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新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
December 17, 2009
「小さな問題意識」が若手社員のキャリア開発のきっかけとなる
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社員個人がそれぞれ抱いている価値観や欲求に基づいて、「これこそが自分の取り組むべきことだ」と思える仕事を発見し、その仕事にエネルギーを注ぐことがよいキャリア開発につながる。では、そのような仕事はどのようにすれば見つかるのだろうか?
一つは、社員に対する企業側のニーズを的確に知ることである。企業は将来を見据え戦略を変化させていく中で、当然のことながら様々な役割や能力の社員を必要とする。企業側が想定している様々な人材像の中から、自分の価値観に合致するイメージを選択するのは合理的な方法である。
だが、論理的に考えればそうだとはいえ、将来の環境変化を予測し、企業の戦略の変化を読み取るのは難しい作業だ。そこからブレイクダウンして求められる人材像を見つけ出すことは、人事部ですら困難を伴う。まして若手の社員にそれを考えさせるのは酷かもしれない。
キャリア研修で企業側のニーズを知るために、戦略立案の代表的なフレームワークであるSWOT分析を取り入れた演習を行うことがある。だが、若手社員がいきなり自社のSWOT分析をしても、なかなか良質のアウトプットは出てこない(これは、若手社員が悪いのではなく、そういう演習問題を作ってしまった研修会社と、ファシリテーションを行う講師側の問題である、と自戒を込めて言ってみる)。フレームワークは複雑な事象を簡単に整理するためのツールであるが、仕事を一人前にこなせるようになったばかりの若手社員には、事業や組織の複雑な構造や関係性を意識する余裕がまだない。だから、フレームワークを使っても往々にして表面的な分析にしかならない。
以前、社内で研修コンテンツをどうするか議論していた時に、「SWOT分析だとあまり議論が盛り上がらないし、クライアントの人事担当者からは、『自社の強みをもっと意識させたい』という要望を受けているから、今度はバーニーのVRIOフレームワークを使ってみようと思うのだがどうだろうか?」と相談されたことがあった。VRIOフレームワークになるとSWOTよりも知名度が落ちるため、受講者にとってはさらにハードルが上がる。色々話しているうちに、そもそもフレームワークを使うことが本当に受講者の気づきになるのか?という話に発展していった。
若手社員が一段上の視点を持って、事業環境や組織構造を俯瞰できるようになることは、それはそれで重要である。だが、特に若いうちは、日頃仕事を進める中で認識するようになった「小さな問題意識」を出発点にした方が、よいキャリア開発につながるのではないか、と考えるようになった。
大学の同級生と久しぶりに集まった時のことである。私は法学部の出身であるが、ロースクールを出て法曹関係に足を踏み入れた人以外に、金融機関に就職した人間が多い。その中の1人が仕事の悩みを打ち明けてくれた。彼は入社以来、中小企業の融資担当をしていた。ちょうど小泉景気が続いていた頃だったから、どんどんと融資を行い、優秀な営業成績を収めることができた。その成果が認められて配属転換となり、今度は大手企業の担当になった。ところが、金融危機が引き金となって銀行は態度を一転させ、貸し渋り、貸し剥しを始めた。彼がかつて担当していた中小企業も融資が受けられず、中には倒産した企業もあるという。
彼は、今の大手企業担当の仕事はやりがいを感じるものの、中小企業を踏み台にして今の仕事を手に入れたのではないか?という罪悪感にも似た気持ちがあると言った。金融庁の出方によってすぐに方針が変わる銀行に翻弄されているように感じるとも言っていた。
実は、彼が仕事を通じて感じた「小さな問題意識」は非常に重要だと思う。確かに、今すぐにこの問題を解消するのは難しい。彼に必要なのは、なぜそういうことが起こっているのかを時間をかけて観察し、他人と議論していくことだろう。そうすると、似たような問題意識を持っている人に出会うかもしれない。そこでさらに考察を進めていくと、その小さな問題の背後にある本質的な課題が見つかる可能性がある。
与信のプロセスに改善の余地があるのかもしれないし、短期的な成果しか評価しない人事制度に欠陥があるのかもしれない。あるいは、融資部門のミッションが狭く捉えられており、もっと経営指導のようなことに深く踏み込んでいくべきなのかもしれない。さらには、金融庁との交渉にも難がある可能性だってある(私は金融系に詳しいわけではないので、この辺りはあまり具体的な考察にならず申し訳ないが…)。
いずれにせよ、そうした根源的な課題がいくつか見えてくると、「これだけはどうしても解決しなければならない」とか、「これは許せない、放置できない」といった気持ちが芽生えてくる。彼が何年か経ってそれなりの権限を持つようになれば、そうした課題にも取り組むチャンスが出てくる。組織の課題をまるで自分のもののように感じ、その課題解決に全身全霊を傾けることは、本人のキャリア意識を大幅に高める。
彼は「選挙に出て金融政策を変えてやる」と冗談なのか本気なのか解らないことも言っていたが、要は日頃の小さな問題意識をトリガーとして、深く洞察を繰り返していくと、「これこそ自分がやらなければならない仕事だ」というものに出会えるのではないか?ということである。
一つは、社員に対する企業側のニーズを的確に知ることである。企業は将来を見据え戦略を変化させていく中で、当然のことながら様々な役割や能力の社員を必要とする。企業側が想定している様々な人材像の中から、自分の価値観に合致するイメージを選択するのは合理的な方法である。
だが、論理的に考えればそうだとはいえ、将来の環境変化を予測し、企業の戦略の変化を読み取るのは難しい作業だ。そこからブレイクダウンして求められる人材像を見つけ出すことは、人事部ですら困難を伴う。まして若手の社員にそれを考えさせるのは酷かもしれない。
キャリア研修で企業側のニーズを知るために、戦略立案の代表的なフレームワークであるSWOT分析を取り入れた演習を行うことがある。だが、若手社員がいきなり自社のSWOT分析をしても、なかなか良質のアウトプットは出てこない(これは、若手社員が悪いのではなく、そういう演習問題を作ってしまった研修会社と、ファシリテーションを行う講師側の問題である、と自戒を込めて言ってみる)。フレームワークは複雑な事象を簡単に整理するためのツールであるが、仕事を一人前にこなせるようになったばかりの若手社員には、事業や組織の複雑な構造や関係性を意識する余裕がまだない。だから、フレームワークを使っても往々にして表面的な分析にしかならない。
以前、社内で研修コンテンツをどうするか議論していた時に、「SWOT分析だとあまり議論が盛り上がらないし、クライアントの人事担当者からは、『自社の強みをもっと意識させたい』という要望を受けているから、今度はバーニーのVRIOフレームワークを使ってみようと思うのだがどうだろうか?」と相談されたことがあった。VRIOフレームワークになるとSWOTよりも知名度が落ちるため、受講者にとってはさらにハードルが上がる。色々話しているうちに、そもそもフレームワークを使うことが本当に受講者の気づきになるのか?という話に発展していった。
若手社員が一段上の視点を持って、事業環境や組織構造を俯瞰できるようになることは、それはそれで重要である。だが、特に若いうちは、日頃仕事を進める中で認識するようになった「小さな問題意識」を出発点にした方が、よいキャリア開発につながるのではないか、と考えるようになった。
大学の同級生と久しぶりに集まった時のことである。私は法学部の出身であるが、ロースクールを出て法曹関係に足を踏み入れた人以外に、金融機関に就職した人間が多い。その中の1人が仕事の悩みを打ち明けてくれた。彼は入社以来、中小企業の融資担当をしていた。ちょうど小泉景気が続いていた頃だったから、どんどんと融資を行い、優秀な営業成績を収めることができた。その成果が認められて配属転換となり、今度は大手企業の担当になった。ところが、金融危機が引き金となって銀行は態度を一転させ、貸し渋り、貸し剥しを始めた。彼がかつて担当していた中小企業も融資が受けられず、中には倒産した企業もあるという。
彼は、今の大手企業担当の仕事はやりがいを感じるものの、中小企業を踏み台にして今の仕事を手に入れたのではないか?という罪悪感にも似た気持ちがあると言った。金融庁の出方によってすぐに方針が変わる銀行に翻弄されているように感じるとも言っていた。
実は、彼が仕事を通じて感じた「小さな問題意識」は非常に重要だと思う。確かに、今すぐにこの問題を解消するのは難しい。彼に必要なのは、なぜそういうことが起こっているのかを時間をかけて観察し、他人と議論していくことだろう。そうすると、似たような問題意識を持っている人に出会うかもしれない。そこでさらに考察を進めていくと、その小さな問題の背後にある本質的な課題が見つかる可能性がある。
与信のプロセスに改善の余地があるのかもしれないし、短期的な成果しか評価しない人事制度に欠陥があるのかもしれない。あるいは、融資部門のミッションが狭く捉えられており、もっと経営指導のようなことに深く踏み込んでいくべきなのかもしれない。さらには、金融庁との交渉にも難がある可能性だってある(私は金融系に詳しいわけではないので、この辺りはあまり具体的な考察にならず申し訳ないが…)。
いずれにせよ、そうした根源的な課題がいくつか見えてくると、「これだけはどうしても解決しなければならない」とか、「これは許せない、放置できない」といった気持ちが芽生えてくる。彼が何年か経ってそれなりの権限を持つようになれば、そうした課題にも取り組むチャンスが出てくる。組織の課題をまるで自分のもののように感じ、その課題解決に全身全霊を傾けることは、本人のキャリア意識を大幅に高める。
彼は「選挙に出て金融政策を変えてやる」と冗談なのか本気なのか解らないことも言っていたが、要は日頃の小さな問題意識をトリガーとして、深く洞察を繰り返していくと、「これこそ自分がやらなければならない仕事だ」というものに出会えるのではないか?ということである。
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