告主をつないでいる。そして、一方の顧客層が増加すると他方の顧客層の参入の動機づけとなり、MSPを介してお互いの顧客層が増えていく点に特徴がある。クレジットカード会社を例にとって言えば、クレジットカードが使えるショップが増えると、クレジットカードを持とうとする消費者が増える。他方、クレジットカード利用者が増えれば、クレジットカード決済を導入しようとするショップが増える、といった具合だ。

 MSPはいろんな業界で成立する余地がある。例えば、私自身の仕事に関連するところで言えば、研修サービスに関しては研修ベンダーと人事部をつなぐプラットフォームがある(「日本の人事部」など)。また、中小企業診断士絡みで言うと、発注業者と受注業者をつなぐ中小企業向けのビジネスマッチングサービスがいくつか存在する(「ビジネス・マッチング・ステーション」など)。

 この論文には書かれていないが、間違いなく今後注目を浴びるはずのMSPがSaaSのプラットフォーム=PaaSだと思う。SaaSの代表格といえばSalesforce.comだが、営業・マーケティング機能のみに特化したサービスであり、他の機能は使えない。様々な機能を持つSaaSをユーザー企業が自由に組み合わせて使えるプラットフォーム=PaaSの開発に今IT業界は必死で取り組んでいる。

 いろんな業界において、各企業は、既存のMSPを利用するユーザーとなるのか、あるいは自社で独自のMSPを構築するのか、という戦略的な意思決定が求められることになるのだろう。

不況期の成長戦略(スベン・スミット、パトリック・ビギュエリ、メルダッド・バグハイ)
 「グラニュラー・マネジメント」という手法を紹介した論文。多くの企業は事業部単位で指標を見ており、ざっくりとした分析しかできていない。もっと製品別や国別に細かく市場を分析すれば、成長ポテンシャルのある市場を見つけ出せると著者は主張する。そのための分析方法が「グラニュラー・マネジメント」なのだが、よく読むと、BCGの「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス(PPM)」を事業単位ではなく、もっと細かい市場単位(著者曰く、5,000万〜2億ドルの市場単位)でやりましょう、ということを言っているだけのような気もする。だから、グラニュラー・マネジメントを実践するにしても、PPMがかつて批判を浴びた罠に陥らないようにする必要がある。

 個人的に重要だと思うのは、「大企業において各事業が大きくなりすぎたために、細部を見る余裕がなくなっている」という著者の問題提起である。「幸いにもITが進歩したおかげで、現場を動き回って情報を集めなくても細部まで現状を把握し、打ち手を検討することが可能になった」と言って著者が差し出したのが、グラニュラー・マネジメントという助け舟である。

乱気流時代のイノベーション戦略(ダレル・K・リグビー、カーラ・グルーバー、ジェームズ・アレン)
 イノベーションを生み出すためには左脳型人材と右脳型人材をうまく組み合わせる必要がある、というよくある内容の論文。左脳型・右脳型という区分はともかく、過去を振り返ってみると、起業やイノベーションの成功は、タイプの異なる人材の組合せによってもたらされていることを示す例は枚挙に暇がない(ホンダしかり、ソニーしかり、アップルしかり、グーグルしかり)。

 だが、タイプの違う人材を組み合わせればイノベーションが起こるというのは安直であり、まるで「あれとこれを混ぜれば『金』ができますよ」というエセ錬金術師のだまし文句である。タイプが違う人材を組み合わせると、必ずと言っていいほど利害の対立や軋轢が生じる。彼らが一緒に仕事を進める上で、どのような点をめぐって対立が起きるのか、そのような問題はどのように解決していくのか、単なる妥結点ではなく、ブレイクスルーとなる解を導くにはどうすればいいのか、といった点まで論じられていれば面白い論文だった。

 利害の対立を乗り越えて共通の目的に向かうヒントは、ジョー・トーリ前ヤンキース監督の著書『覇者の条件』を読んだ方が解るかもしれない。トーリ監督がヤンキースの辣腕オーナー、ジョージ・スタインブレナーという手ごわい上司を相手にどのように仕事を進めてきたのかが述懐されている(もっとも、トーリ監督はヤンキースの監督を退任してから別の暴露本を出してしまったため、どっちの本の内容が本当なのかよく解らなくなっている節はあるが・・・)

ジョー トーリ
実業之日本社
2003-04
おすすめ平均:
ビジネス書としては平凡
人生論としてもお薦め
’96、’98の「最強」ヤンキースを率いた体験で語るマネジメント術
posted by Amazon360

 (長くなってきたので、ここら辺で記事を分割します)
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