※2012年12月1日より新ブログに移行しました。
>>>現行ブログ free to write WHATEVER I like
⇒2019年にさらにWordpressに移行しました。
>>>現行HP シャイン経営研究所(中小企業診断士・谷藤友彦)
⇒2021年からInstagramを開始。ほぼ同じ内容を新ブログに掲載しています。
>>>Instagram @tomohikoyato
   新ブログ 谷藤友彦ー本と飯と中小企業診断士
June 23, 2008

『IT投資価値評価ガイドライン(案)』で気になったデータ

拍手してくれたら嬉しいな⇒
 社団法人日本システム・ユーザー協会(JUAS)が発行した『IT投資価値評価に関する調査研究(IT投資価値評価ガイドライン(案)について)』を買ってみた。「IT投資の評価が現状どのように行われており、またどのように行われるべきか」というテーマについて、経済産業省からの委託を受けてJUASが行った研究をまとめたもの。PDF版が以下のリンクから入手できる(無償)。
http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/softseibi/

 中身どうこうというより、個人的に気になったデータを2つ取り上げたい。


○投資タイプ別・採用されているIT投資評価の手法
投資タイプ別・採用されているIT投資評価の方法

 事前評価・事後評価とは、IT投資前・投資後に、「どのくらいの効果があるのか」「想定された効果に対して、実際にはどのくらいの効果が出たのか」を評価すること。IT投資が正当化されるのは「投資(=キャッシュアウト)以上の効果(=キャッシュイン)があること」であるから、評価指標としてはROIを使用するのがベストである。コスト削減を伴う業務効率型のIT投資効果はROIで評価しやすい。

 だが、全ての効果が金額換算できるわけではない。例えば、全社のネットワークを高速化する(=インフラ型)場合や、オンラインショッピングのサイトを立ち上げる(=戦略型)場合の効果は、金額換算するのが難しい(やろうと思えばできるが、たくさんの仮定を置く必要がある)。そういう場合は、代わりにKPI(重要業績指標)やユーザーの満足度といった指標を用いる。

 上のグラフは、現在どのような指標を用いてIT投資評価を行っているかを調査したものである。3つの投資タイプ全てにおいて、事前評価をシステムのユーザーの満足度で行うという回答が多い。しかし、よく考えると「事前評価を満足度で行う」というのはいささか妙な気がする。「現状のシステムに対する満足度は○○%です。新システムを導入すると満足度が○○%向上します」とでも言うのだろうか?効果というからには、満足度の上昇分を示さないといけないのだが、満足度という曖昧なものの上昇分など(たとえ目標値であるとしても)、どうやって設定するのだろうか?システムのユーザーの満足度を用いた事前評価は、具体的にはどのように行われているのだろうか?


○業種グループ別に見た保守・運用費と新規投資の動向
業種グループ別に見た保守・運用費と新規投資の動向

 業種別に保守・運用費と新規投資の割合を経年変化で見たものが上のグラフである(2005年度実績を100とした場合の数値)。「商社・流通・卸売・小売」の新規投資が少ないのが意外な気がした。この業種ではおそらく受発注システムや在庫管理システム、物流システムがメインだと思われる。取扱製品の変化に対応し、需要予測の精度を上げ、在庫ロスをなくすために、そこそこ大規模な新規システムが必要であるようにも思えるのだが、この考えは違うのだろうか?

 どなたか詳しい人がいらっしゃったら教えてください。
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:

コメント

大規模システム導入というと、ERPを思い浮かべますが、「商社・流通・卸売・小売」業界への導入が行われたのが、恐らく製造業への導入がひと段落したころの2001年〜2003年くらいだったのではないでしょうか。

一方で企業のシステムのライフサイクルはおよそ5年〜7年程度。
なので、まだ保守・運用のフェーズにあるところが多く、新規投資に向いてないのではないでしょうか。

2008年〜2010年くらいの統計を取ると、少し変わってくるのかもしれませんね。
>Kさん

こんにちは。コメントありがとうございます。
(だいぶ遅くなって申し訳ないです)

なるほど、確かにそういう見方ができますね。2001〜2003年に導入が一段落した製造業も、同じくまだ保守期間中であり、新規投資が伸びていない、といったところでしょうか。

IT投資の種類別内訳(分類の切り口が難しいですが…)のデータがあるともっとよく解るかもしれません。

コメントする