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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
August 14, 2009

研修施設は人材育成に対する企業の姿勢を表している

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 帯に「20年以上読み継がれる名著」と書かれており、ピーター・ドラッカーが裏表紙に賛辞のコメントを寄せているとなれば、当然読まないわけにいかないでしょう!ということで即買いしてしまった。
マックス・デプリー
海と月社
おすすめ平均:
リーダーシップに大事な事って?
会社で壁にぶち当たっている人には、迷わずこれ!
とても読みやすかった
powerd by Amazon360

 家具メーカーであるハーマンミラー社の元CEOマックス・デプリーが、自身の経験を元に「サーバントリーダーシップ」や「従業員オーナーシップ」などについて語った本である。その中で、企業の施設のあり方に言及している部分がある。
 施設は企業の状況とリーダーシップと価値観を反映したものになる。…(ハーマンミラー社の施設は、)ビジネス、地域社会、従業員に対するわが社の姿勢を反映しているのだ。

 すべての施設はまわりに意味をもたらさなければならない。施設と企業文明の状態(段階)とのあいだには、意味のつながりがなければならない。施設は文明の一表現として、質の高いものであるべきだ。
 本の中では、ハーマンミラーの本社を取り巻く「池」がどのような意味を持つのかが説明されていた。

企業の施設の随所に、経営に対する姿勢が反映される
 企業の施設は単なる物理的なアーキテクトとしての存在にとどまらず、企業経営のアーキテクチャ(設計思想)を具現化している。最も解りやすいのが経営トップの部屋だ。ちょうど『日経ビジネス』の7月27日号に、ウォルマートのCEOの部屋の様子が紹介されていた。
 そこは、創業者、サム・ウォルトンの時代から、歴代トップが使い続けてきた場所だった。わずか5m四方程度で、木の壁や絨毯は使い込まれて、くたびれた感じすら漂わせる。

 「とても謙虚な気持ちにさせてくれるだろう」

 イスに腰掛けて、マイケル・デューク(※現CEO)はそう笑った。
 いつ何時も、あらゆる手段を尽くして徹底したコスト削減を追求する企業姿勢は、CEOの部屋にも表れているのだ。

 別の例を挙げると、オフィスの机のレイアウトには、社員同士のコミュニケーションに対する考え方が反映される。あるコンサルティング会社では、幹部社員同士のコミュニケーションを円滑にするために、幹部1人1人に割り当てられていた個室をなくし、大きな円卓で幹部が一緒に仕事をするようにしたという話を聞いたことがある。もちろん、コミュニケーションの活性化がかえって仕事の生産性を下げることもある(自分とは無関係の話が聞こえてくる状況で仕事をするのを嫌がる人もいる)わけで、大部屋にして皆が集まればいいという単純な話ではない。大部屋にどこまでパーテーションを設ければよいのか、といった点は、些細なことだが重要な論点となりうる。

研修施設には、人材育成に対する姿勢が表れる
 経営トップの部屋やオフィスレイアウトに比べるとあまり注目されることはないが、研修施設には人材育成の考え方が投影されている。GEが世界に誇るクロトンビルには、最高の学習環境、最高の講師陣、最高のカリキュラムが揃っている。人材育成に対するGEの桁外れなエネルギーが、クロトンビルには集約されているのだ。

 日本でも、ある一定の規模を超える企業の多くは、研修施設を自社で所有している。自社で研修施設を持つということは、それだけで人材育成に注力している会社であることが社員に伝わる。だが、ここ20年弱の間に何度か繰り返された不況の中で、少なからぬ企業が研修施設を手放してしまったと聞く。各社それぞれの事情があるだろうから正面切って口を挟めるわけではないが、傍から見るとちょっと残念だと感じてしまう。

 研修施設が、人材育成に対する力の入れ具合以上の意味を持つケースもある。今でも研修施設を自社で所有するあるクライアント企業の話だが、この会社の研修施設は、先方の担当者も受講者も認めるほど都心から外れた、決して交通の便がいいとは言えない場所にある。だが、あえてその場所で研修施設を所有し続けるのには重要な理由があった。

 実は、その土地は「創業の地」なのである。もちろん、今は都心に本社を構え、全国にも多数の拠点を持つほどの企業である。成長の舞台裏でルーツとなる土地を守り続けているこの研修施設は、創業時の情熱と苦労を風化させることなく、長年かけて培われてきた会社の価値観や精神を社員に受け継いでいく役割を担っているのである。

 企業の施設には、決算書類には掲載されることのない重要な価値が含まれることがある。研修施設もまたしかりなのである。
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