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November 09, 2009

「野村ノート」は研修テキストの理想形

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 私は阪神ファンなので、巨人が出場した日本シリーズは自動的にパ・リーグの球団を応援することになる。今年は、CS第2ステージでノムさんを胴上げするという感動的な演出をしてくれた日本ハムを応援していたのだが、やはり巨人は強かった…。来年の阪神は城島選手が加わってどうなることかね??

 ノムさんと言えば、現役時代から研究を続けた独自の野球理論を細かく記録した「野村ノート」が有名である。野村野球の代名詞とも言える配球論はもちろんのこと、バッターやピッチャーの心理分析、さらに一社会人としての立ち居振る舞いから人生論に至るまで、その内容は非常に幅広い。

 ヤクルト監督時代には、ノムさんが毎日のミーティングで野村ノートの内容を教え、選手はその内容を必死にノートに書き留めていた。選手が作成したノートは積み上げると何冊にもなったという(※)。こうした無形の力に支えられたチームは、92年から97年の間に4度のリーグ優勝を飾っている。

 それから10年以上が経ち、別の球団でコーチになった選手も多い。驚くのは、ノムさんの下で作成したノートを今でも選手指導に活用している人が少なくないという事実だ。楽天の池山元打撃コーチや阪神の広沢元打撃コーチが代表例である。先日もテレビを見ていたら、現役時代に左の中継ぎとして活躍し、現在は四国・九州アイランドリーグの徳島インディゴソックスでコーチを務める加藤博人氏もその一人であることを知った。バッグからボロボロになったノートを6冊取り出し、「まだ部屋にあるんですけど…」と語っていたのが印象に残った。

 現役時代、そして指導者になってからも野村ノートが長く使われるのは、野球選手は何を考えるべきか?という学習の「視点」と、ベースとなる知識や実践ケースといった考えるための「材料」がふんだんに盛り込まれているからに違いない。それだけ、ノムさんの考えは深いということであろう。しかも、球団を超えてノートが活用され、知が伝播・発展していくのはまさに奇跡的である。

 以前、「研修の終わりが学習の始まり」という記事を書いたが、研修はややもすると現場から切り離された空間で行われる刹那的な学習に陥る。そういう研修で使われたテキストは、研修が終ったら日常業務の書類の山に埋もれてしまうか、年末の大掃除で捨てられてしまうのがオチである。

 しかし、これでは何のための研修なのか解らない。研修で学んだ内容は、現場で実践されなければ何の意味もない。理想は野村ノートのように、受講者が現場に戻ってからも折に触れて研修テキストを参照し、自分なりの発見を書き加えながら中身を発展させていくことである。終わりがないことこそが学習の醍醐味であり、研修はそのための土台を提供する必要がある。さすがに、転職先でも使えるような研修テキストというのは守秘義務上難しいかもしれないが、研修ベンダーは野村ノートのような使われ方をするテキストを目指さなければならない、とテレビを見ながら感じたところである。

(※)ヤクルトの後に監督を務めた阪神では、野村ノートの内容をあらかじめ冊子にして選手に配ったため、選手がノートを取る必要はなくなった。だが、これが間違いだったと著書『あぁ、阪神タイガース−負ける理由、勝つ理由』の中で振り返っている。

野村 克也
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