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June 19, 2006
【ミニ書評】武田修三郎著『エントロピーからの発想』
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武田修三郎著。増大するエントロピーに人類が立ち向かうための方策を述べたもの。前半は生物の進化の過程とエントロピーとの関係を論じているが、結構専門的な内容であり、門外漢の私にとっては読むのがきつかった…
翻って後半は、文明とエントロピーの関係を論じている。核心に迫る前に、私達は進歩に対する考え方を改めなければならない。私達には、進歩は継続的に続くと思い込んでいる(これはダーウィンの進化論の影響であろう)節がある。だが、本書で引用されている市井三郎の言葉のとおり、「ほぼ一直線に、必然的進歩をつづけて来たし、今後もまた続けるであろうと信じるような思想は、人類全体の思想史からすれば、きわめて新しい現象」(p177)なのである。
著者は、イギリスの歴史家アーノルド・トインビーの「文明岩棚論」を借りながら文明の進歩を説明している。すなわち、登山家が岩棚を登ってはしばらく平坦な地で休み、また次の岩棚を登るように、文明も進歩と安定を繰り返してきたという。
そして、話題は核心のエネルギー源へ。歴史を振り返ると、文明とエネルギー源には密接な関係がある。中世の農耕社会は木材によって支えられていたし、近代の産業社会は石炭からエネルギーの供給を受けていた。そして、現代文明は化石燃料によって成り立っている。人類が岩棚を登るたびに、エネルギー源は新しいものに切り替えられてきた。
しかし、岩棚を登れば登るほど使用可能なエネルギー源は減少し、エントロピーは増大する。さらには、(この点が非常に重要なのだが)エネルギーによって支えられる社会システムも、高エントロピー状態になっているという。
こうした状況に私達が立ち向かうためには、最小のエネルギーで最大の効果をもたらす仕組みと、エントロピーを外部に放出する「ネゲントロピー機構」(ネゲントロピーは物理学者エルヴィン・シュレディンガーが用いた言葉)が必要である、と著者は述べている。
著者は近年、「Learn-Unlearn(学習忘却)-Relearn(再学習)」という学習サイクルを提唱しているが、これは学習サイクルにネゲントロピー機構を埋め込んだものであると言える。
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