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February 23, 2009
IT投資の取捨選択をすべき不況の時代にもう一度読みたい3冊(中盤)
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書いているうちに思った以上に長くなってしまったので記事を分割…したところまではよかったが、続きを書くのを1週間も放置してしまった。前回の記事はこちら→「IT投資の取捨選択をすべき不況の時代にもう一度読みたい3冊(前半)」
ITは所詮ツール、それを使いこなすだけの組織能力を磨くことも忘れずに
ITは魔法ではない。所詮は情報を蓄積、検索、加工するだけのツールに過ぎないのだから、ITを導入すれば効果が出ると考えるのは安直である。卑近な例だが、スピード社のレーザーレーサー(もうこの例えは古いか?)を着てもタイムが縮まるとは限らないのと同じ理屈である。水着は道具であり、それを人間の方がうまく使いこなせなければ何の意味もない。しかも、レーザーレーサーのような高度な水着にチャレンジしていいのは一部のスーパーアスリートだけであって、多くの人にとっては水着を選ぶよりも己の水泳能力を上げる方が、タイム短縮には近道なのである。
ところが、ビジネス界の一部には、ITを使えば業績が改善すると思い込み、最新の技術であればあるほど効果は大きくなると信じている人が未だに存在する。この間もあるSIerの人と話をしていたら、「ITを導入すれば効果が出るのは当たり前」などと、何の迷いもなく豪語するものだから思わず笑いそうになってしまった。どれほど自社製品に自信を持っているのか知らないが、こういうSIerから何千万もするシステムを購入するのは躊躇われる。
道具は人間の活動をサポートするためのものであって、人間の活動に取って代わるのではない。レーザーレーサーの例は極端だったが、RSSリーダーなんかを考えてみればよく解る。有益な最新情報を広く入手し、日常の仕事に活かすという目的は、RSSリーダーを使っただけで達成されるものではない。RSSリーダーはあくまでも情報を集めてくるだけであり、それを活かすも殺すも自分次第である。数ある情報の中から本当に重要な情報を見つけ出す嗅覚が必要だし、抜き出した情報をあれこれと組み合わせ、仮説を作り、意味を見出しながら新たなアイデアを生み出す能力も必要である。もっと基本的なことを言えば、毎日RSSリーダーが集めてくる情報に目を通す時間を業務内外で確保しないことには何も始まらない。つまり、ITを本当に使いこなそうと思ったら、仕事のやり方を変え、自分自身のスキルも高めなければならないのである。これは組織におけるIT投資にも当てはまる話だ。
IT投資と生産性を紐付ける「第3の変数」
企業におけるIT投資と生産性の関係は長らく謎であった。IT投資額の増加にもかかわらず、生産性が向上していないと言われた時期もあった(ロバート・ソローの「生産性パラドクス」)。その後研究が進みにつれ、IT投資と生産性の間に直接の因果関係があるのではなく、第3の変数が介在していると考えられるようになった。その第3の変数の1つとして挙げられるのが、エリック・ブリニョルフソンが名づけた「インタンジブル・アセット」(見えざる資産)である。
ブリニョルフソンが目をつけたのは、ERPプロジェクトの総額に占めるハードウェア・ソフトウェアコストの割合の低さであった。現在ではよく知られていることだが、プロジェクトの金額の大半は、業務プロセスの再構築やユーザーの教育費に充てられる。大抵この手のプロジェクトでは外部のコンサルタントが起用されるため、その分のコストがここには含まれる。だが、プロジェクトに費やした金額は、全て同じように会計処理されるわけではない。それゆえ、重要な要素を見過ごしているとブリニョルフソンは指摘する。
もっとも、ここまではインタンジブル・アセットの金額的な話である。良質のインタンジブル・アセットを持つ組織とはどういう組織なのか?ブリニョルフソンは、ITのメリットを最大限に引き出すための7つの原則を挙げており、これらの特徴を持つ組織を「デジタル組織」と呼んでいる。そして、組織のデジタル度とIT投資がうまくかみ合うことで、生産性は向上すると結論づけている。
ITは所詮ツール、それを使いこなすだけの組織能力を磨くことも忘れずに
ITは魔法ではない。所詮は情報を蓄積、検索、加工するだけのツールに過ぎないのだから、ITを導入すれば効果が出ると考えるのは安直である。卑近な例だが、スピード社のレーザーレーサー(もうこの例えは古いか?)を着てもタイムが縮まるとは限らないのと同じ理屈である。水着は道具であり、それを人間の方がうまく使いこなせなければ何の意味もない。しかも、レーザーレーサーのような高度な水着にチャレンジしていいのは一部のスーパーアスリートだけであって、多くの人にとっては水着を選ぶよりも己の水泳能力を上げる方が、タイム短縮には近道なのである。
ところが、ビジネス界の一部には、ITを使えば業績が改善すると思い込み、最新の技術であればあるほど効果は大きくなると信じている人が未だに存在する。この間もあるSIerの人と話をしていたら、「ITを導入すれば効果が出るのは当たり前」などと、何の迷いもなく豪語するものだから思わず笑いそうになってしまった。どれほど自社製品に自信を持っているのか知らないが、こういうSIerから何千万もするシステムを購入するのは躊躇われる。
道具は人間の活動をサポートするためのものであって、人間の活動に取って代わるのではない。レーザーレーサーの例は極端だったが、RSSリーダーなんかを考えてみればよく解る。有益な最新情報を広く入手し、日常の仕事に活かすという目的は、RSSリーダーを使っただけで達成されるものではない。RSSリーダーはあくまでも情報を集めてくるだけであり、それを活かすも殺すも自分次第である。数ある情報の中から本当に重要な情報を見つけ出す嗅覚が必要だし、抜き出した情報をあれこれと組み合わせ、仮説を作り、意味を見出しながら新たなアイデアを生み出す能力も必要である。もっと基本的なことを言えば、毎日RSSリーダーが集めてくる情報に目を通す時間を業務内外で確保しないことには何も始まらない。つまり、ITを本当に使いこなそうと思ったら、仕事のやり方を変え、自分自身のスキルも高めなければならないのである。これは組織におけるIT投資にも当てはまる話だ。
IT投資と生産性を紐付ける「第3の変数」
企業におけるIT投資と生産性の関係は長らく謎であった。IT投資額の増加にもかかわらず、生産性が向上していないと言われた時期もあった(ロバート・ソローの「生産性パラドクス」)。その後研究が進みにつれ、IT投資と生産性の間に直接の因果関係があるのではなく、第3の変数が介在していると考えられるようになった。その第3の変数の1つとして挙げられるのが、エリック・ブリニョルフソンが名づけた「インタンジブル・アセット」(見えざる資産)である。
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ブリニョルフソンが目をつけたのは、ERPプロジェクトの総額に占めるハードウェア・ソフトウェアコストの割合の低さであった。現在ではよく知られていることだが、プロジェクトの金額の大半は、業務プロセスの再構築やユーザーの教育費に充てられる。大抵この手のプロジェクトでは外部のコンサルタントが起用されるため、その分のコストがここには含まれる。だが、プロジェクトに費やした金額は、全て同じように会計処理されるわけではない。それゆえ、重要な要素を見過ごしているとブリニョルフソンは指摘する。
「(効果が出るまでに何年もかかることを考えると、)ERPプロジェクトに投入される20億円の初期費用は投資であって、その会計年度でかかった費用だとはいえない。この投資は、その後数年間にわたって得られるメリットのために支払われている。そういった意味では、この総額20億円は、そっくり固定資産になったと考えることもできる。これは成果をもたらす固定資産であり、貸借対照表に記載される他の固定資産と同じものではない。ハードウェアは貸借対照表で資産として扱い、会計制度によってはソフトウェアも資産として扱う。しかし、業務プロセスの再設計やユーザー教育などの支出は通常、その会計年度の費用として扱われ、資産に投資したことにはならない。つまり、この情報システムの全体的な価値が、その会社の貸借対照表には現れることはない。そのほんの一部だけが、記載されているだけなのだ。それでは、インタンジブル・アセットの割合とはどのくらいなのだろうか?ブリニョルフソンによると、「ハードウェアの投資額:インタンジブル・アセットの投資額」は「1:9」であるという。
この例は、極めて大きなインタンジブル・アセットが、企業の中でいかに貸借対照表に記載されることなく創り出されるかを示している。…幸か不幸か、人は測定しないものを管理することはできない。」
「さまざまな異なる種類のプロジェクトを調べた結果、コンピュータのハードウェアの投資額1ドルに対し、インタンジブル・アセットの平均投資額が9ドルになることが分かった。このインタンジブル・アセットとは、業務プロセス、社員教育、取引先との関係、顧客満足度、社員の忠誠心、企業に対する評価などである。つまりコンピュータは投資総額のごく一部にすぎず、インタンジブル・アセットが実質的に生産性の向上を支えているのだ。」さらに、企業の短期的な収益率はIT投資と関係が深いが、長期的な収益率はインタンジブル・アセットへの投資と関係が深いとも述べている。
もっとも、ここまではインタンジブル・アセットの金額的な話である。良質のインタンジブル・アセットを持つ組織とはどういう組織なのか?ブリニョルフソンは、ITのメリットを最大限に引き出すための7つの原則を挙げており、これらの特徴を持つ組織を「デジタル組織」と呼んでいる。そして、組織のデジタル度とIT投資がうまくかみ合うことで、生産性は向上すると結論づけている。
<デジタル組織の7原則>残念ながらブリニョルフソンの著書では、インタンジブル・アセットの重要性は指摘されいるものの、引用文を読むと解るようにそこにはいろんな要素が混じっており、中身がきちんと整理されているとは言い難い。また、デジタル組織の7原則にしても、これらを定量的に測定する方法については述べられていない。とはいえ、IT導入に当たっては、そのITを使って実現する業務プロセスを定義し、現状のプロセスから新しいプロセスに移行する手順を明確に定め、それを現場に誤解なく浸透させることが重要であることは、実務上の経験からも異論はないはずだ。繰り返しになるが、ITは所詮ツールでしかなく、人間の使い方次第で薬にも毒にもなるのだ。
1.デジタルの業務プロセスへの移行
2.意思決定権の分散
3.オープンな情報アクセスとコミュニケーション
4.業績に基づく給与と報酬制度
5.絞り込まれた事業目的と目標の共有
6.最高の人材の採用
7.人的資本への投資
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