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February 12, 2009
IT投資の取捨選択をすべき不況の時代にもう一度読みたい3冊(前半)
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金融危機に端を発した急激な景気後退が、今年の企業のIT投資にも大きな影響を及ぼすのは必至だ。IT関連の市場調査会社イーシーリサーチ(ECR)によると、2009年度の国内企業(団体)のIT投資額は、前年度から6.8%減少して8兆8,966億円になると見込まれる。
ポートフォリオを組んでバランスよく投資する
一口にIT投資と言っても、いくつかの種類が存在する。代表的な区分は、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院スローン校の情報システム研究センターによる分類で、IT投資を「戦略」、「情報」、「トランザクション」、「インフラ」の4つのカテゴリーに分けるという考え方だ。
(※)経済産業省「業績評価参照モデル(PRM)を用いたITポートフォリオモデル 活用ガイド」
IT投資は栄養素のようなもので、どれか一部のカテゴリーに極端に偏るのはよくない。例えば、「トランザクション」に対する投資ばかり行っても、効率化によって浮いた時間を有効活用するためのIT投資がなければ効果は目減りしてしまうし、「情報」に多額の投資をしても、膨大な情報量を適切に処理できるインフラがなければやがてシステムはパンクしてしまう。4つのカテゴリーのバランスをとりながら、それぞれのカテゴリーに適切な割合で投資するのが望ましいIT投資とされる。これがITポートフォリオマネジメントの考え方である。そのITポートフォリオマネジメントの考え方に詳しいのが、ピーター・ウェイル著の『ITポートフォリオ戦略論』である。
情報システム責任者の重要な仕事とは、自社のビジネス戦略とIT投資をうまくリンクさせ、各カテゴリーに対する適切な投資割合を決定することである。同書の調査によれば、平均的な企業のITポートフォリオは、戦略…14%、情報…16%、業務(※同書ではトランザクションではなく、業務と表現されている)…12%、インフラ…58%となっているらしい。ただこれはあくまでも平均であって、自社がどういう戦略を選択するかによって必然的にポートフォリオの形は異なってくる。例えば、ITを戦略的ポジショニングよりもコスト削減に活用したいと考えている企業は、
逆に、製品の迅速な市場投入やITの共有化による経済性を活用することで、競争優位を獲得しようとしている戦略志向の企業は、
両者のバランスを取る、すなわちコスト削減と俊敏性のバランスを図ろうとしている企業は、
個人的な印象だが、個々のIT投資案件のリターンをつぶさに調べる企業は多いものの、自社のITポートフォリオが全体としてどうなっているのかをきちんと把握している企業は少ないように思える。限られたIT予算を効果的に配分するためには、各案件の投資対効果を事前にシミュレーションするミクロの視点と同時に、まずこれまでのIT投資全体を振り返って、どういうITポートフォリオになっていたのかを俯瞰するマクロの視点も重要だ。自社のITポートフォリオの全体像を把握した上で、今後の戦略と照らし合わせながら、強化すべきカテゴリー、投資が足りないカテゴリーを特定し、そのカテゴリーに重点的に投資する。これが無駄のないIT投資を行うために必要なことだと思う。
《編集後記》
昔書いた「ITポートフォリオ戦略論−最適なIT投資がビジネス価値を高める」という記事が、我ながらちょっと何を言っているのか解らない内容になっていたため、違う構成で書き直してみた。
「ECRでは、世界的な金融危機が国内企業(団体)のIT投資に与える影響について、減少・増加合わせて全体の13.7%(23万9,000社)が影響を受けるとしている。金融危機以前の予定よりも2009年度のIT投資が減少する見込みの企業(団体)は15万4,000社、逆に増加見込みの企業(団体)は、8万5,000社となっている。なかでも、売上高5,000億円以上の大企業で減少傾向が強く、42.3%が削減予定となった。金融危機への対応において、中堅・中小企業よりも大企業のほうが、より敏感にIT投資の削減に動いている傾向がうかがえる。」企業は本当に必要なIT投資案件を取捨選択し、投資した以上は確実なリターンを上げることが求められるだろう。今日は、そんなシビアな時代にもう一度読み返したい3冊を勝手ながら取り上げてみたいと思う。
(「国内企業・公共団体のIT投資額、2009年度は6.8%減に」TECKWORLD、2009年1月30日)
ポートフォリオを組んでバランスよく投資する
一口にIT投資と言っても、いくつかの種類が存在する。代表的な区分は、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院スローン校の情報システム研究センターによる分類で、IT投資を「戦略」、「情報」、「トランザクション」、「インフラ」の4つのカテゴリーに分けるという考え方だ。
戦略 | 市場における競争優位やポジショニングを獲得することを目的とした投資。例としては、導入当初のATMなどがこのカテゴリーに該当する。 |
情報 | より質の高い管理を行うことを目的とした、会計、マネジメント管理、レポーティング、コミュニケーション、分析等を支援するための情報提供に関連する投資。 |
トランザクション | 注文処理などルーチン化された業務のコスト削減や処理効率の向上を目的とした投資。 |
インフラ | 複数のアプリケーションによって共有される基盤部分を提供するための投資。PCやネットワーク、共有データベースなどが該当する。 |
(※)経済産業省「業績評価参照モデル(PRM)を用いたITポートフォリオモデル 活用ガイド」
IT投資は栄養素のようなもので、どれか一部のカテゴリーに極端に偏るのはよくない。例えば、「トランザクション」に対する投資ばかり行っても、効率化によって浮いた時間を有効活用するためのIT投資がなければ効果は目減りしてしまうし、「情報」に多額の投資をしても、膨大な情報量を適切に処理できるインフラがなければやがてシステムはパンクしてしまう。4つのカテゴリーのバランスをとりながら、それぞれのカテゴリーに適切な割合で投資するのが望ましいIT投資とされる。これがITポートフォリオマネジメントの考え方である。そのITポートフォリオマネジメントの考え方に詳しいのが、ピーター・ウェイル著の『ITポートフォリオ戦略論』である。
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情報システム責任者の重要な仕事とは、自社のビジネス戦略とIT投資をうまくリンクさせ、各カテゴリーに対する適切な投資割合を決定することである。同書の調査によれば、平均的な企業のITポートフォリオは、戦略…14%、情報…16%、業務(※同書ではトランザクションではなく、業務と表現されている)…12%、インフラ…58%となっているらしい。ただこれはあくまでも平均であって、自社がどういう戦略を選択するかによって必然的にポートフォリオの形は異なってくる。例えば、ITを戦略的ポジショニングよりもコスト削減に活用したいと考えている企業は、
「インフラ関連の投資は最小限に抑え、一方で業務関連の投資に傾斜したポートフォリオを組むのがよいだろう。このような企業における戦略関連のIT投資は最小限であり、情報関連のIT投資もコストを管理する情報に焦点を絞るだろう。」とされており、同書の調査では実際にそのような戦略を選択した企業のITポートフォリオは、戦略…5%、情報…13%、業務…40%、インフラ…42%という結果が出ている。
逆に、製品の迅速な市場投入やITの共有化による経済性を活用することで、競争優位を獲得しようとしている戦略志向の企業は、
「競合他社の平均を上回るIT投資を行い、充実したインフラ能力を保有し、ポートフォリオのなかで戦略関連のIT投資が占める割合が高いはずだ。」と述べている。そのような戦略を選択した企業のITポートフォリオは、戦略…17%、情報…14%、業務…11%、インフラ…58%となっている。
両者のバランスを取る、すなわちコスト削減と俊敏性のバランスを図ろうとしている企業は、
「インフラ関連のIT投資を重視しながら、戦略関連、情報関連、業務関連のIT投資の配分を考え、業界の平均程度にITに投資すべきだろう。」とされる。そのような戦略を選択した企業のITポートフォリオは、戦略…15%、情報…20%、業務…15%、インフラ…50%となっている。
個人的な印象だが、個々のIT投資案件のリターンをつぶさに調べる企業は多いものの、自社のITポートフォリオが全体としてどうなっているのかをきちんと把握している企業は少ないように思える。限られたIT予算を効果的に配分するためには、各案件の投資対効果を事前にシミュレーションするミクロの視点と同時に、まずこれまでのIT投資全体を振り返って、どういうITポートフォリオになっていたのかを俯瞰するマクロの視点も重要だ。自社のITポートフォリオの全体像を把握した上で、今後の戦略と照らし合わせながら、強化すべきカテゴリー、投資が足りないカテゴリーを特定し、そのカテゴリーに重点的に投資する。これが無駄のないIT投資を行うために必要なことだと思う。
《編集後記》
昔書いた「ITポートフォリオ戦略論−最適なIT投資がビジネス価値を高める」という記事が、我ながらちょっと何を言っているのか解らない内容になっていたため、違う構成で書き直してみた。
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