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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
November 17, 2009

組織が<重い>主たる要因は仕事の属人化だと思う

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 1ヶ月ほど前に「『タスクは簡潔に、コミュニケーションは密に』がリーダーシップの重要な原則」という記事を書いたが、リーダーシップに限らず、企業においてコミュニケーションが重要であることは言うまでもない。だが、何が何でもコミュニケーションを大事にすればよいかというと、必ずしもそうではないようだ。プレジデントの記事「なぜ『飲みニケーション』重視の会社は儲からないか」では、何か物事を起こすのに過剰な社内コミュニケーションを必要とする組織を<重い>組織と呼んでおり、組織が<重い>と目指すべき成果に悪影響を及ぼすとしている。この組織の<重さ>に関する研究の詳細は、一橋大学・沼上幹教授の『組織の"重さ"−日本的企業組織の再点検』で読むことができる。

 
沼上 幹
日本経済新聞出版社
2007-08
おすすめ平均:
メタボ組織のダイエット方法
実証の〈重み〉が感じられます。
無益とは思わないが・・・
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 組織の<重さ>を構成する要因は次の4つだという。
(1)過剰な『和』志向
 組織が機能するには、適度な「和」は必要だが、過剰になると、一人でも反対意見が出れば議論がまとまらなくなるといった事態を招き、必要な議論すら敬遠されてしまう。また、変化を拒み、現状維持への志向が強くなる。

(2)内向きの合意形成
 製品市場でライバル企業よりも優位に立つには、顧客を重視し、ライバル企業の動向を注視しなければならない。ところが、組織内部の事情が優先されると、この最も重要な部分がおろそかになり、製品市場で有効な手段を講じることができなくなってしまう。

(3)フリーライド(ただ乗り)
 評論家のように口は出すけれど責任はとらない。チームの一員としてやるべき仕事であっても、どこか他人事のように考えている。こうした社員が多いと、組織を動かそうとすると多大な労力を必要とする。

(4)経営リテラシー(基本的な考え方)の不足
 経営に関する基本的な考え方が理解できていない管理職が多いと、問題解決につながらない方策が打ち出されたり、誤って理解されたりして、的外れな方向に組織が動いてしまう。
 こうした組織では何をやるにしても社内コミュニケーションの負荷が高くなり、結果的に組織としての動きが遅くなる。では、これら4つの要因を生み出すさらなる根本的要因は何だろうか?プレジデントの記事にも少し書かれているが、それは「仕事の属人化」であろう。

 日業業務をコントロールし改善を施すにしても、戦略・組織レベルで大きな改革を行うにしても、現状を把握しないことには話が進まない。仕事の可視化が進んでいれば現状の問題点や重要な課題が捉えやすく、どういう改善・改革案が必要であるかとか、具体的にどのように施策を実行するかについて建設的な議論を行うことができる。だが、仕事が属人化していると現状を理解するだけで長い時間がかかる。多くの人の仕事が複雑に絡み合っているため、現状を知るためには様々な人と接触しなければならない。よって会議が増え、アンケート調査などが横行する。社内の人脈を頼りに必要な情報を聞き出したり、飲み会や食事会を開いたりと、インフォーマルなコミュニケーションが増加する。社内ばかりに気を取られていれば、顧客や競合他社といった社外の情報にはどうしても疎くなる。総じて情報が不完全になりがちであり、意思決定の質も上がらない。

 「仕事の属人化」がもう1つやっかいなのは、社員が変な「縄張り意識」を持つことである。つまり、「自分にしかこの仕事はできない」とか「自分がこの仕事をコントロールしている」という占有意識だ。変革によって自分のテリトリーが犯されることを知ると、彼らは抵抗する。先日、私の知人が「営業活動の実態が見えないのでSalesforceを導入しようとしたら、社内調整に1年かかった。Salesforceを導入するだけで何でこんなに苦労しなければならないんだ!?」と嘆いていたが、これこそ典型的な例だろう。自分がそれまで裁量権を持って自由にやっていたことに突然第三者から口出しをされたら、反発の1つや2つもしたくなるのが人間の性である。

 だから、組織を<軽く>する最も効果的な方法は、至極当たり前のことだが仕事の複雑さを低減し、可視化を進めることであると思う。冒頭で挙げた「タスクは簡潔に、コミュニケーションは密に」という原則は、当初はリーダーがメンバーとのコミュニケーションを行う時間を確保するためにタスクを簡潔にしよう、という意味合いで書いたのだが、タスクを簡潔にすることは、現状把握のようなあまり価値のないコミュニケーションを減らし、将来を見据えた建設的な議論や対話に集中するためにも必要なのである。
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