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   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
December 31, 2008

今年印象に残った本ベスト10(第1位→第5位)

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 第1位から第5位の発表。それではよいお年を!

第1位『パフォーマンス・コンサルティング』
デイナ・ゲイン・ロビンソン/ジェームス・C・ロビンソン
ヒューマンバリュー
おすすめ平均:
トレーニングからパフォーマンス獲得への転換
マネージャーにもお薦めしたい一冊
応用範囲は広い
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 「ワークプレイスラーニング2008に行ってきた」でも書いたが、これからの人材育成担当者は、単に研修を企画し運営する「研修の専門家」だけでは不十分になる。「現場での学習や成長」をサポートする、あるいは研修と連動した「現場の学び」のあり方をデザインするという新たな役割が求められる。もちろん、企業は学校ではないので、現場での学習そのものがゴールとなることはありえない。学習の先には必ず業績の向上がある。言い換えれば、「現場での学習」は、組織のパフォーマンスと直結している必要がある。これらのことをまとめると、人材育成担当者は「組織の業績向上に貢献する人材のパフォーマンス改善」ができるプロフェッショナルにならなければならない、ということだ。同書では、「組織の成果と人材開発を結びつける実践ステップ」が詳細に解説されている。

 もはや、「何となく営業担当者のプレゼン能力が低いから『プレゼンテーション研修』を実施する」とか、「管理職研修の定番だから『ケプナー・トリゴー法の研修』を実施する」といった対応は通用しなくなる。「なぜ、その研修が必要なのか?」−経営者も、受講者の上司も、そして受講者自身もこの「なぜ」を厳しくチェックするようになってきているのだ。とりわけ、「その研修は『業績の向上』につながるのか?」がしつこく問われる。

 研修のステークホルダーを納得させるためには、従来の思考回路を改めなければならない。視野をぐっと広げて、まず「事業のあるべき姿」を整理する。ここがスタートラインだ。そのあるべき姿を実現するためには、社員にはどのような「パフォーマンス」が求められるのか。そして、そのパフォーマンスを獲得するために最も有効な「トレーニング」とは何なのか。こういった具合に、「トップダウン型の思考」で事業課題と直結したトレーニングを設計することが重要なポイントだ。

 もう1つの重要なポイントは、社員のパフォーマンスに影響を与えるのはトレーニングだけではないという点だ。「職場環境」も見過ごせないファクターである。上司や同僚との人間関係、職務設計、業務量、業務を遂行するためのツール(ITなど)、職場全体の風土・雰囲気、勤務形態、人事評価の方法…こういった様々な要素もパフォーマンスを左右する。どんなに優れたトレーニングを実施しても、職場環境が劣悪であればパフォーマンスに悪影響を及ぼすことは想像に難くない。人材育成担当者は、職場環境を変えるためのソリューションも立案できるようにならなければならないのだ。(最近、快適に働くことができるオフィスレイアウトを手がける研修会社が増えてきたが、これは職場環境を変えるソリューションの1つだ。だが、これがすべてではない。)

 ちなみにIT業界では、単にソフトウェアやハードウェアを販売する従来型の営業スタイルから、経営課題を解決するITソリューションを提案するスタイルが主流になりつつある。さらには、ITソリューションにとどまらず、業務改革や組織変革といった、組織構造を抜本的に変えることを目的とした非ITソリューションを提案・実施するベンダーも増えている。ひょっとしたら、これと似たような動きが研修業界でも起こるかもしれない。同書は、(私がいるような)研修サービス会社にとって、ソリューション営業の研修版とも言えよう。

第2位『ザ・プロフィット』
エイドリアン・J・スライウォツキー
ダイヤモンド社
おすすめ平均:
■3度ほど通読しています。ビジネスモデルを構築する際の想像力を拡げてくれます。
儲かる仕組みを作る
物語形式で説明する23の利益のモデル
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 企業の利益はどのようにして生まれるのか?著者のエイドリアン・スライウォツキーは23の「利益モデル」を紹介している。単なる解説書ではなく、デルモアという架空の会社で様々な事業戦略の立案に携わるスティーブンという40歳ぐらいの男が、戦略を極めたチャオという老齢の人物から講義を受けるという設定で、ストーリー仕立てになっており非常に読みやすい。ただし、内容を理解するのは一筋縄ではいかない。

 まず、23の利益モデルは記述的であり、読者の理解を助けるようにMECEに整理されたものではない(もちろん、チャオ=スライウォツキーは敢えてそうしている)。変に通俗的な戦略の教科書に慣れている読者(Me, too!)はここで面食らう。

 利益モデルを学ぶ上で考えなければならないことは、
・その利益モデルはどの産業・市場で通用するものなのか?
・その利益モデルを確立する上で重要な成功要因(KSF)は何か?
・その利益モデルで利益が生まれるのはなぜなのか?
の3点。チャオは利益モデルの概要を説明した後は、矢継ぎ早にスティーブンにこの3点を考えさせる質問を投げかける。読者は自分がスティーブンになったつもりで、答えを考える。しかし、考えれば考えるほどこの質問は深い。どのモデルも、数十分といったわずかな時間で語り尽くせるものではない。

 だが、それを考え抜くことが戦略家を目指す読者の使命である。「読者の深い思考を促す」という良書の条件を十二分に満たす素晴らしい本だ。

第3位『マネー・ボール』
マイケル・ルイス
ランダムハウス講談社
おすすめ平均:
かなり冷徹、ただしスポ根
思考と生き方のためのマニュアル
野球好きなら絶対にお薦めの本です。
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 アスレチックスといえばメジャーリーグ屈指の貧乏球団だ。そんな球団が、いかに少ない資金でヤンキースを始めとする強者に立ち向かっていくか?ゼネラル・マネジャーに就任したビリー・ビーンがたどり着いた答えは、従来の戦術を捨て去り、「セイバーメトリクス」という手法を取り入れることであった。

 「セイバーメトリクス」(Wikipedia)
 「ビリー・ビーン」(Wikipedia)

 簡単に言えば、一般的に打者を評価する指標として使われている打率、打点といった指標を完全に無視し、「出塁率」と「長打率」を重視する戦術である。
 「足の速さ、守備のうまさ、身体能力の高さは、とかく過大評価されがちだ。しかし、野球選手としてだいじな要素のなかには、非常に注目すべきものとそうでないものがある。

 ストライクゾーンをコントロールできる能力こそが、じつは、将来成功する可能性と最もつながりが深い。そして、ストライクゾーンをあやつる術を身につけているかどうか、一番わかりやすい指標が四球の数なのだ。」
 「ポール・デポデスタがビリー・ビーンに請われてフロント入りしたのは1999年のシーズン前だったが、彼はそれよりだいぶ以前から、勝利の要因を研究していた。…20世紀のあらゆる球団のさまざまなデータを数式に当てはめて、勝率と関係が深いデータはどれなのかをさぐった。重要なデータはふたつしかないことが判明した。どちらも攻撃面のデータ。出塁率と長打率だ。ほかの数値はすべて、きわめて重要性が薄い。」
 これは、従来の常識を完全に覆す考え方で、他のチームはおろか、アスレチックス内でも当初は批判があった。しかし、ビリー・ビーンの辣腕によって球団は意識改革に成功。ビーンがGMに就任した後の10年間にアスレチックスが積み上げた901の白星は、ヤンキースとレッドソックスに次ぐアメリカン・リーグ3位であった。

 それまで当たり前のように使われていた指標が、実は結果とあまり関係なく、意外な指標が見過ごされている−ひょっとしたら企業の業績についても同じようなことがあるのではないだろうか?財務分析は現在の企業の体質を診断するのには役立つものの、将来のパフォーマンス予測には限界がある。企業の業績と相関の深い指標を見つけ出すという実証研究は数多く行われているが、今のところこれという決定打はない。野球と違って、多種多様な企業の活動を定量的なデータに落とし込むことが困難であることがその理由であると考えられる。だが、もし企業活動の定量化が進めば、統計的な研究によって、目から鱗の発見が出てくるかもしれない。

 そういえば、日本の野球でも「先頭打者への四球は禁物」、「エラーで流れが変わる」、「7回がチャンス」といった通説があるが、データで検証したところどれも当てはまらないという記事が最近あったな。

 「野球のセオリー、実は“錯覚” 名古屋大大学院・加藤教授らデータ分析」(産経新聞)

第4位『不機嫌な職場』
河合 太介
講談社
おすすめ平均:
その仕事は私のためになるんですか?
分析本としては良いと思います。
極めてオーソドックスな内容
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 CDの「ジャケ買い」というのはあるが、この本は「挿絵買い」ともいうべきか、p18に載っていた「(社内の人間)関係の希薄化を生み出す構造」という図がすごく解りやすかったというだけの理由で購入した本である。「メールなどで一方的な指示を出してきて、こちらの対応が遅いとキレる」、「『おはよう』等の挨拶がなく、皆淡々と仕事を始める」といった「不機嫌な職場」の症状に共感する人が多かったせいか結構話題になった本で、週刊ダイヤモンドでは「不機嫌な職場」という特集が組まれたほどだ。

 「不機嫌な職場」が生み出されるメカニズムと、「イキイキとした職場」づくりに取り組む企業事例は解りやすかったのだが、具体的に「職場の不機嫌度」を測定・分析し、適切なソリューションを構築するためにはどうすればよいのか?という内容が薄く、その点がやや物足りなかった。年明けに、「職場の不機嫌度」の測定方法に関する私のアイデアを記事にしてみようかと思う。

第5位『GE式ワークアウト』
デーブ・ウルリヒ
日経BP社
おすすめ平均:
ポストM&Aに熟練したGEならでは。
組織変革の具体的エッセンスが読み取れる良書
不確実性に対応するスピーディな意思決定への解のひとつがここに。しかして、そのまま移植
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 ワークアウトの詳しい説明はここでは省略。参考URLを挙げておく。

 「ワークアウト」(@IT情報マネジメント用語辞典)
 「ワークアウト」(wisdom イノベーション・キーワード)

 自分が担当する業務の問題や、所属する事業の課題を題材として、その解決策を立案させるという研修は最近多く見られるようになったのだが、研修中に一生懸命作った企画書が、現場で実行に移されたという例は非常に少ない。だが、GEのワークアウトは違う。セッション終了後にワークアウト参加者をコアメンバーとしたプロジェクトを立ち上げ、解決策を絶対に実行させる。そして、プロジェクトの進捗と、プロジェクトの効果をしぶとくモニタリングする。ジャック・ウェルチが旗振り役となって進めてきたワークアウトは、それまでの重たい官僚組織を変革し、社員が皆イニシアチブを取ってビジネスを進めていくというマインドを植えつけることに成功した。この本では、そんなワークアウトの歴史と、実際のワークアウト・セッションの進め方を解説している。ワークアウトの手引書としては最適な1冊だ。

 GEといえばもう1つ有名な「シックスシグマ」というツールがあるが、同書の中では、シックスシグマが成功したのはワークアウトによって変革のマインドが全社に浸透していたからであり、もし順序が逆であればGEは変われなかっただろうという指摘がされており、興味深い。
 「ワークアウトは組織が他の変革プロセスをより効果的に行うための基礎を作るということである。ワークアウトの本質は、変化する能力のある組織、新しいアイデアにオープンな組織、過去に捉われるよりも未来に調和する組織を作り出すことである。」
 「変化を志向するワークアウトの文化が組み込まれてからのGEは、とりわけシックスシグマやデジタル化(Eコマースやウェブベースのプロセス)といった一連の大規模な変革イニシアチブを実現できるようになった。GEほどの規模の会社において、このようなイニシアチブの導入、普及、内部化がこれほど素早くできたことは、ワークアウトの文化という基盤なしでは考えられない。」
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